その1 まだまだ上がり続ける社会保険料 



真面目に社会保険についても考えてみましょう。



社会保険もある意味「税金」です。
結構この負担が大変なのです。


今月からまた社会保険料が上がるのをご存知ですか?
ずいぶん前にアップしましたが、こちら
毎年9月に厚生年金保険料が引きあがるのでしたね。


平成26年9月分から、
17.474%に上がりました。


あと3年後の平成29年までに
なんと18.3%にまでなってしまうのでしたね。
こちら


こうなってくると、本当に3割もとられるのですね。
もちろん、会社負担と従業員の折半なのですが、
実際に納付するのは会社なのですね。
中小企業に取っては、「会社=オレ」といところ多いので


「給料の3割も取られてはたまったものはない・・・」


そう思うのも無理はないでしょう。


「何とかなりませんか・・・」


よくあるご相談です。
中小企業に取ってはまさに「死活問題」


実は、中小企業の実態をよく知る税理士としては、
社会保険に加入していない会社は多いのです。


でも法律は、会社であるなら、「入らなければならない」
のですね。
これは会社設立の際に、必ず説明するところです。
でも実際は、


「会社できてばかりでまだ事業基盤ができていません・・・
社会保険は様子見て・・・」


となるのがたいていです。
でも何度も書きますが、「入らねばららない」のです。


この強制加入の問題非常に多くなってきています・・・。






その2 強制加入の問題

本当に最近急に、


「先生、年金事務所から手紙が来ているのですけど
どういうことですか?」


よく言われます。
社会保険未加入の事務所へ、加入するように促す手紙です。
ほおっておくと、本当に内容証明が来たりします。


やはり一般の方に内容証明はキツイですね。
本当にびっくりして相談に来られます・・・。


「年金事務所もそこまでやるのか・・・」


そう思いますが、年金事務所も「対策チーム」を作って
未加入の事業所を回っているのですね。
本当に、できたばかりの会社や、
それほど売り上げもないような小規模の事業者へ
「調査官」が飛び込んできます・・・。


でも申し上げた通り、法律は
「入らなければならない」のですね。


それこそ「屁理屈言っても」、「争っても」負けます・・・・。

 

また一方でこういう相談も出てきています。


「社会保険に加入していない事業者とは今後取引できない」


これは本当に困ってしまいますね。
どういう業種か分かりますか?


建設業者の方から、こういうことを聞くことが多くなっているのです。


現在国土交通省が、


「建設業の社会保険未加入対策」


を発表しているのですね。こちらつまり、公共事業など国の事業を発注する際に、


「社会保険に加入していないような事業者には
発注しないようにしよう。」


というこらしいのですね。
多くのゼネコンが下請け企業に対して、


「今後社会保険には加入するようにしてください。」


という「御触れ」が出されているのです。
これは困りましたね・・・・。






その3 どうにもならないよくある困ったご相談




「仕方がないので社会保険に入ろうと思いますが
どうなのでしょうか・・・」


もうそうなのですね。
何度も書きますが、社会保険加入は義務なのですから。
今まで支払っていた、国民年金や国民健康保険料も
払わなくてよくなります。


でも一人国民年金や国民健康保険料でも
せいぜい月7万円程度ですよね。


それなりに役員報酬を取っている方は、
会社と個人で約3割も取られるのですが、
その額を計算すると本当にびっくりされます。


「でもやはり保険ですから、
将来もらうであろう年金の額が違いますから・・・
国民年金だけだとせいぜい・・・くらいで・・・」


「保険ですので、万が一怪我などされて
入院していた期間の所得も保証されて・・・(傷病手当のこと)」


いろいろ説明するのですが、どうしても保険料のことが
気になる・・・。


将来もらうであろう年金のことも、
現在「年金定期便」があって誕生月に送られてきますね。
これもって年金事務所に行くといろいろ教えてくれます。
今やネットでも内容も見られるのですね。


でも一番問題なのはこれまでの加入期間が短かすぎて、
将来年金が受給できない場合なのですね。
つまり、国民年金と厚生年金の加入期間が通算25年以上
必要なのです。


たとえば早くから脱サラして、個人事業として努力され、
ようやく事業が軌道に乗って会社にされたような場合に
j困ることが起きるのです。


個人時代はなかなか苦しくて、
それこそ国民年金すら払っていなかった・・・。


こういう場合は本当に困るのですね。
これから加入しても社会保険もらえない・・・。


先にご紹介した建設業の方だったらどうなりますか?


