その1 偉大な創業者の会社で働く方へ
いきなり!ステーキのお話ですね。
5年前は、私は「肉マイレージ」カードを
持っていたくらい。
かなりのヘビーユーザーだったのです。
ランニングのあと必ずステーキで
筋肉補強をしましたから。
いきなり!ファンであったので、
以前かなり勉強しました。
なぜこのチェーン店は失敗したのかを
外食産業のカリスマであるすかいらーくの
創業者横川竟(きわむ)氏がぶった切るテレビを
何度も見返しまとめたものでした。
ちょうど5年ほど前のこと。
それからコロナもあり、正直いきなりステーキは
もう倒産でもしてしまったのかと思っていたのです。
最盛期500店舗まで拡大していたのですが
今現在の店舗数は国内176店舗、海外5店舗に。
半分以下ですね。
行きつけだった中野店もずいぶん前に閉店。
それでもまだまだ生き延びていたのですね。
冒頭の記述で驚きます。
2022年8月8日に現実にあったやり取り。
一瀬邦夫氏が創業者。一瀬健作氏はその息子です。
健作「社長、少しお時間いただけますか」
邦夫「ああ、いいよ」
健作「社長、代表を降りてもらえないでしょうか」
邦夫「えっ・・・。じゃあ、俺は会長になるのか」
健作「いいえ、会社に残ることはやめてください。
顧問や名誉職も含めて、全部です。
会社の経営とは一切かかわらないでください」
理由を説明する健作。その口調は冷たいほど
淡々としている・・・。
こんなことが本当にあったそうです。
この本の副題。
「偉大な創業者の会社で働く全ビジネスパーソンに
捧ぐ警告の書」
まさにこれが真実・・・。
その2 本当に復活したのか?
ここで得意のEDINET分析。
どうしていきなりステーキが復活したのか
非常に気になりましたから。
まずコロナ前の絶頂期のいきなりステーキ。
2019年12月期。
まさにコロナが始まった2020年直前。
売上600億円。
でも26億円もの大赤字ですね。
この本にも書いてありましたが、出店コストが
とにかく多きかったから。
いきなりステーキで493店舗もありますね。
あと一方でペッパーランチ事業も525店舗も
あります。
合わせると1000店舗です。
BSを見ると長短借入金が合わせて80億円。
赤字だろうが借入金でどんどん出店したのですね。
コロナ後から最近の決算です。
売上130億円まで削減。
利益はようやく黒字に転換したようです。
BSみるとなんと!借金ゼロに!
よく立て直したと思いますね。
どうして立ち直ったかというと、
コロナ前に柱の一つだったペッパーランと事業を
ファンドに80億円で売却したから。
その売却代金で借入金を返済できたのでしょうね。
もちろん、不採算店舗をかなり閉店したようです。
私の行きつけだった中野店もそれで閉店したのですね。
ただペッパーランチ事業を売却することは
銀行も反対したようです。
何よりこの本では書いてありませんでしたが
創業者の父親は大反対したのでしょうね。
会社を立て直すために
冒頭の下り。
とにかくそれでいきなりステーキは復活したのです。
その3 名レストラン「さわやか」に学ぶ
どうしていきなりステーキが復活したのか?
この本の肝はやはり2代目でしょうね。
偉大な創業者の陰に2代目の問題。
税理士として様々な中小企業を見てきましたが、
創業社長には素晴らしい方が多い。
でもその後の事業承継で失敗することも
もっと多いのです。
とりわけ中小企業なら2代目として自分の子供に
託すことがほとんどです。
でも残念ながら企業経営者としての力量が足りない・・・。
そのあたりこの本は正直にしかもリアルすぎるまで
書き表しています。
創業者一瀬邦夫の息子一瀬健作氏。
高校を中退しています。
そのあと19歳で入った定時制高校も中退。
そのあと錦糸町のバーでアルバイト生活。
そのころ一番の理解者であった実母を
亡くしてしまいます。
普通ならここから転落する人生だったかもしれませんが
ある企業に入り生まれ変わります。
このあたり非常にドラマティックな感じですね。
多少「盛っている」気もします。
それは静岡県内でチェーン展開する
「げんこつハンバーグ炭焼きレストランさわやか」
に入社するのですね。
ここ非常に有名なのご存じでしょうか?
以前静岡に旅行した時に、行こうと思ったら
まったく予約できないほど大人気のレストラン
なのですね。
創業者は富田重行さん。
創業は1977年7月。
飲食未経験ながら「コーヒーショップさわやか」を
オープンしました。
現在は静岡県内に34店舗も展開する一大チェーン。
創業の苦労話として、私自身のネタですが
をぜひ読んでください。
実は昨年2024年3月12日に87歳で
亡くなられたばかりなのですね。
このさわやかでの経験がその後のいきなりステーキに
生かされたようです。
「『おはようございます』というところを
さわやかで働く人は『さわやかです』と
あいさつします」
これ驚きませんか?
店の外でも「さわやかです」とあいさつするのです。
「従業員一人ひとりが『さわやか』で働くことに
誇りを持ち店に愛情を持っている証拠でした。
休みの日でもみんあで集まり、自主的に
勉強会を開いて、仕事について話し合うことも
ありました」
これ読んで中小企業の社長なら誰でも
たまらないくらいうらやましく思うはずです・・・。
その4 アイデア調理器で急拡大
「タイマー付き電磁調理器」
いきなりステーキがなぜ破綻したのか?
