その1  77歳ながら青春している素晴らしい社長 


震災のお話で少し落ち込む毎日ですね。
こんな時こそ元気が出る本です。

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何より読みやすいし、分かりやすいので、
こういう本はお勧めですね。


エステーは「シャルダン」で有名な消臭剤のメーカーです。
「消臭力」(しょう〜しゅう〜♩りき〜♩)
など結構CMやっているから、
ご存じの方も多いのではないでしょうか。


その会長の鈴木喬氏が書かれたものです。
鈴木会長は1935年生まれですから、もう77歳。
一橋の商学部を卒業して、最初は日本生命に入社します。
50歳まではバリバリの日生の営業マン。
年間一兆円以上売り上げる!トップセールスとして
初代法人営業部長まで上り詰めましたが
父親が創業したエステー化学(現エステー)に移ります。
社長になったのが63歳の時。


正直遅咲きのスタートだったのですが、
それからの14年間で見事にこのエステーを改革してしまいます。
読んでいて、実にスカッとする本ですね。


強烈な個性とバイタリティで、


「もしそのまま日本生命に残って社長まで上り詰めたら
あの『大企業病が蔓延している』日本生命も絶対改革できただろう・・・。」


そんなことまで感じてしまいます。
(これは日本生命の方には内緒に・・・)


これからこの「鈴木イズム」をご紹介していきますが、
例えば、2年前の大震災の時にこの鈴木会長の取った行動。


直ちに「世界一強いビル」というコンセプトで
本社の建て替えを決めます。


その理由は、このエステー本社の前には
神田川が流れているからなのですね。


実は個人的に、この会社については、
学生時代からよく知っていたのです。


高田馬場駅を降り、早稲田通りを渡ると、
『さかえ通り』という「有名な飲み屋街のある路地」があります。


その通りを抜けたところに、このエステー本社があるのです。
当時神田川に向けて大きな看板「エステー化学」が
掲げられていましたね。


実は、当時早稲田大学のバスケットボールサークルのたまり場が、
その神田川を挟んだ真ん前にあったのですね。
喫茶店「DUO」といって、夜はパブになる小さなお店でした。


大学に行かない日でも?、毎日のように通った「青春の店」です。
その窓越しに、この「エステー化学」の看板を
ぼんやりと毎日眺めていました・・・。


・・・私の青春話はこれくらいにして、
この鈴木会長も、失礼ながら、まだまだ「青春」しています。


特に2代目経営者の社長さんに
ぜひ読んでいただきたいお勧めの本です・・・。





その2 社長とは火消しの纏持ち 


この本は、端的にいえば「社長としての心構え」を書いた本です。
この「鈴木語録」は中小企業の社長さんには大変参考になりますよ。


「社長とは火消しの纏持ち(まといもち)みたいなものだ」


纏持ち(まといもち)は分かりますか?
江戸時代に火事が起きると、いち早く駆けつけて屋根に上り、
風向きを考え、瞬時に消火の指示をする人でしたね。
今と違って、消防車も放水器もない時代です。
火より先回りして家を叩き壊すしかなかった・・・。


その感と読みで、多くの人も救ったし、
場合によっては一緒に焼け死ぬこともあった・・・。


まさに「社長業」は纏持ちと同じ。
纏を振り回して社員に瞬時に進む方向を示すのが社長なんだと。
もっと簡単にいえば「社長業は決断業」。
現代ではそのスピードこそが問われているからなのですね。


ここで大事なことは、


「纏持ちは絶対に火消しをしない」


この意味も分かりますか?
言い換えれば
「社長が率先垂範してはいけない。」
これも彼は何度も言っています。


纏持ちは屋根の上で、戦況を見つめていますね。
決して下に降りないのです。
高い所にいなければ判断できないからです。
つまり、


「大将は、物見塔の上で戦況を眺めることに徹する」


これが大事なのだと。
なるほどと思いますね。



では、これまでを踏まえて、ここで問題です。


「英国海軍では、将校は兵隊に塹壕(ざんごう)を掘らせるときに
絶対に手伝わない」
一方
「陸軍の将校は兵隊と一緒になって塹壕(ざんごう)を掘る」
そうです。


社長さんであるあなたとしては、どちらが正しいのでしょうか?
ここで社長としての行動規範が学べますね。


実は、この問題の背景を知らなければ解けない問題ですね。
それは、「海軍は志願兵で、陸軍は徴収兵」なのです。
徴兵制度のない日本ではピンとこないところですが、
これさえ知っていれば分かりますね。


会社とは自ら「志願して」勤めるところですね。
命じられた仕事をするのが当然なのです。
それが気に食わなければ辞めればいい。
それだけのことです。
「徴収制度」のように、
無理やり働かされているのではないということです。


