その1 免税事業者は消費税分を値切られる??

 

「インボイス制度が始まったらいったいどうなるのだろう?」

 

税理士会の研修会でいろいろと消費税を勉強しております。

 

先日の朝日新聞には

「シルバー人材センターで働いている人はどうなる?」

結構切実な問題ですね。

いろいろ書きたいことはあるのですが、

勝手な憶測では書けないので、真面目な公式文書で勉強していきましょう。

 

 

財務省の公式サイトからです。 こちら

マンガで実に分かりやすく出ていますのでご紹介しましょう。

 

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事例1

 

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下請事業者Aさんが出てきますね。

個人事業者です。

親事業者から仕事を11万円で受けました。

いかにも10万円と消費税1万円という感じですね。

来年の10月1日からのことです。

 

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仕事終わって請求書を親事業者に出しますね。

でもここで問題なのがAさんは免税事業者ということです。

ということはインボイスの登録はできないのです。

そうなるとインボイスの番号はもらえません。

インボイスの番号が書かれていない請求書を

出すことになります。

 

このあたり分かっていればいいのでしょうけど

そもそもAさんは「インボイス?何それ??」

全く知らないのかもしれませんね・・・。

 

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ここで親会社の担当者は

Aさんが免税事業者であることをはじめて分かりますね。

 

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Aさんは

「あなたは免税事業者なら、消費税相当額は払えないなあ・・・」

 

そう言われてしまうのです。

ズバリ1万円値引きされてしまった・・・。

 

これ来年の10月から本当に起こっても不思議ではないですね。

 

税理士として日ごろから思いますが、免税事業者として

消費税のことを一切考えてこなかった方が、今急に

「消費税について勉強しろ」

と言われても分かる訳ないからです。

 

令和5年9月30日まで、普通に

「10万円と消費税1万円請求してきた」

それが変わったことにさえ気が付かないからです・・・。

 

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 でも安心してください。

「下請法違反」

だと財務省は言っているのです・・・。



その2 下請法違反とは?


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ハイ。ここで「下請法」って何?

と絶対に聞かれますね。

 

免税事業者の方々は今後大変ですね。

「インボイス」どころか「下請法」なんていうものを

勉強しなければならないのですね。

 

 ここで公正取引委員会のHPから抜粋します。 こちら

 

下請法は「親事業者の濫用行為を取り締まる法律」

のようですね。

つまり、

ズバリ「優越的地位の」濫用行為を取り締まる法律のようです。

 

ご存じでしたか?

もう少し詳しく説明すると、

 

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親事業者が下請法に違反した場合には、公正取引委員会から、

やめなさいと勧告されるのですね。

 

その勧告も、

1.違反行為の取りやめ

2.下請け業者の被った不利益を原状回復すること

3.再発防止措置を採る

 

ということまでやってくれるのです。

ですから、親事業者が、10万円の請求に対して

 

「免税事業者の人には消費税分払えないなあ・・・」

 

言われたら

「1万円をきちんと払いなさい!」

と代りに行ってくれるようですね。

 

それだけでなく、

 

「勧告された場合は、企業名、違反事実の概要などが
公表される」

 

のですね。

これは親事業者にとっては怖いですね。

コンプライアンス(法令順守)が強く叫ばれるなか、

下請法違反は企業価値を大きく損なってしまうのです・・・。

 

でもここまで書いていろいろ思いましたが、

下請の立場は弱いものです。

 

1万円もらえなかったからと言って、

「下請け法違反で訴えてやるぞ!」

とはなかなか言えないのでしょうね・・・。

 

「そんなタンカ切ったら今後契約打ち切られたら・・・」

 

ただ、そういう法律もあるということを、

ぜひ知っておいてください。

 

ただ研修で学んだことですが、このケース何が問題かというと

親事業者が契約段階で、

「10万円が税込みなのか税抜なのか」

確認しなかったことですね。

当然この場合には

「インボイス発行できるか?」

つまり

「免税事業者であるかどうか?」

という確認も含みます。

 

ということは、「免税事業者として知っていながら」

発注していたら「悪質」となるかもしれないです・・。

 

最後に書きますが、

この「考え方」のパンフレットが実にあいまいなのは、

下請法違反の「おそれがあります」ですから

「違反です」とハッキリ書いていないところですね・・・。




その3 インボイスを登録しても同じ価格で??


