その1 誰でも信じられないタクシー会社


中央タクシー



消費税増税対策第二弾!
「値上げできない弱気の経営者」にまたこの本を捧げます。


ずいぶん前のことになりますが、
カンブリア宮殿で紹介されていたタクシー会社のお話です。


「こんなタクシー会社が世の中にあるのか?」


司会の村上龍さんが驚きの表情で紹介していましたね。
事実信じられないお話ばかりでした。


「サービスって何だろう?」


本気で考えさせられる本です。

 



著者は宇都宮恒久氏。1947年長野県生まれ。
大学を中退後、家業の「宇都宮乗用自動車商会」に入社します。
つまり、タクシー会社の2代目なのですね。


でも25歳の時に長野タクシーの再建のため父親とともに移ります。
その後28歳で「中央タクシー」を立ち上げます。


その後「業界の常識」と戦いながら、
理想のタクシー会社に育て上げていったのです。
現在は、もちろん県下NO.1のタクシー会社です。

 

その経営理念が一言でいうと、


「お客様が先、利益は後」


簡単なようで難しい言葉です。


それを理解していただくために、いくつかの感動的なエピソードが
綴られています。
これ読むと
「ホントかよ〜!」
皆突っ込むでしょうね。


例えば、あるご老人を、成田までタクシーで運んだ時、
交通渋滞で、フライトに間に合いそうもなくなったそうです。
運転手が機転を利かせて、最寄りのJRまで連れてって
あげたのですが、それでもその老人が不安そうだったので、
運転手はタクシーを駅に駐車し、電車に一緒に乗っていってあげた・・・。


同様に、成田まで大雪の日にタクシーで6人を送り届けた際に
やはり交通渋滞でフライトに間に合わなくなってしまったとき、
タクシー代をもらわないどころか、全員を成田で一番高級なホテルに泊めて、
翌日の全員のフライト費用まで会社が全額負担した・・・・。


ある寒い日に両親と小さな子供を乗せた時、子供があまりにも寒そう服装を
していたので、運転手があとから厚手の靴下を買ってあげて、
その子に届けてあげた・・・。


まさに「ホントかよ〜」
でもこんな会社が世の中にあるのです・・・。




その2 MKタクシーを真似る



タクシーの運転手の方の悪口を書くつもりはないのですが、
今まで乗ったタクシーでそんな感動何て想像もつきませんね。
東京では無愛想な運転手がほとんどなので慣れてしまったというか・・・。


「タクシーはサービス業」という言葉すら新鮮に映ります・・・。


でも今から40年ほども前のタクシー業界は
まさに「荒くれ者の集団」だったようです。
サービスのさの字もまったくないような・・・。


それでも28歳の宇都宮社長は、理想のタクシー会社を目指します。
このあたり読んでいて非常に面白い所。
会社起業したばかりの方には参考になるお話です。
宇都宮社長はさてどうしたのでしょうか?


