その1 マックは終わってしまったのか


マクドナルド



先月モスバーガーを取り上げましたからね。
また題名をみて即「アマゾン衝動買い」をしてしまいました。


副題に「賞味期限切れのビジネスモデル」と書いてあったので、
「なぜ賞味期限切れまで売るようになったのかを暴いた本なのか・・・。」


そう思ったのですがね。



著者は法政大学の小川孔輔氏。マーケティング専門の教授ですね。
これまでマクドナルドを研究してこられた方です。
冒頭から「賞味期限切れの話は書きません・・・。」
これは裏切られました。
さすが専門家。よくある出版社のマーケティング戦略・・・。


ただマクドナルドはこのブログでも2回も取り上げていましたからね。こちら
私としても「責任がある」と思うのですね。
(ブログ責任?)


原田泳幸氏の経営手腕を礼賛した以上、
なぜこれほどまでマクドナルドが凋落してしまったのか、
やはり私もそれを確認して納得したかったのです。

 

週刊誌的な単なる興味本位で、「なぜマックが賞味期限切れを・・・」
というのではなく、やはりマクドナルドというビジネスモデルが
21世紀になってどうなっているのか。
もう20世紀モデルとして通用しないのか。


これも以前日本レストランシステムの大林会長がいうところの


「20世紀ブランドの終焉」

それをやはり確かめたかったのですね。こちら


そういう意味では、学者的な実データに基づく客観的な意見は、
参考になりました・・・。





その2 マックは終わってしまったのか



20世紀ブランド」のもっとも大成功といえる
「マクドナルドが本当に終焉してしまったのか?」
その観点からいろいろ考えてみました。


その「日本における20世紀の最大のブランド」=マクドナルドを
築き上げたのが藤田田氏(1926年〜2004年)。

Huzita


 

かつてご紹介した「原田本」にはまったく触れられていなかった人物です。
1971年(昭和46年)当時45歳だった藤田氏が銀座三越に1号店を
オープンさせました。
藤田氏が日本の外食産業に米国発の「セルフサービス方式」を
導入したのでしたね。
米国の食文化を日本に移植しようとしたまさに「ベンチャー」です。


ただここで重要なことは、藤田氏はきわめて「日本流」だったこと。
ここに藤田氏の経営手腕を認めざるを得ません。
第一に、米国ではフランチャイズシステム(FC)システムが主流だったのに
日本では以後35年間、直営店方式を主体として発展させました。


実は21世になり原田氏が藤田氏の後に社長になってからは、
この直営店方式からFCへと転換しています。
つまり、原田氏はFC方式を主体とする「米国経営方式への回帰作戦」を
とるのですね。
これについては後述しますが、藤田氏の「日本流経営」は参考になります。


まず、社員へのまさに日本流の「温情主義」を取り入れるのですね。
当然米国流の成果主義は採らないのです。
ビックリしたのは社員の給与水準の高さ。
1989年(昭和63年)、まさにバブル期ですが
25歳で398万円、30歳で536万円、35歳で813万円
賞与が年3回も出ていて、
もっとも驚いたのが「奥様ボーナス60万円」


「税法的にどうなるのだ!」と一応税理士らしい突っ込み・・・!?







その3 直営店戦略の本当の狙い



創業者藤田氏がなぜ直営店に拘ったのか?
ここがポイントですね。
藤田氏自身がFCオーナーへの厳しいハードルを設けていたのですね。
当時3つの条件がありました。


@ 10年以上のキャリアがあり、勤務成績が良好であること。
A マクドナルド・ビジネスをよく理解し、心身ともに良好であること。
B 配偶者とともに自ら率先して店舗運営にあたること。



実はAとBは前回ご紹介したモスフードにもある条件なのですね。
こちら
勉強したとおり、「夫婦二人でお店を力を合わせてやってください。」
という「家族的な」意味合いが強かったのですね。
実はあのセブンイレブンのFCにもこの条件があるそうです。



対照的に原田体制になってFC戦略を急速に強化していきます。
読んで分かったのですが、藤田体制の年功序列型の日本的経営では
人件費負担が耐えられないとも思ったのでしょうね。


言い方厳しいかもしれませんが、「人減らし」でFC化です。
2006年に全国で400人いたFCのオーナーのうち95%が
藤田体制を支えた元社員だったそうです・・・。



その原田氏の戦略が正しかったかどうか・・・。
結果的にマクドナルド本体の経営指標はよくなったのでしょう。


でも藤田氏がFCについて常々言っていたこと。


「販売の現場(店舗)のオペレーションを他人任せにし、
自分は収益管理するだけをするような人間では、
おいしさをお客様に伝えられない」


どうしてマクドナルドが以前と比べて美味しくなくなったか
だんだん分かってきましたか・・・。






その4 原田マジック



原田氏がとった「人減らしFC化戦略」の結果どうなったか?
さすが学者らしく数字で分析しています。


2007年から2010年のわずか3年の間に
従業員は4,997人から3,419人と、1,500人も減少しています。
そのほとんどが、店長やクルーなどの店舗要員。
多くの本部社員がFCに転籍しています。


