その1  私なりのこの本の読み方


ご存知直木賞受賞作。

下町ロケット.jpg

受賞後すぐ読んでから
「この夏一押し」
とお勧めしようと思っていたら、「夢をかなえるゼイ」を書きすぎて
夏が終わってしまいました・・・。
とにかく掛け値なく面白い本です。


野田総理が、この「下町ロケット」を例に上げ
「夢と情熱と矜持を持った大田区の中小企業は今こそ日本の誇り」
と持ち上げましたし、また現在テレビドラマ化されてもいるので
ご存知の方も多いでしょう。

今まで「経営に役立つ本」として、「小説」は
あえて取り上げていなかったのですね。
経営者自ら筆を下ろした本こそ「経営者本」としてお勧めしてきた
のですが、今回は違います。
まずなぜこの本を取り上げるのかを、ご説明しましょう。
外の書評家の方々とは読み方が違うかもしれませんが・・・。


ロケットの部品を制作する会社が、ロケットの打ち上げに失敗する
場面からこの物語は始まります。
それを契機に、大手取引先の受注ストップや特許権侵害など、
急に経営困難に陥ります。
すると、今までのメインバンクが急に手のひら返すようになるのです。

「銀行ってこうなのか!」

妙に納得するのですね。

「おたくとウチとの取引はおおかた20年にもなるのですよ。支店長!」

よくあるセリフですね。顧問税理士としてよく聞きます。
でも冷たく支店長がこういうですね。

「融資というものはそんなものじゃない。ビジネスですよ。」 

実は作者の池井戸潤氏は元三菱銀行の行員だったのです。
本当に銀行と中小企業との関係を書かせたら、『天下一品』ですね。


現在この景気の悪化に伴い、中小企業は、あの「緊急対策緊急融資」で、
借入するところが急増しています。
それどころか、毎日のように銀行の担当者が
「先生。どこか貸せるところないですか?」
営業に来ます。銀行にとっては保証協会が保証してくれるので
取りっぱぐれのない「ノンリスク」ですからね。

でも銀行とは、いずれ「手のひら返したように」、
こうなることもあるのですよ。
そういう意味で、経営者の方々にぜひ読んでいただきたい本です。

その理由から、少しご紹介していきましょう。




その2  仕事は二階建ての家


「大震災後の不景気で打ちひしがれている中小企業に
希望と勇気を与える本。」

確かにそう思います。
読んでいるとファイトが沸いてきます。


ただ、また私独自の突っ込み。
「大田区の中小企業、町工場」というイメージではないと思うのですね。
売上100億。利益は書いていないのですが、借入金が20億もある
設定ですから、かなりよい「中小企業」です。

利益がどれくらいか推定しましょう。
利益と借入金のバランスはご存知ですか?
よく借入の申込みをする際に銀行から言われることです。

「税引後利益の10倍以内が借入金の上限」

これは銀行の「断り文句」として結構使われますので、
覚えていた方がいいですね。

「儲けから税金を引いた残りの資金で10年あれば借金を完済できる」

これは財務健全化のためにも大事なことなのですね。
20億円も借入できるということは、税引後利益が2億円として
税前利益4億円。
売上100億もあって、利益が4億もあるなら、もう中小企業は立派に卒業ですね。
しかも、独自の技術力もあるし、多分証券会社が「上場公開しましょう!」と
いってくるレベルなのでしょうね。


また、この経営者が実に魅力的ですね。
もともと宇宙飛行士になりたかったという研究者でしたから、
いつ製品化するか、そしていつ収益化するか分からない研究開発費に
多額の資金を費やす・・・。
ここにベンチャー企業としての夢を見るのですね。


この本の一番好きな箇所。
必ずテレビドラマでも映画化されたら出てくる名場面。


「仕事っていうのは、二階建ての家みたいものだと思う。
一階部分は、飯を食うためだ。必要な資金を稼ぎ、生活していくために働く。
だけど、それだけでは窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならないと思う。
それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食えないし、飯だけ食えても
夢がなければつまらない・・・・。」




