その1 今こそ農業を考えたい



農家

日経新聞の書評欄で偶然見つけた本。

かなり勉強になりました。しかも面白い。

まずこのショッキングなタイトルに惹かれますよね。

また「農業への曝露本!?」

だから読書は止められないのですね。

 

しかし、今まで「農業」やそれこそ「農業経営」というのは

それほど触れてこなかったのですね。

 

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一冊だけご紹介した「りんごが教えてくれたこと」

というのがありましたね。 こちら

税理士試験を4科目も持っているという木村さんが

悪戦苦闘して「日本一美味しいりんご」を作り出す物語

でしたね。

 

あの頃、ちょうど2009年頃でしょうか。

「農業を始めよう!」

というのような一つのブームがあったのですね。

でもそんな時代からだいぶたって、今またこの方が

注目されているのですね。

日経新聞の書評もベタ褒めですから、

これは得意の「amazonポチ」をするしかありません。

 

今回の主人公久松達央さん。

1970年(昭和45年)生まれですから、現在52歳。

1994年(平成4年)「慶応義塾大学経済学部卒」

なのですね。

慶応義塾大学経済学部卒なのですから、当然エリートなのです。

大卒後、帝人に入社します。

 

それなのに1998年(平成10年)、つまり勤続わずか4年で

脱サラ。農業に転身です。

 

もうここだけで、いろいろと「脱サラ評論家」としては

十分「突込み」たくなりました。

1994年(平成4年)というと私も脱サラして

大原簿記学校でゼロから勉強を始めて、

わずか社員6名の小さな会計事務所で

まさに人生をやり直した頃。

 

しかし、まず

 

「どうして慶応義塾大学経済学部卒なのに

脱サラしたのだろう・・・・」

 

非常に興味ありますよね。

久松氏の著作を探しました。

今まで2冊書かれているのですね。

 

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そのうちの一冊、「小さくても強い農業をつくる」

に詳しく書いてありました・・・。

 

これはもうベンチャースピリッツそのものですね。

 

 

久松さんが農業を始めた1998年(平成10年)

というとまさに私も独立開業した年です、

つまり、久松さんと私は独立「同期」なのですね。

 

よく言うネタ、「グーグルの開業年も1998年」

ですからね。

 

今度久松さんと私とグーグルもついでに入れて

「同期会」でもやりたくなりました・・・。




その2 慶応経済卒で脱サラ農家



脱サラを考えている人が読んだら参考になるかもしれませんね。

 

繊維の一流企業「帝人」で「尖がっていた」久松さんを知って

私自身のことを思い出しましたからです。

 

「自分は衣料品には全く興味ありません。

自分は工業用途以外はやる気ありません。」

 

上司からきっと嫌われたのでしょうね。

 私もそんな「尖がったタンカ」を

切ったことがありますから。

 

「自分は株式には興味ありません。

自分はこれからの金融自由化の中で、

『インハウスの税理士』

は絶対に会社にとって必要です・・・」

 

よく分かります。

入社して数年、悶々と働きながらも、

週末や大型連休などを使って、

アウトドアや農業の勉強を始めたのだそうです。

 

でもこの本でちょっと面白いと思った箇所。

 

「20代で土日が楽しみになったらおしまいだよね。」

 

ある人からいわれたそうです。

ここで久松氏はハッと気が付きます。

今やコロナ禍でリモートワークが全盛。

「ワーケーション」という言葉も

あるくらいですからね。

もう隔世の感がありますね。

それでも、「尖がっていた」久松さんは、

農業体験プログラムなどに参加するようになったのです。

ここで「有機農業」に出会い人生が変わります。

ここから2年もかけて退職準備します。

 

「いい会社に入っているのにもったいない。

よく考えた方がいいよ。」

 

「会社の花形にいるような人たちは、賛成してくれませんでした。

大きい会社で未来が約束されているのに、なぜそんな無謀な道を

歩むのか?」

 

