その1 本社の重役の椅子を蹴ってまで


ありえない

またまたタイトルの非常に長い本ですね。
まあ、内容が実に分かりやすくてよいですが・・・。


しかし、「本当にありえない会社」ですね。
こういう会社が日本に存在するのですね。
先日の電通事件を説明するまでもなく、セクハラ・マタハラが
日々マスコミをにぎわす昨今だからこそ、こういう本が売れるのでしょう。


ではまずその「ありえない会社」のご説明。
株式会社日本レーザー。
社員数55名、年商40億円。
今回の主人公は近藤宣之(こんどうのぶゆき)社長。
1944年生まれ。


慶応大学工学部卒業後、電子顕微鏡のトップ企業である
日本電子株式会社入社。
28歳で異例の若さで労働組合執行委員長に推され
11年間1000名のリストラを敢行。
その後最年少で取締役就任。
取締役米国法人支配人、取締役国内営業担当をへて
50歳で、本社取締役のまま、この株式会社日本レーザーの社長に
なったのですね。


キャリアから見たら、日本電子の中ではいわゆる「第一選抜」。
とんな会社でも、労働組合委員長というのは将来の重役候補ですからね。
しかも、その後のキャリアからまさにエリート街道まっしぐらですから、
ほっておいてもこの方は日本電子の副社長くらいには
なったのでしょうね。

 

日本電子は資本金100億円、売上高1073億円(2016年3月期)
の東証一部上場企業です。

その小さな子会社の社長ですから、単なる人事異動で
「そこで実績上げて、本社にご栄転」
という筋書きを本人も本社も期待していたのでしょう・・・・。

 

しかし、その2年後に本社取締役を退任し、日本レーザーに専任。
その後23年間はまさにタイトル通り・・・。

 

なかなかすごいですね。
この本は「人を大切にする会社は伸びる」という
誰が見てもそう感じる「オチ」なのですが、
まず私が「突っ込み」たいところは、この近藤社長の本社の重役の椅子を
蹴ってまでこの子会社に掛けたところなのですね。


私の年齢からですが、最近私の同期や友人の方々の出向のお話を
よく聞きます。
50歳台となるとなかなか本社に居られないとか、居てもポストがないとか
いろいろあると思います。


以前書きましたが、私もかつて20台の若さで出向した経験があるからこそ、
出向者の気持ちもよく分かるのですね。

 

でもこの近藤社長のすごさにぜひ気が付いてください。
そして50歳代の方もぜひ読んで参考にしてみてください。
本社の重役になることだけが幸せなことでもないのではないでしょうか・・・。





その2 7度の崖っぷち乗り越え


このタイトルを見て経営者なら、たぶんこう思うでしょうね。

「私だって社員を大切にしたいさ。
でも稼がない社員がいたら会社も困るんだ。赤字になってももっと困るし・・・。」

まあこうでしょうね。


「吉田先生。あの人少し問題だから、そろそろ入れ替えたいのだけど・・・。」

これも、よくあるご相談ですね。


ただ根本的にこれはそもそも発想が間違いだと、
近藤社長は言っているのですね。

「社長が、社員を大切にする経営」

これこそが間違いなのです。
社長がこれをいくらそれを口にしても、内心としては、

「結局はおカネだ。おカネこそが企業価値であり、存続条件だ。」
だからこそ人を犠牲にしてもよい。」

と必ず考えているはずだからです。

・・・なかなかシンラツですね。


もっと分かりやすく解説していました。主語を置き換えるのです。

「社員が、会社から大切にされている経営」

「社員が、会社から大切にされているという実感が持てる経営」


会社から大事にされているという実感を社員が持てれば、
社員のやる気、モチベーションが上がりますね。
これこそが、会社を再建・成長させるのです。

つまり、

「人を大切にする経営の実践こそが、会社を再建・成長させる
たった一つの方法である」

 

なかなか近藤経営は、シンプルで分かりやすいですね。

 

近藤社長の経営哲学の源に、自身の経験則が生きています。

これこそが彼の「ネタ」なのでしょうけど、

人生で「7度の崖っぷち」を経験されているのです。


1度目 28歳で労組委員長に推され、29〜30歳で1000人のリストラに直面
2度目 28歳のとき、生後3日の双子が病死
3度目 米国法人リストラ中に二度の胃潰瘍と大腸がんに
4度目 本社の国内営業担当として幹部のリストラに直面
5度目 瀕死の子会社「日本レーザー」への出向。再建指令
6度目 社長就任直後に右腕の常務が部下と独立、人材と商権を同時喪失
7度目 親会社から独立する際、銀行が6億円の個人保証を要求


なかなかすごい経験の持ち主ですね。
この逆境をすべて跳ね返してきたのですから、
強烈な経営者です。


「社員を大切にする」という経営は、この逆境の中で特に
3度のリストラを経験したからこそ生まれたのでしょうね・・・。




その3 社員のモチベーションを上げる方法


社員のモチベーションをより高めるにはどうしたらよいのか?

これは参考になりますね。

「中小企業は社長の器以上に成長しない」

これも一つの真理かもしれませんが、

「社員の成長がなければ会社は成長しない」

これは当然だと思いますね。

では近藤社長はそのモチベーションを上げる方法二つを
公開しています。
これは簡単ですから、ぜひ真似してください。



その二つとは

「社長の笑顔」

「社長の声がけ」

です。
近藤社長は「笑顔は、社長の仕事」であり、「社長の能力」であると
考えているのですね。
そのため、30歳のときから、笑顔のトレーニングをしているそうです。

「良い報告は笑顔で聞く、トラブルなどの報告は、もっと笑顔で聞く。」

これは驚きですね。
なかなかこれは普通の中小企業の経営者は真似できそうもないですね。(失礼!)

