その1 アパレルは本当に死んだのか


アパレル



なかなかショッキングなタイトルですね。
生き物ではないのですから、殺すことはできないのですからね。

それだけに、アパレルという「業態」は死んでしまった
というのですね。
では、題名の通りなら、誰のせいで殺されたのでしょう・・・・。


ではその前に、いかに「アパレル業界は死んでしまったのか」
の理由を経済産業省のデータから。

1


1991年(平成3年)まさにバブルのピーク時には
15.3兆円もあったのですね。
あのバブルの頃とは比較にならないでしょうけど、20年間で
市場規模は3分の2に。
この「失われた20年」でこれだけ下がった業種も珍しいでしょうね。

ただ注書きに注目していただきたいのですが、
ここ数年間で訪日外国人の「爆買い」特需もあった訳ですから
実際にはもっと縮小しているのです。


1_2

 


でも一方で、国内供給量は20年前に比べなんと2倍にもなっているのです。

市場が縮小して、売れなくなっているのに
供給量だけが増えているのです。
当然あふれ出た商品を売りさばく業者が出てきます。

これをいわゆる「バッタ屋」と呼ばれる方々・・・・。
しかし、メーカー側はたまったものではないですね。
売れない上に在庫の山。
それをバッタ屋にたたき売りですから・・・。

まさに、「アパレル不況」

 

なぜこんなに供給過剰になったかは後で解説しますが、
アパレル不況であおりを受けているのが百貨店業界。
なぜなら百貨店の売上の3割はアパレルだからです。

 

5

 

 


ここ数年の百貨店の閉店の表です。

週末の日経新聞で、百貨店の船橋西武と小田原西武が閉店する
ことが発表されていましたね。
表中の三越千葉店も今年3月に幕を下ろしています。
最盛期に500億円もあった売上が、2016年3月には
120億円まで落ち込んだそうです。

それだけ個人消費が落ち込んでいるということなのでしょうか。
当然ですが、百貨店の依存度が強いアパレル業界にとっても
打撃であることは間違いありません。

 

ただ筆者は「アパレルを殺すのは百貨店だけでない」
としています。
それどころか、
「アパレル業界は集団自殺している」
とまで言い切っています。
なかなかこの著者過激ですね。


この業界を理解するうえで、なかなか勉強になりました。
きっとアパレル業界以外の方々にも、参考になると思いますので
ご紹介していきましょう。




その2 ユニクロの功罪


ではここ20年間のアパレル業界で絶対外せない「ユニクロ」の
お話から。

1990年代に、それまでのDC(デザイナーズ&キャラクターズ)ブームに
湧いていたアパレル業界が一気に冷え込みます。
消費者の財布のひもが固くなっていたところに、あのユニクロが登場しました。
「980円」や「1980円」の衝撃的な価格に消費者は飛びついたのですね。
と同時に、欧米の「GAP」や「ZARA」などのファストファッションも
大成功をおさめます。

ユニクロの大成功の理由は、お分かりの通り、中国での大量生産でしたね。
この影響をうけたアパレル業界は、こぞって「ユニクロのようなビジネス」を
真似だしたのです。

3

 

 

生産拠点を中国などの海外に移転したのです。
アパレルの輸入比率です。
1990年には輸入比率が50%だったのが現在では97%。
これはアパレル業界はもうほとんど輸入に頼っていますね。

3_2

 


やはり主には中国ですね。

2

 

結局海外からの輸入品が市場にあふれたことにより
価格破壊が起こります。
購入単価は6割まで落ち込んでいますね。

需要に関係なく、単価を下げるために大量生産し、
百貨店やSCやアウトレットモールに商品をばらまいた訳なのですね。

なお悪いことに、このビジネスモデルは極めて非合理的ですが、
「麻薬のように」一度手を染めたらやめられないものだったのです。
つまり、無駄を承知で大量の商品を供給すれば目先の売上が
作れるからなのですね。

ただ結果的に、各メーカーがこぞって中国などに
OEM生産したことにより、商品がどれも似たりよったりに
なってしい、結局「買いたい」と思う服が無くなってしまったのです。

