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その1 元国税OBが実名で書いた暴露本



 

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テレビ朝日の「おコメの女」についてお話しします。

ご覧になったでしょうか?

「国税局資料調査課・雑国室」という副題も

ついていますね。 資料の「料」の字のコメヘンから

「コメ」と呼ばれる部署です。

資料調査課は、われわれ税理士でも当然知っている

強力な部隊です。

そこが舞台となっている物語です。

まあ、国税局もののテレビ番組というと、

伊丹十三監督の「マルサの女」が一番有名ですね。

15年も前になりますが、「ナサケの女〜国税局査察官〜」

というのもありました。

個人的にはあまりヒットしなかったという

記憶があります。

おコメとマルサの圧倒的な違いといえば、

裁判所の令状を持って踏み込むマルサに対し、

おコメはあくまで「任意調査」であるという点です。

しかし、その実態はマルサ以上に執念深く、

広範な資料を積み上げて逃げ道を

塞いでくるものです。

なかなか描くのは難しい内容でしょうね。

 

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それで、この「おコメの女」の監修をやられている方が

佐藤弘幸氏です。

1967年生まれというと私と7つ違うので、

まだ58歳ですね。

 

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経歴を見ると、確かに「資料調査課」に

在籍されています。

でも、15年前に退職もされているのですね。

ですから、税理士業も長いです。

本に合わせて出版されているから、

きっとこれは「種本」かと思って購入しました。

まあ、こういう方が国税局の内情を

暴露しているのですが、実名で書いているから

いい加減なことも書けないでしょうし、

批判するようなことは絶対に選ばないのでしょう。

しかし、なかなか勉強になった本だったので、

このドラマとともにご紹介していきましょう。




その2 税務職員の出世の入り口



精鋭部隊「コメ」がいかにすごい組織であるか、

読んで驚きます。

 

 「コメの現場は過酷である。それゆえに、

30代の比較的若い層が実査官として配属される。

組織のマネジメントは軍隊式で、

上司の言うことは絶対だ。」

 

今どき「軍隊式」というフレーズが出てくるところが

すごいですね。

 

今から30年ほど前のお話ですね。

 

「1998年、私が初めてコメに配属されたとき、

着任するとすぐに先輩実査官に御徒町の

カバン専門店に連れていかれた。

そこでカバンを買わされた。」

 

買わされたというから支給ではないのですね。

自分で買ったのでしょう。

なぜなら、調査先で大量のコピーを取るからです。

すごいですね。 さらに、

 

「規定があるわけではないが、白シャツが基本で、

スーツは必須。ブレザーやボタンダウンシャツは

許されない。」

 

「着任したときに机の中に『実査官マニュアル』

という冊子が入っていた。」

 

何だかわからないですが、

「コメは国税局のなかでも最も過酷な部署」

なのだそうです。

でも、なぜそんな厳しい職場で働くのでしょうか。

それは、

 

「1日当たり14時間以上も働くモチベーションは、

コメにいれば勤務評定が高くなるということに尽きる」

 

からです。

 

「ところが地方の国税局にはそれがないので、

主流に乗れなければそれで終わってしまう。

30代も半ばを過ぎると、その後の人生が

決まってしまうのだ。」

 

税務署もそうなのですね。ここは繰り返し読みました。

税務署内で出世するにはここで成果を出さないと

いけない・・・。

なかなか税務署の職員も大変なのですね。




その3 ハンカという恐ろしい組織


書きながら思い出しましたが、どの企業においても

エリートサラリーマンの登竜門のような部署が

あるものです。

某野村證券にも「本店営業部」という組織があり、

エリートの登竜門でした。

代々そこを経験した営業マンが社長になる

などの例があります。

そのような花形の部門は、扱う取引先が違うものです。

当然、素晴らしい数字を挙げることができるのです。

だからこそ、あの方は「本店営業部で……の数字を挙げた」

という伝説を作ることができたのでしょう。

きっと、コメにおいて数字を挙げることこそが、

税務署長やそれ以上のポストに就くための条件と

なるのでしょう。

しかし、税務署で数字を挙げることが

どれほど大変なことなのか、少し想像がつきません。

 

その花形である「コメ」へ行くための「予備軍」が

あることを、この本で学びました。

それは税務署の「ハンカ」という部門です。

 このような単語があることが税務署らしいです。

「繁華街・特定地域担当部門」を「ハンカ」というのです。

著者の佐藤先生も経験があるそうです。

どこの税務署にもあるわけではありません。

新宿、渋谷、銀座、新橋、横浜などを管轄する

8つの税務署のみに設置されているとのことです。

例えば新宿の歌舞伎町などには、「怪しげな」飲食店が

多いです。しかし、そのような店は当然、夜に営業しています。

ですから、

 

「昼間も現場に足を運んで調査することはありますが、

本番は夕方5時以降です。私服に着替え、夜の街へと

繰り出します。これがハンカの役割です。

1件目は飲食店や居酒屋を調査し、時間を見ながら

風俗店に潜入し、夜が更けるとクラブ、スナック、

キャバクラ、外国人パブなどを攻めるというのが

基本的な流れです」

 

とのことです。

これは大変なお仕事でしょう。

 

「事前調査の段階では客を装って店に入ることも

あります。そうなると飲み食いしないわけには

いかないので、どうしても過食気味になります。

太って尿酸値が上がるうえに、風俗店の場合は

運が悪いと病気をうつされることもあります。

文字通り過酷な現場です」

 

とあります。

これを読んだ年頃のお子さんを持つ親であれば、

税務署に勤めることは正直に言って

反対するでしょうね。(すいません。本音です。)



