その1 東京大学医学部卒の新進気鋭の作家!
なかなかショッキングなタイトルですね。
中山祐次郎先生の医療小説にはまっている
私としてもつい、アマゾンポチ買い。
本当は中山祐次郎先生の「泣くな研修医シリーズ」
の新刊を取り上げようかと思ったのですが
こっちの方が面白かったですね。
作者は午鳥志季(ごしましき)氏。
いかにもペンネームでしょうね。
本名は明らかにしていませんが、
1993年(平成5年)神奈川県生まれ。
東京大学医学部卒。
都内の急性期病院で診療と研究に従事する。
ということですから、日本で最難関の
あの東京大学理科三類に合格された医者。
まだ32歳くらいの超若手ですね。
診療と研究に従事しながら、
精力的に執筆しているそうです。
主人公は開業したばかりの29歳の若手医師。
祖父の経営していた新宿の内科医院を
2年前にその祖父が亡くなったので継いだ
設定。
地区50年の木造二階建て。
そのクリニックも戦後間もないころに
曽祖父が開業したもの。
医者の家系で、子供も医者になってその医院を
承継する。これよくあるお話ですね。
内装はリノベしてエコーや電子カルテを新調。
初期投資は1800万円。
固定費は毎月180万円。
でも粗利は毎月100万円ほど・・・。
つまり毎月赤字・・・。
まさに
「このクリニックはつぶれます」
結構リアルな設定ですし、本当にありそうですね。
でもそもそも医者が20台で開業できるの?
というのも何となく疑問に思いますね。
中山祐次郎先生の医療本をむさぼり読んでいる私としても
そもそも医学部は卒業まで6年かかりますね。
ストレートに医学部に合格してそれから6年だと
もう24歳くらいですね。
それから研修医として初期研修が2年。
それから専門医を目指す後期研修。
これが最低でも3年。
だから最低でも研修医は5年ですね。
最短で29歳。
当然医学部に入るのに浪人した・・・。
医師免許取得に不合格だったら・・・。
30オーバーが当たり前でしょうね。
事実この主人公は医局を飛び出した設定。
なかなか医者のリアルが分かって面白い・・・。
その2 開業医の実態
開業したばかりの若き医師。
ほぼ患者さんもいない状況。
新宿の街頭でビラ配りをするシーン。
「今どきのクリニックの新規開業はそこまでやるの?」
とは思いましたね。
私も27年前によほど駅前でビラ配りでも
やろうかと思ったくらい。
でも思い出しましたが、税理士会という「陰湿な組織」?
からいじめられるのですね。
「そんな下品なことはやめなさい」と・・・。
ホームページ広告も出始めで、
「ホームページは取り締まるべきだ」
まともな議論が繰り返されていましたから。
税理士業界のお話はさておき、
この新米医者は、コンサルタントを雇ってまで
経営を立て直すのですね。
「開業医にたった一つ必要な条件。
それは医療を金儲けと割り切れること」
こういうコンサルタントです。
「レセプトが通るように患者の病名を
でっちあげてください」
この考え方を徹底させるのですね。
「なんだかな・・・」
とは思いますが・・・。
でもコンサルタントのいうことを聞き経営を
立て直しだすと、業界からの邪魔。
「ろくに医師会に挨拶にもこない若手が、
医療圏(シマ)を食い荒らして困る・・・
開業医の『寝技』を味わってもらいましょう」
事実「モンスター・ペイシェント患者」を
送り込まれます。
要するに「カスハラ」するようなクレーム患者
ですね。
それを指示したのが、地元医師会の新宿支部長。
なかなかこの新宿支部長の悪党ぶりにも腹立ちます。
「本当にこんな支部長いるのだろうか・・・」
隣の業界ながら心配になりました・・・。
その3 医療機関の赤字の理由!
書きたいことはたくさんあるのですが。
やはりこれは医療小説です。
ネタばれになっては申し訳ないのでまとめましょう。
面白いオチがありますが、それは読んでからのお楽しみ。
この作者は「都内の急性期病院で診療と研究に従事する。」
という身ですね。
開業医の実態を暴いているような小説です。
せっかく東大医学部に入った方ですからね。
東大病院という最高のステータスを得られるのでしょうから。
ゆくゆくは東大医学部の教授の身分も・・。
でもそれまでは、夜中まで働いて、論文執筆や
学会発表。
その後
「何十年という医局への奉公を終えて教授の
お墨付きを得たあと、ようやく大学を出ることを
許されるってわけ」
文中、大学病院で教授に強烈にしごかれ
結果的に過労死する医者も登場してきます。
でも
大学では、市中では到底見ることのできない
貴重な症例に出会え、多くの患者を診ることによって
医者としては成長するのでしょう。
その身分を捨てることによって、開業医という
違うステータス。
開業医の実態を暴いています。
「開業医は、医者の中の落ちこぼれって言われる」
ちょっと言い過ぎかとは思います。
「一介の開業医だと、複雑な疾患を治療する機会は
なかなかないだろう」
「開業医の仕事は単調と揶揄される。
大半の患者は高血圧と脂質異常症と風邪・胃腸炎。
決まった薬を出し続けるだけ。
手術も研究も論文もない。」
確かにそうなのかもしれないですね。
中山祐次郎さんの描く
「急性期病院で粉骨砕身して医学に身を捧げる生き方」
は実に素晴らしいと本当に思います。
きっと開業医は金儲けが下手なのでしょう。
2024年の調査で
「一般病院の約6割。診療所の約4割が赤字」
何だそうです。
医者を金儲けの手段と考えていない先生が
多いからこそそうなのかもしれません。
一方で、開業医の先生の中でも業務の傍ら必死になって
勉強されている先生も多いはずです。
「AIによる画像診断」
も急拡大しているそうですから、
研修や研究をされていかなければならないはずです。
つまり、開業医でも
粉骨砕身して医学に身を捧げる方もいらっしゃると
信じております。
いろいろ考えさせられる医療小説でした。
ちなみにこのシリーズの続きもう出ています。
私は一晩で一気に読んでしまいました。
これもなかなか面白いです・・・
(オチも読んでからのお楽しみ)
(がんばれ! 粉骨砕身して医学に身を捧げる先生 シリーズ おしまい)



