客観的に見ることは勉強になりますね。
それを管理本部長であった実の息子が
書いているのですから。
1997年息子である一瀬健作氏は
さわやかで修行した後、
「ペッパーフードサービス」に
に入社です。
その3年前の1994年に創業者一瀬邦夫が
ペッパーランチ事業を
スタートさせていたのです。
これ知らなかったのですが
「タイマー付き電磁調理器」
というのがあって、自分でステーキが焼けるもの。
なかなかアイデア商品ですね。
もちろん特許取得。
それが当たると錯覚した前社長は
直営8店舗、FC2店舗に。
売上は9億あったそうですが、業績はよくなかった。
2000年にJR東日本とフランチャイズ契約を
してそれをきっかけに業績はよくなったものの
2001年に狂牛病騒動。
なかなか飲食店は大変ですね。それでも
2004年に100店舗。
2005年には150店舗。
その勢いで2006年9月21日に東証マザース上場。
これも知らなかったのですが
いきなりステーキになる前から上場企業で
あったのですね・・・。
でもここで上場の落とし穴。
「徐々に社内体制が崩れていった。
会社を大きくするために、証券会社や他の外食系
飲食チェーンから転職した人たちの意見を
大事にするようになった・・・」
ありがちが間違いですね。
懺悔を込めていいますが、証券会社の人は
経営学なんか勉強していません。
「投資家の自己責任」ということを金科玉条に
己の利益を拡大することを主眼としていますから・・・。
その5 いきなり!ステーキで急拡大
「いきなり! ステーキ 銀座4丁目店」
創業者一瀬邦夫氏は「いきなり! ステーキ」
を2013年12月に銀座4丁目店を出店。
当時の「俺のイタリアン」の大繁盛もありましたからね。
これが大ヒット。
以降急拡大します。
2018年9月ついに米ナスダック上場まで。
まさに証券会社やコンサルタントの言いなり。
2018年8月に300店舗達成。
2019年3月に400店舗目標。
邦夫社長は「1000店舗を目標」としていたらしい。
この時健作氏は代表取締副社長に。
業績が著しく悪化していたのですね。
これも冒頭の「カンブリア宮殿 ブログ」 こちら
まさに出店政策の失敗ですね。
ここで親子の対立。
カリスマ社長に対抗するには実の息子
しかいないのですね。
ここは参考にしてほしい会社は星の数ほど
必ずいます・・・。
2020年のコロナ禍に突入。
前年の44店舗の閉鎖に加え
114店舗の閉鎖を発表。
毎月の赤字額は8億円に。
いよいよ倒産の危機。
ここで2020年8月。ペッパーランチ事業を
85億円で投資ファンドに売却して最悪を脱します。
でも創業者邦夫氏は
「父はすべてを自分がハンドリングしたい人です。
経営の立て直しは俺に任せてちょっと黙っていろ、
というところがあった。」
確かにこういう社長もあまたいます。
しかしこの時ばかりはダメだったのです。
コロナで大打撃の2020年秋。
「テイクアウトの唐揚げ屋」
次に
「ステーキ&カレー WOW!」
これらもあっという間に閉店。大失敗。
最期に2022年夏、
「ワイルドステーキ 150グラム 1000円」
のキャンペーン。
これは当然大ヒットだったのですが
でもやればやるほど大赤字。
1か月で打ち切り。
ここで冒頭の解任劇。
見事な二代目です・・・。
その6 二代目経営者で急拡大か?
名店さわやかを参考に、いきなり!ステーキを
改革していきます。
「従業員一人ひとりが『会社のため』を考えて
自主的に動く会社」
にしようとしました。
これはぜひ参考にしてください。
中小企業経営者なら誰もが目指したい目標です。
まず何をしたのか?
「まず、父のブレーンだった古参の役員たちに
辞めてもらうことにしました。」
なかなかこれは大変だったでしょうね。
次に
「社員たちのアイデアを集めることにした」
さらに何をしたのか?
「2020年以降、採算が合わない計151店舗を
閉店しました。」
まさにそのあおりを受けて中野店も閉店したのでしょうね。
あの場所は飲食店の目抜き通りのところ。
そうとう家賃も高かったのでしょう。
ただここでここ数年の物価高。
牛肉の価格の高騰。
ステーキ屋に対する強烈なアゲンストが
ありましたね。
「値上げを3回行った。」
これはすごいですね。
どうなったのか?
「2回目までは、影響ありませんでしたが
3回目の値上げの時は、来店数が減った。」
でも社長はこう考えているのです。
「成功の値上げ。従来の薄利多売の理論では、
この原料高の状況に対応できない・・・」
ここで、いきなり!ステーキのメニュー。
どうでしょうか。
前と比べて確かに高くなったと思いますが、
やはりステーキですからね。
ステーキの好きな方は高くても食べるのでしょう。
この本の最後に、新社長の姉が登場します。
「父は強いリーダーシップで
会社を引っ張って行くタイプ。
弟は周りの意見をよく聞いて、
みんなでつくりあげようとするタイプ。」
そうなのですね。
2代目は創業者のやり方を必ずしも真似る必要は
ないのですね。
ステーキ以外にも新橋で新業態も始めています。
きっと周りの意見を聞いて始めたのでしょう。
どうでしょうか?
「和牛すき焼き膳」
ちょっと食べたくなりますね・・・。
この2代目の改革に今後も期待しましょう。
(がんばれ! いきなり2代目シリーズ おしまい)