ここで京都の「MKタクシー」をご存知でしょうか。
これもよくマスコミに登場するタクシー会社です。


今から40年間でもMKタクシーでは
こんなパネルが車内で貼ってあったのです。


『お客様へお願いします。
MKタクシーの四つの挨拶を一つでもしなかった乗務員には
運賃を払わないでください。

1 ご乗車ありがとうございます。
2 自己紹介
3 どちらへ参りましょうか
4 お忘れ物はございませんか』


これを知った宇都宮社長は、
MKタクシーの青木オーナーに「押し掛け弟子入り」
してしまいます。すごいですね。この行動力。若さの特権ですね。


そのときわずか10台の弱小タクシー会社。

「MKタクシーを目指す」


という社長の号令で一時的に盛り上がったものの、
結局2、3年で自己紹介しすらしなくなっていった・・・。


そうなのですね。
タクシーの運転手というのは、
タクシーの中は誰も監視されないのですね。


自由気ままにやれるのが、タクシー運転手の特権でもあるのですね。
社長は悩みます。


ここで社長の経営哲学。
「人は十回言っても百回言ってもダメ。
千回言われてもやっと『そうだな』くらいに感じる。
行動に起こすのは1万回。」


1万回繰り返し、お客様第一主義を従業員に徹底させていきます・・・。
これが中央タクシーの


『1万回の反復連打』





その3 未経験者のみ採用


中央タクシーが「日本一のタクシー会社」になるまでの
20年の軌跡、これは本当に経営に参考になると思うのです。


荒くれ者の巣窟だった「弱小タクシー会社」を
どうやって変身させたかと思いますか?


実はタクシーの運転手は、どこでも人員不足です。
よってどこでも経験者は優遇されます。
でも、そういう経験者に向かって
「サービスをよくしよう!」
と言ってもダメだと宇都宮社長は気が付いたのですね。


それで「未経験者のみ採用」に踏み切ったのです。
これは当時のタクシー業界としては画期的なことです。
まさに「常識を破る非常識」


宇都宮社長は未経験者の方に、社長の理想とするサービスを
『1万回の反復連打』で、徹底させていったのです。


基本サービスはたったの3つ。
最初にご紹介したMKタクシーとは少し違います。


@客の乗降のときにドアを開ける「ドアサービス」
A客が乗った時に「私は乗務員の○○です」と名乗る自己紹介
B雨の日に乗り降りの際に濡れないようにする「傘サービス」


これだけなのですが、驚きませんか?
たったこの3つをやってくれるタクシー会社は
私は今まで半世紀も(!?)タクシーに乗ってきましたが
一度もお目にかかったことがありません。


多分他のタクシー会社の経験者であったら、
「バカバカしくて」できないのかもしれません。


ただ感心したのは、この3つが「マニュアル」という訳では
ないのですね。


マニュアル化されたものが存在しないのです。
最初に例示した感動するお話を、すべてマニュアルから
生まれたものではないのです。


「寒そうな子供が乗ってきたら、靴下を買ってあげよう」
なんてマニュアルある訳ないですからね。


中央タクシー最大のマニュアルは理念です。


「お客様主義」
「お客様が先 利益は後」

お分りになりますか・・・?





その4 叱るより誉める


宇都宮社長の考える「理想のタクシー会社」にするため、
どれだけ苦労されたか。
この会社は「人材教育のお手本」だと思います。
まさに「企業は人なり」を実感します。


しかし、いうは簡単ですが、実際は「いばらの道」だったようです。
ご紹介した「私は乗務員の○○です」ということも
恥ずかしがってなかなか浸透しなかった。


さらに乗務員に「シートベルトをしよう」ということさえ、
まったく言うこと聞いてくれなった。
やはり乗務員としては「恥ずかしい」という気持ちがあったのでしょう。


何より
「お客様主義」
という基本理念を浸透させることに非常に苦労したのですね。



実際どうやったかお分かりになりますか?
多くの会社で参考にしてほしい「従業員教育」ですね。


中央タクシーの教員方針は「褒めること」なんだそうです。


例えば、タクシーの乗務員が、
朝礼で上司から怒鳴られ、点呼でも怒鳴られたら、
それから運転したら気分が重いですね。


乗務員は、怒鳴られた直後、にこやかに「お客様にサービス」する
でしょうか?
これに社長は気が付いたのですね。
「欠勤するな」「遅刻するな」「事故を起こすな」のような
「○○するな」の叱り方は、社員のやる気を引き出せないからなのです。


お客さんから感謝の手紙や、電話をもらった際には
徹底して褒めるのだそうです。
それだけでなく、「ありがとうカード」として、実際に
感謝されたことを紙に書いて、社内で掲示するのだそうです。
社員も誇らしいし、周りもそうしようと思いますね。
結果的によりお客さんに親切にしますよね。
非常によい方法だと思いませんか?


