消費税増税対策第一弾!
消費税が8%になって、税抜表示が本当に増えましたね。
「実質的に値上がりしているものがないか?」
「割安な商品はどこで売っているか?」
消費者側としては自衛策に必死ですね。
特に家庭の主婦では、
「こっちのトマトの方が安い」などと
スーパーのチラシを見比べたりしてはないないでしょうか?
東京都心から45キロ離れたところに位置する「羽村市」
すいません。
東京に住んで数十年の私でさえ、羽村市の場所が分かりません。
人口わずか5万7000人のこの「町」にある
スーパーの物語です。
このスーパーはなんと、
「安売り」や「折り込みチラシ」
使わないのですね。
「そんなスーパーなんてあるの?」
不思議に思いますよね。
テレビでも取り上げられましたね。
「安売りしない、チラシもないスーパー」として
ビジネス番組「ガイアの夜明け」にもでましたし、
全国各地から同業者からの見学が
絶えないそうです・・・。
年商はなんと41億円!
食品スーパー、レストラン、生花店など10店舗!
創業以来40年、黒字経営を続けています。
すごいですね。
こんな小さな町でです。(羽村市の皆様、すいません)
こんな売り方、こんな商売の仕方があるのか・・・。
「消費税が転嫁できず悩める経営者」
「人が良すぎて低価格路線に偏りがちな弱気の経営者」
にとって、(すいません。これも言い過ぎですか)
非常に参考になると思いますので、ご紹介していきましょう。
その2 コンビニをわずか3年半でやめ青果店へ
ではまず福島屋の福島徹社長のご紹介から。
私が経営者本で必ずチェックすのは、その方の生い立ちでしたね。
1951年東京青梅生まれ。現在62歳。
昨日つい「羽村なんて知らない」などど
筆を滑らせてしまいましたが、(誠にすいません)
羽村市というのは青梅市の隣なのですね。
「青梅マラソン」で2度も訪れた、JR青梅線に「羽村」という駅が
有りましたね。
あと『フロストバイトマラソン』で有名な横田基地もそばでした・・・。
ただ東京のずっとずっと郊外であることには、間違いありません・・・。
実家は材木業をその青梅で営んでいたのですが、
倒産し非常に貧しい少年時代を過ごしたそうです。
高校生の時に、その羽村に引っ越して来て、
両親はわずか8坪ほどの小さな「よろず屋」を
始めます。
病弱な父親を支えるために、大学時代も家業を手伝い
卒業と同時にそのよろず屋を引き継ぎます。
もうここだけで、普通の創業社長と違いますね。
そういう幼少からの「たたき上げの土壌」のある経営者なのです。
わずか22歳ながら経営者となり、その才覚をすぐ現します。
まず酒類販売の免許を取り、酒屋を営みます。
当時の羽村は近隣に団地の建設ラッシュ。
そこに御用聞きに出かけ売り上げを伸ばします。
さらに、そのころ黎明期でもあった
「コンビニエンスストア」を始めるのですね。
でもここで、絶対私しか突っ込まないのでしょうけど、
わずか3年半でコンビニを辞めてしまいます。
どうしてでしょうか?
理由は、「自分の考えや裁量で自由に仕入れさせてくれないから。」
これはすぐ納得しましたね。
以前のローソン研究で詳しく勉強しましたから。こちら
コンビニというのはまさに本部主導ですから。
ここに「福島屋のオリジナリティを重視する原点」があるのでしょう。
しかし3年半でコンビニを辞めるとなると、
それなりの違約金など必要だったと思いますが、
当時の社長はまだ30そこそこの若手経営者。
「イケイケどんどん」だったらしいです。
しかも、そこで青果店からスーパーに業態転換して
さらに発展します。
なんと税務署管内で売上トップになったくらいだそうです・・・。
その3 なぜ失敗したか
20代で起業し、30そこそこで大成功。
でも多くの経営者は、ここで必ずつまづきます。
あのニトリの似鳥社長もそうでしたね。こちら
50坪ほどのスーパーで大成功した福島社長は
「調子に乗って」2号店を出します。
場所は立川で3倍の広さの150坪もあるスーパーです。
その時社長はまだ37歳。
時代背景としても、バブル景気に突入した頃です。
社長自ら振り返り、
「80年代の私は欲のかたまりでした。まだ若かったし、
負けん気も強く、エネルギーに満ち溢れていたのもあって、
売上や利益を出すことにだけ執着していた・・・」
当時の銀行のせいにしては申し訳ないですが、
いくらでも借りられたバブル時代。
なんと2億円もの借金をして、出店です・・・。
回りの声に一切耳を貸さずに・・・・。
経営者本で必ずチェックするのは、
「なぜ失敗したか。」
なんですね。