さらに笑顔でいるところの良いところは、

「笑顔を欠かさないでいると、心も前向きになる。
何が起きてもうろたえることがなる。」そうです。

因みに社員にも、
「常に明るく笑顔で接している」ことを要求し、それも評価基準の
第一に挙げています。


「社長の声がけ」とは、社長と社員との「さりげない会話」、
「なにげない会話」ということになります。

でも、「そんなことやるのは当たり前だろ!」という経営者も
多いでしょう。
問題は、「元気?」とかというあいさつ程度ではないと
いうことなのですね。


これはレベルの高い会話力、コミュニケーション能力なのでしょう。
そのために日本レーザーがやっている「極秘ノウハウ」が
公開されていました。


10年以上前から

「今週の気づき」

というメール報告を、上司と担当役員に送るような
仕組みを取り入れています。
さらに昨年からは

「今週の頑張り」

というメールも。
このメールを社長は丹念に読むそうです。
もちろん、土日潰してまで・・・。

これらメールの内容を踏まえて「声がけ」です。
社長が期待していると感じればモチベーションあがりますね。

当たり前のようで、これはなかなかできそうもないですか・・・・。




その4 クレドとは


日本レーザーは「第一回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を
皮切りに、いろいろな賞を取っているそうです。

「こんな会社本当にあるのか!」
普通の経営者なら感動すらしてしまうでしょうね。

「人を大切にしながら利益をあげている」
からなのですね。


「どうしてこうなるのだろう?」

ぜひ自問自答しながら読んでください・・・。

 

では私が一番強調したい点は、日本レーザーの「クレド」ですね。


クレドというと思い出すのは、ホテルリッツカールトンの
「クレド」ですね。

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これは超有名です。
これは何度も読み返してください。
お客様への約束と、従業員に対しての約束。
これこそが「本家本元のクレド」なのですね。

近藤社長は、これをある意味真似しているのでしょう。

私が長年研究していたクレドとは京セラの稲盛さんのいう
「経営理念」でしたね。


稲盛経営学はずいぶん研究しましたからね。


「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に
人類、社会の進歩発展に貢献すること。」
こちら

 

日本レーザーのクレドは、独自のものですね。
それはまず

「社長第一主義であり、社員第一主義」

であることなのですね。


社長第一主義というのは、
「会社は社長で決まる」
「経営の結果は、社長の思いで決まる」
ということだそうです。


一方で、社員第一主義というのは


「会社は、社員の雇用と成長の機会を守るために存在している」
「会社は、社員を幸せにするために存在している」


ということです。
「社員を幸せに」というのは京セラと同じです。


さらに、「会社の存在意義は雇用すること。」

これを明言しています。


その雇用を守るために
「絶対に赤字にしない仕組み作り」
に注力しているのです・・・。


因みに日本レーザーのクレドは誰でも手に入ります。こちら

 

「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」

を受賞された理由がだんだん分かってきましたか・・・。





その5 日本レーザーのクレド



ではその日本レーザーの本物の「クレド」です。
じっくり読んでいただきたいから、
全文掲載します。
ネットで公開されているくらいですからアップしてもいいでしょう。

 


経営方針から

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会社を大きくすることが目的でない、働く人が満足と成功をえられること
というのがすごいですね。
ここまではっきり言うところはないでしょう。


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さらに「幸せって何?」ということを、まず最初に問うてます。
京セラの「物心両面の幸福の追求」という言葉は
何度も勉強しましたが、ではこの「幸せ」について
ここまで噛み砕いた「経営理念」はありません。
より具体的ですね。


特に1番目から3番目までですね。
会社の一員として、誰かに必要とされ、誰かを助け、誰かに
感謝されることこそが幸せなんだと・・・。
最後に「愛されること」というのは仕事とは関係お話なので
これが「なぜクレド?」という疑問は残りましたが・・・。
「では独身の方は幸せではないのか?」
と突っ込みたくなりますからね・・・・。



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会社は何のために存在するかというと、
「雇用すること」
「チャンス&チャレンジ」
「お蔭さま」


ここは、実に分かりやすいですね。


 

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最後に驚く方もいるかもしれませんね。
「社員の成長が会社の成長」
「お客様満足『CS』より社員満足『ES』が第一です」
なかなかこうは言えないのではないでしょうか。

「お客様第一主義」を取っている会社はあるでしょうし、
大多数を占めるのかもしれません。
こうハッキリ打ち出す会社も珍しいでしょう。


近藤社長は「クレドは働き方の契約」だと言っています。
つまり、経営者が社員に対して約束をしているのですね。

ただ大事なことは、一方で

「社員も経営に対して約束している」

のだそうです。

 


そのため近藤社長は、新入社員に対してまずこのクレド教育を
自ら行います。
時間をかけじっくりこの日本レーザーの経営理念を
叩き込むのですね。


さらに、毎日このクレドを唱和するようです。
なんと人事評価もこのクレドをもとに評価。
実に徹底しています。



いろいろ書きたいことはたくさんなるのですが、
著作権に触れそうなのでもうやめておきます。


日本レーザーがなぜ23年間黒字なのかお分かりになったでしょうか。

 


最後に、近藤流経営学をこの本で、かなり公開しています。


人事評価の「総合評価表」はそのまま使えそうですし、
巻末の付録問答集もなかなか参考になります。
経営者の方なら、迷った時にぜひお読みください。



(がんばれ! 人を大切にシリーズ おしまい)




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