面白い例示が出ていました。
2016年のある大手アパレル企業での取締役会のことです。
一人の社外取締役が、会議の場に持ち込んだ3点の服は
別ブランドの商品だったそうですが、まったく同じ商品で
違いはブランド名が書かれたタグだけ・・・。


これこそがOEMの弊害なのです。
結局アパレル企業が、「売れ筋を、安く、速く」作ろうとするあまり、
いつしか商品企画やコンセプトを海外に丸投げしてしまったからなのです。


どのブランドも同じような服なら、消費者はいくら安くても買いませんね・・・。
まさに、これこそが「集団自殺行為」なのです。




その3 百貨店とSCの功罪



アパレル崩壊の「戦犯」としてあげられているのが
百貨店と共にショッピングセンター(SC)。

百貨店についてはご紹介したとおり、凋落の一途。
2016年の全国百貨店売上高は5兆9780億円と
なんと36年ぶりに6兆円を割り込みました。
(1980年5兆7225億円)
売上構成で3割を占めるアパレルの不振が原因です。

4

 

 

一方でSCの出店攻勢もすごいです。
10年間で1.5倍にもなっています。
大量のテナントを必要とするSCは、当然アパレルに
出店要請。
売れないのに出店させ続けたSCの罪も大きいと思うのです。
結局百貨店と共にSCは「顧客の食い合い」し、
共倒れすることになります・・・。

 

しかし、やはり百貨店というブランドが崩壊した罪ももっとも
大きいと思うのですね。
ここで得意の昔話。


我々の世代は百貨店全盛期を見てきました。
特に、東京池袋で育った私は、CMではないですが
「東が西武で〜♪西、東武〜♪」の街。
西武百貨店や東武百貨店でよく買い物しましたし、
今はなき池袋三越も好きでした。
特に食堂街に連れて行ってもらったり、屋上で遊んだ楽しい記憶もあります。
子供の頃、人でごった返している百貨店こそがブランド。

小学校一年生の時、三越で初めてグローブを買ってもらいました。
今でも大事にとってありますが、グローブに
「MITSUKOSHI」の印字があります。
ミズノでもナイキでもなくMITSUKOSHIブランド・・・。

Photo

 


昨年NHKの朝ドラで「べっぴんさん」というのがありましたけど、
あれは子供服ファミリアの実話でしたね。
社員たった4人の会社から阪急百貨店に出店して
店舗拡大したという成功物語です。
百貨店に進出したことでブランドとして認められたことこそが
成功の最大の要因です。

毎日大量の人が百貨店に押し寄せたので、並べているだけで
ほっておいても売れたのですから。
ただ百貨店そのものが、このブランドに胡坐をかき、この30年間
何もしてこなかったのです。
百貨店の「殿様商法」ですね。アパレル側に「売らしてやる」の姿勢です。

その殿様商法の具体的なやり方が記載されていましたが、
「消化仕入れ」という業界独特の商慣習。
つまり、「売れた分だけ仕入を発生」させ、「販売員もアパレルに負担」させ
「百貨店には何もリスクがない」仕組み。
これはすごいですね。

それこそ商品が万引きされても、火事で燃えても百貨店はノーリスク。


大丸松坂屋の社長のインタビューが掲載されていました。

「我々はゆでガエルだった・・・」

いみじくも反省しています。
大丸松坂屋は今後アパレルの売り場面積を減らす方針転換を
しているそうです・・・。




その4 アパレルの古き良き栄光の時代


昔話のつづき。
私の生まれた1960年代は、

「消費は美徳」

という国民的なスローガンがありました。


時代背景は戦後すぐの1950年代に
配給制を軸とした衣料統制が終わると、民間企業が
自由に服を作って売る時代となります。


三陽商会、オンワード樫山、そして昨日ご紹介したファミリアも
誕生し、神戸にワールドが誕生したのもこの頃ですね。

既製服の需要が急上昇したし、その主な販路となったのが
百貨店だった訳です。

「百貨店で服を買うのが時代の最先端」

となり、まさにブランドそのものになりました。
さらに懐かしいお話ですが、銀座みゆき通りに流行に敏感なものが
集まる「みゆき族」。そして私の年代なら憧れの「アイビールック」。
ついでにいうと、現在NHK朝ドラ「ひよっこ」でやっている
ミニスカートブームもこの頃。


