マーケティングの勉強ですね。
なかなか「強烈な」勉強ができましたね。
「知名度だけで商売をする」ということは
こういうことかとつくづく感じさせられます。
まず今回の主人公ですが、西村誠司氏。
エクスグローバル株式会社の社長さんです。
普通のオジサンの顔ですね。
「何やっている会社?」
そう思うでしょう。
そういう意味ではまだまだ知名度はないのです・・・(失礼!)
ではこのCMはご存じではないでしょうか?
ブレイク中の3時のヒロインを使って
強烈なインパクトでしたね。
CMが流れ出したのが2021年11月。
新型コロナウイルスの影響で人々が外出を控える中、
繰り返し流されたのでご存じでしょう。
そうなのですね。
「にしたんクリニック」
の会社なのですね。
でも実はもっと前にこの会社はCMをやっていました。
「珍獣ハンター」で人気になっていたタレントのイモトアヤコを使って
「イモトのWIFI」でも
CMでもやっていました。
「社長の名前はにしむらさん・・・〜♪」
でやっていたのでそこで「にしむら」を思い出したでしょうか。
そうなのですね。
イモトさんではなかったのですね。
まず「イモト」という名前を使ったお話から驚きますね。
もともとは法人向けサービスの「グローバルデータ」という
商品名だったのです。
「海外旅行の際は『グローバルデータ』が便利です」
これではインパクトはない社長は思ったのです。
それで「イモトのWIFI」にしたんだそうです。
でも「WIFIの会社がクリニック経営?」
謎が深まりますね。
「にしたんクリニック」
は2019年にオープンしたクリニックです。
まだまだ業歴3年ほど。
エクスコムグローバルが立ち上げを支援したと言いうのです。
当たり前ですが、病院経営は一般の事業会社はできないですからね。
経営戦略からブランド戦略、マーケティング戦略まで
あらゆることを支援しているのだそうです・・・。
それとご存じでしたでしょうか?
2020年8月から新型コロナウイルスのPCR検査キットで
大成功しているのです。
10回用チケットで1回あたり9900円。
それを累計400万件・・・。
すごいですね。
コロナ禍を逆手に生きる逞しいマーケティング戦略を
ぜひ学んでください・・・。
その2 PCR検査でJ字回復!
この本の取り上げる最大の理由は
「コロナ禍を利用して日本で一番V字回復した企業」
と思うからですね。
コロナ禍前のエクスグローバル社の売上は、2019年8月期で
87億円、営業利益16億円もありました。
ここで「イモトのWiFi」は、2020年コロナウィルスの
影響をもろに受けたのです。
海外旅行客が一気にいなくなって、会社の屋台骨を支えていた
「イモトのWiFi」の需要は激減し、会社全体の売上が
98%減まで落ち込んだのです。
「98%減」!
驚きますね。
計算してしまいました。
ということは87億円→1億8000万円くらいまで
落ち込んだのでしょう。
「売上98%になったときはさすがに倒産への恐怖で
体が震えた・・・」
と書いてありましたが、まさにそうでしょうね。
でも21年8月期の売上高は
176億円、営業利益は98億円!!
これ本に書いてある通りですが
こんな会社があるのですね。
びっくりしました。
一年単位で
87億円→1億8000万円→176億円
なのですから「V字回復」どころか「J字回復」なのでしょう。
倒産の危機に直面したところでこの会社を救ったのが
「PCR検査事業」
だったのですね。
なんと2020年8月期に開始したのです。
コロナ禍の進展は覚えていますよね。
2020年2月1日にクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の
乗客の罹患が確認されてからです。
そこから一気にコロナ禍が進んで緊急事態宣言。
7月から8月にかけての第2派の到来でした。
社長は
「もはや、WiFiレンタル事業の回復をのんびり待っている
場合ではない。別の何かをすぐはじめなければならない。」
そこで「PCR検査事業」を思い付き始めたわけなのです。
書いてありましたが、まったくの「見切り発車」のようです。
「PCRの検査機器をそろえるだけで1億円近くかかる」
そうなのですが、最低限2割程度で始めたのです。
このあたり経営者としてすごいところですね。
取り組もうと思いついたのが2020年7月20日。
サービス開始が8月24日。
それだけでないのです。
なんとテレビCMの放送開始は9月28日!
驚きです・・・。
その3 検査キッド累計400万件!
にしたんクリニックのPCR検査キッドは税込9900円ですね。
それが累計400万件!
