その1 将棋のプロ棋士が突然



うつ病


ビックリするタイトルですね。
新聞の広告を見た瞬間に速攻amazon買い。

九段と書いてあったのでプロ棋士の本だと
すぐ分かったのですが、作者は先崎学(せんざきまなぶ)氏。
プロ棋士でも将棋のプロ棋士なのですね。
私は将棋は指しませんので、将棋のプロ棋士はあまり知りません。
ただこの先崎氏の名前だけは知っていたのです。
実は奥さんは囲碁の方のプロ棋士、穂坂繭三段なのですね。
美人女流棋士で有名な方なのです。
ところが、数年前(数十年前?)にこの先崎氏と結婚したのを
よく覚えています。

「囲碁の棋士同士なら分かるが、何で将棋のプロ棋士と・・・」

多くの囲碁ファンが、がっかりしたからなのですね・・・・。


その方が突然うつ病を発症し、プロ棋士を昨年の夏に
休職しました。
その発症から入院、闘病し、この6月に復帰するまでを
ご本人が書いたノンフイクションです。

うつ病というと、うつ=精神病、つまり「精神の病気」と思いがちですが、
違うのですね。
うつ病とは「脳の病気」であることがよく分かります。

つまり、「うつ病とは・・・・ということなのか・・・」
本当に理解できるのです。


これは本当に「奇跡の本」ですね。

なぜ奇跡の本かというと、まずうつ病患者の書いた本はありません。
うつ病の人は本書くどころか読むこともできないはずだからです。
もし書けたとしても、ある程度文才がないと書けるはずがないのですね。


この先崎九段は本当に筆の立つ方です。
前々からエッセイやコラムなど良く書いていて、著書も多いので
間違いなく作家なのです。


それとこれは大事なことですが

「私はうつです」

と公表すること自体が普通の人ならできませんね。
サラリーマンであれ、経営者であれ、それを公表することで
仕事を失ったり、仕事に影響がでるからですね。

プロ棋士というある意味「自由業」だからこそできたのでしょうか。

 



それともう一つ奇跡がありました。

この先崎九段のお兄さんが本当に精神科のお医者さんなのです。
そのお兄さんから

「リハビリのためにこの経験を闘病記として本にしてみたら」


と薦められたそうです。
そうでなければこういう本が日の目をみなかったのでしょう。

そのお兄さんも

「うつは世間から偏見の目で見られている・・・」

そう考えているそうです。


うつ病とは、誰でも起こりうる「脳の病気」で
誰でも「必ず治る病気」なのです。
それを教えたくてご紹介していきます・・・・。



その2 400万人もの精神疾患の患者


突然囲碁やうつ病のお話をし出したら、

「また囲碁の自慢話かよ・・・」

「このクソ暑いのにうつ病の話なんてたくさんだ・・・
資金繰りでこっちがうつになりそうだ・・・」

きっと読み飛ばされてしまうでしょうね。
内容に入る前に、その理由をキチンと話したいと思います。


どうしてかというと
経営者にとって、今やこの「うつ病」は避けて通れないのです。
「うつ病患者」が現在急増しているからです。


_

 




何かい良い統計資料がないかと探したらありました。
厚生労働省が作成した資料です。


平成26年で精神疾患の患者が400万人近くいますね。
ただこれは総数で認知症なども含みますので、オレンジ色の「気分障害」
というところがうつ病のようです。
100万人は突破していますし、平成11年に比べたら倍以上と
急増しています。



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さらに驚くべきことですが、25歳から54歳くらいの
「いわゆる働き盛りの世代」
の精神疾患が増えているのです。

このことをは経営者の方にも知っておいていただきたいのですね。
30代、40代のいわゆる「ロスジェネ世代」、「ゆとり世代」にも
心の病が蔓延しだしているということなのですね・・・。



実は最近この「うつ病」を本当に多く聞くようになりました。


「働いていた社員から、うつ病の診断書が送られて
急に休業の申し出があったのですが、どうしたらよいのですか?」


これを何度も聞きます。
これを知り合いの弁護士や社労士に聞くと、あまりに多いので
もう慣れっ子になっているようなのですね。

 


「うつ病の病歴を記載していなかったので経歴詐称だ!
これを理由に解雇できますか?」


「うつ病で休職した場合の就業規則を見直ししたい。」

 

