その1 7万食の弁当を毎日12時までに



すごい経営





今年初めての書評ですね。
では、いのしし年らしく、「猪突猛進」のお話を。

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弁当屋さんの物語。
私は中野区に住んでいて、よく環状七号線を車で走ります。
黄色いバンで「玉子屋」と書いた車をよく見かけるのです。

「卵の運送か・・・」

というくらいしか思っていなかったのですが、
この本を読んで初めて知りました。
弁当を運送する車だったのですね。
お昼の弁当だけでなんと年商は70億円なのですね。

一日7万食を製造販売するそうです。
7万食といってもピンと来ないかもしれませんが、
東京ドームが満員になっても5万人です。
全員に配ってもまだ余りますからね。

それを毎日9時過ぎから注文を受け、
製造したうえで運送し、お昼の12時までキッチリ届けるというビジネスです。


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これがその弁当。
HPからですが美味しそうでしょ。
すべて税込450円!!

今どきコンビニでも弁当は安く売られていますが、
工場で働く方や、オフイスの社内で昼食を取りたい方には
圧倒的な人気なんだそうです。


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それを経営されている方はこの方。
菅野勇一郎氏。
昭和44年生まれ。49歳。
顔つきがいかにもスポーツマンらしいでしょ。
それもそのはず、小学校からリトルリーグに入った野球少年。
立教高校で甲子園を目指します。
大学は立教大学へ進み、もちろん野球部。
ずっと寮生活の野球漬け。
4年先輩には、あの最近テレビにで出ずっぱりの「長嶋一茂」。
そう言えば昔は立教は強かったのですね。

大学を出て富士銀行(今のみずほ銀行)へ。
流通のコンサルタント会社を経て、この玉子屋へ入社したのです。

つまり、実の父親が創業した会社に入社した「二代目」なのですね。
その時菅野社長はまだ若干27歳です。
父親はまだ57歳でしたが、常務として入社した息子に
全権を委譲したそうです。

すごいですね。
これは完全に「事業承継物語」なのですね。

因みに、この会社はスタンフォード大学MBAの教材にも
なったそうです。
なかなか参考になるお話ですよ・・・。(つづく)




その2 27歳でいきなり社長に


事業承継の面白いお話の前に「玉子屋」の歴史から。


先代が昭和50年(1975年)に大田区大森に
一日50食程度の弁当屋さんをスタートさせたのが始まりです。


始めて2年経って、


「丸の内や日本橋のオフイス街にウチの弁当を売ったらどうか・・・」


とひらめいたそうです。
今ならそんなビジネスは当たり前にありますね。
でも、先代は銀行で働いた経験があったので、
それを思いついたそうですが、
なかなか先代は先見の明があったのですね。


昭和55年(1980年)に三井造船と契約できました。

当時三井造船は社員食堂があったそうですが、
「銀座の一等地に無駄ではありませんか?」
というセールストークで毎日600個の弁当を受注。

これでオフイス街での弁当販売に大きな弾みができたそうです。
これにより昭和57年(1982年)に一日2000食の
業界上位の弁当屋さんに。


しかし、この直後に食中毒事件を起こし、
テレビ報道もされ営業停止処分。
一時は倒産も覚悟したそうです。

しかし、その食中毒事件を契機に、再出発した玉子屋は
衛生管理を徹底するために機械化を進めます。


一方で菅野社長は野球漬けの毎日。
食中毒事件を起こした時は中学校二年。
シニアの日本代表にも選ばれて立教高校に進学。
高校一年生のときに甲子園出場初出場を果たします。

高校を卒業することには玉子屋の食数も8000食に増え
大企業へと成長していました。

それから約10年ほどで
先代は玉子屋をさらに成長させます。
当時は一食税込410円でしたが
食数は1万5000〜2万食ほど。
年商は12億円。
利益は3000万〜4000万円。
業界最大手で3万食と言うくらいですから
超優良企業に。


菅野社長はその10年間で立教大学で野球に打ち込み、
大学卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)とマーケティング会社で
修行。

平成8年(1996年)9月に先代に言い出します。

「俺、そろそろ玉子屋で働こうかな」

それで、平成9年(1997年)1月。
玉子屋に常務として入社。

 

でもこの菅野社長なかなかの方です。

27歳ながら最初の挨拶の際に古参の従業員の前で
先代(会長)の戒名を突然言い放ったのです。


「今のは私が考えた親父の戒名です。
今日をもって社長は死んだと思ってください」




その3 事業承継の成功例


この事業承継については「突っ込みどころ満載」ですね。
この玉子屋の承継のケースご理解できるでしょうか?