「これから加入しても厚生年金もらえない・・・」
「社会保険に加入していなければゼネコンから仕事がもらえない・・」


さあ!もうどうにもなりません。本当困りました・・・。






その4 よくある作戦




イントロが長すぎましたね。
そろそろ本題に入りましょう。


どうやったら削減できるのでしょうか?
社会保険の仕組みをよく知らないと削減できないのですね。
では「古典的削減策」、「よくアルアル作戦」・・・。



(1) 昇給月を7月にしよう


これは社会保険の「算定」というものが、
4月〜6月の等級で決まるからなのですね。
でも、多くの企業が4月から昇給です。
大企業は3月決算が多いですし、官公庁の年度も3月
ですからね。
自動的に4月昇給となるのです。
ということは、3月決算でない中小企業は会社の決算に合わせて
昇給月を決めることが大事なのですね。


(2) 4月から6月の残業代を減らす


なんとなく「セコイ」削減策ですが!?
「算定」には残業代が含まれますので、
4月から6月の残業代を抑えれば自然と等級が下がるのですね。


(3) 給与を報酬月額の右側に設定する


これももっと「セコイ」かもしれませんが、
こういうことも社会保険料の仕組みを知っておけば
結構大事なことなのですね。
報酬月額の幅は2万円あるのでしたね。
たとえば標準報酬30万円のレンジは
「290,000円以上 310,000円未満」なのですね。


こういうことを加味したうえで昇給額を決めるべきなのですね。
今年消費税率が8%に上がった時に、昇給額のご相談を
多くのところで受けました。


「一律に3%上げたい」


ようなお話なのですね。
でも実際に計算すると、昇給したけど、社会保険料を
加味したら大したことなかった・・・。


算定で等級が上がった方から
今月間違いなく文句言われますよ・・・・。






その5 気になる削減策



書きながら、社労士さんのよくあるブログみたいに
なってしまいましたね。


すいません。
物事の本質をするどく抉る!?「吉田ブログ」の趣旨に反しました・・・。


ここで気になる「削減策」をご紹介していきましょう。


先日「税務通信」という業界紙を読んでいたら、
こんなQ&Aが出ていました。


「A社は、社長に対して、現在月々100万円、年額1200万円の
報酬を支給し、賞与は一切支給していません。
最近、社会保険のセミナーに参加したら、役員報酬を減額し、
賞与として支払う方が、社会保険の負担額が大幅に減少するとともに、
年金受取額が増加するというような話を聞きました。


そこで、A社では、今後社長に対する月々の報酬を10万円、
年額120万円に減額し、減額した1080万円を賞与として支給することを
計画しています。」



こんなQ&Aですね。
「社会保険の節減策」としてセミナーが行われていることに
驚きなのですが、こういうことをして大丈夫ですか?
というご質問ですね。


肝心の社会保険の削減効果はあとで述べますが、
こういうことが税務の業界紙に出るくらいなのですから、
かなり広まった「削減策」なのでしょうか?


しかし、「税務的にまず大丈夫だろうか?」
これはまず税理士として思いますね。
多分聞かれた税理士が困って、国税当局(正確にはOBの税理士)に
聞いたのでしょうね。
でもOBであっても元国税と名前を出す以上、
かなり信憑性のある回答であることは間違いないのですね。


これは説明しなければならないのですが、
「事前確定届出給与」といって、所轄の税務署に届け出ることに
よって、事前に分かっている給与、つまり賞与でも損金にできる、
つまり税務上の経費としていいという法律があるのですね。


これは数年前に改正されたものなのですね。
さて本当に大丈夫なのでしょうか・・・?