そのあとアパレルの栄光の時代が続きます。
1970年代の「ケンゾー」、「イッセイミヤケ」に代表するデザイナーブーム。
1980年代のDC(デザイナーズ&キャラクターズ)ブームへと続きます。
誰もが百貨店のショーウインドーに並んでいるブランド物の
高級品をありがたがって買っていた時代ですね。


つまり、
栄光の1970年代。
熱狂の1980年代。

しかし、1990年代のバブル崩壊によって
アパレル業界は崩落してしまいます。


そのあとは御説明したとおりですね。
なぜこうなってしまったのか?
誰のせいで「アパレルは殺されたのか?」
本当に考えさせられてしまいましたね。


何も解決策が出ないまま、1990年代後半の

「ユニクロのフリース1900円」

でさらに決定打を受けてしまいます。

2000年以降のデフレという追い風を受けて
ユニクロは大躍進してしまいましたね。


さらにご紹介したとおり、その後SCが日本全国に大量に作られ、
多くのアウトレットモールもできたおかげで、
低価格の商品が全国で売られ、国民全体が低価格に
慣らされていきます・・・。


これが果たして「集団自殺」なのでしょうか・・・・?
長く続いた栄光の時代に何も手を打っていなかった
業界自体にも問題があったとしています・・・




その5 消費者もバカではない


なぜアパレル業界はダメになったのかを
「日本のアパレル業界の閉鎖性」
にあるとしている業界人が紹介されていました。

これは他の業界の方々にも参考になるお話ですね。

「キッコーマンやトヨタ自動車がどうやって世界を席巻する
世界企業に成長したかなど、他の産業の成功事例を学んで
こなかった・・・」

かなり厳しいお話ですね。

 

1990年にユニクロやスペインのZARAなど、
いわゆる「ファストファッション」が登場してきたときに
アパレル業界は

「あんなものファッションでない」

とバカにしました。


でも、ユニクロは言わずもがなのことですが、
ZARAはトヨタの生産システムを徹底的に勉強し、
それをZARA流に再構築するという取り組みを、
すでに1990年代からやってきたのを業界の方々は知りません。

「ファッション業界は、ブランドやデザインを輸入するだけで
社内でブランドやデザイナーを育てることをしてこなかった」

「消費者不在でビジネスを進めてきた」

なかなか手厳しいですね。

 

一方でファストファッションの雄であるユニクロの柳井社長。
アパレル業界の不振の原因は

「ムダなものを作りすぎた。」

そうハッキリ言っています。
アパレルというのはサイズがありますからね。
LMS のサイズもあるし、色違いもありますからね。
だから、

「アパレル業界は50%ぐらい無駄な商品を作っている。
そういった無駄なコストも正規の価格に乗っている」

これは何となく想像つきますね。

「そういう無駄な弾を散弾銃みたいに当てずっぽうに
撃っているだけ。もっとライフル銃みたいに正確に射抜かないと・・・・。」

ではどうしたらよいかという答えも載っていました。

「今度は情報を商品化するという新しい業態に
変わらなければならない」

これはある意味当たり前なのでしょう。


消費者もバカではありません。
この情報化の時代、そんな無駄にコストの乗った高い服なんて買わないのです。

いくらバーゲンセールやったって、誰も飛びつきません。

「そんなもの売れ残りでしょ。」と・・・。



その6 ユニクロはどこへ向かう


ファストファッションの「雄であった」ユニクロは
いったいどこへ向かうのでしょうか。


2014年から段階的に値上げをして客離れを起こしました。
それまでの「一人勝ち」だったユニクロの異変です。
それまで「安さ」が魅力であった商品が高くなってしまっては・・・。
確かに、為替、原材料の高騰、人件費の増加で価格転嫁を
せざるを得なかった訳です・・・。


