その1 ブラック企業アナリストの書いた本



ワタミの失敗



たまには失敗ネタ。
何度も書きますが、失敗を勉強するのもいいものですよ。
いつもご紹介する経営者本は、「勝てば官軍 自慢話」
が多いですからね。


参考にはなるかもしれませんが、なかなかマネできなことばかり。
失敗した経営者に関しては、簡単にマネできます・・・!?


「だからダメなのか・・・」
「今の世の中はやはりそうなのか・・・」


改めて思い直しますからね。
ではご存知ワタミのお話。


著者新田龍氏。の肩書が面白い。
「ブラック企業アナリスト」
いままで数百社のブラック企業を取り上げてきて、当然このワタミを
取り上げたらしい。


しかしワタミくらいジェットコースターのようか経営も珍しいでしょうね。
わずか3年前まで47都道府県すべてに出店し、直営店が500店舗以上。


それがこのブラック騒動で、2015年末に390店舗まで激減。
それまでほぼ無借金経営の優良企業が、債務超過寸前に。
正直倒産の危機まであったそうです。


そこで介護事業を売却してなんとかしのいだものの、
2015年3月期は2期連続の赤字。

 

「ブラック?ウチは関係ない・・・」


そう言わず、経営者の方もあらためて考えてみてください・・・。






その2 なぜワタミが失敗したか


ではなぜワタミが失敗したのか?


有名な事件ですが、2008年に入社した女性社員が、
わずか2か月後の6月に社宅近くのマンションで自殺する事件が
発生しまた。
当初は事故として扱われ、ワタミが責任を問われることはなかったのです。


このあたりはワタミの初動が完全に遅れたのですね。
当初は「労務管理とは無関係の、個人的な事情による事故」
として会社は押し切ろうとしたのです。


でも遺族から労災申請を受けます。
「労働者災害補償保険審査官」から審査が行われたのです。
その結果、分かったことは、


「朝5時までの勤務が1週間連続し、最長で7日間の深夜勤務を含む
長時間労働により、1か月の残業が約140時間、自殺直前である
4月から6月までの2か月間の残業は計約227時間にも及んでいた。
さらに休日にも、午前7時からの早朝研修会やボランティア活動、
レポート執筆・・・」


すごいですね。結果的に精神障害を起こして、自殺に追い込まれた
断定されたのです。


さらに、これを叩いたのはあの週刊誌「文春」です。
「ブラック企業」として徹底攻撃・・・。
企業理念集から


「365日24時間死ぬまで働け」


ということを見つけ出し、強烈なパッシング・・・。


これでワタミは本当に揺らいでしまったのです・・・。


因みにこの事件に関して、いまもワタミのHPのトップページに
掲載されています・・・。こちら






その3 365時間24時間死ぬまで働け



昨日アップした「労務訴訟に関する和解成立のお知らせ」は
なかなか勉強になります。


まず冒頭に亡くなった方の所属会社名が書いてあります。
「ワタミフードサービス」なのですね。連結子会社です。
この本にはあまり触れられていませんが、有価証券報告書を見ると
実は昨年度吸収合併されて消滅しています。


いろいろ批判されたのでしょうね。
「子会社の事故だから関係ない」
という態度でも取ったのでしょうか。
ワタミで働く人は皆子会社でしかも低賃金で働かせる構造だったのでしょうか?


有価証券報告書は正直です。
吸収合併前と後では社員の年収平均が違います。
平成27年3月期 平均給与481万円
平成28年3月期 平均給与356万円
たぶん賃金体系が異なっていたのでしょうね・・・。


それと経営者の方には勉強していただきたいのですが、
お知らせの中ほどに、
「36協定の定めに従い・・・時間外労働時間(一か月45時間以内)削減に努める・・・」

とあるのですね。
36協定位はぜひ経営者の方には知っておいていただきたいのですね。


ただ、この本で衝撃的なことが書いてあったのですが、


「2016年5月16日に創業以来となる労働組合が結成」


となっていました。
なんと組合もなかったのですね。


経営に対して文句を言えない仕組みだったのですね・・・。
ワタミの経営理念の中に、

「社員は家族であり同志」という言葉があるそうです。


「よって労使の関係は存在しない・・・・。」

そういう幹部がいたそうですが、
ハッキリ書きますが、今の時代にはこれは通じないのですね。





その4 社員は家族であるは通じない

なぜワタミは失敗したのか?
本当に考えさせられましたね。


私に言わせたら「経営理念の失敗」といえるのではないでしょうか。

「社員は家族である」

この経営理念が、確かにうまく社員に伝われば理想なのですね。
報酬や福利厚生を手厚くすれば不満は出ないのでしょうけど、
「家族のために一生懸命働くのは当然だ!」
とばかりに過重労働させたり、プライベートに干渉したりと・・・。