「お前は英語もできて、出世が見込めるのにもったいない。」

 

社内でも圧倒的な反対論に加え、農業の現場でも大反対。

農業体験の際には、はっきりこう言われたそうです。

 

「私たちが望んでいるのは、地域のリーダーになれる人材。

経済農業がきちっとできる人だ。

有機農業のような『趣味の農業』を志向する人は要らない」

 

つまり、当時の有機農業は傍目よりもはるかに「異端」

だったのです。

 

それでも久松氏は名門「帝人」を「有機農業」やるために

辞めるのですね。

 

「その頃の僕は全力で打ちこめる何かを探していました。

逆に言えば、会社の仕事は、人生を賭けるに値しないと

感じていた。

自分の人生はまだ始まってすらいない。」

 

 

実にカッコイイですね。

若さですね。

 

でも、ここで農業志望者が「フォークリフトに乗ったことがない」

ということすら気が付かなかったのですね・・・。

 

まあ、私も税理士志望者が「経理をやったことがない」のに

会社辞めたのと一緒ですか・・・・。




その3 有機農業で日本を変える!


本当に久松さんは愛すべき人ですね。

脱サラの引き金を正直書いてありました。

 

「当時の羨望はただの『田舎暮らし』です。

環境への問題意識、現代文明への疑問、

都会への嫌悪、シンプルな生き方思考、

学歴が通用しないフェアな世界へのあこがれ。」

 

まあそれぐらいで辞める人もいまなら多いでしょうね。

会社に在籍していながら、まず研修先の農業法人へと

飛び込むのです。

1998年10月。結局名門帝人を

4年半で去ってしまうのですね。

 

思わず、帝人をEDINET検索してしまいました。

現在連結売上920億円。経常利益500億円。

立派な上場企業です。

現在の社長は1990年入社。

久松さんは筆も立つし語学ができたそうですから、

そのままいたら、きっと出世したのかもしれないですね。

今頃は部長くらいでしょうか・・・。

でもそんな人生を甘んじて受け入れる久松さんでは

きっとなかったのでしょう。

 

「有機農業が日本を変える」

当時彼はそう信じていたのでしょうから。

 

研修先は、

「80年代後半から90年代前半にかけて盛り上がった

いわゆる『第二次有機農業ブーム』の時に参入した農家」

 

「有機農業運動のど真ん中の思想を持って取り組んでいた、

というよりは、『ビジネスとしての有望性に惹かれて参入した口』」

 

農業研修で久松さんは大失敗をしてしまいます。

 

まず農業未経験の久松さんは畑ではまったくの「お荷物」。

 

「桑を使えばへっぴり腰だと笑われ、草取りの

スピードは周りに追い付けない・・・」

 

「フォークリフトの使い方が分からなくてかぼちゃを

100個以上ひっくり返してダメにした・・・。

『これがスイカだったらクビだから』と社長に

ニコリとせず言われた・・・」

 

結局農作業はあまりやらされずに、事務作業が大半に

なっていった・・・。

 

まあそうでしょうね。農業法人の社長さんも、

慶応経済学部出身で帝人勤めた「頭でっかちな」新人を

持て余したでしょうね・・・。

 

また面白いことが書いてありました。

 

あるときスタッフに

「今の久松さんが当時の久松さんに会ったら

どう思いますか?」

聞かれたそうです。

 

「もし当時の僕が今の僕に弟子入りを志願してきたら、

門前払いです。

口ばっかり達者で、行動が何もない。

『お前さんには無理だからあきらめなさい』

というと思います。」

 

これ読んで思いましたね。

「私も30年前の吉田が吉田事務所に今弟子入りを

志願して来たら門前払いするだろうか・・・」

 

31歳の早大卒で野村證券の高給取り。子供も二人。

「税理士業界を変えてやる!」

と意気込みばかりで、経理の経験もないし資格もない・・・。

まあ門前払いかな・・・。

 

