その1 弁護士生活60年!



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月初に少しだけご紹介した本ですね。
確定申告の忙しい中、何度も読み返しました。
なかなか平易で読みやすい本です。

「湯川先生ならどう判断されるのだろう・・・」

人生の大先輩であり、弁護士生活60年間のキャリアから
いろいろと参考になるお話ばかりです。
もう少しご紹介しておきましょう。

湯川先生は1927年生まれ。
昭和2年生まれですね。
実は私の母が昭和3年ですからほぼ同じ世代なのですね。

中央大学法学部卒で1954年、27歳の時に司法試験に合格。
30歳の時に「九州第一号の女性弁護士」になった方です。

当時女性が大学に進み、さらに難関国家試験である司法試験に
挑戦するということはどれだけ大変であったか。

「女性も勉強したほうがいい」

という父親の一言で始められたそうですが、
司法試験に挑戦しているときに、
「女性が勉強すると気が散る。出ていけ。」
と真顔で言われたそうです。

ようやく合格して弁護士になられても、
女性の弁護士はそれまでいなかった訳で、依頼者の信頼を勝ち取るには
どれだけ苦労されたか・・・・。

何だか、この経歴を聞いただけで、NHKの朝ドラのヒロインに
演じてほしい題材ですね・・・・!?

この先生のすごいところは、開業された翌年から
42年間も福岡家庭裁判所調停委員をされたことですね。
弁護士としてのバッチを外して、家族問題の仲介を・・・。

つまり離婚問題のエキスパートなのでしょう。
離婚問題を取りあった件数はなんと1万件!!

すごいですね。
もう依頼者の顔見ただけで判断できるのではないでしょうか・・・。

よく思うのですが、お医者さんの本当のエキスパートは
聴診器当てなくても顔見ただけで、病名が分かるのではないでしょうか!?

手術を1万件したことのある医者はいるかどうか知りませんが
もう達人の領域でしょう。

その達人がどうやって物事を判断されているのか、
これはぜひ知っておいていただきたいと思います・・・。



その2 世阿弥の「離見の見」


前回のブログにお医者さんからコメントいただきましたね。
ありがとうございます。
お医者さんも達人の領域になると第一印象である程度
分かってくるそうです。
さすがですね。


ではこの湯川先生の場合はどうなのでしょうか。
非常に良い言葉が書いてありました。

『「話す」ことは、「離す」ことであり「放す」ことにつながる』

今までいろいろな書籍をご紹介してきましたが、
どんな一冊でも何か記憶にとどめたいハッとする金言が
あるのですね。
まさにこれこそ、その金言です。


湯川先生は達人の領域ですから、依頼人の顔を見ただけで
ある程度分かるのかもしれません。
ただ先生はさらにその先を行っています。


湯川先生のお得意とする能の「離見の見」(りけんのけん)という言葉を
例にあげられています。

これは、世阿弥が能楽論書「花鏡」で述べられた言葉で、


「演じ手が自らの身体を離れて客観的な視点を持ち、
あらゆる方向から自身の演技を見る意識」

を意味するそうです。


弁護士のところに相談に来られる人は、
離婚や相続など人生の大事件を抱えたばかりなのです。
一人で問題に向き合って、考え込み、苦しんでいるときは、
とても狭い視野の中にいるのです。
その悩み、苦しみを専門家に「話す」ことで、法の知識や
第三者の目で触れられることで、自分の問題をより客観的に
見ることができるのだそうです。
これが「離す」ということ。
世阿弥のいう「離見の件」
お分かりになりますか。

さらに、自分を客観的に見ることができることは、
その問題から「離して」距離を置くことであり、
「手放す」ことになるのだそうです。

一歩距離をおくことができたら、つまり「放す」ことができたなら、
その問題に対する心の持ち方が変わってくるそうです。


「なるほど!」

そう思いますね。
弁護士の達人のいう金言ですね。

そして最後に一言。

「弁護士のところに来られた以上、必ず解決しますからね。」

励ましもあるかもしれませんが、それ以上にその問題から距離がおけるのです。


この題名のように問題から「ほどよく距離がおけたなら」
どんな難問を必ず解決の糸口があるのだそうです。


このお考えはぜひとも見習いたいですね。
これは税理士として心底感服いたしました・・・・。




その3 相手の立場になって考えなさい


昨日の「離見の見」という言葉をお聞きした瞬間、
ある言葉を思い出しました。


それは
「テレポーテーション」
ということ。
日本語で「瞬間移動」という意味ですね。


得意の昔話ですが、今から30年も前、野村證券で先輩から聞いた言葉です。
その先輩は、支店長→部長→役員と出世の階段を上ったトップセールスだった方。
「営業の極意」
ということで話してくれた時に、この「テレポーテーション」
という言葉を聞いたのですね。


「営業なんて簡単さ。オレはテレポーテーションができるから・・・」


「こうして話しながら、瞬間に相手の体に移動して
自分は相手からどう見られているか、どう思われているか
確認できるから・・・」


すごい衝撃的な言葉だったので今でもハッキリ覚えています。
でも当時は

「そんなマジシャンみたいなことは自分には絶対にできない」

絶望的な気持ちになりましたね。

 

意味合いとしてはこの湯川先生の言われる「離見の見」と同じなのでしょう。

 


先生はさらに、もっと平易な言葉で説明されています。


「相手の立場になって考えなさい」


これは先生が新人弁護士だったこころ、
恩師からよく言われたそうです。

 

