その1 10年先すらわからない
「2020年はいったいどんな年だろう?」
年初からずっと考えていて、思わず飛びついた本ですね。
以前もご紹介しましたが、落合陽一さんですね。
日本の若きオピニオンリーダーです。
彼の本は「横文字」が多くてなかなか読みずらいのですが、
世界の最先端の潮流がよく分かります。
知らない単語や、その横文字を確認しながら、苦労してでも
あえてこういう方の意見を取り入れてみることも大事だと思うのです。
「2030年」というターゲットがいいですね。
2040年、2050年などともっと先のことは
正直分かりませんし、分かりえないのですね。
何故ならこの本の冒頭から書いてあることから、納得できるからです。
「2000年代からインターネットの普及によって本格化した
グローバリズムは、『GAMAM』(Google,Amazon,Facebook,Apple,Microsoft)
をはじめとするアメリカの巨大IT企業を生み出し、約14億人の人口を
抱える中国の急激な経済発展によってアメリカと世界を二分する国家へと
成長した・・・・」
まさにそうですね。
2010年に日本はGDPで中国に抜かれ、世界第2位の経済大国の
座を明け渡したのです。
「このような状況を2000年以前に予測できた人はどれだけ
いたでしょうか。」
「これほど技術革新のペースが速い時代には、10年先の
仕事内容や働き方を想像することすら難しいと感じられます。」
落合さんが10年先すら分からないというのであれば
本当にそうなのでしょうね。
タイトル通りに「2030年の世界地図」を描くことによって、
その中の日本はどうなるのだろうか?
どんな暮らしになっているのだろうか?
それが確かに分かると思うのですね。
でも世界情勢に興味ない人も多いのでしょう。
でも落合さんから、まずおしかりを受けます。
「目の前のことで忙しい、世界のことに興味が持てない。という人も
多いでしょう。近視眼的に見ていると、自らの立ち位置も
自分がやるべきことも見つけることは難しい。」
そうなのですね。
では、あえて世界に目を向けてみましょう・・・・。
その2 SDGとは?
2030年を考えるにあたってまず「SDGs」
ですね。
今後10年間は、このフレーズを抜きに世界は語られないのです。
最近よくマスコミでも取り上げられていますので、ご存じでしょう。
SDGsがまず読めないですね。「エス・ディー・ジーズ」と呼ばれます。
「Sustainable Development Goals」の略です。
Sustainable(サスティナブル)という単語が難しいでしょうか?
「持続可能な開発目標」
難しい単語ですし、フレーズです。
今後世界経済を語るには、このフレーズが流ちょうに言えなければ
お話にならないのですね・・・。
10回くらい呪文のように唱えてみてください。
ではその開発目標ですが、
外務省のHPからダウンロードしました。
この絵はこれからよく見ることになるのでしょうね。
この絵を見てすぐ分かりませんね。
体的にはこの17項目です。
では次のミッションです。
この17項目を10回唱えてください。
これからの世界経済を考えるには大事な行動指針で
あるはずですから・・・。
SDGsの母体となったのは、2000年から2015年に
かけて進められた「MDGs」なのですね。
しかし、ほとんどそれが達成されないままに終わったのです。
その反省を踏まえて策定されたのがこのSDGsなのです。
しかし、落合さん自身も
「最初このSDGsを初めて耳にした頃は
あまり腑に落ちませんでした・・・。」
正直ですね。
コレ確かに私もそう思います。
先ほど10回と言いましたが、2、3回で
「飢餓??」
最初に来る「飢餓をゼロに」なんて言われても、
日本人にはピンとこないでしょうね。
ニュースで「日本人が餓死した・・・」なんてことは
聞いたことがないですからね。それどころが日本では食料が余って、
「フードロス」が問題になるくらいですからね。
その3 ピンとこない理由
ではそのSDGsが、なぜピンと来ないのか?
冒頭から落合さんも解説しています。
まず、「貧困をなくそう!」といっても日本人にはピンとこないですよね。
SDGsの17項目の下に169のターゲットがあるのです。
ターゲットは目標をさらに細かく分けた小目標なのですね。
その「貧困対策のターゲット」に
「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と
定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」
というのがあるのですね。
これを知って驚きますね。
1.25ドルとは、現在1ドル110円くらいですから
140円くらいですよね。
「毎日140円で暮らす人を極度の貧困」と国連は定義しているのです。
日本人なら毎日行くコンビニでも一回140円は最低使っていますね・・・。
「毎日140円で暮らす??そんな人が世界にいるのか?」
まずそれを知ることからSDGsは始まります。
割合が高い国です。
どこにあるか分かりますか?
地図でいうとココなのです。
ピンとこない理由がコレで分かりますね。
日本から、あまりにも遠く離れた国だからなのです。
もう一つピンとこない理由。
やはり、この「Sustainable」(サスティナブル)
を「持続可能」と訳しますが、そもそもこの単語自体がピンと
来ないのですね。
ココがSDGsを分かりにくくしているというのです。
正直私にもよく分かりません。
「持続可能」という単語を私自身も半世紀以上生きていながら、
一度も使ったこともないからですね。
「持続可能な開発目標」!?
「何それ??」
ごもっともです・・・。
その3 サスティナブル??
この「サスティナブル」(持続可能な)をやさしく解説してみましょう。
唐突ですが、ここで筒井康隆原作の「時をかける少女」を例にとります。
私の年代でいうと女優の原田知世が主人公で映画化されましたね。
1983年(昭和58年)の頃です。
原田知世が
「時〜を〜♪ かける〜♪ 少女〜♪♪」
と歌って大ヒットした映画ですね。覚えていますか?