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次は事例の2ですね。

これも、今後よく出てくるのではないでしょうか。

 

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下請事業者Aさんが出てきますね。

同じく個人事業者です。

親事業者から仕事を「継続的に」10万円で受けてました。

 

「Aさんが免税事業者であることも知っている」

ということもポイントです。

 

親会社の担当者から

 

「今度インボイス制度始まるけど、

ところでAさんは免税事業者なの?」

 

というようなことを聞かれていることも想定されますね。

 

Aさんは

 

「免税事業者です」

 

と正直に言っているのでしょう。

まさは、確定申告書を親事業者に提出しているということは、

ちょっと想定しにくいでしょうから。

Aさん自身がそもそも「免税事業者って何?」
レベルかもしれませんが・・・。

担当者としては、日ごろの取引額から容易に年間売上1000万円以下で

あると予想される下請業者も多くいるのでしょう。

 

 

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担当者から

 

 「今後を踏まえ、インボイスの登録をお願いします」

 

そう言われることもあるのでしょうね。

 

インボイスのことはさておき、仕事を継続したいAさんは、

 

「承知しました!喜んで!!」

 

もちろん「居酒屋の店員みたいな」二つ返事です・・・。

まあ、発注元と下請けとの関係ですから

絶対に断れないでしょうから・・・。

 

 

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Aさんはインボイスのことよく分からないままに

とりあえず登録してしまいます。

でも登録すると「税金が取られること」を知ってしまうのです。

それでは、今までの10万円をもう少し上げてもらわないと

税金分で手取り減ってしまいますからね。

ここはいくら税金が出るのか難しくて

分からないと思いますけど、何となくはお分かりになりますか。

 

ここでAさんは思うのです。

 

「インボイス事業者になったら、次回は価格交渉を

しないと・・・」

 

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そう思っていたので、価格交渉しますね。

「今後は消費税1万円分を乗せて11万円でお願いします。」

 

「それは無理です!いつもの10万円で発注させて

いただきます!」

 

そう言われたら本当に困ってしまいますよね。

親事業者の依頼で税金を納めることになったのに

単価を変えてくれない・・・。

 

現実にはこんなこと起きるかもしれませんね・・・。

 

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でも安心してください!

 

 これも「下請法違反!」なのです・・・。




その4 インボイス事業者でないと取引できない??


 ハイ。また出てきましたね。「下請法」ですね。

 

しかし、このケースはいわば「だまし討ち」みたいですからね。

ちょっと下請業者がかわいそうな気もします。

 

ただAさんが

 

「課税事業者になることは、もちろん喜んでなりますが、

その分消費税の1万円上乗せして11万円請求していいですか?」

 

ここまでハッキリ言えるかどうかなのですね・・・。

まあ下請の立場は弱いものです。

それを守るのが「下請法」であってほしいですね。

 

では次のケースの方がもっとあるかもしれないですね。

今後、特に建設業界などでは問題になってくるかもしれません・・・。

これもう現実に起こってきているのです。

よくお考え下さい。

 

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 事例3

 

取引先A 取引先B がともに免税事業者とします。

元請業者などから要請を受けるケースです。

 

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元請の会社が

 

「うちは免税事業者との取引が多いし、とりあえず、

課税事業者になってもらおう」

 

そう考えたのですね。

免税事業者の下請を多く使う建設業ではありうるお話ですし、

小規模のライターなどたくさん使う出版業界でも多いでしょう。

 

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要請文書の中に

「インボイス事業者にならなければ、消費税はお支払いできません。

承諾いただけなければ、今後のお取引は考えさせていただきます。」

 

実にキビシイですね。

取引できないと本当に困るので、無理にインボイスの登録する
ところも出てくるでしょう・・・。

 

でもやはり納税することもキビシイので

免税事業者のままでいたいというところも、中にはいるかもしれません。

それでAさんは免税事業者ままでいることを選択したのです。

 

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「免税事業者のままでも、価格を据え置いて

もらえませんか?」

 

「免税のまままら10%価格を引き下げます!

