その1 一日100食限定の京都大繁盛店

 

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このタイトルは実にショッキングですね


このタイトルは実にショッキングですね。
「売上を減らす??」
見た瞬間に思わずamazon衝動買い。

京都のステーキ丼屋さんの物語です。

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このステーキ丼はいかにも美味しそうですね。
一杯1080円。
当然行列ができる店だそうです。
でも一日100食だけ。

たった10坪で14席しかないお店なのです。
11時開店で14時30分閉店。
もちろん売切れれば即閉店・・・。
すごいですね。

「そんなに売れているなら、夜もやればよいのに・・・。」
「せっかくだから500食までやれば・・・。」

普通思いますよね。
「それこそFC展開でもすればよいのに・・・。」
いろいろ思うのでしょうね。

私なんか税理士という「悲しい性」でしょうね。

「原価率・・・として・・・家賃は・・・」
「儲かるのだろうか・・・?」

そっちなのですね。
でも14席で100人ということは「7回転以上」ですね。
これは大繁盛店なのですね。

このお店の経営者は中村朱美さん。
本の表紙の通り可愛らしい女性。
顔は可愛いのですが、なかなかの経営者です。
飲食業界の常識を覆した方です。

この方が28歳の時にこのお店をオープン。
東北大震災翌年の2012年11月29日。
(いい肉の日)だったのですね・・・。

でも申し訳ないですが、飲食はまったくの素人。
開店当時は100食どころか、ランチタイムに
14席が満席になって1回転でおしまい。
夜まで頑張って営業しても30食どころか20食・・・。


ここで私が開業相談の際に必ずいう言葉ですね。

「半値、八掛け、2割引きの法則」

「誰でも絶対成功すると思って開業します。」

でもなかなか思うようにいかないのが世の中であり、
開業です。

自分の思っていた売上の最初は半分に・・。
それでもそこから八掛けに・・・。
さらに2割引きになる・・・。




その2 一本のブログで突然



開業して絶望感に悩まされた1カ月間。
一本のブログで事態は急展開します。
2012年12月27日。
突然お客さんが押し寄せたのです。

ある方の個人ブログが、Yahoo!の地域ニュース欄に
リンクされたからなのですね。

正直これはほんとうにラッキーなことなのでしょうね。
たったこれだけで飲食店の開業の苦しみをわずか1カ月で
乗り越えてしまったのですから。
この日を境に昼は50人。夜は20人来るようになったそうです。
さらに、地元情報誌「Leaf」という京都では知らない人はいない
タウン誌にも出て、さらに2013年3月10日テレビに取り上げられます。
関西ローカルの街ぶら系テレビ番組「大阪ほんわかテレビ」に
取り上げられたのです。
テレビの影響力はとてつもなく大きかったらしいです。

このステーキ丼は写真で見る限り実に美味しそうですからね。
「インスタ映え」という言葉がなかった8年前ですら、
テレビ写りは間違いなく良かったと思うのですね。

開業してわずか3カ月。3月17日に目標としていた100食を
初めて完売したのです。
ただこのときはまだ夜も営業していました。

それから100食を完売しない日はないくらい忙しい日が
スタートしたのです。


この本読んで、
「なんだ飲食店のビジネスは結構簡単そうだ。ちょっとやってみようか。」
という人が現れないでしょうか。
あまりに幸運続きではないでしょうか・・・。
税理士として20年以上。いろいろな飲食店を見てきたつもりです。
こんな風に急に行列ができる店はありません・・・。

でもこの本の請け売りですが、本当にご主人が考案した秘伝のレシピが
あるようです。

秘伝のタレは醤油メーカーに特注して作ってもらった「割り醤油」に
厳選した赤ワインを使います。
何より食材がすごい。
「国産の交雑牛」を使っています。
「国産の交雑牛」とは黒毛和牛のオスとホルスタイン種のメスとの
間に生まれた牛。赤身が多くステーキ丼には合うらしいのです。
注文があるたびに、前日届いたばかりの牛肉を
1人前の分量の塊を焼いて、それを薄くスライスしていきます。
手間暇かけますね。

その肉の枚数は18枚。
美味しいそうですね。それがたったの1080円!
そろそろ食べてみたくなってきましたか・・・。




その3 さらにテレビ出演で大繁盛店に


ラッキーはまだ続きます。
佰食屋が全国ネットのテレビで何度か取り上げられるようになり、
番組が放送するたびに行列が長くなります。
極めつけは2014年4月28日にゴールデンタイムに
全国放送されたおかげで大行列に。
それをきっかけに整理券になります。
その後中村氏は長女を出産。
それでも攻めます。
2015年3月29日に2店舗目の「佰食屋すき焼き専科」を
京都河原町に出店。
すごいですね。
しかし、ここで2人目を授かります。
子育ての両立とに悩み、ついにオープンから
3年目に夜の営業をやめます。
これは女性経営者ならではの悩みなのでしょう。