先代は35歳の時に玉子屋をゼロからスタートしたのですね。
22年経って57歳の時に27歳の息子に完全にバトンタッチしたのです。

確かに、その22年間で、従業員も当時はアルバイトを含め100人、
売上12億円、利益4000万円の優良企業に育て上げました。

それをある日突然、弁当を作ったこともない、
弁当の配達も営業もしたことがない「素人」の息子にすべて任したのです。
こんな事業承継はあまり聞いたことないですね。

読みながらふと自分のことを思いました。
私も37歳で開業して、ほぼ22年目、58歳です。
実は28歳の息子がいます。
弁当屋さんと会計事務所ではまったく仕事の内容も違いますが
では今日から私は引退して、息子に全権を委任するなど
まったく考えられないのですね。


これは先代の考え方だったそうです。

「経営者は別に料理ができなくてもいいし、配達や営業が出来なくても構わない。
大事なのは仕事の流れを把握して、それぞれの部署に有能な人材を持ってくること。」

これが経営者だという信念です。
これ参考になりますね。
つまり、「経営者には下積みは必要ない」
と思っているからです。

さらに
「俺はお前を二代目にするために幼いころから仕込んできた。」
から大丈夫だと思っているのです。
事実幼いころから、食に対する教育もしてきたようですし、
銀行やマーケティング会社で働かせたのもそのためだったそうです。


ただ、主力の幹部社員は皆50代後半から60代です。
突然、20代の常務に従うように言われてもとまどうでしょう。

だからこそ「腹をくくって、社長はいないもの」と
初日に皆に宣言したのでしょうね。

野球で鍛えられた体力と根性で玉子屋を改革をしていくのですが、
やはりいろいろ軋轢があったと思うのですね。

それでも全権を委任して自由にやらせるのです。

 

「俺がゼロから作った会社だ。血のつながったお前が潰しても全然構わない」


そこまでいうのです。


でも大事なことは先代がまだまだ元気なことです。
人脈だってお客様だってもっているのです。
新しいトップに対する社内の不平不満を抑えることもできるし、
二代目を鍛える余力があるのです。

つまり、二代目が未熟で失敗しても、まだまだ十分フォローできるのですね。

 


「こんな事業承継の仕方があるのか・・・」

これは妙に納得しました・・・。




その4 会社はお客様のもの


この会社はスタンフォード大学MBAの教材にもなったと
冒頭で申し上げましたね。

税理士という職業柄、この事業承継の大成功物語として
MBAで取りあえられたと思ったのですね。
ところが全く違うのですね。

MBAの連中には事業承継など眼中にないのです。
なぜMBAに取り上げられたかが一番面白いと思いましたね。

先代は500食の弁当屋さんから事業を起こしました。
1万食、2万食の工場を作るたびに銀行から借入を
起こしていたそうです。

多いときで17億〜18億円の借金を抱えていたそうです。
年商で12億円くらいと解説してありましたから、
年商より借金の方が多いのですね。

これは正直多すぎます。
ただ中小企業の顧問税理士として感じることは、
年商より借金が多い会社はいくらでも存在するという
事実はあります・・・。

ただこの2代目がすごかったのです。

事業承継してほぼ20年で借金は完済したそうです。
売上もご紹介したとおり、弁当事業だけで70億円ですからね。

MBAの連中にはこれだけ業績が良くなって
売上も拡大しているのに、なぜチェーン展開しないのか、
なぜ上場を目指さないのか不思議なんだそうです。

私も元証券マンとしては、
「上場しましょう」
という営業が毎日のように間違いなくあると思うのですね。


しかしここがこの会社の題名の通り「すごい経営」なのですね。
お分かりになりますか?