こういう相談は弁護士さんや社労士さんに非常に多いからです。

 

ただ冒頭申し上げた通り、このうつ病に対して偏見もあるのです。
正しい理解をしておかないといけないと思うのです。


電通事件として有名な亡くなった橋まつりさんも、
いわゆる「仮面うつ病」だったらしいです。
本人もうつ病という自覚もなかったのでしょう。
病院に通っていなかったようですから、厚生労働省の数字にも
現れてこない方なのです。


そういう「仮面」を入れたら、数字は何倍にも膨らみます。
ですから数百万人が「うつ病」もしくは「うつ病予備軍」なのです。

 

経営者側もうつ病という「現代病」があるのだと正しい理解も
しなければならないのでしょう。
本当にこの本で考えさせられました・・・・。





その3 なぜうつ病に?


ではいったい先崎九段が、なぜうつ病を発症したのか?
これは非常に気になりますね。
普通に健康な方がある日突然うつ病になるのでしょうか?


残念ながら先崎九段は医者ではないのでそのことは
明確には書いていません。

ただうつ病の始まりの日は非常にショッキングな書き出しです。

「47回目の誕生日の翌日、一仕事を終えて通いつけの
ボクシングジムへ行き、帰りに家族でインド料理を食べ
幸せなひとときをすごしたのだった。
ビールを二、三杯飲んでこれからカラオケに行こうかといった
ぐらいであって、つまり、私は元気で、楽しく、何より
生活に余裕があった・・・。」

こんな状況で翌日の朝、うつ病を発症したのです。

「そんなバカな・・・」

と思いますよね。

楽しそうな人生でないでしょうか。
仕事帰りにボクシングジム行くなんて、かなり余裕が
なければ行けませんね。
家族と食事だなんてうらやましいくらいですね。


「翌日朝食をいつものように食べてもまったく疲れが取れない。
昼過ぎまでずっとソファーで横になっていた。
また、ほんのりと頭が重いのを確かに感じた・・・・。」


これがうつ病の初期症状なんだそうです。
恐ろしいですね。
私なんか「二日酔いの朝」の症状とまったく同じに見えますが・・・。

しかし、症状がだんだんひどくなります。


「一週間が過ぎた。オソルベキことに症状は
どんどん重くなるばかりであった。」


特に、寝起きが苦しくなるらしいですね。
しかも、寝入りも悪くなるそうです・・・。
よく寝られない疲れが取れない・・・どんどん悪くなります。


しかし、何らかの予兆はあったようです。
昨年の春頃までは将棋界では、三浦九段による「不正ソフト使用疑惑事件」で
揺れていましたね。
その後の「藤井フィーバー」ですっかり忘れられてしまったとは思いますが、
確かに将棋連盟は理事の半数以上が解任されるなど、
組織の体をなしていなかったそうです。


さらに先崎氏がかかわった漫画「3月のライオン」が封切りになることで、
先崎九段は連盟の広報担当理事として、
原稿、イベント、取材・・・ほとんど休みがなかったそうです。


あとこれは本には書いていなかったことですが、
認知症のお母様の介護も大変だったらしいのです。
これはブログのファンの方から教えていただきました。


要するにその直前先崎九段は、いままでにない大問題、
イベント、介護などなど重労働が続き、たぶん心身ともに
極限状態であったのだろうと推察します・・・。




その4 精神科の入院の本当の意味


うつの症状がでてから、日増しに重症になっていきます。
本当に将棋の対局どころではなくなるのですね。
将棋のプロ棋士が将棋が指せなくなるというのは
本当につらいのでしょうね。


プロ野球選手が病気でバットが持てない。
プロゴルファーが病気でクラブを握れない・・・。
プロなんだから将棋が指せなければ即引退ですから。

 

皮肉なことにこの頃、あの「藤井フィーバー」が始まります。
将棋界が世間の注目を浴びている中で、
「自分はなんでこんなときにと忸怩たる思いが込み上げてきた・・・。」
そうでしょうね。

 

「夜がどんどん眠れなくなってくる・・・」

「朝四時に起きてしまい、辛い朝を迎える。うつ病の朝の辛さは
筆舌に尽くしがたい。あなたが考えている最高にどんよりとした気分の
十倍と思っていいだろう。」

「やがて胸が苦しくなるという症状が出るようになった・・・」

 

