その1 定年って生前葬・・・



終わった人






たまには小説も取り上げましょう。
内館牧子さんの小説ですね。


「定年って生前葬だな・・・」


こんな書き出しで始まる「定年」を題材にした作品。
主人公は東大法学部を卒業し、メガバンクに入行。
成績も優秀でエリート街道まっしぐら。
最年少で支店長となり、本店の企画部長に。
役員一歩手前までいったものの、最後の最後に敗れ、
49歳で社員30人の子会社へ移動。
そのまま専務取締役という肩書で定年を迎えるというお話。


「なんだかな〜」


という思いがわきあがりますが、50歳代の方にはぜひ読んでおく
本ではないでしょうか。


サラリーマンの悲哀を感じる小説ですね。
私の同期の世代だとちょうど55歳くらい。


サラリーマンの同級生から、出向だとか、転籍というお話を
よく聞くようになりました。


きっとそういう方々はこの本を読んで感じるものは多いのでしょう。


ついサラリーマン的な見方をしてしまいますが、
私のような脱サラ組としては、ちょっと違う思いで読みました。
やはり税理士としては、中高年の起業開業という観点から
いろいろ考えてしまいました。


こういう手の本は


「人生って何だろう」

「幸せって何だろう」


つい考えてしまいますからね。
しばらくお付き合いください・・・。





その2 定年後にやることがない・・・





表紙の絵のように、定年を迎えた日はどんな思いで
むかえるのだろう・・・
身につまされる方も多いでしょう。

この描写が妙にシュールですね。
花束を渡されて、部下から
「たまには遊びに来てください」
とミエミエの社交辞令を言われ拍手で職場を後にする。


ただ、この主人公のように、最後の出勤日にはハイヤーで
家まで送ってくれるような会社は少ないでしょうね。


家ではささやかなお祝い会。
「長い間お務めご苦労様でした・・・」
と型どおりの労いの言葉。


床につくと
「さてこれからどうして生きていこうか」
とモンモンと悩みます・・・


でもこの主人公は、退職するまで年収1300万、
個人資産もなんと1億円という設定。


「それだけあれば悠々自適だろ」


これはツッコミたくなりますね。
それでも、その日から地獄の日々。


まったくやる事がない。
家でも邪魔者扱い。


「今日はお昼いるの?」


奥様から毎日聞かれる・・・


「何だかな・・」


生前葬という意味が分かってきましたか・・・






その3 51歳で転籍・・・




小説にいろいろ解説を加えていくと、それこそ「ネタバレ」なので
もうこれ以上内容は書きません。


「終わった人」

という実にシビアなタイトルにいろいろ思うのですね。
主人公は、出世競争に敗れ、子会社に51歳で転籍します。
この瞬間に自分はもう「終わった人」なんだと悟ります。

本当にそうなのでしょうか。
それでも、それから12年間、設定では年収1300万で
優雅な暮らしを続けます。


読んでいて驚いたのですが、「自腹で」飲食店にいったことない、
つまり、接待費使い放題・・・。
何だかバブルの頃のようなお話ですね。
バブルの頃、確かにすべて「官費で」銀座赤坂六本木・・・。
しかし今どき、こんな優雅なサラリーマン生活なんてあるのでしょうか・・・。


まあ、いろいろ突っ込みたいですけど、
なぜ思い切って転職を考えなかったのでしょうか。
社員30人の子会社の役員で終わることに
なぜ疑問を感じなかったのでしょうか・・・。

確かに小説ですからね。
現実問題として、50歳くらいで仮に年収1300万の方が、
中小企業に転職しても、多分年収は大幅に下がるのでしょうね。
たぶん割り切って、「パンのためにのみ」生きるのでしょう・・・。


しかし、別の観点から言いたいのですが、
中小企業で社長の片腕になるような参謀役が本当に
不足しています。

定年退職後ではなく、この年代で次のチャレンジをしてほしい。
中小企業ならいくらでも活躍の場があると思うのですね。


「終わった人」

と悟っても「カネで」満足するなら別ですが・・。


でも、この主人公のように「心は満たされないまま」
人生をまさに「終わる」

それでよいのでしょうか・・・。






その4 体験談Aさん




空想の物語にこれ以上突っ込みをいれません。
自分自身の体験談を熱く語りましょう。


この本を読んでまっさきに思いだしたのが、
私が28歳で野村證券の子会社に出向していた頃の上司Aさん。


そのAさんは、私が憧れた都内進学校、有名国立大学を卒業し、
都市銀行に入行。得意の語学力を生かして海外勤務までされた方。
まさに絵にかいたようなエリートバンカー。
それが、この本の主人公のように50歳で証券会社の子会社に出向。
2年後に転籍してしまうのですから、境遇はまったくこの主人公と同じ。


そんなかつてのエリートバンカーが、肩書だけは「部長」だけど、
部下が私一人だけというまさに「終わった人」。


自分自身が憧れた学校を卒業し、憧れた海外勤務まで経験した方が
目の前にいました。これは正直驚きでした・・・。


その方と、1週間に5回は!?飲んだでしょうか・・・。
バブル全盛期。予算は使いきれないくらいありました!(内緒)
必ず3軒目になると、


「オレはこんなはずではなかったんだ・・・」


必ず愚痴が始まりました・・・・。

 


でも貴重な経験だったと今は思うのですね。


「サラリーマンはこういうことか・・・」


なんとなく30才くらいで悟ってしまったのですね・・・。


しかし、今だから言えますが、大企業の子会社の役員は
すべて「終わった人」。
本体で部長になれなかった、
役員になれなかった方々の巣窟・・。


「オレはまだ終わった人でないぞ・・・
20年後、30年後絶対後悔したくない・・・」


そんな思いが結果的に私自身の脱サラにつながるのですが、
この思いは経験しないと、なかなか分からないでしょうね。
50歳でようやく気がついても、遅すぎるとも思うのですね。

 

自分の生き方に多大な影響を与えていただいたAさん。
私自身の大恩人です。
しかし残念ながら若くして、数年前にがんで他界されました・・・。





その5 体験談Bさん




もう一人思い出したのがBさん。


この本の主人公と同じメガバンク出身。


50歳で銀行から、介護関係の会社に出向します。
その会社は創業者がやり手で急成長している会社。
2代目の30代の後継者にちょうどバトンタッチしようとする
タイミング。
すぐ転籍し、その会社の役員に就任。


創業者の意図を組み、2代目のよき補佐役となり
会社の業績を伸ばします。


Bさんと出会ったのが、数年前。
60歳手間でしたが精力的に活動されていました。


仕事ももちろん、趣味の家庭菜園がかなり本格的で
農家顔負けの広大な農園を持っていました。
土日はその手入れのおかげで顔は真っ黒。
出身が鹿児島であるせいか、酒はめっぽう強く、
カラオケはプロ級。
本当に魅力的な方でした。


先日ある会で、久しぶりにBさんと遭遇。
60歳を超えた今も、もちろん現役の役員として大活躍。
相変わらず顔は真っ黒でした・・・。


ついでに言うと、その際も酒も、カラオケも完敗・・・。


すばらしい生き方だと私は思います。
確かに高収入のメガバンクから中小企業に移ることで
収入は半減したのかもしれません。


でも「やりがい」と「生きがい」をそこに見つけたのです・・・。

 

「人生ってなんだろう・・・」


この本のおかげで真面目に思うようになりました・・・・。





(がんばれ! 定年シリーズ おしまい)







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