2013年には従業員はさらに減って2,764人に・・・。
これだけ減ってしまって安全管理はしっかりできているのだろうか?
そう思いませんか・・・。



結果的に販管費も2007年の473億円から2010年には267億円へと
わずか3年で激減。このあたりが原田経営「数字のマジック」
これなら経営指標がよくなるわけですね。


でもさらに驚くべきことが書いてありました。
これこそ「原田マジック」
直営店をFCオーナーになる従業員に「高額で」売りつけていたのですね。
2008年の店舗売却益は43億3500万円も上がっています。
社員に「のれん分け」といいながら、高値で売りつけるのはどうなのでしょうか。
不採算の直営店を従業員に売りつけて数字をよくしていたのではないでしょうか。



実際にFCのオーナーとなった元社員も大変だったようです。
本国米国ではマックのFCで億万長者も多かったそうですが、
日本ではそれほど儲からないのですね。
やはり高額なのれん代(ロイヤリティー)のせいでしょうか。


その数年間で不採算のFC店舗が大量に誕生していきます。
でも原田経営の非常なところは通常10年のFC契約を
成績の悪い店舗だと再契約しないのですね。


さらに2010年に原田社長は大英断します。
直営店278店、FC店208店の一斉閉鎖です。
これでは元従業員はたまったものではないですね。


マックでなぜ賞味期限切れや異物混入問題が起こったのか、
どんな背景であったのか、
これもだんだん分かっってきましたか・・・。






その5 米国本社の圧力



この本を読んで分かったことがもう一つ。
この「人減らしFC化戦略」は原田氏の思い付きではなく、
米国本社からの圧力であったこと。


先日日本マクドナルドの株主総会があったから、いろいろ報道されましたね。
今やマックの大株主は海外のファンドなのですね。
つまり「株価をいかに引き上げるか。」が
原田氏のような「雇われ経営者」の至上命令。


2007年に米国本社はFC化戦略のを担当する副社長を
送り込みます。これがディブ・ホフマン氏。
その背景として、米国本社でもともと低かった直営比率(26%)を
さらに下げようとしたのですね。
理由は、直営店の売却により収益性を高め、
株式を所有するヘッジファンドが株価を高く吊り上げ、
売り抜けようとしていたから・・・。


さらにホフマン氏は強烈に日本マクドナルドにプレッシャーをかけます。
それは「売上高至上主義から利益重視への転換」


こういうことが前述した「原田マジック」へつながってきたのでしょうか。
従業員をつぎつぎにFCへ転籍させ、
藤田時代からやってきた古参のFCまで切っていきます・・・。


FCオーナーの悲鳴が聞こえますか。


以前はマックの店頭にあった「スマイル 0円」というメニューを
覚えていますか。
あれもいつの間にかなくなってしまいましたね。


FCオーナー自身が青色吐息で
「スマイル」すらなくなってしまったのですから・・・。


マックがなぜ美味しくなくなったか? ズバリ書きます。


「カネの味がするようになってきたから・・・」




その6 マックは誰のものか?




どうやらまた筆を滑らしたようです・・・。

「ブログで批判的なことは書かない」という私なりのルールを

守るためこのあたりでまとめます。

 

「会社は誰のものか?」

 

という私がよく掲げる「ライフワークのテーマ」があります。

 

原田氏のような「プロ経営者」にとっては、

株主から、つまりファンドから指名された以上、

「会社は株主のもの」という法律的な意味合いが強くなりますね。

ファンドから選ばれた経営者として、当然でしょうけど株価を引き上げることが至上命題。

株式の過半を持つ米国本社の意向は絶対なのですね・・・。

 

一方で

「会社は従業員のもの」という考え方もあります。

従業員を大切にしている会社なら、社内で不正が起きにくいように思います。

今回不正が起きたのも社内的なモラルの欠如が原因かもしれません。

よく引き合いに出す「稲盛経営学」には

「従業員の物心両面の幸福の追求」を経営理念として大事にするのは

はそんな考え方からくるのではないでしょうか。


また一方で

「会社はお客様のもの」と考える経営者も多いですね。

 

私の子供が小学生であった頃、

毎週末に必ず並んでもマックバーバーを買っていました。

子供はマックが大好きですからね。

子供の笑顔を想像すると自分でも笑顔になります。

 

「マクドナルドは子供のもの」

 

そういったら極端な考えなのでしょうか。

 

この本の副題は、「原田氏が陥った戦略のわな」です。

本当に、誰のための戦略だったのでしょうか・・・。

 

ただこれ以上、マックを批判するようなことは絶対にしません。

私もマックファンの一員でもあるからです。

 

ファンとして最後に申しあげます。

マクドナルドの看板に

「スマイル 0円」

をもう一度掲示してほしいと心から思います。

 

(ガンバレ!マクドナルドシリーズ おしまい)

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