私も定点観測をずっと続けてきた企業でしたから、
こちら 
こちら
ユニクロの減収減益はかなりショックでもありました。

その後このブログでもアパレル業界で、海外生産に頼らず、
国内生産で頑張る企業をいくつか取り上げてきました。


私の大好きなブランドでもある「鎌倉シャツ」
国内生産100%でありながら原価率驚異の59%の
戦略で地味に売上を伸ばしていましたね。
こちら

また私が大事なマラソンレースの際に履く「勝負ソックス」
を生産しているソックスメーカーのタビオ。
こちら
こちらも純国産の会社オリジナルの「サムライ・チェーン」
としてジャパンブランドの誇りを感じさせる企業です。

その他、最近国内回帰の動きがアパレル業界にもあるようです。


一方で、ユニクロは国内回帰はしません。
今後海外生産の軸はブラさないそうです。

ただこれまでの中国集中で、人件費の高騰や人手不足から
「チャイナプラスワン」
の戦略へと変わってきています。
具体的には、ベトナムやカンボジアで、
中国の工場経営者たちが出資して工場を作っているそうです。

これら工場や経営者と付き合いを続けて、ともに成長していく
戦略をとっていくそうです。

「国内生産はできません。」

ハッキリいっています。

「日本は技術はあるのです。
昔、日本は繊維の世界最大の輸出国だったので、いまだに技術は
残っているですが、消えかかっています。
しかも、100人とか200人の小さな工場で働いているのは
年配ばかりです。」

こう柳井社長は認めています。

そうなのですね。
日本はかつて繊維産業で栄えたのも事実なのです。
世界に誇る技術はあるのです・・・。

なんかヒントは見えませんか・・・・・。




その7 オンラインSPA


この本で、アパレル業界だけでなく他の業界の方にも
一番参考になると思ったところをご紹介します。

 

Spa

 

 

 

 

まずこの図を見ていただきましょう。
この図をながめているだけ何かヒントになるはずです。

 

一番右側は、「アパレルの古き良き栄光の時代」
一着30万円のブランドを消費者はありがたがって
買っていました。
最終消費者に行く前に、商社やメーカーを通し、
百貨店などの店舗で売られます。
工場で仕入れた材料代は一着1万円もしないはずですよね。
それがどういう訳か、いろいろと流通マージンも引かれ
30万円にもなってしまう訳です。

 

真ん中はまさにユニクロのビジネスモデル。
20年前は確かに画期的でした。
「フリース1900円」
で華々しくデビューし一時代を築きました。
中国などの提携工場で大量生産し、しかも自社店舗で販売するという
「一気通貫」
を築き上げて、すべての利益を一社で吸収することに成功しました。
ただ20年ほど時が経過し、大量の広告宣伝費、大量の出店コスト、
人件費増などより現在は曲がり角を迎えています。

 

左側にあるのが「オンラインSPA」という
新業態。
ご存知ですか?

正直書くと初めて知りました。
これだから読書はやめられないのですね。
これはものすごい発見ですよ!!


ユニクロがSPAを発見し、20年間成長できたたのですから、
これを日本でいち早くやれば、あと20年は企業を成長させる
ことができます!!

 


この仕組みを発見したのが、米国のベンチャー企業エバーレーン社の
CEOであるマイケル・ブレイスマン氏。まだ若干32歳。
7年前の25歳の時に勤めていたベンチャーキャピタルを
辞めて起業しました。


なぜ起業したかは、自分の着ている服が原価の8倍もの
値段で売られていることに驚いたから。

先ほどの例でいうと売価30万円の高級ブランドが
原価3万7500円で作られていると知ったからなのですね。


もっとはっきり書くと、このCEO当然ですが、
服に関しては完全に素人ですね。
この発想なのですね。
これはヒントになるのでしょう。

 

ユニクロの柳井社長がこの本で、

「日本のデザイナーは服について知らなさすぎる」

と怒っていましたが、知らなくても結構!
消費者に喜ばれる服を提供しさえすれば
企業は発展するのです。


何だか明るい未来を感じませんか?