私のブログの永遠のテーマをここでまた申しあげましょう。

「会社は誰のものか?」

ということなのですね。


上場公開するということは、

「株主のもの」
という考え方からくるのですね。

この玉子屋の経営方針は

「最高の弁当を最高の最高の配達サービスでお届けする」

という考え方です。
つまり、
「会社はお客様のものである」
という考え方からくるのです。


このあたりMBAの方々には理解できないのでしょうし、
一般的な中小企業の経営者にも理解不能かもしれません。
これも何度も書きますが多くの経営者は


「会社はオレのもの」・・・。





その5 原価率驚異の53%


ではその「顧客第一主義」のご紹介。
普通の弁当屋さんや一般的な飲食業では絶対真似できないことでしょう。


玉子屋の日替わり弁当は税込450円と申し上げましたね。
税理士らしく突っ込みますが、「税込」ですから、
「税抜」ではわずか416円ですね。
その材料の原価にいくらかけているかというと、
2017年でなんと53%!
238円50銭です。
これ純然たる食材費なのです。
これに容器代や物流費、人件費はかけていないのです。


玉子屋はリターナブルの容器に入れて
それをオフイスまで届けて、食後その容器を回収するという
サービスまでしていますから、それはかなりのコストに
なっているはずですね。
さらに大型の食洗機や炊飯器等の減価償却費まで入れたら
いったいどれくらいの利益が出ているのでしょうか。

正直原価率50%オーバーの弁当屋はありえないと思いますね。
一般的な弁当屋さんで、それこそ良心的なところで
40%〜42%だそうですから。


正直に書いてありましたが、
「6万食を超える大量の弁当を作っていれば
一食の原価をもっと安くすることは可能でしょう。」


ただ玉子屋は原価率に対する様々な工夫をしています。
驚いたのは、取引している食材業者を固定していないそうです。
日本全国の業者と取引しています。

何といっても一日に7万食もの食材を大量に仕入れますからね。
コロッケなんか一度に30万食も発注するから、
プライベートブランドとして作ってもらい値段も安くしてもらう
そうです。


さらに驚いたのは食材の在庫は持たないので、
毎日大量発注です。


一番のこだわりは米。
社長はもともとお米のコンサルタントまでやった方ですからね。
毎日7万食。
大量のご飯を炊いていますね。
コストカットするには一番しやすい部分ですが、
ここに拘るそうです。


安いコメにしたら、年間1億くらいはすぐ利益がアップするはずですから。
ここが玉子屋の「生命線」なのですね。
お米の仕入れには一番神経使うそうです。
もし仕入先が海外の安いコメにしたらすぐ分かる仕組みがあります。
なぜなら、「品種のDNA鑑定」までやっているのだからです。

ここまで書くと怒られそうですが、
「食材の仕入れ業者は性悪説」
なんだそうです・・・。


こここそが玉子屋の「顧客第一主義」。




その6 玉子屋流人材活用術


すごい経営まだまだ続きます。
MBAの教材として使われるケースは、「弁当販売のサプライチェーン
マネジメントの一例」として使われることもあれば、
「パフォーマンスをいかに引き出すかという人材活用の
ケーススタディ」として使われるのだそうです。


この人材活用についていろいろ学ぶべきことも多そうですね。
菅原社長が27歳でこの玉子屋を引き継いだ時に、
人事給与制度を大きく変えました。
ココがすごいですね。
並みの二代目にはできないと思います。

結果、長い間玉子屋で働いていた社員よりも、
入社1、2年の社員やアルバイトの方が高い給与や
ボーナスをもらうケースがでてきたそうです。
古参社員は社長と同い年くらいの50代や60代です。
並大抵の反発ではなかったと思いますから。