でも、これこそが脱サラの醍醐味です。

分かるかな・・・。

分かんないだろうな・・・。(松鶴家千とせの古〜いギャグ)




その4 農業のベンチャー経営



 「素晴らしき有機農業の世界」

夢を膨らませて、久松さんは意気込んで脱サラするのですね。

 

「慣行農業何て古臭いダメな農業」

そう信じ込んでいて飛び込んだ世界。

でもここで久松さんは挫折するのですね。

その農業法人をわずか1年間で退職してしまうのです。

こういうところをぜひ学んでいただきたいのです。

独立開業すればだれでも成功すると信じて

飛び込むのです。

でも思うようにいかないのが世の中です。

 

私が独立開業する方に必ず言う言葉。

 

「半値・八掛け・二割引き」

 

これもとは証券用語ですね。

元証券マンとしての悲しい性ですね。

 

「毎月100万円の売上は堅い!」

 

自信満々で開業した方に、

 

「半値・八掛け・二割引きですね。」

 

つまり、自分が思ったよりまず半分。50万円の売上。

でもそこからさらに、八掛け40万円・・・。

「えっ!こんなに売上がないの!」

驚いているうちにさらに二割引き!32万円!

つまり思うようにいかないのが独立開業なのですね。

でもそこで学ぶことも多いのです。

「なぜダメなんだろう?」

大事なことですね。

 

またいいことが書いてありました。

 

「人は人中、地は地中」(ひとはひとなか、じはじなか)

 

「人も畑も、端っこよりも真ん中で揉まれている方がいい」

という意味ですね。

 

ただここで研修先の社長から痛烈な一言をもらいます。

 

「仕事には向き不向きがあるからな」

 

せっかく慶応の経済出て帝人まで勤めたのに

脱サラして、

「農家に向いてないのでは・・」

なんて言われたらショックですよね。

結局、この1年間でタネを蒔いたのが一回。

トラクターに乗ったのも1回。

スキルとしては初心者のまま終了です。

 

「能力以上に、研修や農業に対する姿勢の甘さが露呈」

 

本当に正直な方ですね。申し訳ないですがそう思います。

結局「なんとなく農業」を始めたのです。

つまり、1998年11月1日が本当の意味での独立。

 

就農場所も結局は茨城の親戚に世話になる形で

40a(アール・1アールは100u)ほどの農地を確保。

でも荒れた耕作放棄地ばかりで

野生化した芝に覆われて雑草も生えない状態。

 

そこを手回しでエンジンをかける旧式の

ディーゼル耕運機で開墾。

 

何だか明治の昔の頃の北海道の開拓民のような・・・。

 

「有機農業で農業を変える!」

 

意気込んで飛び込んだものの現実の世界・・・。

 

いいですね・・・。

ベンチャースピリッツを私は感じます・・・。




その5 有機農業とオフサイド論


ここで私がサッカーのワールドカップのお話を

しても誰も読まないでしょうから、

 

久松氏の持論「有機農業とオフサイド論」。

 

これはなかなか優れた考え方ですね。

 

「サッカーになぜオフサイドがあるのか?」

 

こんなことを真面目に考えたことありますか?

同じように

ラグビーにもオフサイドがあるからパスを

後につないでいきますね。

 

その理不尽さゆえに、オフサイドが嫌いという人種が

存在します。

誰だかすぐお分かりですね。

アメリカ人です。アメリカがサッカーの

ワールドカップで活躍しないのはその理由からです。

アメリカ人はアメフトを好み、ラグビーはやりませんね。

オフサイドのないバスケットボールが大人気なのは

その理由でしょう。

 

きっと、

「オフサイドはゲームをつまらなくする」

とアメリカ人は考えているからですね。

それに対して久松氏は、真逆なのです。

「オフサイドはゲームを面白くするもの」

と考えています。

どうしてでしょうか?