その6 税金上の問題




では一応「税理士ブログ」なので、
税金の説明から・・・。


役員報酬を
毎月々 100万円×12か月 支払う場合と


毎月々 10万円×12か月 支払い

   かつ 1080万円 賞与を支払った場合


ですね。
どちらの場合でも
会社側は結局、総額1200万円支払っていますし、
社長さんは1200万円もらっていますね。


経済効果はまったく同じです。
問題は支払い方なのですね。


税法でよく問題になるのは、社長さん(つまり役員)への給料(役員報酬)の
支払い方なのですね。


難しい用語で、「定期同額給与」という原則があります。
言葉通りですね。


「定期的に払って」しかも「同額の給料」を払わなければならないのです。


ということは毎月きちんと払うということが大前提です。
しかも「同額」を支払う・・・。


これは何度も本にも書きましたが、よくあるご相談なのですね。


「先生!今期はどうやら利益が出そうなので、残りの3か月給料は
倍にしたいのですが・・・・」


何度聞かれたでしょう。
これはアウト!なのです。
払ってもいいのですが、同額以上に余分に支払った金額は
経費として認められないのですね。


同様に


「先生!今期はどうやら利益が出そうなので、社長の私と役員である家内に
ボーナス支払いたいのですが・・・・」


これもアウトなのです。


でもこれに対しては「定期同額給与」という税制改正がされた年度に
「事前確定給与」という制度認められるように
なったのですね。


つまり、「事前に確定しているボーナスなら」役員に対しても
経費として認めてくれるのですね。


この規定通りに、届け出を出せば1080万円の賞与も
果たして経費として認められるのでしょうか・・・?






その7 事前確定給与


ここで冒頭ご紹介したQ&Aの登場です。


やはり税法解釈は、法律にどう定義されているかなのですね。
これは難しい言葉で「租税法律主義」というのですね。


つまり、税法の専門家として、税法の条文がどう書いてあるかなのです。
このQ&Aが当然ですが、条文通りの答えなのです。


まず100万円を10万円に下げてよいかなのですが、
これはまさに「定期同額給与」に該当します。

(法人税法第34条1項一号、法人税法基本通達9−2−12)


事業年度開始の日から3月を経過する日までの株主総会の
決議で改定することができるのですね。
(法人税法第34条1項、施行令69条1項一号)


この改定は、報酬を増額することも減額することも可能なのです。
しかも、その改定に理由は必要ないのです。
もっと言えば、社会保険上はともかく、
税務上から見る限りは、健康保険料や厚生年金保険料保険料の
負担を軽減するための改定であっても差し支えないのですね。
これはもちろんそう思いますし、このQ&Aでもそう書いてありました。


こういうことが、租税法律主義なのですね。
要するに、


「社会保険料の削減のために改定した場合は損金として認めない」


万が一そう条文に書いてあれば、ダメということなのですね。
まあ税法の考え方として、そんな改正は絶対ないと思いますが・・・。


では一方の1080万円の賞与についての損金性です。
つまり、1080万円も賞与を支払って、経費として認めてくれるか
なのです。


これはご紹介したとおり、あらかじめ所轄の税務署長に届け出を
しておけば、事前確定給与として、損
金算入ができるのです。
(法人税法第34条1項二号)



その届出は、株主総会等で支給の決議をした日から1月を
経過する日まで行わなければいけません。
(法人税法施行令69条2項一号)


ですからきちんと届出を期限内に出せばよいということになります。
良かったですね。
経費になりそうです・・・。


それでも心配ですか・・・。





その8 具体的に保険料を計算



さていよいよ肝心の「社会保険料削減作戦」に入ります。
文中の意見は私独自の考えです。
責任は負いませんのでご了承ください・・・。


(何だか言い訳がましいですか・・・
あまり当ブログの趣旨としては書きたくない断り書きですね・・)