このお話は妙に納得しました。
私も昔営業マンだった頃、上司によく怒られました・・・。
思えば褒められたことは一度もありません。
「コンチクショウ!」と思いながら営業していました。
どんな気持ちで、どんな顔でお客さんと接していたか。
今思うと恥ずかしくなります・・・・。




その5 失敗して成長する


いろいろ試行錯誤されて「理想のタクシー会社」を
目指した宇都宮社長は、当初10年くらい本当にうまくいかなかった・・・。


ではここで毎回恒例の「学ぶべき失敗の法則」
宇都宮社長は創業12年目、まだ若干40歳の時に大失敗をします。


あるコンサルタントの言うことを聞き、「成果主義」を
取り入れたのですね。
つまり、目標、ノルマを乗務員に課したのです。


でも考えてみてください。
ノルマを追われた乗務員が、たとえば駅前のタクシープールに
1時間も待ったのち、乗せたお客さんがワンメーターの短距離だったら・・・。


多分、舌打ちしてから乗せるか、それこそ乗車拒否しないでしょうか。


さらには、ノルマに追われていたら、絶対荒っぽい運手にもなりますし、
乗客に親切にしているヒマなんてないですよね・・・。


社長の理想とまったく正反対の事をしてしまったのです。
でもこの本に書いてありましたが、社長は真夜中まで残って
夜勤明けの乗務員に味噌汁を振る舞っていた・・・・。


まったく「空回りしている社長さん」だったのですね。
その後3年間で退職者が続出したそうです・・・・。


結局それ以来、乗務員にノルマを課すことはやめたのだそうです。
乗務員に「尻叩いて」運転させたら、
理想のタクシー会社なんてとてもできないと悟ったのでしょう。



でも経営者としては、ここは「陥りやすいワナ」だと思います。
営業の会社なら、どこでも営業マンにノルマを課すのは
当然でしょうから。
昨日のお話で思い出しましたが、私も「ノルマ証券」でしたから・・・(内緒)


だからこそ社員をしかったりせず、褒め称え、
なかなか辞めないような会社にしたのです。
そうやって従業員を大事にし、理想のサービスを追い求めた・・・。


これはなかなか参考になるお話だと思うのです。
先に利益を追求しがちな経営者には耳が痛い話でしょう。


「お客様が先 利益は後」

が意味深い言葉だと感じたのは、正直なお話です。




その6 特需に眼もくれず



平成10年に、日の丸飛行隊が大活躍した
「長野オリンピック」が開催されました。


世界各国からマスコミや選手応援団が来るのですから、
タクシー会社としては「特需」だと想像がつきますよね。


タクシーの一台あたりの売上は1日で5万ほど。
それがマスコミ各社が半日で7万円でいくらでも
借り切ってくれるのですから、笑いが止まらないですよね。


でもここで、宇都宮社長が取った作戦。
これは参考になりますよ。
まさに「お客様が先 利益は後」


特需に眼もくれなかったのですね。
オリンピックに関係のない、地元の老人が病院に
行くときに困りますよね。
タクシー会社はどこも予約で一杯で
タクシーがないのですから。


そういうおじいさんや、おばあさんに
「お客様主義」で接して、新規開拓していったのです。


オリンピックなんてたかだ1カ月なのですね。
オリンピック終われば、マスコミはじめ潮が引くように
サッといなくなるのです。


今でも言われるそうです。
「オリンピックの時にきてくれたのは中央タクシーだけだったね・・・」
と。


あと6年で東京オリンピックですね。
特需に眼をくらんではいけないということなのですね。


よく聞く話ですが
飲食店でマスコミに紹介されたとたんに、
客が殺到して、今までの常連客が離れていってしまい、
その一時的なブームが終わったとたんに閑古鳥に・・・。

 