 

「ボールへの関与をあえて制限することで、

選手たちに創意工夫を強いる。制約があるから

戦術が生まれ、ゲームを複雑で豊かなものにする。

易しくないからこそ、プレイする人も見る人も考え、

没頭できるわけです。」

 

「有機農業で化学農薬を禁じることの意味は、

フットボールのオフサイドと似ている。」

 

なかなか面白い論点だと思いませんか。

ただここで

 

化学農薬=禁じ手

 

ここを誇張し、「農薬の是非」を議論すると

どろどろとしたものになってしまうそうです。

 

「残留農薬の危険性が議論の対象となったのは、

50年以上前の話」であるし、

また

 

「有機農業でないと美味しい野菜はできない」

 

それも違うみたいです。

 

このあたり農業素人の私には勉強にはなったものの、

なかなか理解できないところですね。

 

 

ただ実際の農家のマーケットを知ることができました。

有機農業をやっている農家の経営規模は

総面積のわずか0.5%しかないのです。

つまり面積規模では200分の1しかない。

 

理由は簡単ですね。

手間がかかって儲からないからですね。

 

では久松氏に

 

「なぜ有機農業何て手間がかかって、儲からないのに

やるのですか?」

 

本当に聞いてみたいですよね。

正直に書いてありました。

 

「できる農産物が栄養価や安全性において優位だから」

「生産プロセスの環境負荷が低いから」

 

そういう理由ではないのです。

なかなか愛すべき人ですね。

 

「有機という『縛り』が仕事を面白くするという個人的な理由」

 

まさにサッカーの「オフサイド」と同じ理由。

久松氏は今ワールドカップを熱狂して見ているのでしょうか・・・。



その6 ガンバレ!久松農園!!


まだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、

サッカーのワールドカップを私も応援しなければならないし、

まとめましょう。

しかし、農業問題は私のような素人にとっては

あまりにも難しい井ですね。

農業を考えるきっかけになりました。

  

2020年の農業従事者は152万人。

でもつい最近までは200万人もいたそうです。

 

2015年から5年間で46万人も減少しているそうです。

これは驚くべき数字ですね。

 

「日本の原風景である美しい棚田を守ろう!」

 

とは、

 

「つぶれる農家かわいそう論」

 

いろいろ国民感情があることが分かりました。

ただ、この本でもっとも驚いたのは

 

「2012年からは、新規就農者を雇用する

経営者に対して年間120万円を最長2年間助成する制度。

農業経営の立ち上げに最大5年間総額690万円を

助成する青年就農給付金。

さらには2022年度からは就農支援補助を1000万円に

拡充されている・・・」

 

詳しくは こちら

 

これ見て

 

「よし!脱サラして有機農業を始めよう!」

 

と思う方もいるかもしれませんね。

そういう方はぜひこの本を熟読してください。

年間新規就農者は5〜6万人もいるそうですが

そのためこんな「手厚い支援金」を受けられるのです。

 

でも実情は「約4万人が農家の後継ぎ」と書いてありましたが

この補助金の「バラマキ」は目に余るものが

ありますね。

 

本当の意味で「農外から自営で農業を始める新規参入者」は

なんと、たった3600人・・・。

これしかないのですね。

 

後継ぎ4万人のうち、本当の意味での若い後継者

(つまり49歳以下)は8400人・・・。

全体の16%でしかない。

 

ということは実態がよく分かりますね。

 

「会社定年退職なったので、実家で農業でも

やるか・・・。親の面倒も見なければならないし・・・」

 

農家の実態がよく分かりますね。

でもこんな「バラマキ」は意味がないのだと筆者は

いっているのでしょう。

 

だからこそ

「農家はもっと減っていい・・・」

 

勉強になりました。

ありがとうございました。

最後に久松農園の美味しそうな野菜・・・。

 

20221130-091237

 

食べたくなりますね。 こちら

 

20221130-091754  

 

久松農園で働きたくなりませんか・・・。

 

(ガンバレ! 小さくて強い農業! おしまい)

 

 

 





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