このあたりの描写はうつ病を実際に経験した方でないと
本当に分からないところでしょう。

「うつ病というのはこんなにつらい病気なのか・・・」

本当に思います。

 


何より驚いたのは

「電車に乗るのは無性に怖くなった。
正確に言うと、電車に乗るのが怖いのではなく、ホームに立つのが
怖かったのだ。
毎日何十回も電車に飛び込むイメージが頭の中を
駆け巡っているのである。
飛び込むというより吸い込まれるというのが正しいかもしれない。」

こういう感覚は本当に恐ろしいですね・・・・。

 

周囲から入院を勧められますが、いったんは入院を断ります。
プロ棋士としてやはり対局をしないことも
耐えがたきことだったのでしょう。

 


ここで実兄から入院するようにとズバリ説得されます。

「精神科の入院というのは、とにかく自殺防止だ。
そのままでは自殺の恐れがある。」

ついに慶応大学病院精神神経科に入院することになりました・・・・。





その5 ついに休場


 

Photo_4

(将棋連盟ホームページより)



 

 

 

将棋連盟に「手書きの休場届」を出し、先崎九段は
ついに入院します。

うつ病の入院とはどういうものか?
こんなこと誰も教えてくれませんね。
ここは正直興味深く読みました。
うつ病の実態がよく分かるところですね。


入院と言っても手術する訳ではなく、薬を飲み、食事をして
あとは寝るだけ。
安静にしていることが基本らしく、テレビも見ない、
携帯やタブレットをみないのが原則らしいです。
ただ、最悪期は活字も読めないらしいです。
よって新聞も一面の見出しを読むだけで精一杯・・・・。

 

驚いたのは、入院と言っても「開放病棟」といって
朝の六時から夜の七時までは自由に外出をすることができるのですね。

毎日外のコンビニへ行き、信濃町の駅前のプロントで
コーヒーを飲むのが日課。
特に勧められるのが散歩。

「うつにとって散歩とは薬のようなもの」

らしいですね。

信濃町から神宮外苑へよく行ったそうです。

神宮外苑というと、東京のランナーの聖地ですね。
1周1300メートルですが、ここでインターバルなど
よくやった懐かしい場所。
あそこを先崎九段は毎日のように歩いたそうです・・・・。

ただこの入院直後の2週間はうつ病の極悪期。
うつ病の極悪の描写がなまめかしい。


「この2週間は、心の中に黒いコールタールのようなものが
固まっていて、喜怒哀楽はもとろん、後悔や嫉妬など
あらゆる感情すらもそこでシャットアウトされてしまっていた・・・」


まさに「脳の病気」だと分かります。

「脳の病気」だと本当に分かるのはやはり将棋の場面。
入院中に初段程度の看護婦さんと「平手で」指したそうです。
この手合い割は考えられないくらいですが、
それでもやっと勝つというありさま。


プロとして40年もやってきた将棋が弱くなっているのですね。
その後退院してから詰将棋に取り組みます。
「7手詰めの詰将棋が解けなくて、5手詰めの詰将棋から
解き直した・・・」

この記載に驚きましたが、ここでようやく理解できましたね。


もしうつ病が「心の病気」なら感覚で将棋を指せるはずなのです。
脳の病気だから将棋が弱くなったのかと・・・。
これがうつ病なのです。




その6 本当の理由


「なぜ先崎九段がうつ病になったのか」


これが明確にこの本に書かれていないので、
本当に気になっていました。
実は、先日週刊誌の記事で見つけたのです。
週刊現代 7月21日・28日号からです。


「うつ病になった原因は、これだという確信があります。
2016年8月から2017年5月にかけて起こった
『ソフト不正使用疑惑事件』です。
真相を究明するために第三者委員会ができ、日本将棋連盟の理事が
会員決議によって解任されるという異常事態が起きてしまいました。」



こう本人はハッキリ言っているのですね。

『ソフト不正使用疑惑事件』とは、三浦九段が将棋ソフトを対局中に
使ったのではないかという疑惑がかけられた事件です。
結局、ハッキリとした証拠もなかったことから、
将棋連盟としては正式に謝罪したのですね。以降

