その1 これくらい誰でもできます!? 


guts





お勧めの本のご紹介。
これは起業する方にぜひ読んでいただきたい本ですね。
「J!NS」というメガネブランドをご存知でしょうか。
パソコン用のメガネが大ヒットして、
2013年度、売上高365億円、年間550万本と
販売本数では日本一のメガネ企業になりました。
創業社長は田中仁氏。


巻頭に本当に書いてあるのですが、
「これくらいなら僕にでもできるのじゃないか」
そう思ってほしいと。
これは本当に私も思いました。
田中社長は本当に普通の人です。誰でもこれくらいと・・・。(失礼)



さて、田中社長は1963年(昭和38年)群馬県の前橋生まれ。
若手の経営者かと思ったら、もう50歳なのですね。
地元の高校を出て、すぐ前橋信用金庫に勤めます。



もうここだけで「絶対誰も言わない」突っ込み。
前橋信金は、1994年に合併して名前が変わっています。
その後群馬県内の信用金庫は合併を繰り返したので、
前橋信金は結果消滅してしまったのですね。


だから、もう時効だし?何を書いてもいいでしょう。
実は野村証券高崎支店時代(1984年〜86年)に
前橋信金を担当していたのですね。
毎日のように通いましたから、とても思い出深い信金です。
どこかで、この社長と会っていたかもしれませんね・・・。


田中社長が、なぜ脱サラしたかの箇所が面白かった。
勤めて4年目の22歳、1985年の大晦日の日。それも夜の9時に
支店長から預金をとってこいとの指示。
田中社長は、訪問した担当先に
「大晦日に金をせびりにくるなんてお前は乞食か」
そういわれたのが悔しくて、あっさりやめてしまったのだそうです。


結構「軟弱な」営業マンだったのですね・・・(失礼)
あのころの時代背景は私もよく覚えていますが、
夜の9時でも10時でも皆どこでも営業していました。


「若いのに熱心だね。」

今では考えられないでしょうけど、そういわれることさえ・・・。
半沢直樹だったら、


「乞食なんかでは決してありません。
バンカーはお客様の大切な資金を、必要とする企業に回すのが仕事です。
いわば、企業に新しい血を注ぎ込む、日本経済の心臓なのです!」


それくらいのタンカを切ったでしょうね・・・!?
「乞食」と言われるくらいで、めげるようでは、
彼はそのまま勤めていても支店長にもなれなかったでしょうね。(失礼!)





その2 弱冠20代で早くも成功 



もともとこの社長は、脱サラして起業をもくろんでいたのでしょう。
1987年、弱冠24歳で個人商売を始めます。
25歳で自分の会社、有限会社ジェイアイエヌを設立します。


意気揚々と始めたビジネスは雑貨の企画制作。
メガネではありませんね。


でも商売はそうそう簡単ではありません。
何を作っても売れません。
この時、社長はすでに結婚して子供もいました。
でも起業して1年で生活費も家に入れることすらできません。
起業開業の苦しみをここと味わうのですが、
ラッキーだと思ったのは、すぐヒット商品を生みます。


エプロンと化粧ポーチ。
たまたま大ヒット。
弱冠20台で年商3億6000万円!


「会社経営はこんなに簡単なのか!」


ついおじさん税理士としては突っ込みたくなりますね・・・。
30歳の1993年!年商は4億円を突破。
社長は、ポルシェ・カレラを買ってしまいます。
ポルシェに乗って毎晩前橋の高級クラブ通い・・・。


もう怒りたくなりますね・・・。


でもやはりビジネスは甘くない。
翌1995年から会社は傾きだします。


「社長が仕事しない会社は社員だって必死にならない」


当たり前ですね。
1998年についに赤字転落。
このまま消えてしまう会社も多いのでしょう。


でもここがこの社長のすごいところなのですね。
これくらいではヘコタレないかったのです。
中国で生産したバックがまた大ヒット。


2000年には売上7億7280万円と急回復。
でもまだ雑貨です。


ここでようやくメガネに出会うのですね。このとき社長は37歳。


でもここで気が付きませんか。
彼は、これまでメガネ業界で働いたこともなかったのです。

もう一つ言うと「メガネを買ったこと」も「使用したこと」もなかった!!






その3 フルスイング経営 



この本の題名となった「振り切る」とは
野球で言えば「フルスイング」するという意味ですね。
「お思いきってチャレンジする」というか、
現在のNHK朝ドラ的には
「こぴっとガンバル」という意味ですね!?(ご存知ですか?)