その4 「ブタレ」にもランクがある


しかし、税務署というところはどうしてこうも

隠語が多いのでしょうか。

「ブタレ」という言葉があります。

これは「部外からのタレコミ」の略です。

言われてみれば分かりますが、なかなか外国語

のようですね。

「コメ」の調査能力が詳細に書かれている箇所は、

なかなか勉強になりました。

「ブタレにはランクがある」

そうなのですね。

隣近所のやっかみはCランクです。

 

「あそこの奥さんは、海外旅行に何度も行っているから脱税している」

「ベンツに乗っているから脱税している」

 

 そんなブタレは、税務署でも相手にしません。

では、Aランクにはどういうものがあるのでしょうか。

 

 「会社をクビにされた元社員からの告発」

 

これはありそうな話です。

 

「なかでも社長の元愛人や、元経理担当者からの情報は

ランクが高い」

 

これはある意味で怖いことですね。

ということは愛人を経理担当者には

絶対にしてはいけないということでしょうか。

 

しかし、「契約を切られた会計事務所」という例には、

より一層ドキッとしました。

業界としては倫理があるはずなのですが。

それでも、実際にはCランクの量が1番多いそうです。

また、「ブタレ受理から調査実施までには、

早くて半年くらいはかかる」とのことです。

なかなか税務署も大変なのですね。

ここは知っておかなければならないことなのでしょうが、

 

「コメが対象とする案件について、まず前提としてあるのは

増差(追徴対象所得)が1億円以上であることだ」

 

と言われています。

これには驚きます。

「増差」という専門用語が出てきましたが、

増差1億円以上というケースはそうそうありません。

必死になって調べるのですね。

面白いのは、

「テレビ番組などのセレブ特集がもとになって

調査選定されることがある」という点です。

 

脱税している方をどうやって見つけるのか、

興味本位では面白かったのですが、

真面目に実務を行っている税理士としては、

まったく関係のないお話ですけど・・・。



その5 税務調査にいたる過程



では、なぜ「告発受理から調査実施までには、

早くて半年くらいはかかる」のでしょうか。

それは、脱税を摘発するまでに徹底的に

検証するからです。

 

まず、先行調査と呼ばれるものを実行します。

「内観調査、外観調査、ネット閲覧、金融機関調査」など、

いろいろな種類があるのですね。

そのうちの一つが「金融機関調査」です。

文字通り、金融機関に行って口座を調査するのですね。

でも、ここで疑問に思いますよね。

「金融機関には守秘義務があるはずだ。

勝手に他人の口座情報を教えるのか?」と。

これには「国税庁と全国銀行協会の間での紳士協定」

があるそうです。

平たく言うと、

「銀行調査証に記載された対象者に対しては

調査に協力しましょう」

ということらしいです。

しかし、「預金者の名義が異なっているが、

上記の者と同一であると認められる者を含む」

となっているのが特色だそうで、

家族名義の「怪しい口座」もすべて見られてしまう

ということなのですね。

その「怪しい口座」の見分け方も、非常に勉強になりました。

 

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まず、こちらが普通のサラリーマンの口座です。

これはもう、税務署は無視するそうです。

逆に、以下のようなパターンだと国税側は大喜びします。

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これが一つ目。「逆L字型口座」

「売上除外に多く見られるパターン」

こういう型を発見すると、

調査官の頭の中でサイレンが鳴り響くそうです。

 

 

 

 

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二つ目は「稲妻型口座」です。

 

右側に入金と出金(振込)が交互に続く口座のことです。

架空人件費や架空外注を発生させる際に使われ、

特に建設業に多いそうです。

 

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三つ目は「貯まりっぱなし型口座」です。

入金のみの口座で、お金持ちの口座に多いそうです。

これも売上除外口座の典型的なパターンです。

 

 

それにしても、ここまで調べ上げるのですね。




その6 本当はまだ続きがあったはず??



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(ドラマに登場していた国税OBの悪徳税理士)

 

いろいろ書きたいことはたくさんありますが、

ちょうど本日で年度末です。

 税務署も年度で動きますから、内容をまとめましょう。

テレビの方も第9回で終了しました。

「ネタ本」と書きましたが、内容は全然違いましたね。

本当はこの本の後半に書いてある「小説カルト脱税」が、

むちゃくちゃ面白かったのです。

あのストーリーのとおりに展開するのかと

期待していました。

小説ですからネタバレにならないよう、

詳細には書きません。

簡単にいうと、悪徳宗教団体が巨額の脱税をするお話です。

それを主導していた国税OBの悪徳税理士がいたのです。

何となくその宗教法人は「統一教会」かなと

思わせるような書き方でした。

最後は当然、首謀者も脱税で摘発される結末です。

さらに言うと、その悪徳税理士も原因不明の死体で

発見されるという、非常にショッキングな結末でした。

 

ドラマでは、「国税OBの悪徳税理士」が登場していましたね。

あれだけ憎たらしく書いておきながら、結局は何のお咎めもなく

終わってしまいました。

実は誰も言っていないお話なのですが、

本当はあと3話くらいあって、この原作通りのシナリオが

あったのではないかと本気で思っています。

やはり「打ち切られた」のでしょうか。

まあ「統一教会」が巨額脱税をしていると連想させる筋書きと、

悪徳国税OBの不審な死はあまりにも問題だと、

テレビ局側から修正が入ったのではないかと推測しています。

(これは私の想像です)

 

ということで、詳しくはぜひお読みください。

「脱税は絶対にやってはいけない」という、

いろいろな意味で勉強になった本でした。

 

(がんばれ!国税OBシリーズ おしまい)