その1 創業以来30期連続増収増益


まっすぐ


先日書籍「食品業界の裏側」をアップしてから、
どうも気になっていた外食がありました。
「回転寿司」なのですね。


「回転寿司は実は・・・だったのか・・・」


永年の回転ずしファンの一人として結構ショックだったからなのですね。
それでそれを確かめるべく、飛びついた本です。


回転寿司チェーン「あきんどスシロー」を
ご存知でしょうか。


直近の2013年売上高はなんと1193億円!!
過去最高益を上げているとともに、
創業以来30期連続増収増益です。
これもすごいのですが、2011年度から
3期連続業界売上高ナンバーワンを達成しています。



この「あきんどスシロー」の実態はどうなのか
本当に知りたかったのですね。


実は、前述の「食品業界の裏側」では、
実名は上げていないものの、このあきんどスシローは
良い方の外食産業として紹介されていました・・・。


しかし、回転寿司業界がよく分かって面白かったですね。


さて、回転寿司のウンチクから。


回転寿司はいつからあったのでしょうか?


回転寿司を生み出した方は、白石義明氏。
戦前満州でてんぷら屋をやっていましたが、
帰国後、1947年東大阪で立ち食い寿司「元禄」を開業。
10年後この方が開発したのが、元祖回転寿司である「元禄寿司」
1970年の万博にも出店し、最優秀店舗として表彰されるなど
知名度を上げ、フランチャイズで拡大し、最盛期では全国200店舗。
これが第一次回転寿司ブーム。


「元禄寿司」は覚えていますか?
私も小学生だった頃でしょうか、当時大塚の駅前に「元禄寿司」が
ありました。
当時は確か一皿60円!
行くのが本当に楽しみでした。


ただいつも「3皿まで」の条件のためか
何を取ろうかいつまでも回っている寿司をながめていました。
寿司なんかめったに食べない小学生にとっての幸せな時間。
いまでもハッキリ覚えています・・・。





その2 回転寿司の歴史



元禄寿司なんて名前が出てきて
何だか懐かしくなりましたね。


昭和の時代は、やはりご馳走というと「寿司」なのですね。
「平成の今」ならイタリアンやらフレンチなど
いくらでもありますが、やはり今とは時代背景が違うのでは
ないでしょうか。
あのころは寿司屋が町の至る所にありましたから。


来客のおもてなしというと寿司なのですね。
だけど何故か子供の分まで取るような風習がなかった・・・。


だから子供にとっての寿司というのは
まさに「憧れの食べ物」だったのですね・・・。


それが一皿いくらで食べられるというのが
本当に画期的だったのです。


回転寿司の生みの親である白石義明氏。
開発した「コンベヤ付調理台」の特許をすぐ取ります。
しかも「回転寿司」という言葉以外にも「まわる」、「廻る」「回転」
など商標登録してしまうのですね。


よってまさに「元禄寿司」の独り舞台。
1978年(昭和53年)にその「コンベヤ付調理台」の特許が
切れると、堰を切ったように新規参入者が出てきます。
これが第二次回転寿司ブーム。
元禄寿司もやがてその回転寿司の名称を開放していきます。


スシローに話を戻しますが、
創業者清水義雄氏が1975年(昭和50年)に
大阪阿倍野で「鯛すし」を開店したことから始まります。
清水氏は長崎県五島列島出身。
「味の鯛すし」と呼ばれるほど行列ができる繁盛店
だったそうです。


スシローの現社長である豊崎賢一氏がその「鯛すし」に
入ったのが1983年(昭和58年)の18歳の時。


その翌年鯛すしは回転寿司へ参入したのですね。
ただすぐ参入したのではなく、じっくり見てから。
そのころに快進撃した100円寿司は安さで売ってはいたものの
ネタも悪く結局破綻したんだそうです・・・。






その3 原価率50%の秘密



スシローが回転寿司を初めてわずか30年で
業界トップになったのですね。
元禄寿司という創業者がその前にあったとはいうものの、
そういう意味ではまだたかだか30年の業界なのですね。


回転寿司業界がよく分かって勉強になりましたね。


30年前は確かに「安さ」のみが売りでした。
「安かろう悪かろう」
のところも多かったのではないでしょうか。


どうしてそうなのか、これはこの本で教えてもらいました。
要するに回転寿司業界にはいいネタが仕入れることが
できなかったからなのですね。


つまり、回転寿司は業界で一段も二段も低く見られていたと
いうのです。
ずばり、
「回転寿司なんかにいいネタは売れないよ」
そう魚市場で言われることもよくあったそうです。


魚業界としての「縄張り」があったのでしょうね。
「新参者」には厳しくされたのです。


ただスシローの豊崎社長は、「禁断の手」を使います。
水産会社と直接取引してしまうのですね。


これはどんな業界でもタブーとされるところです。
たとえば工事会社で下請けが元請けと直接取引することは
当然タブーですね。
どこの業界でもご法度です・・・。


水産会社との取引を少しずつ広げ、
でも営業手法としては「接待や付け届けは禁止」


「味」と「値段」だけで交渉・・・。
なかなかまじめな戦略です。


でもどうしてスシローがやりたかったこと、
それはいまでもうたっていることですが、


「原価率50%」


まさにコレなのですね。
スシローの快進撃の秘密がここに・・・。





その4 30年間ぶれない戦略




スシローの30年間ぶれない戦略はこの4つ


@ 原価率50%でうまい寿司を出す。
A “超”薄利多売をめざす。
B 「原価管理」と「コスト管理」を徹底する。
C 郊外に出店する。


スシロー創業者清水氏の「商売哲学」です。
これはこれだけで参考になるのではないでしょうか。


外食産業のお話を何度も取り上げていますが、
原価率50%というのもすごいですね。
俺のイタリアンの60%には及ばないものの、
あのサイゼリヤの40%を上回っています。