それがいやなら今後の取引は考えさせていただきます!」

 

これ言われたら本当に困りますね。

それがイヤなら契約打ち切り・・・。

しぶしぶでも承諾せざるをえませんね・・・。

 

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Bさんは、しぶしぶながら課税事業者になることを

選択しました。

 

「課税事業者になります」

 

でも、せめて消費税分を上乗せしてくれないと

税金払えませんね。

でもこういわれてしまうのです。

 

「今まで通りの金額でお願いします」

 

Bさんはボヤきます。

 

「価格交渉もさせてもらえない・・・」

 

これは本当にキビシイですね。

 

ハイ。ここでもっと恐ろしい法律が出てきました。

 

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「独占禁止法違反!!」



その5 独占禁止法違反??


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「独占禁止法」という難しい法律が出てきましたね。

 

またまた公正取引員会のHPです。 こちら

これ読んでわかるでしょうか?

 

「下請法」というのも独占禁止法の「補完法」らしいですね。

 

まあ、多くの方がこう思うでしょう?

特に建築業界の荒っぽい社長などは・・・

 

「独占禁止法?そんなのウチには関係ない!

 ウチだって大手ゼネコンの立派な『下請』だ!

 ウチこそ守ってほしい!!」

 

「オリンピックで『利益を独占』している企業こそ

取りしまるべきだ!!」

 

まあこんな感じでしょうか?

しかしまた、このパンフは実にあいまいな表現です。

 

「独占禁止法となる『おそれ』があります!!」

 

ハッキリ「独占禁止法だ!」とまで書いていないのですね。

 

「独占禁止法くらい『おそれて』いるようでは、

建物業では利益なんかでないぞ!」

 

また威勢のいい社長はこうなりますね・・・。

 

研修でも再三お聞きしましたが、特に建設業では

今まで申し上げた「3例」がいろいろな形で出てくるかもしれませんね。

 

そのたびに

 

「下請法違反だ!」

 

「独占禁止法違反だ!」

 

などと裁判なんかしていられないでしょう。

 

 

ただ研修で大事なことを学びました。

 

元請け業者が

「一方的に」

とか

「価格交渉の場を設けずに」

さらには

「明示的な協議なしに」

 

ということが問題のようです。

今後インボイス制度をキチンと理解した上で

下請業者と「誠意をもって」話し合う必要が

あるようです。

 

そのためには、まず我々税理士業界の果たす役割は

大きいですね。

 

「免税事業者を多く使う業種」

 

例えば、再三例示で出てくる

 

建設業界、出版業界などの経営者に、

「制度の理解をしてもらう」

ことが大事なのでしょうね。

 

その上で、経営者自らが下請業者の方々と、

「誠意を持った話し合い」の場を持ってください

と説明しなければならないのです。

 

大事なことはその「期限」が

「令和5年3月31日」

までなのですね・・・。




その6 消費税分は払えないはウソ


経営者と下請業者との「誠意を持った話し合い」の場を

設けてください。

 

とお願いしたところですが、話し合う前に大事なことを

ぜひ知っていただきたい点があるのですね。

これは経営者もそうですが、下請業者の方も
ぜひ知ってください。

 

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事例1で、親事業者が免税事業者であることにより

「消費税相当額(つまり1万円)は払えないなあ・・・」

と言われましたね。

 

これなぜそういうかというと、

「免税事業者の方への支払は『課税仕入』できないからです。」

 

「課税仕入」という言葉が分からない方のために、もっと具体的に言うと

 

「本体価格10万円と消費税1万円支払っても、

1万円を『税額控除』といって、消費税の計算上引けないのです」

 

だから、元請け業者は消費税の計算上1万円損することにより

 

「払えないなあ・・・」

 

と言われたのですね。

でもこれに対しては、次のことを知ってください。

下請業者の方は、こう反論できますし、

元請業者なら当然知っていなければいけないことなのです。

 

 

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「経過措置」というのがあるのです。

 

これ私の監修の

「はじめてでもできる個人事業主フリーランスの青色申告」

から抜粋します。

 令和5年9月までは全額控除、つまり1万円全部引けたのです。

でも経過措置により、

 

令和5年10月から3年間は80%引けるのです。

 

「1万円全額引けなくなる」のは、具体的には令和11年10月から

なのです。まだまだ6年も先のことなのです。

 