命題として、

役員報酬を


(1)「毎月々 100万円×12か月 支払う場合」


(2)「毎月々 10万円×12か月 支払い

   1080万円 賞与を支払った場合」


ですね。
これが社会保険料の削減策となるのでしょうか。
こういうこと真面目に計算してくれる社労士さんも
税理士さんもいないのがいけないのですね。


では計算してみましょう。
(1) はよくあるでしょうからお分かりですね。

クレームがないように平成26年9月分からの東京都の場合で、
しかも年齢を40歳から65歳としてみましょう。

Photo_6

 

 

 

毎月223,830円もかかるのですね。実際にはこれもお分かりでしょうけど
児童手当拠出金は会社負担で、それ以外の保険料を会社と個人で折半するのですね。


さてこれを毎月10万円に下げたらどうなるのでしょうか。


してみましょう。

Photo_7

 

 


毎月28,726円にぐんと下がります。差額はなんと、195,104円
これを年間にすると12倍して2,341,248円
よかったですね。230万円も引き下げられることが分かりました。
ここまでは表のとおりです。こちら


さて問題は賞与1080万円!これはどうなるのでしょうか?
保険料はいったい230万円も取られてしまうのでしょうか・・・??






その9 賞与の取り扱い



さて賞与を1080万円払った場合の社会保険料を計算してみましょう。
普通の会社でボーナス1000万円以上も払うことは
まずないでしょうから・・・


私自身も今回初めて計算してずいぶん勉強になりましたね。
表にしてみます。これです。

Photo_2

 

 

全部で895,620円
確かに高いですが、前回計算した差額2,341,248円
には及ばないということです。
つまり、
2,341,248円−895,620円=1,445,628円も「削減」
できたのです。
これはすごいですね。


これはどうしてこういうことが起きるか
これも勉強になりましたね。


賞与については
健康保険料が540万円が上限
厚生年金保険料が150万円が上限
こういうことから差額が発生するのです。


検証してみましょうか。


健康保険料は
5,400,000円×9.97%=538,380円


介護保険料は
5,400,000円×1.72%=92,380円

  

厚生年金保険料は
1,500,000円×17.474%=262,110円


児童手当拠出金は
1,500,000円×0.15%=2,250円


どうですか。
正しいですね。
144万円も削減できるならやってみますか・・・。






その10 安易な削減策か?



社会保険料削減策については、まだまだいろいろと
書きたいことありますが、一方でご批判も受けるかもしれませんので
このあたりにしておきましょう。

書きながら思いだしましたが、
昔は賞与について、社会保険料はかからなかったのですね。
取られるようになったのは、平成15年4月の改正からなのです。

ですから、「昔の社会保険料削減策」というのは
「月額報酬を減らして賞与を多くしましょう」
という作戦もあったと思います。


今回の事例のように
月額10万円にくらいして賞与をたくさん取る・・・。
これが流行ったので、結局は賞与についても
社会保険が取られるようになったのだと思います。

こういうことが流行ると、
「賞与についての限度額を引き上げよう」
という動きが出てくるのでしょうね。

それこそ限度額が撤廃されて、
「すべての賞与について料率をかけた保険料を」
ということになるかもしれません。

それどころが、「月額変更届」そのものが変更されて
「3か月間の月額報酬の平均値と
その月以前12か月間の収入額を12で除した値と
どちらか大きい値が2等級以上・・・」
なんて変更されるかもしれませんね。

まあ勝手なことはこれ以上書けません。
それと最後に申しあげたいことは、
削減額をもう一度表にまとめますとこうなります。



Photo_3

 

 

厚生年金保険料が832,458円も少なく納めているのですね。
当然将来的にもらえる年金額も減ってしまうのでしょう。
刹那的に支払額を下げたとしても
「寂しい老後」
になってしまうかもしれませんね。

 


今回は社会保険についての良い勉強になりました。
多分こういうような内容で、社会保険労務士さんの「削減セミナー」
が行われているのではないでしょうか。
やはり本気で将来のことを考えていただきたいものです。


最後に私の事務所の「キャッチコピー」を掲げて終わります。

「あなたのライフパートナー」




(本気で考えよう!社会保険シリーズ おしまい)

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