その1 思わせぶりなタイトル




死後離婚


新聞の広告を見て何となく買ってしまった本。
これ見て
「死んでから離婚なんかできるか!」
そう思うでしょうね。
何となく思わせぶりなタイトルなので、読まずにいたのですね。


しかし、真面目に読んでみると、かなりショックな内容です。
これは知らなければ良いことなのでしょうけど、
やはり相続を仕事としている税理士としては読まなければ
いけない本なのでしょうね。
最近テレビでも取り上げられ、かなり公知の事実となって
きていますから。
いろいろと考えさせられ結構勉強になりました。


まず、当たり前のことから。
夫婦の一方が亡くなった場合に離婚届は提出することはできません。
夫婦の一方が死亡すると婚姻関係は解消されたものとみなされるのですね。


もっというと「残された配偶者には再婚の自由が保障」されているのです。
ただ厳密いうと、夫が死亡した場合には、残された妻には
待機期間100日がありその間は再婚はできません。


ただこの本はその再婚を問題視している訳ではないのですね。
再婚しない場合なのです。
戸籍の問題です。ここが勉強になりました。


配偶者が亡くなった場合の戸籍なのですが、
遺された者は、戸籍上「独身」つまり「一人戸籍」になるわけでは
ないのですね。

具体的に言うと、配偶者が亡くなると死亡届だしますよね。
そうすると戸籍には死亡の旨が記載されますが、生存配偶者が
戸籍を抜けるわけではないということなのですね。
同じ戸籍に残り続けるということになるのです。


ここで本題に入るのです。

「同じ戸籍に残るのイヤだ!」

ではこの戸籍から抜け出す方法はあるのでしょうか?


実はその方法があるのです。
その方法を称して「死後離婚」という言い方を
しているのです。


「へ〜!」

という方法です。
こんな方法知りたいですか?


「夫と同じ墓に入りたくない!」

「姑の世話はしたくない!」

「義実家と縁を切りたい!」


そういう方々に実は広まってきているのです・・・。




その2 死んだら離婚はできない



このタイトルのとおり、「死んだ後に離婚」はできません。


ただこれが問題になるのは、具体的に言うと

「嫁姑問題」
「義理の実家問題」

ということなのですね。
これを法律用語でいうと「姻族(いんぞく)関係」と呼ばれる
関係の方々の問題なのです。


よく問題になるのは、両親を面倒見ながら同居していて
ご主人に先立たれた奥さんの場合が多いそうです。
つまり、義理の親の「介護義務」と「扶養義務」ということなのですね。


ここで背景となるのは、親の介護問題。
熟年離婚の原因の一つに、親の介護問題が多いことからも分かりますね。
ここで身につまされる方々もこれは多いのではないでしょうか。


仮に離婚まで至らなかったとしても、仮に夫に先立たれた妻の立場には
義理の親の介護義務があるのかという大問題でしょう。

 


まず義理の親でも法律的には親族ですね。
これは民法725条で
「六親等以内の血族、三親等以内の姻族」は親族と
バッチリ決められていますし、


さらに、民法730条で

「直系血族及び同居の親族は、互い扶け合わなければならない。」

とも決められています。

 


でもここで本論です。

「義理の親の介護?そんなのイヤだ!」

といった場合にその関係性を無くすことはできるのでしょうか?


実はそれができるのですね。
これは正直初めて知りました。


その方法は

「姻族関係終了届」

と呼ばれるものです。


A4サイズのたった一枚の書類を出すだけで姻族関係を
即時に終了させることができます。
しかも、三文判のハンコを押すだけです。
提出できるのは残された夫か嫁だけです。


驚きなのは、元姻族には通知さえもいかないという「魔法の書類」
これはビックリ・ポン!ですね。


この「魔法の書類」一枚で
姻族関係は終了し、当然親族でもなくなるので、
扶養義務や介護義務も負うことはなくなります・・・・。





その3 姻族関係を終了すること


 

Fukuuji_1


「魔法の書類」を探してみました。
埼玉県春日部市のHPに見つけました。
親切に書き方までアップされています。
春日部には多いのでしょうか・・・・!?

春日部一郎さんと花子さんのご夫婦で一郎さんに先立たれた
花子さんは姻族関係を終了させるためにこの「魔法の書類」を
春日部市役所に提出した訳ですね。

これ見ると実に簡単です。
署名して印を押せばよいのですね。
実印でもなくて良く、もちろん、印鑑証明書の添付もいりませんね。

Gurahu

 

 

この届出はここ数年で増えてきているんだそうです。
2015年で2,783件。
最近テレビなどでも取り上げられていますから、
きっと増えていくのでしょう。

さらに春日部市にはもう一つすごい届出書もアップされていました。

Fukuuji

 


これです。
「複氏(ふくうじ)届」


春日部花子さんは旧姓「庄和」さんだったのでしょう。
この紙をさらに提出することで、花子さんは旧姓の庄和に戻ることが
できるのです・・・。

これは驚きですね。
こんな方法があるのです・・・。


少し横道にそれますが、毎年参加している春日部大凧マラソン。
会場は庄和総合公園。
実は、昔そこに庄和町という町があり、それが春日部市と合併して
2005年に消滅したのです。