人材活用で面白いと思ったのは、大卒採用をやめたというお話です。
中小企業はどこでも人材難ですね。
急成長している玉子屋でも優秀な人材を確保できません。

大卒を採用するより、「悪ガキ」を好んで採用するのです。
「悪ガキ」なんて言葉は、先代から受け継がれた採用方針だそうです。

なぜ「悪ガキ」を好んで採用するのか?
先代は「養殖の魚と天然の魚」を例にこう説明しています。

「養殖の魚は生け簀の中で餌をもらって育つ。人間で言えば、
親や学校の先生が敷いたレールの上を走るタイプ。
決められたことは守るし、言われたことは上手にこなすが
人間自身が持っているエネルギーは少ない。」

「天然の魚は自ら餌を取る。人間で言えば自分で物事を決めてきたタイプ。
悪ガキはこれにあたる。そういう人間は心の中に大きなエネルギーを
持っている。」


「なるほど!」と思いませんか!
ビジネスには常に決まった答えはありません。
「悪ガキ」社員の方が、しっかりお客様に向き合おうとする傾向が
あるんだそうです。

これは中小企業の採用でも参考になるお話ですね。
ただそういう「悪ガキ」という原石を採用するかどうかの
重要なポイントは3つです。

「素直な心」
「感謝する気持ち」
「他人のせいにしないこと」

これも分かりますね。
何かの理由でドロップアウトして、たとえそんな「悪ガキ」となったとしても、
親や親戚あるいは周りの誰かから愛情を受けていることが、
この三つを判断する重要な要因だそうです。

素材のよい原石を入社させ育てるのです。
この「玉子屋人材活用術」をぜひ真似してください・・・。



その7 いつか玉子屋の弁当を食べたい


玉子屋のこと熱く語りすぎましたかね。
そろそろまとめましょうか。

どうですか?
玉子屋の弁当食べたくなりましたか?
でも誰でも注文ができないというところが、
玉子屋の最大の特長なのですね。


玉子屋の配達ルートの近辺にあるオフィスでなければ
ならないということと、一日10食以上発注できなければ
そもそも契約もできなのです。


「ウチの会社は玉子屋さんのルートに乗っているのだけど、
3年前は従業員が20人ほどしかいなくて注文出せなくて
悔しかった・・・。いつか玉子屋の弁当を食べられる会社にしたいと
思っていたんだ・・・」

本当にそう言われるそうです。
そうなんですね。
玉子屋の弁当を食べられる会社は、本当に良い会社なのです。

 

 

最後に税理士ブログらしく、仕出し弁当の税金について。


「玉子屋の弁当を会社負担で注文をしよう。
税金はどうなの?」

これはよくある相談なのですね。


でも一定額以上だと課税されるのです。
因みに国税庁の通達はこうです。


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(国税庁HP こちら

 


これ有名な通達なのですが、
要するに半分負担させて、月3500円以下ということなのですね。

玉子屋の仕出弁当は一食450円だから、
半分の225円は従業員に負担させても、
その場合は月15食までです。

この通達はたぶん私がサラリーマンだった30年以上も前から
あるのですね。
「働き方改革」が叫ばれる昨今。これこそ見直すべき税制だと
思うのですね。

私は毎日中野駅前のオフィスで働いています。
ランチは1000円以下は少ないですし、昼時はコンビニも
行列ができます。
コンビニの弁当だって500円以上はしますからね。

従業員だって、美味しい仕出し弁当が安く食べられたら
本当に嬉しいのではないでしょうか。
お財布にやさしいし、昼時無駄な行列に並ばなくて済みます。
きっと午後の作業効率も上がるのではないでしょうか。

読みながらふと思いましたが、この通達の3500円が仮に
5000円になったとしたら、ものすごいビジネスチャンスが
生まれてきますね・・・。

いろいろ思うことの多い本です。
でもいろいろ勉強させていただきました。
最後に


「いつか玉子屋の弁当を食べられる従業員の多い会計事務所にしたい」


と私も思います。

最後に掲載された巻末の「事業に失敗するコツ」
玉子屋の大事な経営方針らしいです。
参考になりますね。


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(頑張れ! 元甲子園球児の弁当屋さんシリーズ
 おしまい)

















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