若くして雑貨の企画制作で苦労した田中社長は
この「フルスイング」ですべて乗り切ってきたというのです。


経営学的には、どうか分かりませんが、
若手のベンチャー経営者の特権ですね。


メガネ事業を思い立った「きかっけ」が面白かった。
韓国に旅行に行ったときに、繁華街で
「メガネ1本3000円、15分でお渡しします。」
という看板が目に入ったから・・・。


ご説明したとおり、田中社長はそれまでメガネを販売したことも
それこそ買ったことも使用したことなかった。
「ピン」ときたのでしょうね。
経営者としての「勘」でしょうね。


すぐさま日本に帰ってから、メガネのSPAビジネスを考えます。
SPAとはお分かりですね。
もう何度もこのブログで取り上げてきましたから。
当時、ユニクロのフリースが大ヒットしていた時でもありました。


でも日本のレンズメーカーやフレームメーカに
問い合わせても、まったく相手にされない。
それもそうでしょうね。
メガネについては素人だし、それこそ販売店もないから。


それまでだって、メガネの安売りチェーンというのは
存在していましたが、「海外でSPA事業なんてできるはずがない」
という業界の常識があったのでしょう。


ここで田中社長の「フルスイング」です。
単身韓国に乗り込んで、メーカー10社以上回って、
なんとかフレームを仕入れます。
さらに一枚数百円という安価なレンズまでも・・・。


ついに一本5000円のメガネの販売までこぎつけます。
若手経営者の特権ですね。
ベンチャースピリッツを非常に感じます。
失敗を恐れない、このフルスイングは読んでいて気持ちよかったです・・・。


でもしかし・・・・。





その4 5000円のメガネチェーン! 



2001年4月20日、ついに福岡天神にて
「JINS天神店」がオープンします。


この本ではっきり書いてある通り
「メガネのど素人がメガネ屋を開店」
したのです。
これは衝撃の事実ではないでしょうか。
雑貨でSPAビジネスをやってきたのは事実ですが、
韓国で仕入れた激安のフレームとレンズだけで
メガネを作って販売したのです。
価格はわずか5000円!
この衝撃な値段だけで、大ヒットしたそうです。


ただその天神店ができてすぐ、福岡には同様の店が
20店舗位できたそうですが・・・。


しかし、JINSが激安メガネ第一号店かというと
実は違うのですね。この本で学びました。
2001年2月に東京、下北沢にオープンしていました。
5000円、7000円、9000円のスリープライス。
どこだかお分かりですよね。
「Zoff」なのですね。
まさに2001年は激安メガネの誕生の年なのですね。


その後JINSは4年間で21店舗まで拡大します。
2005年、売上高39億4000万円。


2006年で東証マザーズに上場する予定だったらしいですが
例の堀江氏が引き起こした「ライドアショック」で延期。
結局大証ヘラクレスに上場してしまいます。


と一気に急成長したところまで書きましたが、
どうもこのビジネスモデルおかしいと思いませんか?
そんな簡単に「素人」がメガネ作れるのでしょうか?
既存のメガネ屋さんが当然怒りますよね・・・。


1枚数百円のレンズで大丈夫なのでしょうか・・・。
そう思って当然でしょうね。
この本は正直にそのあたり「暴露」しています。
「こんな素人が・・」と。



Yon

 

 

やはり、このあたりから既存のメガネチェーンの反撃を受けます。
2006年にメガネトップによる「眼鏡市場」という新店舗での
「一律18900円」戦略!


これはご存知ですよね。
当時の冬ソナブームの影響で、あの「ヨン様」のCMで
巻き返しを図ってきたのですね・・・。






その5 ジェットコースター経営 



当時JINSは5250円と8400円のツープライス。
激安メガネチェーンということで攻勢をかけたJINSですが
その後「もっと高い」18900円の戦略にやられてしまったのですね。


JINSは当時「安い」と思って注文しても、結局「追加料金」が
発生していたからなのですね。
2008年でついに赤字転落へ。
さらにはリーマンショックで追い打ち。


しかし田中社長は、上がったり下がったりを繰り返す
実に「ジェットコースター経営」なのですね。


ついに株価は50円を切ってしまいます。
このころは会社の身売り、つまりM&Aによる売却の話が
かなりあったそうです。
このままJINSは消滅していてもおかしくはなかったのでしょう。