ですから「1万円引けなくなるのではなく」、

なんと!「8000円は引ける」のです。

 

このことから元請業者が

 

「10万円しか払わない」

と言われたら、

 

「せめて10万8000円払ってください。

そうすれば8000円引けるので、今と一緒です・・・」

 

どうでしょうか。

まずここまでお分かりになりますか




その7 元請け側が誠意をもって話し合う


何度も書きますが、下請業者の立場は弱いのです。

元請から

「10万円だけで消費税分は今後払わないよ・・・」

と言われて

「せめて10万8000円払ってください。」

 

とはなかなか言えないのです。

やはりここは元請業者の立場から提案して欲しいのですね。

 

もう一度「悪い」元請業者に登場してもらいます。

 

20220929-092920

  

 

これでは本当に困りますね。

免税業者の方々は、10万円の仕事に対して、いったいどうやって

今までの消費税分をもらったらよいのでしょうか。

 

ここで「東京税理士会の研修講師」のお勧めする案を

ご説明します。

 

大前提は「元請側が下請の業者さんに誠意をもって話し合う」

ことが大切なようです。

 

それで大事な金額は

 

「10万8000円〜11万円の範囲」

 

なんだそうです。

なぜこうなるかを元請側が理解していただくことも

必要です。

 

一方的に「免税業者なので10万円しか払いません」

はやはり論外のようです。

 

@ 11万円

優秀な下請さんなら今まで通り払ってやってください。

元請側が8000円しか税額控除できませんが、

2000円くらいは元請側が負担してでも下請業者を守ってください。

恩義に感じてもらえれば、今まで以上の仕事をしてくれるでしょう。

 

A10万8000円

元請社長さんが「誠意をもって」

「ウチも消費税負担が大変なのです。分かってください。

これからは8000円しか引けなくなることをぜひ理解してほしい」

とお願いするのでしょうね。

 

B10万円9000円

これも元請の社長さんが

「2000円の消費税負担をそちらに全部負担させては申し訳ない。

折半してお互いに痛みを分かち合いましょう」

とこれもお願いするしかないのでしょう・・・。




その8 課税事業者になってもらう場合


次に課税事業者になってもらう場合ですね。

 

もう一度「悪徳」元請業者に登場してもらいます。

 

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これではダメなのですね。

「価格交渉」

ということがキーワードのようです。

 

「いくら価格を引き上げてもらえばいいか」

もう少し具体的に説明しましょうか。

建設業の下請さんがいたとします。

(材料などか会社から支給されるまさに工事の下職さんとします)

 

毎月50万の仕事を今では消費税含め55万円で元請業者に

請求していました。

月収55万円×12ヶ月で、年収660万円ですね。

今までは免税事業者です。

1000万円以下ですので、消費税を払わなくって良かったのです。

でも元請業者の要請により、インボイスを発行するべく
課税事業者になりました。

 

さていくら消費税を納めるのでしょう。

ここで必ずある間違いです。

 

消費税を納めるということは、5万円×12ヶ月=60万円

取られると思うのですね。

間違っても仕方ないです。消費税は10%取られますから

納税も10%かと思うのです。

 

ここは元請業者から下請業者にキチンと指導しなければ

ならないところですが、「簡易課税」というのがあるのですね。

 

建設業の下請業者は第4種事業に該当することが多いです。

説明で
(材料などか会社から支給されるまさに工事の下職さん)
と入れたのはそのためです。

第4種の場合は消費税の60%控除可能です。

 

ですから

預かった消費税60万円から60%引けるのです。

そうすると

60万円―60万円×60%=24万円

24万円ですね。

 

月に2万円の納税がかかってくるのです。

つまり10%の消費税のうち40%だから計算すると

4%が納税額なのですね。

 

ここなのです。

ここを含めた上で価格交渉ができるかなのですね。

 

ここはまさに「誠意をもって」下請業者と交渉となるのでしょう。

 

景気の良い元請業者なら、

 

「今後皆様に売上の4%相当を消費税負担して
もらわなければなりません。

よって来年の10月からは単価を4%引き上げさせて
いただきます。

ぜひとも課税事業者になってインボイスを発行お願いします。」

 

こういえたら実に「カッコイイ」ですね。

 

 

もっと正直に下請業者にお願いするかもしれません。

 

「本当は価格を引き上げて皆様に課税事業者になってほしい。

でもウチも苦しいのです。分かってください。

でも売上の4%を『販売奨励金』としてバックしますので

今後は課税事業者になってください。

お願いします」

 

腹を割って頭を下げるしかないかもしれません・・・。




その9 大岡越前による解決策!?