あとこれもブログで書くことが多少躊躇いもありますが、
生まれてきた長男が脳性まひを患っていることが
発覚したことも夜営業をやめた理由でもあるのでしょう。

でもこの中村氏。すごい経営者ですね。
子育てと経営と両立する中で、なんと3店目も出店。
2017年3月1日に京都随一の観光名所の錦市場に、
「佰食屋肉寿司専科」をオープンさせてしまうのです。

さたに2018年6月4日からは、JR京都伊勢丹で
肉寿司弁当まで販売してしまいます・・・。

こういった活躍で、京都市、経済産業省、農林水産省などから
表彰を受け、さらに「日経WOMAN2019大賞」など
13もの賞を受賞したそうです。
テレビなどメディアにでればでるほど、この店の宣伝にもなり、
売上増加にもつながったのでしょうね・・・。

でもそろそろ思いますね。
「この100食限定で本当に儲かるの?」
と・・・。
でもこれだけいろいろ露出していれば話題になりますからね。

「100食ビジネスモデルは果たして・・・」

そろそろ専門家としても突っ込みたくなってきましたね。
でも中村氏の請け売りですが、
「100食ビジネスモデル」のメリット5つ

1.「早く帰れる」退勤時間は夕方17時台
2.「フードロスほぼゼロ化」で経費削減
3.「経営が極端に簡単になる」カギは圧倒的な商品力
4.「どんな人も即戦力になる」やる気にあふれている人はいらない
5.「売上至上主義からの解放」よりやさしい働き方へ

なかなか勉強になります。
お分かりになりますか・・・。





その4 行列経営学



書きながら思い出しましたが、こちら
7年くらい前に取り上げた「俺のイタリアン」がありましたね。
あのお店も驚異の原価率60%をうたっていましたね。
当時は長蛇の行列を作ったのでした・・・。
2014年には上場公開という触れ込みだったのですが、
残念ながらそうなっていませんね・・・。

「佰食屋」もあれと同列の「行列経営学」なのですね。
行列ができる店なら何でもできますからね。
昨日申し上げたメリットを十分享受できるのです。

でもそろそろ税理士ブログらしく、「本当に儲かっているのか」
という突っ込みをしていきましょう・・・。

 

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まず「佰食屋」のメニューです。
ステーキ丼がもちろんメインメニューです。
ほとんどの人がこれを頼むのでしょうね。
税別1000円ですね。
これが佰食ですから、毎日10万円の売上ですね。
サイドメニューを頼む人もいるのでしょうね。
飲み屋ではないのでビールやワインを頼む人は少ないのでしょう。
仮に一日の売上がサイドメニュー合わせて12万円とします。
それが一月30日で360万円。
一般的に月360万円のお店なら儲かっているはずです。
何故なら通常のお店の原価率は25%〜30%だから。

でもこの佰食屋はなんと50%なのですね。
高級牛肉を毎日仕入れてそれをふんだんに使っているから
たぶん一杯の原価は500円あっても当然でしょうね。
360万円×50%は180万円!

あと人件費を計算しましょう。
佰食屋はなんと売り上げに占める人件費は30%なんだそうです。
そごいですね。
実際に3店舗で正社員が13名。アルバイト含めると30名。
1日にシフト5名は入れているそうです。
ということは360万円×30%は108万円!

では売上360万 ― 仕入180万 ― 人件費108万円 = 72万円!
これしか残りません。
因みに、これを「FLコスト」の計算というのですね。
F(Food 原価・材料費)とL(Laber 人件費)です。
FLコスト80%なんて考えられない数字ですね。
(顧問税理士から反対された)と正直書いてありましたから
私でもきっと文句言うでしょうね・・・!?(すいません)

この72万円から実際には家賃支払って水道光熱費支払って・・・。
となりますからね。
やはりあまり儲かってはいないのではないでしょうか。

本人もこう書いてありました。
「めちゃめちゃ儲からない」と・・・。

ただ実際の売上はもっと良さそうです。
2018年8月期でこの運営会社(株式会社munitts)は
1億7000万円以上です。
一店舗6000千万円とすると月に500万円の売上ですね。
なんだか儲かっていそうですが、
「経常利益はギリギリの赤字」だったそうです・・・。