成功したお話は、まさに「勝てば官軍」
確かに真理もあるのでしょうけど、真似できないことも多い。
でも失敗した経験というのはまさに貴重なお話です。
しかも絶対真似はしてはいけないお話でもありますしね。
「立川2号店は開店当初の1週間は、1日800万から1000万の
売上がありました。でも2週目から日商120万から130万、
それが半年間続きました・・・・。」
衝撃の事実ですね。
多分日商300万くらいないと利益はでないでしょう。
ということは毎日赤字です。
「1カ月で1000万、2000万の赤字を抱える」(本文のまま)
ことになります。
経営者としてまさに窮地ですね。
体重も一気に15キロ減りました・・・。
「もう死ぬしかないかもな・・・・」
そこまで追い詰められたそうです。
でもここで「真理」を掴みます。
この死ぬ思いで悟ったこと。
ここがこの本で一番大事なところなのでしょう・・・。
その4 ありがたいなと思った瞬間・・
「こんなに安くしているのに、どうして買ってくれないのだろう。」
「毎晩こんなに一生懸命、陳列し直しているんだから
売れて当然なのに・・・。」
業績不振になった福島社長は毎晩思ったそうです。
実はこれでは
「これを私は売りたい。私がいいと思うから買ってよ。」
というエゴ丸出しの売り方なのですね。
分かりますか?ここ非常に大事なのですが
業績不振な理由を「すべて自分以外の人やもののせい」
にしがちですよね。
ここなのですね。
経営不振に陥った経営者の陥りやすい、まさに「負のスパイラル」
業績不振だろうがなんだろうが、毎日買いに来る人がいらっしゃるのですね。
さらに経営者として気が付かなければならないことですが、
業績不振だろうが仕入れさせてくれる協力業者もいる訳です。
ようやく福島社長はここに気が付いたのです。
「ありがたいなあ」と思った瞬間、
「これまでうまくいかなかったのは、全部自分のせいなんだ。」
そう気が付いたのですね。
まさに「お客様を見ないで」商売していたのです。
これは結構「真理」だと思います。
他のスーパー経営者の書物にも同じよなことが書いてありましたし、
もっと言えば、商売全体に渡る「普遍的真理」なのでしょう。
さらに従業員教育に失敗していたことも気が付きます。
立川店の店長に、永年苦楽を共にしてきていた
古参の従業員をせっかく抜擢したものの、あれこれ口出し過ぎて
やる気をなくさせていたのです・・・。
経営ビジョン、経営方針もあいまいなまま見切り発車したのでは、
やはりうまくいくはずなかったのでしょう。
だからこそ、新店舗でありながら、暗い雰囲気で
お客さんも寄り付かなかったのです・・・。
福島社長は、
「己の利益に走ると経営はすぐに破たんする。」
「まずは本気でお客様のこと、従業員のことを考えること。」
これを悟ったことで変わります。
ここから福島屋の快進撃が始まります・・・。
その5 グラフィック・ワークショップ
福島社長のこの「悟り」は非常に大事なことなのですね。
すべての商売につながるお話ではないでしょうか。
「売上が気になると、ついなんとか買ってほしい。」
そう思いますね。
そのためには、安く売りたがりますよね。
スーパーだったら、安売りをして、そのチラシを配る。
お店には、認知度の高い一流メーカーの品を
棚の一番目立つところに置きたがる・・・。
至極当然ですよね。
そうなると、ありきたりのスーパーとなって、
いまではどこにでもあるコンビニと一緒ですね。
その発想がオリジナリティを失うのだと。
結果的に客足が遠のく・・・。
そうなのですね。
今ではコンビニでも野菜が買える時代ですから。
商品を並べる「棚」を徹底して考えるのだそうです。
「どうしたらその野菜の良さ、美味しさを最もお客様に
伝えられるだろうか」と・・・。
そのために福島屋は毎月4日も
「グラフィック・ワークショップ」
をやっているのだそうです。
これは何かというと、
「売り場や棚の写真をすべて細かく撮影して、
それを全員で見ながら意見交換をするミーティング」
なんだそうです。
すべての写真を検討しABCDの4段階評価をします。
もちろん、
「お客様目線で売り場や棚をチェックすること」
が主眼なのですが
さらには
「何のためにこの店をやっているのか」
「なぜ自分はここで働いているのか」
「なぜお客様はきているだろうか」
そんなことまで議論するのだそうです。
すごいですね。
そんなスーパーが世の中にあるのです。
そんなスーパーなら毎日でも行きたいですね。
福島屋がなぜ「安売りをしない、チラシもない」のが
だんだん分かってきましたか?
