その1 たった一人で銀行残高5万円から
これ以上時の首相をけなしても
面白いことはなさそうですから
得意の書評に移りましょう・・・。
起業法を勉強するにはもってこいの
本ですね。
「こんな企業のやり方があるのか・・・」
本当にそう思うでしょう。
今回の主人公は「金谷元気氏」
1984年生まれですから
現在41歳。
写真は会社のHPから拝借しましたが
現在はかなり「ふくよか」になって
しまいましたが!?
高卒後はJリーガーを目指して
関西リーグでプレーしたという方。
プロのスポーツマンだったのですね。
ただ残念ながらプロにはなれず引退。
その後上場企業で2年営業してから
2009年、わずか24歳で起業。
アキッパという会社で
何を始めたかというと
「駐車場予約サービス」
2024年現在累計会員登録数400万人。
使っていない駐車場を貸したい駐車場の
オーナーをWeb上で借りたい人を探す
サービス。
実に面白いビジネスですね。
確かにこれを思いついたことだけでも
すごいのですが、実際にはこれをビジネス化
するには大変な紆余曲折があったわけです。
冒頭の箇所でもう感動します。
「たった一人で銀行残高5万円で
立ち上げた
アナログまみれの零細企業が、
エンジニアが社内に一人もいない
状態から
会員登録数400万人の『アキッパ』
を運営するテックカンパニーに変貌した」
その2 最初は営業代行の会社から
金谷社長は高卒でサッカーのプロを
目指していたのですね。
22歳で断念。2年の営業経験の後
2009年(平成21年)に起業します。
合同会社ギャラクシーエージェンシー。
資本金5万円。
大阪平野区にある家賃4万円台の
ワンルームマンション。
合同会社にした理由は、
「株式会社にすると20万円かかるから」
「3000円ほどで一箱分の名刺を
つくり、電話回線とインターネット回線を
つないで起業しました・・・」
なんだかうれしくなりますね。
さて何を始めたと思いますか?
ここは参考になりますね。
「祖業とした営業代行でした」
「在庫を持たずに翌月お金が入ってくる
キャッシュフローのいいビジネス」
なのです。
ネットで
「営業代理店募集 大阪」
で検索してみると
ちょうどその頃はキャリア(通信会社)が
よく代理店募集をしていたそうです。
すぐにソフトバンクの営業代理店を始めるのです。
当然できたばっかりの会社ですから
ソフトバンクと直接取引ができる訳がない。
「三次営業代理店」
そこからひたすら営業です。
「御社の社員さんに、法人向けの携帯電話を
持たせませんか?
980円でお互い通話無料です。
通信費数千円を毎月手当で出すより安くなりますよ」
実に簡単なセールストークですね。
これで1日4〜5件の法人を回り契約を
取っていきます。
土日祝日はショッピングモールで
風船を配りながら、個人向けに
インターネット回線の勧誘。
ジャパネットたかたの創業者
高田明さんのものまねで
売っていたそうですから
これもうれしくなりますね。
もうこのブログで何度も
取り上げましたからね。
高卒だろうが、金は無かろうが
起業はできるのです。
因みにそのソフトバンクも後から
駐車場予約ビジネスに参入して
くるのですから・・・。
その3 苦悩の3年間。でも・・・
起業はしてみたもののすぐ大成功する
ことは絶対にありません。
この手の創業物語で注意しなければならない点は
ソコです。
(2006年創業の リブセンス村上社長)
「勝てば官軍」物語のようになりがちです。
つまり、成功体験を自慢するだけのお話。
ここは注意深く読んでほしいのですね。
起業して3年くらいは当たり前ですが
誰でも苦労します。
よく言うのですが
「ビジネスモデルが確立するまで」が
一番大変なのです。
特にベンチャーという業種は当然ですね。
とりあえず
「求人」と「インターネット」を結びつければ
いいと考えたようです。
3年目に、成果型アルバイトサイト「リバイト」
をリリースします。
これ読んですぐ思い出しますね。
「リブセンス」ですね。
これはずいぶん前研究しました。 こちら
成果型アルバイトサイトの先駆けですね。
ベンチャーとして大成功しましたから。
この会社の設立が2006年ですから
まさに「2番煎じ」。
マーケティングのノウハウもなく、
肝心の応募者を集めることに苦戦。
社員の給料を支払うのにも苦労したようです。
すぐに数千万円の債務超過に。
どんな経営者でも経験する経営の苦労・・・。
読んでいて思ったのですが、
「こういう経営者は諦めない信念がある」と。
事実
「5000万円〜6000万円あれば半年くらいの
キャッシュフローに充てられる。
自分たちなら、その半年で絶対に
巻き返せる」
どうでしょう。
本当にそう思えますか・・・??
この社長はある本から
「ベンチャーキャピタルから調達する」
というノウハウを学びます。
そうすると
「ベンチャーキャピタル 日本」
で検索して、片っ端から
「もしもし、未公開株に投資してください」
と営業をかけます。
見るからに怪しいですね。
まだ駐車場シェアリングサービス「アキッパ」の
構想すらない頃なのにです。
でも何だかこの迫力を感じませんか?
大手ベンチャーキャピタルのジャフコが
これに「ひっかかり」ます・・・。
「この会社は何かすごいことやりそうですね」
なんと!
6500万円も出資してもらいました。
個人的にもジャフコは野村證券系ですので
よく知っている会社です。
当時はこんな「いいかげんな」営業を
していたのですね(失礼!)
なぜなら
「事業計画書を提出してください」
とジャフコから言われたのに
その作り方から教わったからです・・・。
その4 Airbnb って何ですか?