なかなか50%は真似できないでしょうね。
回転寿司は確かに「安さ」で人を呼びます。
でも「安さ」に慣れてくるとやはり「味」を
求めてくるのですね。


当たり前のことかもしれませんが、
なかなかできないことのようです。
まえにご紹介した「外食産業の裏側」では
「鮮度の落ちたネタを食べさせるために、
回転寿司の醤油差はドバっと出るような工夫がされている」
そんな店もあるのでしたね。


やはりそんな業界ではやがて淘汰されてしまうのでしょうね。


スシローには「セントラルキッチン」がありません。
多くの回転寿司チェーンでは、セントラルキッチンで
切り分けられたネタを再度冷凍し、各店舗で解凍して
寿司ロボットで作られたシャリにのせられて
出されるそうです。


コストを考えたら「セントラルキッチン」は正しいのですが
2度の解凍でやはり魚の味は落ちるのですね。


スシローは、水産会社から直接各店舗へ配送する
システムを構築しているそうです。
確かに手間はかかるのでしょうけど、
この方が「味」は確保できるのです。


「まっすぐにバカ正直にやり続ける。」の意味が
だんだん分かってきましたか・・・。




その5 かっぱ寿司との大連合構想




さてスシローのクライマックスに移りましょう。
これはこの本を読むまで、まったく知りませんでした。


驚くべきことですが、
「外食産業そのものがマネーゲームの対象となった」
のです。


現代の外食産業の実態を表しているのでしょうか。


「おいしいものを腹一杯・・・」


と表向きはいいながら、実は経営者は全くほかのことを
考えていたということです。


創業者清水氏が引退した1年後の2007年(平成19年)3月末に
事態が急変します。


創業者清水氏の弟が持っていたスシローの株式を
外食大手のゼンショーに売却したのです。
これによりゼンショーが筆頭株主となりました。


ゼンショーとはご存知でしょうか。
牛丼の「すき家」をやっていますし、何より回転寿司業界最大手の
「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトの株式も
持っていたのです。


でも、業界最大手と第2位だったスシローとの
大連合なんて、ものすごいことを考えたものですね。
確かに当時は「100円寿司のかっぱ寿司」として
業界トップを独走していました。


ただ「かっぱ寿司」とは、どうしても企業風土が全く異なると
判断して、その大連合構想に対して経営陣が全面的に対抗します。


証券会社と相談して、「ユニゾン・キャピタル」という
企業再生のトッププロを紹介されたのですね。


「ユニゾン・キャピタル」もご存知でしょうか?
東ハトとかカネボウなどの企業再生を
これまで手掛けてきたのですね。


これをM&Aの用語でいうと、
「ホワイトナイト」


まさに「白馬の騎士」となって、
買収されそうになって困っている「スシロー」を助けようとしたのです・・・。






その6 どこへ行くスシロー





「ホワイトナイト」


なんて、ずいぶん懐かしい言葉が出てきましたね。
その2年ほど前に、
当時飛ぶ鳥落とす勢いだった「ホリエモン」(堀江貴文)が
勢い余ってフジテレビを買収しようとしたとき、
その困っているフジテレビを助けようとして、
出てきたのがこの「ホワイトナイト」。
覚えていますか?
それが、野村証券出身のソフトバンクの北尾吉孝氏。



「ホワイトナイト」は訳すると「白馬の騎士」ですね。
賠償されそうになって困っている人を助ける
「正義の人」みたいですね。


確かにユニゾンは、ゼンショーから株式を買い取り、
経営のかじ取りを変えます。
その年の12月に専務を送り込みます。
名前は加藤智治氏。
東大院卒、ドイチェ証券、マッキンゼーを経てユニゾンに入った方。
しかも東大時代にアメリカンフットボールの日本代表にもなった
「文武両道」のスーパーマン。


この豊崎社長とタッグを組んで、スシローを改革していきます。



その結果、冒頭申し上げた通り、
3期連続業界売上高ナンバーワン達成します。
その直後、なんとユニゾンは株式をイギリス系の別のファンドに
10億ドル(786億円)で売ってしまいます。


一説によると、この5年の投資で
500億円超の莫大な利益を得たそうですね。
これこそまさにマネーゲーム。
ユニゾンは見事に「売り抜けて」しまったのですね。
その加藤専務も2014年2月に退社したそうです・・・。


さて、これからスシローはどこへ向かうのでしょうか。
オーナーがファンドである以上、絶対に10億ドル以上の価値をつけるべく、
間違いなく再上場の道を目指すはずです。
でも現在は、円安による輸入食材の高騰で、
どこの回転寿司も苦境に立たされています。
これは多分相当苦難の道なのでしょう・・・。



では、最後に書きます。
「会社は誰のものか」という、私のライフワークのテーマがあります。


もちろん企業である以上利潤追求は大事でしょう。
でも創業者清水氏の


「美味しいものを腹一杯」


こそがスシローの基本理念です。
でもこんなことは、ファンドの経営者に言っても
多分仕方がないですか・・・。



(がんばれ スシローシリーズ おしまい)







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