これで分かりましたね。
その正解は、会社経営は「海軍を見習うべき」なんだそうです。


そのかわり、リーダーは雨が降ってもコートを着ないで立って、
全体を見ながら大きな声で指示を出し続ける・・・。


分かりましたか?
社員と一緒になって「頑張れ」などと
生やさしいことは決して言ってはいけないのです・・・。




その3 社長の社員との接し方 


昨日の「英国海軍」のお話は、
この本で「なるほど!」と一番思った点ですね。


「率先垂範」して、社員と一緒になって、
「頑張れ!」なんて言っている社長は、
結構周りにたくさんいますよね。


こうも書いてありました。
経営がうまくいっていない社長が必ずやっていることです。


「毎晩のように社員と酒を飲んで、肩を組んで軍歌を歌って
『頑張ろう』と気勢を上げている・・・・」


これもありそうな会社ですね。
若い経営者なら、社員に気を使って「お酌まで」して、
カラオケで一緒に「嵐」か「AKB」まで歌っている・・・。


これはまさに「英国陸軍」方式で
ダメ会社の典型なのでしたね。


これには鈴木会長は厳しくこう言っています。


「頑張ろうと言った翌日に
『気が変わった。今日からキミはいらない』
と言える社長になれ」と。


キビシイですね・・・。
このあたり、いろいろ反論ありそうですが、
つまり


「社長は舐められたら終わり」


社員をアゴで使うくらいの経営者魂がなければダメと
ハッキリ。


どうしてそうなのでしょうか?
「恐れられているくらいの方がよい」と彼は考えているからです。
まさに独裁者ですね。
でも独裁くらいでなければ、スピード経営ができないから
そうしているのでしょう。


ただ、この方の経営哲学は本当にしっかりしています。


「社長が慕われている組織は強い」
それも一方で思っています。
慕われるような態度も当然取っているそうです。


だからこそ、これは名言です。


「社員に恐れられろ。慕われるのはその次だ。」




その4 社長こそトップセールス 


社長は少しバカがいい」とタイトルで言いながら、
実はこの鈴木氏は強烈に頭が良い方だと感じます。


一橋を出て日本生命に勤めたのはご紹介した通りですが、
日本生命でアクチュアリー(ビジネスにおけるリスクの評価)を
勉強しています。
言うならば財務のプロですね。
企業保険を売るために、相手企業の財務諸表を10年分読みこなしたと
いうのです。
今から30年も前のお話です。
そういう最先端の営業手法は多分どこにもなかったでしょう。
少なくとも「あの野村証券」にはありませんでした。
当時は、「靴の底をすり減らすこと」こそ営業だと
言われ続けていましたから。


多分当時の日本生命でも「ニッセイのおばちゃん」が
営業の主体だったはずです。
それに彼は気が付き、企業保険を売る専門部隊を作り上げた。
そうして、当時日本最大最強の企業、新日鉄を攻め落とした。
年間1兆円を売るトップセールスになったというのは
決してハッタリでもなんでなかったと思います。


このあたり、鈴木会長のこの営業手法は、
かなり「自慢げ」に書かれていますからぜひお読みください。
「自信のない」営業マンに、ぜひ学んでいただきたいところです。


しかし、前に「社長は率先垂範してはいけない」といいながら、
営業においては、トップセールスであれと言っています。


このあたり若干矛盾するのですが、中小企業の社長さんとして
これは非常に大事なところなのでしょう。


「ウチのようにコモディティ商品のメーカーの場合、
社長が営業部隊をいかに統率するかが明暗を分ける」


そういっていますし、確かに相手先との価格交渉力が
いかに大事なのかは想像がつきますからね。


「社長は営業部隊を心服させなければならない」


それはそうなのでしょうね。


トップセールス力を見せつけなければならないのです。
営業マンに
「いちばん厳しい所へ連れて行け」
といって難攻不落の相手を攻め落とすのです。
これは日本生命時代に培った営業力のたまものなのでしょう。
それをやってのけることで営業部隊が心服し
良い意味で「恐れられ」、組織がより強固になるのでしょうね。


しかし、本当にこの方はスゴイと思いませんか・・・・。






その5 社長に必要なのは「運・感・度胸」



この方の経営哲学をもっと掘り下げます。
社長に就任した際に、この方の「纏持ち」として掲げた旗印は、


「コンパクトで筋肉質な会社を目指す」


まず13人もいた役員から減らします。
役員を減らすことは社長にしかできない仕事です。
その次に何をしたか?