なかなかローカルな例ですね・・・。







その4 子供がいた場合



「復氏届」なんていうものがあるのですね。
これは勉強になりました。

これにより、姻族と縁を切り、もとの姓に戻ることができるのですね。
ただここで問題になるのは、ご夫婦にお子さんがいた場合なのです。
仮にお母さんだけもとの姓に戻ったとしても、
お子さんも自動的に姓が変わる訳でないのです。
ここは少し面倒です。
制度を理解していただくために、さらに大事な書類もアップします。


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「子の氏の変更許可申立書」
です。
子どもが、15歳以上の場合は、子供自ら「自分の姓を変えること」を
裁判所に申し立てることができのですね。
具体的に言うと、子供である乙野太郎さんは、母親の旧姓の「甲野」に
戻す場合ですね。

この場合の申し立ての理由はどう書いたらよいのでしょうか?
「母の離婚」ではないでしょうし、「母の死後離婚」でもないですね。
「母の複氏届提出による」・・・・?
分かりませんのでこれは裁判所にお尋ねください・・・。
因みに15歳未満なら、当然ですが、親権者である親が代理申請する
ことになるのです。


この申し立てにより裁判所の許可が下りたら、
今度は役所へ子供の「入籍届」を出すことにより、
子どもはようやく母親の旧姓を名乗り、母親の戸籍に入ることが
できる訳です・・・。


なかなかややこしいですが、こういうことが現実に
行われているようです・・・。



さて、書きたいことはたくさんありますが、
この書籍を取り上げた理由は、相続問題からでしたね。

春日部花子さんのように元の姓である庄和花子さんに戻ったケースで
もう一度考えてみましょう。
春日部太郎、花子さんの間に、長男春日部一郎さんがいたとします。
上記のような手続きをへて、春日部一郎さんは、庄和一郎さんに
なっていたとしますね。

つまり、ご紹介した数々の「魔法の書類」で、花子さんは
春日部一族と完全に縁を切っていた場合です。



ここで亡くなったご主人太郎さんの父親「春日部晋三さん」(仮名)が
存命だったとしますね。
花子さんは、一切関係性を断っていますから、
もちろん、介護どころか、盆暮れの挨拶もその後ずっとしていません。


ではここで春日部晋三さんが亡くなった場合は
どうなるのでしょうか・・・。
仮に春日部晋三さんは、春日部市の大地主で多額の遺産が残されて
いたとしたら・・・。

亡くなった春日部太郎さんは実の子ですから
相続権がありました。
でもその太郎さんが亡くなった場合の相続権はどうなるのでしょうか?

これは民法の問題。
「代襲相続人」となった庄和一郎さんに引き継がれるのです。
しかし、何だか腑に落ちません。
ここが一番驚いたところ・・・。

「ホントかよ・・・・!??」




その5 研究テーマ


書きたいことはたくさんあるのですが、
そろそろまとめましょう。


いろいろ疑問に思うことあるのですが、
残念ながらこの本は肝心の「死語離婚」のことの記述が
やはり少ないのです。
これは法律家の詳細な解説を待ちたいと思います。
よって、これ以上安易にこのフレーズを使うのは
よろしくないかとも思います・・・。



悩んでいることを最後に物語調に書きます。
(もちろんフィクションです)



埼玉県春日部市に、
大地主の春日部晋三と妻の昭恵との間に
二人の男子、春日部一郎、二郎がいた。

長男春日部一郎は庄和花子と結婚し、太郎が生まれた・・・。



こんなケースですね。


一郎夫婦は晋三夫婦と同居したものの、
永年昭惠と花子と間は、つまり、いわゆる嫁姑の関係は
あまり良くなかった・・・。

これもよくあるケースですね。


春日部一郎が急死したことにより、
妻花子はそのまま同居し続けることと、
親族関係を続けていくことは無理と判断し、
「姻族関係終了届」と「複氏届」を提出し、
旧姓である庄和花子に戻った。


さらに子供である春日部太郎も
「子の氏の変更許可申請書」を裁判所に提出し
庄和太郎に変更し、庄和花子の戸籍に入籍した・・。



解説した通りなのですが
ただこの段階で、いろいろ騒動が起きるはずですね。
夫が亡くなったとたんに家を出て元の姓に戻したのですから


「人でなし!」
「鬼嫁!」


くらい花子さんは言われるかもしれません。



花子さんは、それ以降多分、春日部家とは没交渉、
音信不通になるはずです。


その後春日部晋三氏や昭惠夫人の面倒を次男である
春日部二郎氏がすることになります。
介護の面倒までおそらく二郎さんがやるのも間違いありません。



ここで、資産家の春日部晋三が死去した場合ですね・・・。

 

巨額の財産の相続、つまり、その相続権はどうなるのでしょうか?
長男一郎さんは亡くなっているので、庄和太郎さんが
代襲相続人となります。
春日部晋三さんと庄和太郎さんは血がつながっている以上
相続権は発生するのですね。


法定相続分は、昭惠夫人が生きていいれば4分の1.
もし亡くなっていれば2分の1となります。


仮に遺言書があってもこれは揉めるのは確実でしょうね。
太郎さんにも遺留分がありますから。

二郎さんとしても

「春日部家を出て行ったくせに何だ!」

ときっと怒り出すでしょう。
ではどうしたらよいのか・・・。


なかなか難しい問題です。
ドラマにでもなりそうなネタですね・・・。
研究してそのうち発表します。

 



(気をつけよう!「死後離婚」シリーズ おしまい)


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