その8 驚愕のエバーレーン



ではそのエバーレーン(Everlane)の仕組みがいかにすごいかを
ご紹介していきましょう。

1

 

 

まずこの写真見てください。
エバーレーンのサイトで売られているカットソー(68ドル 7480円)
ファッションに疎いおじさんのために注書きすると、
「カットソー」とはニット生地を「カット」(裁断)して「ソー」(裁断)したもの。

サイト上には、「伝統的なブランド」だと同じ商品が
140ドル(約1万5400円)で販売されていると併記されている
そうです。
消費者には「伝統的なブランド」はどこだかすぐ分かるでしょうし、
今までご説明したとおり、どこのブランドも同じように中国やベトナムでOEM
生産されているのですから、品質は同じと消費者にも分かります。

1_2

 


さらにこのエバーレーンのサイトがすごいところは
このページ。

モノクロなので分かりにくいでしょうけど
写真のカットソーの原価構造を分かりやすく示しています。

生地代 16.81ドル(約1,849円)
人件費  7.59ドル(約834円)
関税   1.79ドル(約196円)
その他費用1.81ドル(約199円)
合 計 28.00ドル(約3,080円)


これに40ドル(約4400円)のエバーレーンの儲けを
上乗せし68ドル(約7,480円)で販売していることまで開示しています。

これ本当に驚きませんか?
ここまで開示するビジネスモデルは他にないですね。

『他の「伝統的なブランド」は原価28ドルのものを
消費者は140ドルで買わされています!!』

業界に対する強烈なアンチテーゼですね。

この徹底した透明性こそが、エバーレーンにファンを
増やしている理由です。
顧客なら誰でも知りたいと思うことをシンプルに示しています。

2

 

 

ベトナム工場の写真まで開示しています。
また原価を開示することにより、儲けを取らないセールを
することもあるそうです。
その利益の使い道を、例えばベトナムのバイクのドライバーの
ヘルメット購入に充てるなど、具体的に示しています。

 

「価格に嘘はないか」
「品質に嘘はないか」
「デザインは喜ばれるものか」
「商品の見せ方や購入方法はスマートか」


この企業の問題意識そのものが、
既存アパレル業界の大量生産、大量供給というビジネスモデルへの
アンチテーゼということです。

まだ売上規模は3500万ドル(38億5000万円)ということですが
会員数は100万人にも上っているそうです。

時代のニーズを敏感に感じ取り顧客を増やしているのですね。
このビジネスモデルはアパレル業界以外にも使えそうだと
思いませんか・・・・。




その9 ZOZOTOWNの登場


オンラインSPAというのは結構勉強になりましたね。

これは他の業種でも可能なことなのではないでしょうか?


「オンライン・リフォーム」
「オンライン・住宅」
「オンライン・家電」


メーカーが消費者とネットを通じ直接販売する仕組みですね。
もう考えている人もきっといるのでしょうね・・・・。


ところで、オンラインSPAが登場した背景には、人々がインターネットで
ものを買うことに抵抗なくなっているという背景があるのです。


人々は今まで百貨店やSCで服を買わなくなっている代わりに
ネットで買っているのですね。
服を買わなくなっているのではないのです。
わざわざ売り場に行かず、ネットで買っているのですね。
これも他業種の方にヒントになりませんか?


米アマゾンが日本に上陸したのが2000年です。
楽天市場が誕生したのもそこ頃ですね。
わずか十数年でネットショッピングが
一大勢力になってしまったのです。
ファッション業界では、その2000年頃に
スタートトゥデイが運営する「EPROZE(イプローズ)」が
誕生しました。
「カタログ通販をオンラインに置き換える」ことに
チャレンジしたのですね。


その後紆余曲折はあったものの、スタートトゥデイは
衣料品では最大規模を持つ「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」に
発展させました。


ゾゾタウンの年間売上高は763億9300万円(2017年3月期)。
この売上高は阪急百貨店の婦人服の売上高をもうすでに
上回っています。
百貨店ではアパレルの販売不振による業績低迷が続く中、
ゾゾタウンはアパレル不振とは無縁なのですね。


ゾゾタウンの強みは何か分かりますか?

「ブランドを横断して統一した基準で商品を比較できること」

なのですね。

当たり前といえば当たり前かもしれませんが、
こんなことは誰も気が付かなかったことなのでしょうか?