ベンチャーキャピタルから6500万円の
大量の資金が投入されたのにも関わらず
「キャッシュフローをギリギリで回すために、
電気代、水道代、ガス代なども自動引き落としにせず、
いつもコンビニ払いをしていました」
なぜなら何にもビジネスモデルが確立されて
いなかったからですね。
立ち上がりの会社でよくこういう会社を
お見かけします。
でも「超簡単経理」の基本として
絶対自動振替を勧めているのですね。
ある時出張から帰ってくると、
電気代を払い忘れていたので
電気が止められていた・・・。
これジャフコの担当者が聞いたら
「すぐ6500万円返せ!」
というお話なのですが、これはこの
会社の「重要なネタ」なのでしょう。
「電気ってすごい。電気は本当に必要不可欠な
ものなのだ。
電気みたいになくてはならないサービスを
作りたい」
ということで
この創業の精神
「なくてはならぬ≠つくる」
となったようです。
確かに「ネタ」ですね・・・。
それでその「なくてはならぬ=vものを
200個考えてみたそうです。
その中から3つを選びました。
それで1個目に「アキッパ」の駐車場サービス。
2個目に「フードデリバリーサービス」
今のウーバーイーツの仕組みのようなもの。
3個目にゴルフのメンバーのマッチングサイト。
3つのアイデアを考え出したときに
大阪のある「ピッチイベント」に出場します。
そこで新規事業のアイデアを、資料を使って
プレゼンするのですね。
そこで駐車場ビジネスを発表したら
審査委員に大好評。
「これはめっちゃくちゃいい!
Airbnbの駐車場版ですね」
そこで
「Airbnbって何ですか?」
会場で失笑を買ったそうです。
当時は
「シェアリングエコノミーすら聞いたことが
ありませんでした」
正直に書いてありました。
カネもアイデアもない起業家の方に
ここは繰り返し読んでください。
こんな簡単に上場企業が生まれるのです。
まさに「番狂わせの起業法」
だと思いませんか・・・。
その5 最も権威あるピッチコンテストで優勝
2014年12月にスタートアップの登竜門
「IVSLAUNCHPAD」
というピットコンテストに出場します。
ところでこの「IVSLAUNCHPAD」
はご存じでしょうか?
IVSとは Infinity Ventures Summit のこと。
今年も7月に今日で開催されます。
もとは2007年に開始されたのですね。
ちょうど2012年に優勝したのが
クラウドワークス。 こちら
因みにそれから2年後の
2014年12月に上場しています。
現在は売上171億円。
登録ワーカー数672万人。
登録クライアント数100万人。
まさに業界ナンバーワン!!
その翌年2013年に優勝したのが
freeeなのですね。
優勝したときのfreeeの従業員は
たった6名ですね。
そこから大躍進しましたね。
面白いのは2013年に4位だったのが
マネーフォワード。
でも4年後の2017年9月にマネーフォワード
の方が先にマザーズに上場しているのですね。
Freeeは2年後の2019年12月にマザーズ上場。
だからここで優勝すると、まずベンチャーキャピタル
から多額の出資を受けられますし、
上場公開への道が開かれるのですね。
今年のIVS2025 LAUNCHPAD からですが
上場や企業売却した数は60社
資金調達額は3000億円にもなるそうです。
この名門ピッチコンテストに応募。
2014年春の回はなんと!
書類選考で落選。
その後2014年秋の大会に再チャレンジ。
数百社の応募の中から12社が本戦出場。
驚くのですが、何と!まったく無名ながら
優勝してしまうのですね。
その6 Googleや丸亀製麺から
IVSLAUNCHPADで優勝して
その後2年間で、なんと35億円もの
資金提供を受けたそうです。
もうこの本で言いたいことはそれだけですね。
優勝してまさに「ジャパニーズ・ドリーム」を
つかんだのです。
でも2014年アキッパのスタート時点では
月間2万円のビジネス・・・。
その将来性を買ってくれるところが
これほどまで多かったのかと・・・。
大量に資金調達した後は
「社長より優秀な人を採用する」
という方針を決めて採用を強化です。
よく言われますね。
ビジネスの基本の経営資源は
「ヒト モノ カネ」
まずカネは大量に調達できて、
モノとしてのビジネスモデルはお墨つきを
えたのですからあとは「ヒト」ですね。
まずGoogleにいた広田康博氏が入社します。
知らなかったのですが
テック業界向けのWebメディアに
「なぜGoogleの社員が大阪のスタートアップに
転職したのか」
という記事が話題になって次々に優秀な
社員が入社してきたのです。
現在副社長である小林寛之氏は
丸亀製麺の常務取締役からの転職。
そのほか次々に優秀な方々が集まってきます。
2016年から18年にかけてアキッパの成長局面
だったのですが、大手テックカンパニーが
こぞって、このシェアリングサービスに参入してきたのです。
楽天グループ、リクルートグループ、ソフトバンクグループ、
ドコモグループ・・・。
でも結果的はこれら大手テックカンパニーに
打ち勝つのですね。
まさに「ジャイアントキリング」
題名の通り、まさに番狂わせだったのでしょう・・・。
スタートアップ企業というのは
どういうものかとこの本で学びました。
最後に書きたいのは、大量の資金をベンチャーキャピタルから
調達しておきながら、実はずっと赤字でした。
「2022年5月に初の月次黒字化」
「その後四半期の黒字化も実現」
これが実態なのですね。
大いに勉強になりました。
月4万円のアパートで資本金5万円の会社を
立ち上げた起業家に
「IVSLAUNCHPADに出てみれば
こういう会社があるよ・・・。」
今度そう言ってあげましょう。
(ガンバレ! 資本金5万円の起業家シリーズ おしまい)