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インボイスの解決策はコレだ!

見つけました。

 

私の現在の愛読書「正直不動産」からの最新刊の15巻ですね。

その中に描かれていた

「三方一両損」

まさにコレなのですね。

 

・・・?

まあ分からないでしょう。

これは有名な落語のお話なのです。

 

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世に言う「大岡さばき」の典型的な例として挙げられています。

ではまず古典落語に沿って

「インボイス落語」?

 

お話は江戸時代。

 

江戸に住む職人は

「宵越しの銭は持たねえ」

を信条に生きていました。

というのも、腕のある職人は、働けばその日から稼げた時代
だったから。

蓄えというものがなくても、みなで助け合ってなんとなく

生きていけたからです。

だからお金にこだわるのは恥という感覚が

厳然としてあったのですね。

 

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左官屋の金太郎が、三両入った財布を拾いました。

 

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持ち主は大工の吉五郎らしい。ところが、

 

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吉五郎は

「いったん俺の懐から出た金は俺のものではないから

受け取れない」

 

金太郎は、

「拾ったお金を自分のものになんてできない」

と意地の張り合いの末、大喧嘩に発展。

 

 

20221004-083018

 

結局奉行に解決してもらうことになります。

 

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名奉行と噂の大岡越前は、

三両に一両足して四両にし、吉五郎に二両、金太郎に
二両渡します。

 

本来なら届けてもらったのをそのまま受け取れば三両になるところ

一両損した吉五郎。

拾った財布をそのまま自分のものにしていれば

三両が懐に入っていたはずの金太郎はそれぞれ一両の損。

 

両者がいらないという三両をそのまま受けとらずに

一両足した奉行も一両の損。

 

これこそ

「三方一両損」!!

 

分かりました?




その10 三方一両損とは





 

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分かりましたか?

マンガ「正直不動産」的な解説ですが、

「左官と大工は1両で江戸っ子のプライドを

守れたのですし、大岡越前も1両支払って

諍い(あらがい)を納めることができた・・・。」

 

「見方を変えれば誰も損していない」

これこそが

「三方一両損」

の真意なのです。

 

まだお分かりにならない方のために、

ではこれならどうでしょう。

「正直不動産的 三方一両損」

 

正直不動産の主人公永瀬財地のところへ中古マンションの

仲介案件がきます。

 

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相手の予算は「5000万円以内」。

ようやく希望通りの物件を見つけましたが、

 

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でも価格は5300万円!

 

でも5000万円以内に収めるには

5300万円の「6%の値引き」が必要です。

(6%値引きで4982万円)

 

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物件のオーナーは当初3%の値引きしか認めません。

 

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しぶしぶ「4%」の値引きまで。

でも買主は「6%値引き」を希望し、

売主は「4%値引き」までですから。このままなら契約は

成立しませんね。

 

 

そこで永瀬の「大岡サバキ」!!

 

結局永瀬は売主からの仲介手数料を

「3%」から「2%」にすることで、

売主から「5%値引き」を承諾させ

買主に「5%値引き」で契約させたのです。

売主は実質的には4%値引きで売れたわけですし、

希望通り早期に売却できたのです。

 

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これでもう、どうしたらよいかもう分かりますね。

大岡越前になったおつもりでお考え下さい・・・。





その11 社長の本心から三方一両損

 

インボイス解決策分かりましたね。

「三方一両損」

 

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ではここで

「大岡工業の越前社長」にご登場いただきましょう。

 

「免税事業者」の方も必要ですから

左官屋の金太郎さん、大工の吉五郎さんも再度登場。

 

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この方々は大岡工業の永年の下請職人でした。

腕は一流なので、月の支払が50万円〜60万円。

ただ、とても今後も1000万円を超えて課税事業者になるとは

思えません。

またどうみても性格的に帳簿なんか真面目に

つけていそうもありません。

 