徹底的に在庫を減らしました。
エステーにはかつて「シャルダン」という大ヒット商品がありました。
1971年に発売され、売れに売れました。
シャルダン=エステーのようなイメージでしたから。


しかし、その後それほどヒット商品は出なかったのに
商品アイテムは860種類もあったそうです。
当然在庫の山なのですね。
これに着手したのですが、何故か社内の猛反発を受けます。
どうしてそうなのか、これは笑えました。
社員数500人の会社に開発部隊が60人もいたからなのですね。
60人もいれば、毎年一人一品開発していくだけで、
どんどん新商品がでますね。


開発会議に出席するだけで、給料をもらっている人が
増えすぎてしまったのでしょう。
この開発会議も止めさせ、在庫を減らし、
商品アイテムも300にまで削減。
大ナタを振るったのですね。
新商品の数も1年間に一品まで絞りこみました。


そこで、開発されたのが「消臭ポット」


「ポット、ポット♪ しょ〜しゅ〜〜♪ ポット♪」


このCMで有名ですが、これに賭けたのですね。
ここでも社内で大反対された。
今までの企業風土とは全く違っていたから・・・。


そこで社内に「大ボラを吹いた」


これこそ「社長は少しバカがいい」の意味ですね。


「今日の朝方、枕元に女神が出てきましてね。
『消臭ポットでエステーは救われる』
とのお告げがあった。
だから販売目標は1000万個にしようと思う。」


バカな風を装い、社内をまとめたのです。
会社の進むべき方向を明確にさせた。
その結果、この消臭ポットは爆発的に売れたのですね。
本当に年間1000万個をやり遂げてしまったのです。


社長に必要なのはまさに、「運・感・度胸」





その6 経営には常に博打(バクチ)の要素がある



社長に必要なのは「博才」(ばくさい)だそうです。
「運・感・度胸」というくらいですから、まさに博打ですね。


これは知らなかったことですが、日用雑貨の新商品開発は
まさにリスクと隣り合わせの博打なのだそうです。
というのは、一つの新商品を最低100万個作らないと、
全国の小売店に並べてもらえないからです。
当れば確かにデカイけど、かなりのリスクですね。
その「最悪の事態を想定して判断する」のが、
社長の重要な役目だというのです。


ただここで大変重要なことが書いてありました。


「命がけの博打はしない」


これが大切です。
「この新商品に命をかけます」ということは、
絶対やってはいけない。
確かに「消臭ポット」の時はそれくらいの心境だったそうですが、
命がけになると冷静な判断ができなくなって、
たいていは「大負け」してしまうそうです。
これは何となく想像つきますね。


社長が常に冷静な判断ができるためには、どうしたらよいか。
次の三点は中小企業の社長さんに、
ぜひ学んでいただきたいところです。


その1 「バランスシート重視型の経営」


健全な財務基盤を築き上げることです。
そのためには「借金をしない」
借金をしてまで「博打」をしてはいけないということですね。
中小企業の社長さんには大変耳の痛いお話ですが・・・。


その2 「在庫を最小限に抑える」


「在庫というのはたいていがインチキだ」


これも中小企業の実態が分かっている方の発言ですね。
資産はできるだけ圧縮することが基本だそうです。


その3 「キャッシュ・イズ・キング」


赤字で会社はつぶれない。
キャッシュが尽きた時がつぶれるとき。


これは素晴らしい。
こういう健全な会社にしているからこそ、
冷静に「博打」ができるのです・・・。




その7 中小企業の目指すべき会社


このシリーズしつこく続けて理由は、
「中小企業の目標となる会社」だと、本当に思うからなのですね。


ユニクロや京セラをいくら取り上げても、
もうすでに大企業ですからね。
正直、お話が大きすぎてピンとこないのでしょう。


わずか売上500億の上場会社ですが(失礼!)、鈴木氏のいう


「グローバル・ニッチ・ナンバーワン」


をエステーは創業以来目指してきたのです。
消臭剤・防虫剤というニッチなマーケットで
世界ナンバーワンになったことで、飛躍的な発展を遂げました。
これこそが、中小企業が目指すところではないでしょうか。


そのためには、社長という「纏持ち」が絶対的必要なのです。
強烈なリーダーシップで全社をまとめていく・・・。



東北大震災の直後に、エステーが「エアカウンター」(線量計)を
専門分野でもないのに開発し販売したお話や、
被災地でミュージカルを行ったお話は感動しましたが、
このリーダーシップのたまものなのでしょうね。


会社をまとめるには、こんな言い方をしていました。


「社長からパートまで脳を同期化する」


社長の思いを全社員が共通認識として理解する・・・
これはすごいですね。


「言われてから社員が動くのではなくて、勝手に身体が動く。
それが社長の思いと一致したときに、会社はまるで生き物のように
動き出す。それが組織力だ。」


なるほどと思いませんか。


そのために重要なのは


「社員はむやみに増やさないこと」


つまり、「筋肉質な会社を目指すこと」
これも中小企業のお手本でしょうね。


逆にいえば、人手が足らないのが中小企業なのです。
大企業に対して、人海戦術で勝てる訳ない・・・。


どうやって大企業に勝てるか、その方策を教えてくれているのですね。
本当に素晴らしい経営者だと思います。


では最後に、この方の経営哲学を、ご紹介して終わりましょう。


「変わらなければ生き残れない」


これも素晴らしい言葉です。
部屋中にシャルダンでも香らせてから、
じっくり考えてみてください・・・。


(シャルダン・シリーズ おしまい)

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