その1 最近の流行「デザイン思考」


直観と論理

最近よく、「デザイン経営」とか「デザイン思考」という言葉を
聞きます。


「経営にデザイン?」
「会社を経営するにはデザイン的センスが必要なの?
「デザイン的に考える力??・・・」
正直何だか分かりませんでした。

 

連休中、あえてこの難題に向き合ってみました。
この本は発売して1カ月で10万部も売れているベストセラーです。
何かヒントがあるはずと、つい飛びついてみたのです。

こういう本と格闘することも必要なのですね。
税理士になって21年、毎日税金のことばかり考えていると、
思考法がこり固まってしまうからです。
おかげで思考法のよい「ストレッチ」ができました。

 

まず冒頭の疑問に対して、素直に説明しています。

「デザイン思考ですか・・・でも私絵心ないんですよね。」
「僕、図工はいつも2でしたから・・・。」

何度も言われたそうです。
これはまず誤解です。
「日本語の『デザイン』という単語には、特に美術的なものとの
結びつきがつよいため誤解を生んでいる」からなのです。

 

この著者は佐宗邦威氏。
この方学歴は、開成高校、東京大学法学部卒。
でも美術大学出身ではないのですね。
デザイナー=美大出身 という発想からまず間違いのようです・・・。

本人曰く、
「極端な左脳型だった」
「開成高校や東京大学法学部の同級生も、一定の前提のもとで答えを出したり、
物事を解決するのが得意なタイプが多かった」

「10代20代の頃は、世の中には正解があると信じていた」

まあきっとそうなのでしょうね。
デザイナーとは芸術家であり、「右脳型」なはずだからです。
その典型的左脳型の佐宗氏は、東大を出て、
P&D社のマーケティング部でデザイナーとなります。

ここで「論理とデータに基づいたビジネスの基本」を
叩き込まれます。
データに基づき論理的に正解を出す訓練ですね。
毎日、「調査・分析」、「企画書作成」、「会議」です。

それでも優秀だったのでしょう。
「ファブリーズ」や「レノア」などのヒット商品を生み出します。
でも彼言わせれば、「戦略の荒野」
よほど厳しかったのでしょう。

正直に書いてありました。
「結局うつで1年間休職した・・・。」




その2 PDCAサイクル


東大法学部卒の新進気鋭のデザイナーがなぜうつに
なってしまったかはあとで解説するとして、佐宗氏の主張する
思考法をまずご紹介します。

この本のベースとなる考え方4つです。
@ カイゼン思考
A 戦略思考
B デザイン思考
C ビジョン思考

難しいですかね。
4番目のCビジョン思考とは本の代目の通り、
「直感と論理をつなぐ思考法」。この本のまさにゴールですね。

ではまず最初の@カイゼン思考。
これは計画→実行→評価→改善
つまりPDCAサイクルのことですね。
このPDCAの本は何度か出てきたので、すでにご紹介したと思います。
ここ数年の流行でしたからね。

これは左脳型の方がもっとも得意とするところでしたね。
東大卒流の受験勉強で例えるなら、
過去の出題パターンをできるだけたくさん脳内に蓄積して、
正解を導き出すための時間を最小化する。
間違えたところはしっかり復習して、次回以降、同じ失敗を
しないための材料として生かす・・・。
こういう「カイゼン」のサイクルが高いスコアを導き出すのです。

でも佐宗氏に言わせたら、「カイゼンの農地」。

いままでは確かにそれでも良かったのです。
これからその「当たり前」とされていたカイゼン思考にも
危機が訪れているというのです。
AIやロボットによって置き換えられつつあるということと、
何より、「正解がない時代になった」ということ。

何となくでも分かりますか?
今までの戦略では追いつきえないほど、世界の変動が激しく、
不確実で複雑であいまいになってきたからなのです。

それでもその「農地」に安住している人も依然として大多数なのです。
KPI(重要業績評価目標)は「絶対善」とされるので、
受験勉強で勝ち抜いてきた人には住みやすいからなのです。


ここでいうKPIとは、もっと分かりやすく言えば、
受験勉強であれば、偏差値や大学のランク。
就職活動で言えば、会社の規模や初任給。
ビジネスで言えば市場シェアとか新規獲得数。上司からの人事評価・・・。

 