一方でアパレル企業にもメリットがあるのです。
百貨店に出すより収益面のメリットがあるのです。

前にご説明した「消化仕入」という契約形態をとっています。
アパレル企業はゾゾタウンの倉庫に納品します。
この段階ではアパレル企業側の在庫ですが、売れた段階で
受託手数料がゾゾタウンに支払われる仕組み。
その手数料も百貨店にくらべて安く20〜30%程度なのだそうです。

 

ゾゾタウンに出店する店舗は934店(2016年12月時点)。
もう一つのメリットは、アパレル企業だけが閲覧できる管理サイト。
これにより、他社商品の売れ筋などアイテム別に検索できるのだそうです。
これはものすごいことですね。

これだけでも出店する価値はありそうですね・・・。




その10 ZOZOUSEDの衝撃


2017年2月にゾゾタウンは、ついにアパレル業界を「殺す」動きに
出ました!

何とスタートトゥデイはSPA事業に参入すると
発表したのですね。

これはたとえて言うなら、
「amazonが出版事業に参入」
したようなものです。

つまり、ネット通販のプラットフォームを提供してきた企業が
自らSPA事業するということは、
まさに「掟破りの禁断の手」なはずだからです。

 

しかも、このSPA事業が、ICT(情報通信技術)やIOT(モノの
インターネット)フル活用したものであるそうです。
ITの専門用語が出てきて何だか分かりませんが、
最先端の技術を使っていくのでしょうね・・・。

同時に

「アパレル業界の常識や慣習を転覆させる前代未聞のブランドになりそう」

と前澤社長はいっています・・・。

なかなかこの前澤社長は過激です。
まさに、アパレル業界の「風雲児」ですね。

ゾゾタウンはまた「中古品」も販売しているのを
ご存知ですか?

ゾゾタウンは2012年にアパレルオークションサイトを
運営していたクラウンエンジェルを買収して
「ZOZOUSED」(ゾゾユーズド)として
中古品の取り扱いを始めたのですね。

新品を取り扱うサイトが同時に中古品を扱うのですから
なかなかすごいと思いませんか?

その後売上高は20%〜50%増で推移し、
2017年3月期には100億円を突破しています。

この戦略はなかなか他業界でも参考になると思うのです。
ゾゾユーズドはもともとゾゾタウンで「新品」を買う人に
アプローチをかけています。
具体的には、新品を購入した人に商品を送る際に
ゾゾユーズドを案内することにより、まったく中古品に
興味のない人にもアプローチできるのですね。


さらにすごいのは、もともとゾゾタウンには
「誰が」「いつ」「何を」「いくらで」買ったというデータを
握っているのですね。
つまり、このデータを使えば、下取りでは、買った時期から逆算して
どれくらい経年劣化が考えられるかを計算し、
適切な価格を提示できるのです。

つまり、ゾゾタウンの戦略は

「ゾゾタウンで新品を購入した顧客のクローゼットにある
“在庫”が管理できるようになればものすごいインパクトになる」

ということなのです。

アパレルも自動車と同じようになるとまで考えているから。
つまり

「買ったら売るというのが当たり前になる」





その11 メルカリの衝撃


ZOZOUSED(ゾゾユースト)に象徴されるように
2012年頃から新しいトレンドがアパレル業界に
巻き起こっています。


2013年7月からサービスを開始した「メルカリ」です。
「メルカリ」ってご存知ですか?
ファッションから家電まで幅広い分野の個人間の売買を
サポートするサービスですね。


まだ誕生してわずか3年ほどですが、そのアプリのダウンロード数は
全世界で6000万にも及びます。


個人間売買というと今まで「ヤフオク」が有名でした。
好奇心旺盛な私も実際に何度かやったことがあります。
メルカリは、このヤフオクからオークションの要素を
取り除き、スマホを使いやすくしたことで一気に市場を
席巻しました。
個人間の売買で発生した売上の10%を手数料として
徴収するビジネスモデルです。

今後のビジネストレンドを考えるうえで、注目すべき
ニュービジネスだと思いますね。


2016年6月期の売上高は122億5600万円。
営業利益はなんと32億8600万円!!
ただこれでもサービス開始以来の初めて最終黒字なんだそうです。


メルカリの出品商品におけるアパレルの割合は
約4割にも上ります。


これは中古で服を買うことに抵抗のない方が
増えているということなのでしょう。


面白い服の買い方も出ていました。
最初にメルカリでそのブランドの中古品相場を調べてから
買い物する人が意外に多いそうです。
売り先があれば安心して新品をえるという新しいトレンド。
なかなか現代の消費者は賢いのです。