ただご主人が経営する(ご主人は設計士らしい)不動産部門で
赤字をカバーしているらしいので、果たして佰食屋単体では
どうなのでしょうか・・・。




その5 本当のところは・・・


「佰食屋は本当に儲かっているのか・・・」

これに対してオーナーの中村さんは正直ですね。
赤裸々に綴っています・・・。

行列繁盛店でも厳しいときがあるのです。
これが飲食業界の常ですから。

2018年6月18日に起きた大阪府北部地震。
続いて7月に起きた豪雨による被害。
お客様が半減。一日に50食どころか30食の日もあったそうです。
さらにとどめを刺すかのように9月に起きた台風21号。

ついに3店舗のうち1店舗の閉鎖を決断。
さらに税理士と相談し、
「1年間を遡って中村さんとご主人の役員報酬の返上」

何だ!コレ!!
禁断の手法ですね。
すいませんが、これ税務署みたらアウトです。
なかなか大胆な顧問税理士ですね。

要するに1年間無休で働いたことにしたのですね。
でも年末調整で前年の給料は確定しているから、
当たり前ですが遡って修正はできません。

ただこれ読んだ瞬間に本当にガッカリしたのです。
誰もが認める行列繁盛店も天変地異など外的要因によって
1年間無給になってしまう・・。

私も税理士となって20年あまり。
飲食店の顧問を何十店もみてきました。
なかなか思い通りうまくいかなくて
給料が取れないお店は確かにありました。

「佰食屋よお前もか・・・」

結局1店舗閉鎖はお客さんが戻ってきて免れたそうですが
その経験を踏まえこの本の題名通り、
「売上を減らそう」
という提案をしています。

どういうことかというと、
「佰食屋1/2」
というフランチャイズ展開をするそうです。

佰食の1/2ですから50食。
勤務時間は朝10時から夕方16時まで。
たった6時間で50食を売る店。
50食なら一日の売上5万円。
定休日は日曜日で一か月25日営業で売上125万円。
原材料費や家賃を指しい引いて50万円。
これがまさに給料。

こんな働き方の提案です。
夫婦二人で取り組んでスタッフ減らせば可能らしいです。

どうですか?
「佰食屋1/2」
やってみますか・・・。



その6 人材活用の新しい手法


この「佰食屋1/2」のFC展開はどうなるかはさておき、
最後にこの佰食屋の人材活用戦略を紹介しておきましょう。

佰食屋は2017年に「ダイバーシティー経営企業100選」に
選ばれました。
この「多様性」ということで何が表彰されたかというと、
「マイノティ人材」。
「マイノティ」というのも何か差別用語のようで、
これも使うのが多少憚れますが、この佰食屋では、
子育て中のシングルマザー、障害者や中卒生、高齢者を
積極採用しているからなんだそうです。

確かに、「残業ゼロ」、「誰でもできる仕事」といった
職場環境ですからね。
「学歴不問」、「職歴不問」ということで
このような人材を採用することができたわけです。

飲食店ビジネスにっとって、これは参考になるお話なのでしょう。
飲食店ではどこも人手不足ですから。
昔はアルバイトの学生がいくらでもいたそうですが、
まさに今は少子高齢化。

だからこそ、人手不足の解消策として佰食屋の「マイノティ人材」の積極活用が
注目されているのです。

以前、このブログでも、飲食店の人材活用として
「ただめし」活用のお店をご紹介しましたね。こちら

あれ以来、真似するお店も良く聞きます。
「配膳を手伝ったらただめし」
だけでなく、「掃除したらただめし」というのも
よくテレビで紹介されていますからね。

佰食屋でもこの「ただめし」取り入ればもっと
面白い展開はできそうですけどね。


「佰食屋1/2」のFC展開にも、「マイノティ人材」
のためにもいろいろ工夫してほしいですね。
提携ローンなど支援策まで書いてありましたが、
例えば「シングルマザーのための支援策」など
もっと積極的にやってほしいものです。

例えば、深夜営業の居酒屋は日中お店は空いています。
それを佰食屋がタダで借りて、「シングルマザー」に
場所を無償で提供するのはどうでしょうか。
タダで借りたお礼に店全部を掃除してお返しするのです。
大手居酒屋チェーンに「メセナ活動」ということで
私が交渉してあげましょうか。

何だかいろいろ夢が膨らみそうですけどね・・・。
佰食屋の成功をお祈りします。



(がんばれ 佰諸屋シリーズ おしまい)





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