「お客様が先 利益は後」

だんだん分かってきましたか。





その7 豪華本社からプレハブ本社へ


中央タクシーが飛躍した参考になるお話。
普通の経営者の方にとっては大変耳の痛いお話かもしれませんが・・・。


宇都宮社長は、創業11年目に、長野市の市街地に
なんと1億円もかけて本社ビルを作っていました。
体育館があり、個室のシャワー室を設け、
さらには居心地のよい社長室も・・・。


タクシー会社は法令により、タクシーの1台あたり
7平方メートルも駐車場用地を確保しなければならないのですね。
そのための賃借料がそれまで年間2200万円もかかっていました。
このときは社長もまだまだ40歳そこそこ。
ちょっと成功すると社長さんに陥りがちな「見栄」だったと
本人も正直に書いてありました・・・・。


長野オリンピックの直後に、3期連続の赤字になったことが
あったそうです。
多分中央タクシー設立以来の最大のピンチの時ですね。


メインバンクからはリストラの指示さえあったそうです。
さて、宇都宮社長はどうしたのでしょうか?


この宇都宮社長のすごい所です。
なんと本社ビルを叩き売ったのですね。
長野駅から車で30分もかかる保科温泉のそばの山奥に
引越ししてしまいます。
プレハブの本社に建て替えです。
年間2200万円もかかっていた賃借料もなんと100万円に。


一番恐れていた社員の離脱もわずか1人だったそうです。
不思議なものですね。
1億円もかけて立派な福利厚生の整った本社ビルを作っても
社員の入れ替わりが多かったのに、山奥のプレハブに移っても
誰も辞めようとしない。


ピンチの時も社員の一人の首を切らなかった
社長の社員を大切に思う気持ちが伝わったのでしょうね。


しかも現在の中央タクシーは「離職率ゼロ」
社員が中央タクシーに勤めていることに
誇りをもっているのです。


そんなタクシー会社だからこそ、「日本一のサービス」が
出来ているのだと本当に思うのです・・・。





その8 誉めるためのモニター制度



熱く語ってきた「日本一のサービス」シリーズを
そろそろまとめましょうか。


なぜ中央タクシーがこれだけのサービスになったか。
これはこの本を読んで私なりに気が付いたのですね。
簡単に言えば「社員を褒め称える制度」を
作り上げたのです。


最初解説しましたが、タククシーという職業は
「誰にも監視されないのですね」


そこが問題なのです。
一旦乗務員がタクシーのハンドルを握ったら、
会社としてはまったく管理ができないのですね。
なかなかこういう職業は少ないのでしょう。



それで宇都宮社長はどうしたのでしょうか?


「独自のモニター制度」を実施しているのです。
これはどういうことかというと、
あらかじめ、お客さんに用紙を配布しておいて
乗ったときの感想を寄せてもらうシステムなのだそうです。
毎年1200〜1300人もモニターになっています。
当然運転手は誰がモニターかは知りません。


中央タクシーに勤め出した「新米の運転手」なら
緊張するでしょうね。
乗せた誰がそういう方か分からないから。


でもこれは大事な点なのですが、
実は監視するためでもないのですね。
乗客に親切にすると、そのアンケートを社内で発表して
「褒めること」が目的なのですから。


これを読んだ瞬間、
ローソンの「ミステリーショッパー制度」(MS制度)を
思い出しました。こちら
あれはローソンの社員がお客さんになりすまして、
店での接客態度をチェックする仕組みなのでしたね。
お店の評価の基礎点にもなるコンビニ経営者にとっても
厳しいお話でしたね。


私なりの感想ですが、MS制度は「褒める制度」ではないのですね。
ハッキリいうと「叱る制度」なのです。
この差はお分かりになりますか?
タクシー車内に監視カメラを搭載しても
これは「叱る制度」なのですね。


「叱られないようにするサービス」と
「褒められようとするサービス」


どちらが優れたサービスでしょうか?
これこそが私なりに見つけた
「日本一のサービス」の生まれる理由なのです・・・。


(がんばれ 日本一のタクシー会社シリーズ おしまい)

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