その1 上場企業の経営者のリアル経営学


経営の決断

面白い本を見つけました。

いつものようにamazonで本を探していると、

「まず絶対買わないかな」と思う本を見つけました。

それはあまりにも高かったからです。

3,300円+消費税! つまり、3,630円!!

「何だろう?」

と思ってつい著者を調べてしまいました。

良くあるのが高名なコンサルタントの方が、

ブランディングとして、値段を高くすることが良くありますが、

著者はなんと上場企業の会長さんでした。

 

「何でこんなに高いのだろう?」

 

不思議に思って他の著書を見ると

皆1万円以上もする高額の書籍ばかり。

 

俄然興味を持って、著者である佐藤肇氏を調べました。

静岡に本社がある「スター精密」の会長さんです。

工作機械やプリンターのメーカーなのですが、

国内では申し訳ないですが、知名度がありません。

それもそのはず、何と海外売上比率が80%を超える

グローバル企業なのですね。

 

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上場企業ですから、得意のEDINET分析から。

コロナ前では売上高600億円を超えます。

しかも収益性の高い展開をしていますね。

 

びっくりしますが、直近の2020年1月期で、

総資産716億円に対して純資産が498億円!

これは超優良企業です。

「東海随一の超優良企業」と呼ばれるゆえんですね。

 

ではその主人公の佐藤肇氏。

1951年生まれですから、現在70歳。

4年ほど前に社長から会長になっています。

 

20211021-094457

 

1975年に学習院大学経済学部卒業。

実父、佐藤誠一氏が裸一貫で創業したスター精密に入社します。

 

いわゆる「典型的な2代目」ですね。

しかし、典型的な中小企業であったスター精密を

父とともに東証一部上場の世界的メーカーに育て上げたのですね。

 

その方が書き下ろした「経営指南書」が何冊か出ています。

ご紹介した通り高額な書籍なのですが、

地元の静岡の若手経営者に「佐藤塾」として教えているそうで、

いわば「門外不出のテキスト」だからなのでしょう。

 

またほかにもCDやDVDなども出されているようです。

 

この本はそれらの本のエッセンスを散りばめられた

要約本なのですね。

 

確かに高額かもしれませんが、それなりの価値は十分あると

思います。

私自身勉強する意味で、少しご紹介しましょう。




その2 経営の定石とは?


この佐藤会長は「定石」という言葉がお好きなようです。

 

「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」

「決断の定石」

 

「定石」というと囲碁の用語です。

佐藤会長は囲碁をおやりになるのでしょうか?

 

私が囲碁を覚えた50年も前の頃、まずこの「定石」というものを

覚えさせられました。

基本の定石として100個〜200個はあったでしょうか。

ひたすら覚えることで、基本の手筋をみにつけのではないかと

思います。

 

「経営には定石があるのでしょうか?」

 

これは長年の課題です。

私が今まで師として尊敬してきた京セラの稲盛さんにも

「経営のバイブル」

と言われる書籍がありました。

以前ご紹介しましたね。

何度も読み返した愛読書です。こちら

 

「経営の定石」が本当にあるのなら、

稲盛さんと同じことを言わなければいけないのです。

また、稲盛さんと同じように、「経営のノウハウ本」を

書かれた経営者はたくさんいますね。このブログでも

多くの経営者を取り上げましたから。

 

経営者はすべて同じことは言っていませんが、

似たような表現をされている気もします。

 

そういう意味で、稲盛さんら他の経営者と比較したら

より理解が深まるのではないでしょうか。

 

いくつか具体的に考えてみましょう。

もちろん、101項すべては取り上げませんし、

自分が納得する項目、「腑に落ちた項目」だけでも十分だと思います。

 

 

「健全性が第一、二番目は収益性、これからの時代、成長性は最後」

 

スター精密の健全性は昨日ご紹介した通りです。

 

「経営者の中には売上が伸びれば、世間も銀行も良い会社だと

思ってくれるという錯覚がまだある」

「利益を伴わない売上は追わない」

健全性を確保するためにはキャッシュが一番ですね。

これは以前、エステーの会社さんから聞きましたね。こちら

「赤字で会社はつぶれない。資金が詰まれば一晩で倒産する」

同じことをおしゃっています。

 

 

「3つの創業スピリットに外れる事業はいっさいてをださない」

 

スター精密が成長した理由がこれで分かりました。

参考になるのではないでしょうか。

 

「第一に材料をたくさん使う仕事はダメ」

 

「第二に輸送コストのかからない事業」

 

「第三に人を使わない仕事」

 

 

戦後間もない頃、静岡の田舎にあって、精密部品の加工製造業で

成長発展した理由がここにありますね。

これは現在でもいえることではないでしょうか。

 

人口が減り、需要がどんどん縮んでいくこれからの時代、

中小企業こそ、少ないヒト、モノ、カネで効率よく儲ける経営に

徹していくことが非常に重要なんだそうです・・・。




その3 キャッシュ経営


スター精密はどうしてこんなにキャッシュがあるか

分かりますか?