すぐ計算してしまいました。
400億円もの売上ですね。
21年8月の売上高が176億円ですから
22年8月期の売上高はそれ以上でしょう。
「しまった・・・ウチもPCE検査やればよかった・・・」
そう思う経営者もいるでしょうか。
しかし、驚くのはそのスピードですね。
テレビCMの放送開始9月28日からの内容は
PCR検査の3つの特徴
「来院不要」
「唾液採取」
「低価格」
のアニメーションのみ。
アニメーションだけだった理由が面白い。
「CM制作を広告代理店に発注した段階でタレントを
キャスティングする時間がなかった(笑)」
普通はCM撮影の3か月前くらいには出演するタレントを
キャスティングしスケジュールを押さえなければならないのだそうです。
まあ、このあたりは「イモトのWiFi」でCMを
手掛けていたからなのでしょうね。
因みに「イモトのWiFi」は2013年に事業開始から
放送をスタートし、2017年から2018年,2019年と
多額の宣伝広告費をかけていたからこそ、
広告業界の裏側まで分かるのでしょう。
因みに最初のタレントを使ったCMは照英さんでした。
しかし、何度も書きますが
コロナショックで「イモトのWiFi」は大打撃、
会社全体の売上が98%減まで落ち込んだ直後です。
これは普通できないでしょうね・・・。
「私がPCR検査に関して全くの素人、門外漢だったからこそ
生まれた発想だった」
と正直に書いてありましたが、
これは突っ込みたくなるところですね。
「PCR検査する臨床検査技師の確保に苦労した・・・」
「よくよく調べて見ると、臨床検査技師が検査をしなければならない
という法律はありませんでした・・・」
「そうなの?」
思いますよね。
つまり、臨床検査技師を集めることに奔走しないで
「イモトのWiFi」のレンタル事業に携わっていた
スタッフを検査するスタッフに育てあげたと
「自慢げに」書いてありました。
ということは、当初はレンタル事業のスタッフが
検査していたということなのでしょうか・・・。
その4 昨日の非常識を打ち破る!
「昨日の非常識が今日の常識、今日の常識が明日は非常識」
西村社長の経営哲学のようです。
「PCR検査は臨床検査技師の仕事という常識を疑い、
独自の検査体制を構築する」
これを実践したのですね。
つまり、昨日までイモトのWiFiのセールスマンだった人に
PCR検査をやらせたのです・・。
ただ一応書いてありましたが、
「現在、数か所ある検査センターには臨床検査技師が常駐」
しているそうです・・・。
あと西村経営学
「スピードを最優先し、2割の完成度で事業化を宣言する」
「テレビCMを信用創造の一つと位置付け、広告宣伝費を
大量投下する」
テレビCMの大量投下はこれは普通の会社は真似できないでしょうね。
でももう一つ真似してほしいことが書いてありました。
「ビックネームの力を借りて B to B を一気に開拓」
したのですね。
法人契約第一号はJALだったのです。
今なら1980円でにしたんクリニックのPCR検査が
できるみたいです。
「JAlとすでに取引されている会社なら」
ということであとはスムーズに言ったようです。
ドラックストアの「ウエルシア」、「ココカラファイン」
ショッピングセンターの「イオンモール」
総合スーパーの「イトーヨーカドー」
家電量販店の「ビックカメラ」、「ヤマダデンキ」、「ヨドバシカメラ」
すごいですね。
しかし、CMなんて中小企業ではなかなか無理なお話なのですね。
「にしたんクリニックはいったいどれくらい宣伝費かけているのだろう?」
気になりますね。
一般的には広告宣伝費は売上高5%〜10%程度なのですね。
「実際、当社では売上高の概ね20%強を広告宣伝に費やしています」
これは破格のお金ですね。
2021年8月期で176億円だったので、多分40億円くらいは
かけているのでしょうね・・・。
三時のヒロインや郷ひろみを使ってCMできる理由が
分かりますね。
郷ひろみのギャラ
いくらなのでしょうか・・・。
その5 PCR検査事業は誰でもできるの?
では最後にこの本読んで誰でも持つ疑問です。
「あれ?西村さんって医者ではないの?
医者でもない人がPCR検査事業をやっていいの?」
ココですね。
そもそも「にしたん」とは西村の「にし」と本にも書いてありました。
なぜ「たん」なのかは、小さな子供がよく使う「〇〇たん」から
つけたそうです。
「自分の名前を付けたクリニックの経営者は
医者でなくていいの?」
これ疑問に思いますね。
税理士という常識的な世界にいると、すぐ「税理士法」という
業界のルールブックを気にしてしまうのですね。
「タックス・クリニック」を設立して、郷ひろみを使ったCM戦略で
知名度上げ、全国の資産家相手に儲けよう・・・。
なんて「間違っても」思わないからです・・・。
よくテレビCMで見かけるように、西村さんのような方と
手を組んで
「相続一筋25年!中野のランドマーク!
中野サンプラザ税理士法人!」
などとは絶対にやらないでしょう。
ただ、これこそ西村社長の言う
「昨日の非常識が今日の常識、今日の常識が明日は非常識」
なのでしょうね。
クリニック自体は2019年のコロナ前にできたばかりでした。
提携したJALのHPにも出ていますが
「医療法人社団直悠会にしたんクリニック」
というのが正式名称のようです。
医療法人を設立するには当然ですがお医者さんは
必要でしょうから。HPからです。
理事長さんそのものや医者も多く当然いるようです。
因みに
2021年10月に山口県の産婦人科病院の経営権を取得したのだそうです。
知名度をバックに病院を買収し新たなビジネスを模索しているようです。
どうでしょうか?
多額の宣伝費をかけ「知名度」だけで、このコロナ禍の倒産危機を
乗り越えた企業のお話でした。
最後に書かれていましたが、
「もし、にしたんクリニックのPCR検査事業が失敗していたら
今頃エクスコムグローバルは倒産していたでしょう」
ビジネスはばくちではないのではとも思いますが
「昨日の非常識が今日の常識、今日の常識が明日は非常識」
これは心に刻んでおきましょう。
(がんばれ!社長の名前は西村さん!シリーズ おしまい)