どうして、こんなに「ジェットコースター」なのか。
この本で一番おもしろく、かつ、ためになる箇所です。


この時期に、ユニクロの柳井社長に会うのですね。
当時ユニクロはあのフリースで大復活をした会社です。
そこで柳井社長が開口一番


「御社の事業価値はなんですか?」

「御社のミッションはなんですか?」


その質問に田中社長は答えられなかったというのですね。


でも大証ヘラクレスという市場に上場した
上場企業の社長さんですよね。
それにまともに答えられなくては情けないですよね・・・。

(すません。これは本音です。)

でも、すばらしい忠告を柳井社長は言ってくれました。


「JINSはこういう店だと明確にし、その中で最高の店を
つくらなければいけない」

「安くても質が悪ければ見向きもされない。圧倒的に品質を
よくしなければダメだ」

「小売業は、売上よりも利益。利益が上がらければ意味がない」

「もっとマーケティングをしなさい。宣伝ばかりするのではなく、
マーケットの意見を聞くべき」

「ワン&オンリーをつくりなさい」

「本当に強いものを磨いていかなければ生き残れない」


そして最後に
「志のない会社は、継続的に成長できない」


SPAの大先輩に直々の薫陶を受け、田中社長は大変身したのです・・・・。





その6 4900円で追加料金なし 




2008年の年末に柳井社長に会ったことで
田中社長は変身します。


「こんなに人間て変われるものか?」不思議に思いますね。
柳井さんの力を借りて、少しこの本で誇張した点かなとも
感じますが・・・。


2009年の正月に役員合宿。


「JINSのビション」について徹底的に話し合います。


結果できたビジョンは


「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、
市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」


「なるほど!」と思いませんか。
この会社のビジョンについては、
中小企業においてはぜひ真似すべきものですね。
ビジョンなんて話し合うことないかもしれませんから。


さらに「ありえない」ことを「あり」にする戦略を打ち出します。


「4990円で追加料金なし」


の戦略。
業界的にはまさに「ありえない」お話なんだそうです。
これを聞いた同業他社は「JINSはこれでツブレル」
とまで思ったそうです・・・。


と同時に社内での意識改革を進めます。
上場したことで、「安定した企業でそりなりに働けばいいや」
と考える風潮が蔓延してしまったことに、劇薬を投じます。
その結果、退職した社員も増えたらしいのですが、
社長の本気が伝わります。


2009年9月17日。
JINS社内では「桶狭間の戦い」と呼ばれる勝負に出ます。


「Air frame」という新商品を7万本仕入れ
広告費を1か月で5億円投入!


まさにフルスイング経営ですね。
結果これも大ヒット商品に。


この「桶狭間の戦い」で勝利したJINSは
天下統一をしていくのですね!?




その7 JINS PCが大ヒット! 



JINSを躍進させたのは、やはり
「JINS PC」
なのでしょう。


2011年7月、JINSはブルーライトをカットする
「JINS PC」を発売していきます。


パソコンなど日常で使用している方にとっての目の疲れの原因は
「ブルーライト」なんだそうです。
そのブルーライトをカットするものとして、
IT企業などを中心に導入企業が急増して、大ヒットしました。


それまでのメガネは「目が悪い人」、つまり視力の弱い人のための
医療用器具という位置づけでしたね。
それが目の良い人への需要を喚起したのですね。
ドラッガーの言葉を借りれば、まさに「新たな市場の創造」ですね。


確かに「メガネの歴史を変えた」といっても過言ではないでしょう。

 

この本のおかげでメガネ業界をずいぶん勉強しました。
ここ10年あまりの間で、このJINSらの激安チェーン店のおかげで
この業界は激変したのかもしれません。


メガネの素人ながら、既存のメガネ業界にチャレンジしていった田中社長の行動は
何か参考になるかもしれません。


たとえば、通常のメガネ屋さんでは、買ってから3日から1週間かかるのが、
その場で受け渡しができるようにしたこと。
ショッピングモールに次々と出店して、通常のメガネ屋さんの10倍以上の来店客に
するような戦略をとったことなど、これは正直驚きですね。


何か経営のヒントになると思いませんか?



最後に、スポーツメガネをいち早く開発していながら、
ある企業にそれを全部持っていかれたことへの「恨み節」も
正直に書いてありました。
(どことは書きませんが、私はすぐ分かりました・・・)
メガネ業界もまだまだ「戦国時代」なのですね。



マラソン愛好家としては、JINSにぜひ安いスポーツサングラスを
もっと開発してほしいかなとは思いましたが・・・。



(ガンバレ! メガネ屋さんシリーズ おしまい)

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