 

ご紹介した3つの創業スピリッツに外れる事業には

手を出さなかったからです。

 

要するに「収益性の高い」ビジネスを常にやっていたからです。

ここにコロナ後のビジネスのヒントがあると分かりますか?

 

では世の中の経営者の方は皆思いますよね。

 

「では、高収益体質にするにはどうしたらいいのですか?」

 

それに対して佐藤社長は実に分かりやすく答えています。

 

「収益性が高い理由はとても簡単。

儲かる商品だけをつくり、

儲かる客だけに売っているから」

 

それを聞いて

「そんなの当たり前ではないか!」

と拍子抜けしますよね。

 

売上だけを遮二無二追っていると案外この下の原理原則が

抜け落ちてしまうというのですね。

「負けるかなと思うマーケットには手を出さない」ことらしいです。

 

この経営の原則を実行したのは佐藤会長ではなく、

先代の佐藤誠一氏でした。

佐藤会長が入社する前の1962年。

当時は年商2億円の中小企業だったのですが、

海外へ工作機を売りに出ます。

面白いのは、当事者内には一人も外国語ができる者もいなく、

なんのツテもなく海外進出したのだそうです。

その思い切った戦略が、スター精密の高収益体質を生んだのだそうです。

 

「小さな池をたくさん探して、大きな魚を獲る」

 

これこそが、その戦略を表した経営の定石。

工作機械というマーケットは世界的に見ても非常に小さいのです。

市場規模は最大でも2000億円以下なのです。

そこで2割、できれば3割のシェアを取りに

60年前に世界進出したのでした。

 

大企業が見向きもしないニッチなマーケットだった

からです。

競合するのはドイツ企業一社と日本の中堅企業2社。

わずか3社しかいないマーケットに参入して

「プライスリーダー」になったのです。

 

だからこそスター精密は高収益企業になったのです。

 

佐藤会長曰く

「グローバル・ニッチ作戦」

 

コロナ後の「真似すべき」新しい戦略ですね・・・。




その4 会社におカネを残す最高の策


スター精密はどうしてこんなにキャッシュがあるか?

まだ続きます。

 

この本の第四章「会社におカネを残す策」これは必見ですね。

 

中小企業経営者なら何度も読み直してほしいですね。

 

「カネが足りなければ借金すればよいだろ・・」

 

そう思う経営者は多いですね。

 

「借金で会社が大きくなってもそれは真の実力ではない」

もうバッサリですね。

 

「P/Lは体力、B/Sは体質」

 

なかなかいい表現です。この意味お分かりになりますか?

会社の財務体質はそう簡単には直らないのですね。

 

「売掛債権とは本物のカネではない。」

 

「在庫が増えて倒産した会社はあっても、

在庫を減らして倒産した会社はない。」

 

素晴らしいお考えですね。

在庫に関しては素晴らしい数値目標がでていました。

これは絶対「著作権に触れそう」?なので書きません。

 

ぜひ読んでください。

これは今後私のネタにします。

 

「1円も無駄にしない社風をつくるために

会社にお札に2色の色を塗る」

 

こんな考え初めてお聞きしました。

税理士として頭殴られたようにショックを受けました。

サラッとだけ解説します。

 

「会社にお札に2色の色を塗る」

 

とは、「金利を稼がなくてもいいお札」と「例え1日でも金利を

稼ぐお札」に、会社の現預金を色分けして管理するのです。

 

こんな発想の社長さんに初めてお会いしましたね。

うれしくなりますね。

そうなるどういうことが起きると思いますか?

 

「金利を稼がなくてもいいお札」を「手元現預金」と区別するのですが、

本社には50万円、国内各支社は15万円以上は絶対置かないのです。

 

あとのおカネは、当然ですが、すべて「例え1日でも金利を稼ぐお札」です。

 

「そんな営業のガソリン代だって接待費だって現金いるはず、

新幹線急に乗ることあるでしょ・・・」

 

そう皆突っ込みますよね。

でもそういうことは起きないのです。

スター精密は、

接待は数件の指定店でツケ払い。

国内出張の新幹線はすべて回数券。

ガソリン代は給油券を支給・・・。

 

分かりますか?

このルールは社員全員守るのは当然ですが、会長自ら従っているのです。

 

これ聞いてどう思いますか?