結局体のいい強要になってしまうのですね。
やはり、理念とは大きくかい離しています・・・。

 

「家族のようなものだから労働組合なんか必要ない」

そう創業者である渡辺氏は言ってきたのでしょう。

 

この経営理念に関しては今までいろいろ私も熱く語ってきました。
会社経営でもっとも重要であると、稲盛さんの「アメーバ経営」から
学びましたね。

ワタミはそれを失敗したのです。

 

渡邉氏の経営理念に


「人間が働くのはお金を儲けるのではなく人間性を高めるためである」


これがあるそうです。
でも確かに、裏返しですが


「給料を払わないけど死ぬほど働け」


と言っているようなものですからね。

 

真意をきちんと伝えることがアメーバ経営では大事なのでしたね。
ワタミでは結局この言葉が独り歩きして

「365日間24時間死ぬまで働け」

こうなってしまったのです・・・・。




その5 なぜこれだけ叩かれたのか



新入社員の女性が一人自殺したからといって
ここまで叩かれるか・・・・。


なんとなくこの本はワタミを擁護しているようにも取れるのですね。
事実過労死または過労自殺が発生し労災認定がされた会社は
2014年度には、過労死245件、過労自殺は210件も
あるといっているのですね。
結構あるものなのですね。



ワタミがこれだけ叩かれたのは、やはりカリスマ創業者の
渡邉美樹氏がいたからでしょう。これは間違いなくそう思います。


渡邉氏は一代で外食・介護大手のワタミグループを築き上げた
立志伝中の人物ですね。
2009年にワタミ社長を退任し、2011年に東京都知事選挙に出馬、
2013年に参議院議員比例区で自民党から出馬して当選しています。


その選挙運動のためでしょうか。


「発展途上国の子供達への教育支援活動を熱心に行う篤志家」


というイメージも強かったと思うのですね。
テレビのコメンテータとしてもよく出ていましたから。


私も一度渡邉氏の講演会をお付き合いで行ったことがあるのですが、
確かに、当時は聖人君子ような素晴らしいことをいっていました・・・。


そのギャップにマスコミも叩きやすかったのでしょう。
政治家という公人になったので、「政治批判の材料に利用された」
ともいっています。


一般人について、マスコミがひどい表現で記事にすれば、
「名誉棄損罪」になるらしいですが、彼は公人だから
ならないそうですね。
これは勉強になりました。
つまり、この政治家がその公職に適している方かどうかを
判断する材料として、何を書いてもいいらしいのですね。
「公共の利害に関する場合の特例」といいうのです。


そのおかげで叩きに叩かれ、ついに会社が傾いてしまったのです・・・。






その6 長時間労働は悪である

ワタミの悪口を書きつづけているようなので
そろそろまとめましょう。


安倍政権はこのブログを読んでいるかどうかわkりませんが、
(まず絶対ない・・・)急に「働き方改革」ということを言い出しましたね。


「長時間労働は悪である・・・・」


こんな風潮になってきているのです。
私の世代だと、「24時間働けますか」とか「セブンイレブン」
とか滅私奉公は美徳のように言われたのですね。
私も(某)野村證券では、毎朝7時に出社して、深夜10時11時はざらでした。
「セブンイレブン」どころか「セブンワン」も・・・。
それでいて残業は8時にあがったことにして、つまり毎日サービス残業・・・。
いまさらこんなこと書いても仕方がないですが、
それに文句を言っている人も少なかったと思うのです。


でももう時代が変わっているのですね。
「昔はこうだった」とか「オレの頃は深夜まで文句を言わず・・・」
「朝までよく仕事したものだ・・・」
そんなカルチャーを今の若者に押し付けてはいけないのすね・・・。


ワタミに限らず、飲食店やサービス業など、長時間労働を
強いられている業種は多いのです。

 

でも安倍政権はこの働き方を改革しようとしているのですね。
その前提として労働力人口が減ってきて、それを補うには女性や高齢者に
もっと職を与えなければならないのです。
それに合わせて税制も変わっていくのでしょう。


経営者もよく考えて経営理念を掲げなければいけないのですね。


「365日24時間死ぬまで働け」


なんて絶対言ってはいけないのです。


36協定など考えずに、つまり社員を残業させようなんて考えてもいけないのです。


「一日16時間楽しむために8時間だけしっかり働こう」


こういう時代だと心して経営することなのです!


(ガンバレ ワタミシリーズ おしまい)

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