なかかなか面白い小説です。
久しぶりですね。
小説を取り上げたのは。
「経済小説」といってもいいくらい。
著者は安野貴博氏。
1990年生まれというとまだ34歳。
SF作家、起業家、AIエンジニア。・
先日都知事選に立候補して、泡まつ候補といわれながら
15万4638票を獲得して堂々の5位と
なりましたね。
こういう若者がいることにまだまだ日本の未来は明るいですね。
「AIって何?」
「AIって何ができるの?」
という方にぜひ読んでいただきたい本ですね。
AI用語の難しいところは、読み飛ばせば
すっと頭に入ってきますから。
主人公の大学生松岡まどかが内定を
取消されたところから物語が始まります。
大手企業の「リクディード社」。
誰が読んでもこれ「リクルート」でしょ。
とまず突っ込みます。
ネタばれなのですが、内定取り消し理由が
AIを使って就職テストをやったから。
このあたりから、まさに今流でしょう。
今どきの大学生はAIをうまく活用するらしいですからね。
今後の企業経営の将来像が垣間見える感じ。
AIを一切使わないで仕事をするのか。
AIをうまく活用して仕事を進めるのか。
主人公は後者を選ぶのですね。
内定を蹴って起業するのです。
「そんな簡単に起業できるのか!」
とすぐ突っ込みたくなりますが、
このあたりはいいでしょう。
しかも、ここで「怪しいベンチャーキャピタル」
に騙されます。
ここはちょっと・・・。
とまた突っ込みたくなることろですね。
一応昔は投資法人の監督役員をやったことのある
税理士としてはちょっと納得できなかったところ・・。
まあ、細かいところはいいでしょう。
起業に向かってまっすぐ進んでいきます・・・。
読んでいてすがすがしくなります。
物語の冒頭、「あやしい」ベンチャーキャピタリスト
が登場してきます。
主人公はその言葉にまんまとひっかかるのですが
結構考えさせられました。
優秀な学生に対して起業を促すのですね。
「大企業に入るなんて、優秀な人材にとっては
コスパの悪い選択だ」
「大企業で、十分な裁量が持てて、実際に意思決定しながら
ビジネスするには20年かかる。
大企業の平均年齢は42歳。
30代すら若手扱い。」
確かにそうでしょう。
20年は下積みするのが大企業でしょうね。
大企業に向かう優秀な方にスタートアップを
勧めるのです。
大事なところです。
スタートアップと起業は違うのですね。
「脱サラしてカフェを始める人はスタートアップ
とは言わない。」
「短期間に成長しようとする企業をスタートアップと
いう。」
でも主人公は社会経験はないのです。
そんな方が起業して成功するかどうか迷いますね。
でも次はこの「悪徳?」ベンチャーキャピタリストの
殺し文句。
思わずうなりました・・・。
「偉大な起業家はまともに働いたことのない人ばかりだ。」
ザッカーバーグはフェイスブックを始める前、
ただのハーバードのギーク(注おたくということ)
でしかなかった。
イーロン・マスクだってスタンフォードを1日で辞めている。
ジョブズもゲイツもみんな新卒で就職何てしていない。」
どうでしょう。
なかなか説得力ありますね。
ただこの物語でスタートアップを
推奨する言葉が出てきます。
素晴らしい上司です。
「世界に君の価値を残せ」
小説だからこれ以上書くとまさにネタばれなので
これくらいにしておきましょう。
安野氏が描くAIによる明るい未来が
垣間見える感じがします。
主人公が日々の独り言をずっとマイクで
しゃべっているのですね。
それをAIが拾い続け、その人となりを
理解してしまう。
その結果、「ミツナリ」という忠実な家来を
AIで作り上げていました。
「そんなこと出来るの?」
そう思いますよね。
圧巻だったのは、主人公にビジネスを
教えた上司を死後にAIが再現できてしまうこと。
この技術ができれば、著作物を読み取って
その人の考えをまねたクローンができるということ。
たとえば先日亡くなった森永卓郎さんの膨大な著作物、
テレビでの発言などをすべてAIに読み込んで
クローンを作ってしまうこと。
もっと言えば私が15年も長々と書いている
このブログでさえAIで読み込ませれば
吉田クローンができてしまうのではと・・・。
でもこれ決して遠い未来ではないのですね。
昨年末に上場したオルツという企業をご存じ
でしょうか。
AIクローンが上場記者会見をしていましたね。
あれがまさに描かれていました。
いろいろ書きたいことはありますが
ぜひ読んでこれからのAIの未来を考えてみてください・・・。
(がんばれ! AI安野シリーズ おしまい)