「そんな細かいことばかばかしい!」

と笑う社長もいるかもしれませんね。

 

でも社長が率先して「1円でも会社に残そうという」

執念を燃やせば、全社員がそういう姿勢で仕事に取り組むようになるということです。




その5 社長の執念・社長の器


「1円でも会社に残そうという」執念を持つべきと

ご紹介しましたが、佐藤経営学の根幹として「執念」というものが

あります。

 

「たとえお化けになってもやりとげるという『執念』が

社長には必要だ」

 

ここで大事なのは「信念」という生優しいものではないのですね。

おどろおどろしい言葉の「執念」なのです。

困難にもあきらめず挑戦し、社員の心をとらえ、必ずやり遂げるためには

「お化けになっても」やりとげるという「執念」が必要なのです。

 

 

「社長の『器』以上に、会社は立派にならない」

 

素晴らしい表現ですね。

中小企業の経営者にはかみしめていただきたいところです。

 

現実のお話として、日ごろ接している社長さんに

佐藤経営学を紹介して、

「1円でも会社に残そうという」心構えをいくら言っても

社長自らカネを使っている会社はあまた多くあります。

 

「たとえば、社長が平日の昼間から毎週のようにゴルフに興じ、

その領収書を経費で落とすような公私混同を日ごろから行っていれば・・・」

 

テキビシイですね。佐藤会長はお見通しです。

そういう中小企業経営者はたくさんいるでしょう。

 

「それを見ている部長は月に2回は同じことをするし、

その部長を見ている課長は月に1回・・・

社長がやるなら私もオレも・・・

五月雨式に社長と同じことをする・・・」

 

結局そんな会社になってしまって評判を落とすことになるそうです。

 

「会社は社長の生き写しであり、社長の器以上に、

会社は立派にならないものだ。」

 

どうでしょうか・・・。

 

このあたり稲盛経営学に通じるものがありますね。

 

 

 

「人の道に通ずる、経営の『道』を自ら築け」

 

 

稲盛さんは経営者としての「生き方」を真っ先に

論じていましたから。

 

「社長が、経営というものを単なるカネ儲けのツールと捉えて

手練手管に溺れると、会社を永続させることは到底できない」

 

本当に厳しいお言葉です。

最後も稲盛経営学と一緒です。

 

「世のため、従業員のためと、社長が人として正しいことを

やっていくことで、会社は自ずと良いものになっていく。

社長が自らの器を磨かぬかぎり、会社というものは

決して発展してゆかないのだ。」




その6 決断力と実行力のない社長は不幸


いろいろ書きたいことがあるのですが、

会長が独自に研究された財務分析指標など、

著作権に触れそうなので、まとめましょう。

 

この佐藤塾の財務分析の内容は、著名なコンサルタントがいて

その指示の元いままで実践したのかと思ったらまったく違いました。

先代の佐藤誠一氏が、自ら経営の定石を教える「佐藤塾」を

永年開いていたからです。

まさに、経営者自ら考えた「生きた経営の定石」なのです。

この定石のおかげで、わずか年商2億の中小企業が

年商600億円の上場企業に生まれ変わったのです。

 

 

その「佐藤塾」の塾長だった先代社長から

 

「ウチの会社で3年頑張ってみて、肌に会わなかったら

辞めていいぞ」

 

と言われて佐藤会長は入社したのです。

 

現在佐藤会長は3代目の息子さんを

入社20年目としてやっと執行役員にしたそうです。

 

特に「事業承継」に悩んでいる全国の経営者から

絶大の指示を受けているのはそのためでしょう。

 

「新卒の息子は『大企業への一時就職』禁止。」

 

後継者教育で、よくあるのは社会人になったら、よその会社へ

入れて修行させるということが良くありますね。

それに対して、佐藤会長は、

 

「どうせ5年やそこらで自分の会社に戻る人間ならば、

あたらずさわらず、重要な仕事を教え込もうとするはずがない。」

 

とバッサリ。

それならば自社で20年かけてじっくり育てた方がよいというのが

持論のようです。

 

なかなか勉強になりますね。

最後に、悩み多き中小企業経営者に厳しい佐藤会長の言葉を

送ります。

 

「佐藤塾という勉強会で30年以上、様々な経営者にお会いしているが、

時折、『この方は残念ながら、絶望的に経営者にむいていない』と

思う後継者がいる」

 

ドキッとする発言ですね。

どんな後継者だと思いますか?

 

ご自分の息子さんを思い浮かべながら考えてください。(すいません)

 

 

「決断して実行するという、社長に必須の2大能力が

ない方である。」

 

「厳しい言い方になるが、決断力と実行力がない者を

社長にすれば、多くの人を不幸にする。

社長は後継者育成に心して当たっていただきたい。」

 

後継者育成で悩まれている経営者にこの言葉を送って終わります。

 

(がんばれ! 決断力と実行力シリーズ! おしまい)






 

 

 

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