「三浦九段冤罪事件」

とも呼ばれるようになりました。


将棋界としてはたいへんな騒ぎだったのでしょうね。


「私自身、年齢的に将棋界をまとめていかなければならない立場に
なっており、自分が何とかしなければ、この業界は終わると
本気で思い込んでおりました。」


ここですね。自ら追い込んでいるのです。
そこで「3月のライオン」の映画化が重なってしまったのです。


「今思えば、自分が何とかしなければ、とずっと思いつめたことの思考が
よくなかった。」


そうなのでしょう。
ここがやはりうつ発症の原因だったのです。
ではなぜこのことをこの本に明確にかけなかったのか。


やはり執筆中はうつが直りかけていた時ですからね。
うつの原因について真面目に考えることは、
やはりできなかったのでしょう。

きっと我々の知らないこと、公表できないことも
たくさん知っていたはずです。
業界の内部事情そのものですからね。
これは逆に医者から止められたのかもしれません。



三浦九段の冤罪事件については、正直私はよく変わりません。
ただ、お隣の囲碁界では、2016年3月に世界ナンバーワンの
中国の李世ドル九段がグーグルのAlpahaGoに負けた直後のことです。


「ついに囲碁ではコンピュータが人間の知能を上回った」


感慨深い瞬間でしたからね。


将棋の方は囲碁より先にコンピュータの実力が上回っていると
聞いていましたので、冤罪事件の際にも、


「やはり将棋のプロ棋士でも、もはやコンピュータに頼らざるを
得なくなったのか・・・。」

そういう率直な感想でした。


先崎九段の言われる通り、「この業界は終わる」という意識は
やはりあったと思うのです。


プロ棋士に対して高い指導料を払わなくても、
将棋のソフトを買えば、以降永久にタダで指導をうけることに
なってしまいますからね。

プロ棋士自身がコンピュータに頼っているなら、
プロ棋士がいらなくなることさえ考えられるからです。


いろいろなことで、先崎九段を追い詰めていったのでしょうね。
真面目で「愛すべき人物」だからこそ、うつ病を発症した
ともいえるのではないでしょうかす。


「これが真相だったのか・・・」

妙に納得しました。




その7 うつ病は誰でも発症する脳の病気


プレッシャー、疲労、睡眠不足・・・。
現在のサラリーマンならいくらでもあるお話ですね。
特に原因は「ストレス」なのでしょうね。
若い人をはじめ精神障害となる方が急増している理由が
これでお分かりでしょうか。

ご本人も


「うつ病は完全に脳の病気です。
過度の、今までの自分ではさばききれないようなストレスが
原因で、脳の配線がおかしくなって症状がでるのです。」



今年6月先崎九段は復帰され、先月復帰後初勝利を
されたということです。良かったですね。

ただプロ棋士というのは脳を使う職業です。
「脳の病気」であるうつ病ですからね。
なかなか大変なのでしょう。


さらに

「ただ問題なのは、将棋の感性がなかなか完全には
戻って来ないことです。」

これはプロ棋士としてのまさに極限のお話なのでしょうね。

 

プレッシャーから自分を追い込んだということですが、
先崎九段はこうも言っています。

三浦冤罪事件で苦しんでいた時、あとから
藤井七段の大活躍を知るのです。


「その時感じたのは、自分がいなくても世界は回っていく
ということです。将棋界を独りで背負おうとする必要は
なかったのです・・・。」

 


まあ、結局はこういうことなのですね。
「自分がなんとかしなければ」
と無理に追い込むことはなかったのですね。
真面目な性格がかえって良くなかったのでしょう。

 



最後にまとめます。
なかなか今回は「うつ病」という現代病の理解を深め
本当に勉強になりました。
経営者の方々にも、当然知ってほしい現代病なのでしょう。


うつ病にならないために、ストレス発散が大事なんだということも
学びましたね。

 

これで最後に私の言いたいことはもう分かりましたね。



ストレス発散にマラソンはいかかですか?
囲碁や将棋もストレス発散になりますよ。



さらに、

「自分がやらなければ」と追い込むことも良くないのですね。
「自分がいなくても世界は回っていく」と考えたら
ストレス発散の時間なんていくらでもできます。



先崎九段の今後の活躍を心よりお祈りします。
早く藤井七段に勝ってタイトルを取ってほしいですね・・・・。

 



(がんばれ! 先崎九段! うつが何だ!シリーズ 
  
  おしまい)








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