 

越前社長からのお願い。

 

知っていると思うけど来年からインボイス制度が始まる。

そうすると金さんも吉さんも、税金が出てしまう。

こちらで計算したのだけど税金も20万円か30万円になる。

それはあまりに忍びない。

 

ここから大事なお話。

 

「そこで相談なのだが、今まで通り免税事業者のままでいいから、

来年から10%の消費税分を9%にさせて欲しい。」

 

そうお願するのですね。

正直に話すのです。

 

「難しいことは言わないけど、今までウチは消費税10%
引けていたのが
8%しか引けなくなる。
それで、ウチの顧問税理士からは8%にお願いしたら
言われている。

だから本来なら8%にしてほしいところだけど、

ここは一つ『三方一両損』ということで、9%にしてほしい。」

 

ここは、さらに腹を割って話してほしいのですね。

 

「本当は課税事業者といって消費税を納めてほしいの

だけど、お二人に税金がでてしまう。

ただ10%納めるのではなく『簡易課税』というのを

選択すると4%で済むらしい。

でもそれでも今までの請求額の6%にしかならない。

しかも、帳簿もきちんとしなければいけないし、

税金も計算しなければならない。

たぶんあんたらにはできないだろう。

もし自分でできないと『火事場泥棒のボッタクリの税理士』から

法外な報酬をさらに請求される。

それでは本当に申し訳ない。」

(すいません。勝手な業界批判です)

 

「大手の企業は課税事業者にならないと取引しないって

ところあるらしいけど、ウチはそんな薄情なことはしない。

金さんや吉さんが永年働いてくれたからこそ今のウチが

ある。そこは本当に感謝しているんだ。

今はウチも確かに厳しい。

でも会社も生き延びなければならないんだ。

でもそこは分かってほしい。」

 

 

もう切々と誠心誠意お願いするしかないですね。

もちろん「社長の本心の言葉で」です。




その12 大事なことは3年後


それと話し合いで大事なことは、3年後のことですね。

経過措置で免税事業者でも8%控除できるのは3年間だけなのです。

その次は5%に下げられてしまうのです。

 

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ですから越前社長は職人たちに

 

「3年間はこれでお願いしたい。

3年間でウチも頑張って立て直すから、
もっと単価を引き上げるようにする。

そうしたら、そちらも課税業者になってキチンと税金を納めて欲しい。

そうなったら、ウチ以外でもどこでも堂々と仕事がもらえる。」

 

そういって、こういった話し合いを腹割って3年間していくしか

ないのでしょうね。

 

建築業界はインボイスだけではないのです。

DX化を始め、今一気に変わってきています。

 

大手ゼネコンの建築現場は、20年度からIDカードで

入退室管理されるようになりました。

そのIDカードも顔認証システムも併用し始めました。

大事なことはそのIDカードを持つためには社会保険に入っていないと

もらえないのです。

もし、左官屋の金太郎さんや大工の吉五郎さんが

いわゆる「一人親方」で社会保険さえも加入していなかったら

どうなるのでしょうか。

現場に入れなければ今後仕事をもらえなくなるかもしれないのですね。

 

そんな状況なので、職人さん自身もいろいろ考えていかなければ

ならないのでしょう・・・。

 

そういう状況であることを、今後越前社長も職人さんたちに

話していかなければならないのでしょう・・・。

 


ところで落語「三方一両損」には大事なオチがあるのですね。

落語では「サゲ」と呼ばれますが。

だからここまで知っていたら、大岡工業の越前社長も

金さんと吉さんを食事に誘わなければならないのですね・・・。

 

では落語「三方一両損」の「サゲ」

 

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三方丸く収まったところで

大岡越前は

一同に豪華な食事をご馳走するのですね。

 

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20221004-082704_20221007110801

二人は

「今度腹が減ったら喧嘩してまたここに来ようぜ」

と意気投合してしまうのです。

 

大岡越前が二人の大食を心配し

「あまり食べ過ぎるなよ」

と声をかけます。

 

「えへへ、多かあ(大岡)食わねえ、たった一膳(越前)」

 

おあとがよろしいようで・・・。

 

(ガンバレ免税事業者シリーズ おしまい)




























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