舞台となったのは広島の「尾道」です。
私も昨年旅行しましたが、坂道で有名な実に風光明媚なところです。
特に尾道の街中には当時から保全されている景観や、昭和初期の建物を
居抜きで使っているカフェなど豊富にあるのです。
当然映画でもその坂やカフェがロケ地として選ばれていますね。
その「時をかける少女」が20年後の2006年にアニメ化されました。
その映画とアニメを比べると「サスティナビリティ」(持続可能性)
な考え方がよく分かるというのです。
「どういうことでしょうか?」
このアニメ画像を見てください。
20年前と同じ坂が描かれているというのです。
登場人物の髪型や服装は変わったり、黒電話がスマートフォンに
変わっています。それでも、素晴らしい景観は変わらないというのです。
つまり、価値があるものとされる「尾道の坂」をどうやって維持するのか
ということを考えること、それこそが「サスティナビリティ」(持続可能性)
なんだということなのです。
尾道市役所には「環境政策課」があり、尾道の環境を維持するような
政策を長年やってきているのです。
例えば、スーパーの夜の照明を控えてもらうとか、景観にそぐわない銀行の大きな看板を
撤去してもらうなど長年努力してきたのです。
それは、尾道市民全員が
「尾道の景観は素晴らしいものだ。永遠にそれを守ろう。」
と共通認識として思っているからなのです。
尾道市民は「サスティナビリティ」(持続可能性)を理解しているのです。
どうですか?
分かりますか?
それでも分かりにくいですよね。
何故なら
「現代の日本では公共に対して社会を守ろうという感覚が薄い」
からだろうと落合さんは言っています・・・・。
その5 少子高齢化が進む日本は?
「SDGs」とどう付き合っていくかが日本人に問われているのですね。
海外の方から
「二酸化炭素についてどう思っているか?」
「貧困に対してどう思っているか?」
そういうことが当たり前に問われる世の中になってくるのです。
国際的な関係を維持する上でも、そういう問題認識を
共有することが大事にもなってくるのでしょう。
「SDGs」について聞かれる場面で、落合さんはこう答えるのだそうです。
「日本は、人口が減ってきていて、環境や文化などを持続可能な仕組み
に変え、伝統を守ることがとても大変だ・・・」
「なるほど!」
と思いませんか?
これで「持続可能」という意味がようやく分かってきましたか?
ただここで「少子高齢化」のことにも触れなければなりませんね。
この本でこの問題についても深く掘り下げています。
まさに「日本固有の問題」ということが良くわかります。
人口ピラミッドが異常な形をしているのは日本だけなのですね。
でも日本も第二次大戦直後の1950年は理想的な富士山型だったのです。
経済発展とともに1980年ごろから徐々に出生率が低下。
そして現在のつぼ型に・・・。
現在のアフリカは、1950年当時の日本とソックリです。
これからまだまだ人口増が期待されるアフリカやインドは
経済発展が予測されるというのです。
中国は2030年頃から人口減少に向かうとしていますが
それでも14億人もいますからね。
なんとインドは中国を人口で抜くと予想されています。
2050年までの大胆な人口の順位予想。
日本は10位から17位に転落。
しかし、インドは世界最大の人口に。
人口増加による経済発展はどうなるのでしょう?
2030年に中国はアメリカを抜き、
何と日本はインドにも抜かれます。
2050年にはインドネシアにも抜かれます。
ドイツやイギリス、フランスは・・・・。
その6 AIにより働きがいはどうなる?
これから「SDGs」の17項目を一個ずつ説明しようと思いましたが
なかなか大変です。
ターゲットを全部読むだけでも大変ですからね。
では最後に自分の仕事と一番関係ありそうなところをご紹介して
終わります。
SDGsの目標8は
「働きがいも経済成長も」
です。
この分野でも最大の技術的トピックスは
「AIやロボティクスによる、現状の職業に対する人間の労働の代替」
ですね。
つまり、以前も取り上げましたが「AIにとって代わる職業」、
「AIによりなくなる職業」なのですね。
恐ろしいことが書かれていました。
「最初の大きな変化は、士業を中心とした資格専門職の代替」
「2030頃には弁護士、裁判官、『税理士』、警察官といった、
法律に基づいた判断が求められる職業の現場にAIが導入される」
のだそうです・・・。
10年後にはAIによって税理士の職業が奪われてしまうのでしょうか?
ただ
「これらの職業は対人技術も求められるため、人間はすぐには排除されませんが、
その役割の大半が機械化され、人間は顧客からの対応を行うインターフェイス
としての役割に特化することになるでしょう」
「インターフェイスとしての役割」
この言葉に考えされられましたね。
確かにフィンテックがより進化し、記帳処理といった単純作業はAIに
代替されるのは間違いないと思っております。
それでも人間同士のコミュニケーションは絶対残るはずです。
では最後にオチを・・・。
ご存じ「はま寿司のペッパー君」
もうじき確定申告ですね。
はま寿司の入り口にあるように、10年後には税理士事務所の入り口にも
このペッパー君が登場してくるのでしょうか?
「いらっしゃいませ。確定申告の御用でしょうか?
源泉徴収票と医療費の領収書はこちらにいれてください・・・」
10年後にはそうはならないと思うのです。
そこに税理士の存在意義があると・・・。
なかなか勉強になった世界地図でした・・・。
ありがとうございました。
(がんばれ! SDGsシリーズ おしまい)