でも現実として出てくるカイゼン思考の大問題。

「新しい商品・サービスを生み出そうとする雰囲気が
職場のなかにない・・・」
「ゴーサインが出るのは、最大公約数的に社内合意が取れる
無難な企画ばかり・・・」
「ルールに従うのが得意な人材ばかりが育ち、前提そのものを
覆す思考ができない・・・」




その3 カイゼン思考から戦略思考へ


「カイゼンの農地」で安穏とした暮していると
思考方法も「罠」に陥ってしまうようです。
これはなかなか厳しい指摘ですね。
PDCAサイクルに対する強烈な批判です。

でも一方で
「こんな農地でこんな収穫作業ばかりしていいのだろうか・・」
そう思い出す人がやはり出てきます。
PDCAサイクルやリスク管理に守られた「農地」を
抜け出し、一定のリスクを取りながら狩猟・採集や
陣取りに明け暮れるような世界に飛び出していくのです。
向かう先は、これが佐宗氏のいう「戦略の荒野」

@ カイゼン思考 から A戦略思考 へ
ですね。

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戦略の思考を絵にかくとこういうことなんだそうです。
この本は冒頭こういう絵が大々的に出てきます。

最初、「何だろう・・・??」
と眺めていたのですが、読んでくるとだんだん分かってきます。
正直この本で一番おもしろいところ。
さすがデザイナーですね。
自分の主張することを一枚の絵に表現することができるのですね。


戦略思考はこの絵のように、まさに戦いの連続。
陣取り合戦を日々していくのですね。
戦略思考の本質は、
「自分たちが勝てる目標を設定し、資源を集中配分すること」

正しい目標を設定するには
「モレなくダブリがないように」
課題を切り分けること。
これはマッキンゼーの得意とするところらしいです。

実は佐宗氏自身、所属していたP&Gこそ、
この「戦略の荒野」を生き抜いてきた外資系企業。
何人もここから優秀なデザイナーを輩出し、
「P&Gマフィア」とまで言われるくらい
業界では有名らしいです。

この「荒野」の中で競争相手たちにまだ気づかれていない分野はないか、
ライバルたちをうまく出し抜いて領土を奪う道はないか、
そのための「目標」を絞り込みながら、資本投下の「選択と集中」を
繰り返すのです・・・。

なかなか大変ですね。
データー重視の戦略は圧倒的な地位を気付くのですが、
最大の欠点は「個人が疲弊していまうこと」
これにより佐宗氏は、書いたように病んで結局退職してしまうのですね。

会社を辞め、向かった先はアメリカ。
シカゴにあるイリノイ工科大学デザイン・メッソドの修士課程に留学。
ここで本格的に「デザイン思考」を学んだのです・・・・。




その4 ビジョン思考・・・???


次の「ビジョン思考」につながっていくのですが、
正直難しいのです。
「どうしてだろう?」
考えながら読み進めてみると、いままでご説明した
「カイゼン思考」や「戦略思考」はいままでビジネスで
当たり前のように行われてきたので想像しやすいのですね。

PDCAサイクルなどはいくらでも本はあるし、
「戦略思考」とはまさにビジネスの戦いそのもの。
また得意の昔話で恐縮ですが、30年前のかつて私が野村證券に
在籍していた当時はまさに「戦略の荒野」です。
証券ビジネスにおいてダントツのシェアを誇っていた
当時の野村證券は「選択と集中」を繰り返していましたからね。
ここで証券ビジネスを持ち出しても仕方がないとは思いますが
マーケティングの世界でもある意味同じなのでしょうね。
それである程度想像はつくのです。
でもそれは30年も前のアナログの時代。
AIだのロボットが存在しない太古の昔なのですね。

佐宗氏が学んだP&Gの戦略は、「論理に裏打ちされた戦略」でした。
佐宗氏の言葉を借りれば「他人モードの戦略」ということらしいのです。
平成までははその「他人モードの戦略」は通じていたのです。
ところが令和の新時代は、いたるところで機能不全を
起こしているらしいのです。

この令和の新時代では「自分モードの戦略」を打ち出すべきであると・・・。

でもここで「デザイン思考」や「ビジョン思考」を持ち出すと
また自分自身も脳が拒否反応を起こしてしまうのですね。
読みながら、如何に自分は左脳型の人間であることを気付かされました。

冒頭説明したように
「デザイン思考ですか・・・でも私絵心ないんですよね。」
「僕、図工はいつも2でしたから・・・。」

申し訳ないですが、「デザイン」という言葉が悪いのですね・・・。

 