意外と思ったのは、ユニクロなどいわゆるファストファッションの
需要が多いこと。
これ私もそうでしたけど、子供のいる家庭ならすぐ分かりますよね。
子供服の特定のサイズを切ることのできる期間はわずかですから。
乳児であればわずか1年。幼児であっても2年程度。
本当に数回しか着られなかった子供服を親しい人に
あげた経験がある人はきっと多いでしょう。


あとこれはファストファッション業界への強烈な皮肉ですが、
ユニクロでも商品の入れ替えサイクルが早く、一度売り切れたアイテムは
2度と店頭で売られないのですね。

「中古でもいいからあの売り切れたアイテムがほしい」

そう思う人が意外に多いそうです。


なかなかアパレル業界の今を考えると
他の業界にもいろいろと参考になるお話ではないでしょうか・・・。




その12 TOKYO BASEのヒント


熱く語ってきたアパレル・シリーズそろそろまとめましょうか。

たかだか250ページの本ですが、かなり勉強になりましたね。
何度も言いますが、アパレル業界以外の方々にもご理解してほしいのですね。


ハッキリ申し上げますが、ユニクロは
もうすでに「20年前のビジネスモデル」なのです。
でもアパレル業界自体が、「40年前(!?)のビジネスモデル」を
いまだに踏襲する古き良き体質が染みついているからこそ
ユニクロがいまだに新しく思えるのです。

 

これからの20年を考えれば、アパレル業界の
まったくの素人にもチャンスがいくらでもあるということです。
逆に知らない人の方がチャンスがあると言ってもいいでしょう。

 

 

最後に、今年2月に東京証券取引所第一部に上場した
TOKYO BASE(トウキョウベース)をご紹介しましょう。


同社の社長谷正人氏。まだ若干33歳です。
創業からわずか10年で全国に2000社しかいない東証一部の
社長になったのです。
2017年2月期の売上高は前期比53%増の94億円、
営業利益は95%増の13億円!急成長しているアパレル企業です。


谷氏は浜松市にかつてあった松菱という百貨店の創業家一族でした。
谷氏が高校生の時に経営破たんしてしまいます。
大卒後セレクトショップに勤め、その後すぐ独立。
3店舗のセレクトショップ「ステュディオス」がスタートです。
セレクトショップを成功させた理由は、取り扱ブランドを国内のみ
としたこと。
つまり、有名な欧米ブランドを扱わないことで差別化を
図ったのです。


この企業の特徴は、徹底した計数管理。
まず、定価販売とセール販売の比率を商品ごとにチャック。
具体的には定価販売の比率が6割を切ったブランドとは
翌シーズンから取引をしないということにし、
逆に8割を超える場合には仕入れを増やすそうです。
この徹底的な計数管理は税理士としても興味がありますね。
因みに、固定費の家賃は売り上げの5%以下としているそうです。


あと、トウキョウベースを伸ばしているのがSPAです。
ただユニクロとは真逆のSPA。
高度な技術を持つ国内工場と直接取引しています。


その驚くべきことは原価率の高さ。
なんと50%だそうです。
今までのアパレル業界では考えられない比率ですね。
この原価率の高さにより、高級素材を使うこともできるそうです。
ここでも徹底した計数管理に寄り、定価で売りきることを前提として
商品を作り余分な在庫と処分リスクを抑えています。
あとご紹介したZOZOTOWNとの連携が奏功し、
ネット通販比率が30%と高いことも利益率が高く庵っています。
さらに従業員にも利益を還元する制度として売上の10%を
インセンティブとして売上の10%・・・。

すごいですね。

何だかアパレル業界の未来は見方によれば
まだまだ明るいのです。
いろいろ言いたいことはまだありますが
最後に私の座右の銘をお伝えして終わります。
これを100回唱えると誰でも大成功します!


『 人の行く 裏に路あり 花の山 』



(がんばれ! アパレル業界シリーズ おしまい)










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