その3  企業と顧問の関係


またこの本の「私独自の」一番面白いところ。
会社が特許権侵害で巨額の損害賠償で訴えられていまします。
その法廷闘争が実にリアルで面白いです。

社長は、まず先代から付き合いのある顧問弁護士に相談にいきます。
ところが、高齢の顧問弁護士は残念ながら、取引先と契約書を締結する際に
相談する程度の浅いお付き合い。当然技術的な争いのことはまったく分からない。
専門的な話なので、模型まで持参して詳しく説明しようとすると、
説明もろくに聞かないで
「答弁書を書くから、分かりやすく文章にまとめてあとで送ってくれませんか。
メールでいいから・・・」

私も税理士業務の経験から、弁護士さんを何十人もみてきましたが、
こういう先生は実に多いですね。
不親切といったら失礼ですが、割り切って答弁書を書くことだけが仕事のような・・・。
当然第一回の口頭弁論で、専門的な論戦で早くも不利な状況になってしまう・・・。

そこでこの社長が偉いと思ったのはすぐ顧問弁護士を変えたことなのですね。
しかも、その弁護士は知財関係で国内トップクラスの凄腕弁護士。
その弁護士がその損害賠償に対して敢然と立ち向かっていく・・・。
この場面が実にカッコイイです。


この作者は、銀行時代に多くの取引先の顧問弁護士を見てきたのでしょうか。
弁護士の特性をよく知っていますね。
確かに優秀な弁護士も多いことは多いのですが、やはりそれぞれが得意分野と
いったものがあるのですね。


それを「永年のお付き合いだから・・・」
なんて甘いことを言ってたら、このご時勢トンでもない事になってしまうのですね。

同じサムライ業の身として、このあたり非常に興味深く読みました。
この凄腕の弁護士は、設定として、
「技術系の大学を出た後、しばらくメーカーに勤務しながら弁理士になり、
その後法律を勉強して司法試験を突破した」
そんな経歴です。

こういう経歴の方が弁護士になったら、こういう場面のように活躍する場が
たくさんあるのでしょうね。


では税理士ではどうでしょうか。
なかなかこういう特殊な経歴の税理士は少ないかもしれません。

でも、先日来アップしていた「夢をかなえるゼイ」でも述べたつもりですが
そんな得意分野を持った税理士もこれからは活躍する場がたくさん
でてくるのではないでしょうか。
だからこそ、そういう方々がぜひこの業界をめざしと欲しいと願っているのです。

「企業と顧問弁護士や顧問税理士との関係。」
この本で真面目に考えさせられたのは私だけでしょうか・・・。




その4  池井戸作品のすばらしさ


池井戸潤さんを知ったのは友人からのこんなメールです。

「吉田さん。ブログのネタ真似されていますよ!」

永年のブログファンの方ならご存知かもしれませんが?
かつて一澤帆布の相続問題を取り上げたのですね。
カバンの真実
結構力入れてアップしたのですが、あまりアクセス伸びなかった・・・。

その一澤帆布問題を題材に、池井戸さんの短編小説があります。
カバン屋の相続.jpg

「カバン屋の相続」

なんかいかにもパクラレたような題名ですね。(失礼!)
ストーリーはまったく違いますが、かなりあの事件をモチーフに
しています。
私のブログネタを多少真似されたかな?(光栄なことですが・・)
本当は私自身そんな「相続小説」書いてみたかったのですね。
でも初めて池井戸潤さんの小説を読んでみて感動しました。

特に先日ご紹介したように「銀行ネタ」が見事ですね。
さすが元三菱銀行の行員でもあります。
それからですね。池井戸さんの本に急にハマッたのは。
この夏彼の本ばかり読んでいました。

個人的に
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」
これが最高に面白かったですね。

銀行の内部がたくみに描かれて秀逸です。
「金融庁の検査はこういうように行われるのか!」
「銀行の融資はこういう手順で行われるのか!」

本当に良く分かります。
そういう意味で「経営にかなり役立つ本」です。

ただ池井戸作品を読めば読むほど、銀行の実態が分かりすぎるようになり、
銀行の「大学生の就職ランキング」はどんどん落ちていくでしょう!?


さらに池井戸さんは1963年生まれです。
私より少し若いのですね。
慶應の文学部を出て三菱銀行に勤めたものの
32歳で脱サラします。

なんだ私と同じような経歴だったのですね。
きっと銀行マンをやりながら、
「いつか小説を書いてみたい・・・」
そんな夢を持っていたのでしょうね。
それでついに脱サラしてしまったのです。

今度自叙伝をぜひ書いて欲しいですね。
タイトルは

「夢をかなえるモン(文)」


(池井戸シリーズ おしまい)

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