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佐宗氏がまた分かりやすいイラストで表現していました。

「新しい地下世界」への穴に一度落ちたらよいと・・・・。

そうすることにより「自分らしい思考法を取り戻す」と・・・。
よけい分からなくなってきましたか・・・。





その5 自分モードを取り戻す


ではそのビジョン思考を身に着けるためにはどうしたらよいのか。
分かりやすく書いてありました。

平成までの「昔の思考法」を辞めて
新しい「令和の思考法」を身に着けるために
皆がこれをやったらよいのですね。

まず
A 今すぐ一冊のノートを買うこと(それもA6・無地の漏れスキンノート)
Aいますぐカレンダーに毎朝15分、ノートを書くためだけの予定を入れること

これこそが自分らしい思考法を取り戻すために
「穴に一度落ちること」なのです。

ノートを買って何をするかというと、
「そのとき感じていること」
をノートに書くのです。

しかも大事なことは、毎日決まった時間、決まったページを書いて、
しかもこれを人に見せないこと。
必ず手書きということもポイントです。

これこそが「感情アウトプット」の練習。
でもこれは大事なことですが、過去に起きたことは書かないということは
日記ではないのですね。


自分が嫌だと思ったこと、うれしかったこと、どうにも気になっていること、
ありのままに書くのです。

でもなかなかこれは書けないでしょうね。
私なんかも毎日ブログ書いていますが、
実は正直書くと、ありのままに書けないのですね。
悪口や嫉妬はご法度ですから。
やはり「他人の目」を気にしてしまうからなのです。
私のような「ブロガー」にはキビシイ作業でしょう。

佐宗氏はこれに対して「ズバリ」。
「自らの感情にアクセスするための『筋肉』が鈍りきっている」

こういう人は
「思ったことをありのままに吐出すリハビリ」だと
思ってやらなければいけないらしいです。

でもこれを一カ月やってみると、
「周囲の目を気にしている『鎧』が取れてきて
『むき出しの自分』が見えてくる」
そうです・・・。

これこそが「自分モード」。
私もこれから毎日「裏ブログ」でもやってみようかと思います。
もちろん、誰にも見せません・・・・!?



その6 妄想することすら忘れていないか・・


「自分モード」分かってきましたか?

しかし、この本は「他人モード」に慣れ切ってしまった方には
受け入れないものなのでしょうね。

「自らの感情」にアクセスすることを忘れてしまっているから
なのですね。

「すべては妄想からはじまる」

と書かれていますが、現代人は妄想することすらしなくなって
しまうからですね。

「自分モードで妄想しよう!」

と言われても、「妄想なんて無駄だ・・・」と否定してしまう方も
多いのでしょう。
理由は、
「僕たちは大人になる過程で『実現可能性の壁』を学び、
発想力にあらかじめストップを書けるように習慣づけられているから」
なんだそうです。

でもこれもある意味訓練、リハビリなのでしょう。訓練の一つとして


「子ども時代の夢は何でしたか?」

「青春時代、何に、誰にあこがれていましたか?」

「もし3年間自由な時間ができたら、何をしたいですか?」

「もし100億円の投資を得られるとしたら何をしたいですか?」

こんな質問に真面目に答えてノートに手書きしてみてください。

 

まだまだこの思考法をご紹介したいのですが、正直難しいです。

でも、この「ビジョン思考」を経営に取り入れている経営者も増えているそうです。
事実、この佐宗氏は、企業のイノベーション支援や
戦略デザインコンサルティングをしているそうです。

最後に本音を書きます。
しかし、この本はずいぶん苦労しました。
それだけ私の頭の発想法が「論理とデータに基づいた古い発想法」
だったからです。

税理士として毎日、
「これは税法的にどうなのか?」
条文や判例など基づき考える癖がついてしまっているからなのです。
他人の目を気にしながらブログを毎日書いているのも
その理由の一つでしょうか。

妄想することすら忘れてしまっている自分に
本当に気が付いたのです。

30代の頃、税理士になりたての頃、いろいろ夢がありました。
その一つとして

「税理士として証券化ビジネスをやってやろう!」

それくらいの夢があったのですね。(そのお話はいつか書きます)
何だか仕事に追われ、生活に追われて、夢みたり妄想することを
まったく忘れてしまっている自分がいました。

「自分モード」にスイッチを入れることも絶対必要なのでしょう。


(がんばれ!令和新時代の発想法シリーズ おしまい)




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