その頃、妻子ある男性との間にできた子供の認知と養育費を
求める相談があったそうです。

相手方は「妻にばれると困るから」と調停をするまでもなく
要求通りに高額の慰謝料と認知、教育費を支払ったそうです。

新人弁護士としては大手柄だったのでしょうね。
でも依頼人から、
「調停にしたかった」
と言われてハッと気がつきます。
「離婚する」と言いながら自分との関係を続け、
子供ができたら逃げようとする自分勝手な男性を
調停に引っぱりだし、きちんと自分と子供に向き合ってほしい
それが依頼人の真意だったからなのです・・・。

 

なかなか弁護士さんの仕事も大変なのですね。

 

「事件を解決するということは、依頼者の苦しみや
悔しさを解決するところまで考えなければならない」

 

この苦い経験から教わったそうです・・・。




その4 遺言書があれば・・・


「70歳になったら遺言書を書きなさい」

これは湯川先生が強く主張されることです。

「遺言書があったら・・・」

これは先生が今まで弁護士人生60年のうちに
何百回、何千回も思われたからなのでしょう・・・。

 


また書きながら思い出しましたが、(すいません。いつもの脱線・・・)
私が証券マンの頃、

「レバとタラは言ってもいけないし、食べてもいけない」

これは何度も言われましたし実感しましたね。

「あの時あの株買っていレバ・・・」

「あの時にあの株を売っていタラ・・・」

 


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ドモエモンのポケットにある「タイムマシーン」を
心の底から欲しいと思ったことが何度もありましたね。

確かに「タイムマシーン」があれば
やり直しがいくらでもできるし、
株を買えば誰でも億万長者ですからね・・・。

 


湯川先生も悔しい思いを何度もされたそうです。
遺言書がなかったケースがでていました。

 

継父の遺産相続の相談にきた女性のお話。
彼女の母親が継父と結婚したのは3歳の時。
継父に連れ子はなく、その後も夫婦間に子供ができなかったので
ずっと一人っ子として育てられたのです。
夫婦は協力して少なからず財産を築き上げたものの
母親が先に他界し、その後継父も亡くなったそうです。

ここで法律問題。
継父と養子縁組していなかったのですね。
となると彼女に相続権はありません。
継父が先に亡くなっていたら、母親が相続してやがて彼女の財産に
なったのでしょう。
ただこの場合は順番が逆のケースだったのです。

法律はなんと非情なのでしょか。
ここで「財産は亡き妻の娘に贈る」という遺言書があレバ・・・。

 

湯川先生は、相手側の弁護士と交渉した末、
結局、全財産の二分の一を彼女に、残りを継父の姪や甥が
相続することでまとまったそうです・・・。

「相続権ない人が相続?したらそれは贈与ではないの?」

税理士としては、そう突っ込みたいところですが、
先生のご努力で円満解決されたそうです。


私は税理士としてこれまでの20年間で
「領収書が無くて」困ったことが何十回かありましたが、


湯川先生は弁護士として60年間で
「遺言書が無くて」困ったことが何千回もあったのでしょうね・・・。





その5 花の遺言書


「可愛い子供たちが幸せになるように財産を残したい」

皆思うことですね。
でもなまじ、少なからぬ財産を残したことにより、
その後何十年も兄弟同士が骨肉の相続争いを続け、
最後には絶縁状態になるなど、湯川先生は何千、
何万もの事例を見てこられたのでしょう。

中国の北宋代の儒学者、司馬温公の言葉。

「大金や資産をいくら多く残しても、
子や孫たちは、これを上手に守り使うことはできないものである。
子孫をいつまでも栄えさせようと思えば、
世の人々のために自らが陰徳を積むことこそが、
子孫が幸せに暮す基となる。」

子の行く末を案じて財産を残そうとしても、
突然降ってきたお金は人をなかなか幸せにしないということ
なんだそうです。

60年も弁護士をやられてきた数多くの経験から、
本当に思うことなのでしょう。

 

 

「海外では多くの富豪が、子供に遺産を残さない選択をし、
多額のお金を寄付してる」
そうです。
先生はそれを勧めているように感じます。


 

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(今朝の善福寺川の桜)



では、最後にこの書で一番感動した「花の遺言書」でまとめましょう。
ちょうど、本日は桜満開の日。
今朝満開の善福寺川で桜吹雪をあびて走りながら、
しみじみと先生の言葉に感じ入りました・・・・。


「桜の花の散る頃に死ねたら最高ね」


と言っていたある女性が亡くなったそうです。
その日は花吹雪が舞う暖かい日。
ちょうど今日のような日でしょうね。


彼女は家屋敷と退職金の他に、余生を過ごすには
十分な蓄えがあったそうです。
自分の病気がガンであることが分かった時、
公証役場に出向き遺言書を作っていました。

独身を貫いた彼女には夢があり、
それは彼女が活動されている団体に寄付するということ。

その遺言内容は
「預金の80%を彼女の所属する福祉団体に遺贈する。
死んだ兄の長男に不動産と残りを相続させ、
死後一切の行事を託す」
というもの。
実に潔い内容ですね。


遺産相続は遺言通りに実行され、
福祉団体から「花の遺言書」として、感謝状を贈られたそうです。


先生が長きに渡って弁護士業務をやられているとは思いますが、
こういう事案は弁護士冥利につきる
生涯忘れられないお仕事なのでしょう・・・。


私もまだまだ達人の領域には程遠く、あと40年はかかると思いますが、
一歩ずつ進んでいきたいと思います。
湯川先生、ありがとうございました。


(達人シリーズ おしまい)



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