その6 福島屋オリジナルのMPS
「グラフィック・ワークショップ」
はどんな業種の店舗でも、すぐ実行できそうですし、
真似をすべきことなのではないでしょうか。
飲食店で毎月あらゆる角度で写真を撮って
皆でそれを見ながら考える・・・・。
スタッフの商品知識や実力を伸ばしたり、
現場でその力を発揮させる訓練の場になるのは
間違いなさそうです。
これはお客さんのためだけでなく、人材育成にとって
有効なのでしょう。
ぜひこれをあらゆる店舗で真似してください・・・。
福島社長の「棚作り」にかける意気込みに
感動しました。
スーパーで、これまで考えているところがあるのでしょうか・・・。
その「棚作り」で真似すべき「福島イズム」
実は、福島屋には「ミセス・プロズ・スマイルズ」(MPS)
というチームがあるのです。
これは20代から60代の幅広い層の主婦14名からなるチーム
なんだそうです。
やはり「スーパーの主役」は主婦ですよね。
男性目線で、「棚とはどうあるべきか?」と考えるのではなく、
主婦目線で「自分ならどんなものが並んでいたら買うだろうか?」
が大事ですよね。
そのMPSで、それを「毎週」会議するのだそうです。
しかも単にその意見を聞くだけでなく、
マーケティング調査と売り場づくりまで担当させます。
例えば、「コーヒーの棚を改善したい」という要望があれば
そのMPSの担当者に任せます。
その担当者はさまざまな店舗や問屋に出向き、
見本市で足を運び福島屋にあった商品をセレクトしていくのです。
そうやって最長2カ月もかけ、棚を完成させるのです。
大事な点は、完成した棚には「担当者の名前を入れたPOP」を
添えることです。
「コーヒー担当の○○が美味しいと思い、選びました」
そんなPOPです。
皆様の日頃通っているスーパーを思い浮かべてください。
そんなPOP絶対ないですよね。
コンビニでしかコーヒーを買わない方は
まったく想像もつかないことでしょう。
これならやはり毎日通いたくなりますね・・・。
その7 あの木村さんのリンゴも販売
福島社長はなかなかのアイデアマンですね。
いまでこそ、「産地直接販売」などというのは
結構どこでもやっているかもしれませんが、
20年以上前から取り組んでいます。
特に東北地方の農家から直接仕入れていたのです。
自然栽培の稲作農家に社長自ら足を運び、
一人一人、一軒一軒人間関係を作りながら
開拓していったそうです。
現在では自然栽培米をはじめ、取り扱っているお米の
ほとんどが、農家から直接仕入れたもの。
さらには、野菜、くだものの自然栽培にも目を向け
青森のりご、岩手の豆、埼玉の野菜など、
全国に目を向けています・・・。
昨年の産地偽造問題などを取りあげるまでもなく、
今や「食の安全性」が叫ばれる時代ですからね。
消費者の目もそれだけ厳しくなってきていると
思うのです。
どこのスーパーでも野菜など食材を「安売り」したがります。
でもそれが安全かどうか・・・。
そう思うと「産直」という多少コストかかっても
「安全」を買う人が増えているのでしょう・・・。
最後に、巻末に青森のリンゴ農家で「木村秋則」さんが
登場していました。
もうこれだけでうれしくなりました・・・。
ブログやり始めてすぐの頃、取り上げた方でしたね。こちら
最近では、映画までになったとご報告した方です。こちら
木村さんのりんごなら、絶対食べてみたいと思っていましたから。
福島屋さんに買いに行きたくなりましたね・・・。
木村さんも、誰もが絶対できないと言っていた
「無農薬りんご」を作り上げた方でした。
既存ビジネスを打ち破る非常識さを持っていました。
福島社長もまさにそうですね。
既存のスーパーにはない発想をお持ちの方です。
前回ご紹介した獺祭の桜井社長もそうでしたが、
既存ビジネスに立ち向かうには、強烈な軋轢との
闘いがあるのですね。
でも、それを打ち破ろうとする勇気と努力が
ありさえすれば、必ず乗り越えられるのです。
そう考えていくと、消費税増税何て大した問題ではないのですね。
そんなスーパーを私は「毎日でも通って」
応援したくなりました・・・。
(がんばれ! 福島屋シリーズ おしまい)