やはり今一番気になるのがこの復興計画ですね。
4月末に発売され、連休中何度も読み返しました。
これはお勧めの本です。
わずか120ページくらいの本ですから、すぐ読めてはしまいます。
でも今起っている問題を整理し、これからの日本を考えるには
最適の書物ではないでしょうか。
大前研一氏はコンサルタントとしては著名な方ですね。
数年間に都知事戦に立候補しましたが、政治にも興味があるのでしょうか・・・。
でも大前氏の履歴を知ると驚きでした。
「福島第一原発の炉が設計・建設・稼動を始める1960年代の後半に
マサチューセッツ工科大学で原子力工学を学び、博士号を取得後、
1970年に日立製作所に入社、原子炉の設計に携わった・・・」
こういう方のいうことは確かに信憑性があります。
震災直後から多くのテレビやメディアに
原子炉の絵が何度も出てきて説明を聞きましたね。
どの人の説明も結局よく分からなかったですね。
その理由をハッキリ書いています。
「NHKはじめテレビに登場するエキスパートとやら、〇〇大学工学部の
教授とか何とか称しているけれど、彼らは原子炉の理論は教えていても
プラントを設計したこともないだろう。放射線量の話になるとやたら
詳しかったりするが、全体として何が起こっているか分かっていない・・・。」
もう斬って捨てていますね。
設計をしたことのある方の説明だから実に分かりやすい。
「そういうことだったのか・・・。」
妙に納得します。
東京電力も原子力保安院も、斬って捨てています。
「東電は機能不全」
「原子力保安院はたらい回しの天下り組織、お飾りの組織にすぎない・・・」
東電や原子力保安院の対応に本当にテレビの前でいらいらしましたよね。
実に気持ちよい!発言ですね。
今頃になって、「実は発生直後から・・・」なんて今日も出ていますからね。
「隠蔽体質の」とんでもない組織のようです。
最後にこの本の印税はすべて寄付されるそうです。義援金を送るおつもりで
購入されてみてはいかがでしょうか。
ご一緒に復興計画を考えていきましょう・・・。
その2 やはり人災?
原子力問題をこの本を元に解説しようと思ったら
また「東電の隠蔽体質」が公表されてしまいましたね。
地震直後に冷却装置が正常に作動していれば
メルトダウンを遅らせることができたのに、
今日の新聞報道では、実際は作業員が主導で停止した
可能性があるそうですね。
それを津波で停止したと説明していたこと自体おかしいと思いませんか。
これでは大前氏の言うとおり、
「東電はいずれ解体されてしまう」しかないのでしょうか。
このあたり昨日も申し上げた、事故当時「東電は機能不全」で
あったからなのでしょう。
なぜなら、トップに原子炉のプラントで育った人がいないから
なんだそうです。
確かに今まで、何かトラブルがあるたびに、社長の首が
飛ぶのですからどうしても原子力担当は日陰の身になりますからね。
事実、かつての福島の圧力容器のクラック問題や、柏崎刈羽の
事故で全員パージされてしまったそうです。
原子力設備で、電源がないとどんなトラブルが起きるか
分かりやすく解説しています。
詳しくは読んでいただきたいのですが、
そもそも原子力設備で電源がなくなることを最初から想定していない
のだそうです。
確かにありえないことが重なっておきた今回の大災害なのでしょう。
でも大前氏のいうとおり
「『津波』と『地震』と『原子炉』という三つの組み合わせが存在しうる場所は
世界中では日本とカルフォルニアしかない」
「大津波の来るプーケットやスマトラには原子炉がない。アメリカの東海岸にも
原子炉があるが地震もない。津波もない・・・」
まさにそうですね。
これは1000年に一度の自然災かもしれませんが
「人災」であることも考えなければならないのでしょうか・・・。
その3 日本の原子力政策の終焉
やはり福島の原発の問題は放射能が今後どうなるか一番気に
なりますね。
大前氏はマサチューセッツ工科大学で原子力工学を学んでいる際に
放射性物質を誤って飲み込んで被爆された経験があるそうです。
大前氏はそれから40年間いたって健康なので、
それほど微量の放射能に神経質にならなくてよいといっています。
私も知人で戦時中広島の原爆で被爆された方を知っていますが
いまだにびっくりするくらいお元気な方です。
ただいまだに、放射能を恐れ飲料水はペットボトルを買う方も多いですね。
「今雨にあたってはいけない」
どういう根拠かこれもよく聞きますね。
震災直後日本在住のアメリカ人は80キロ以上離れていたとか
中国人が日本からいなくなったとか、いろいろありますが
これは仕方がないことなのでしょうか。
しかしこの大前さんの言うことで大事なことは
「この事故で原発の新規建設はこれから30年間はストップする」
これが今後の日本経済では大変大きなことなのでしょう。
「日本の原子力輸出政策は終わり、日立東芝などの原子炉メーカーとしての
未来もこの段階で終わった」
これまで、日本の原子力技術の水準は確かに高かったと思いますし
高度な技術を持つ専門家も数多かったのでしょう。
大前氏いわく、「2030年まで少なくとも14基以上の原子炉の
新増設を行うことと、新興国を始めとする電力需要の多い国への
原子炉の輸出を国策として行うこと」
これがすべてストップしてしまったというのです。
日本では今後どこの地域でも住民の強烈な反対運動で新設は無理でしょう。
これも知らなかったのですが、原子炉の建設とは、「計画に20年、建設稼動までに
10年、最低30年はかかる」そうなのですね。
これから原子炉がもし日本で作らなくなったら、そもそも原子力工学を
大学で学ぼうとする人は激減するでしょう。
自分の子供がもし、「大学で原子力工学を学びたい」と言い出したら
親としてどうしますか・・・。
その4 甲子園の中止?
原子力問題はさておき、「では日本復興のためにどうすべきか」
そろそろ本題に入りましょうか。
「消費税を暫定的に2%引き上げ7%にすべし」
と大前氏は言っています。
先日来熱く語っていた消費税の増税論者がここにもいましたね。
ただ、最初
「1%を1年間だけで2兆円の財源が確保できる」
と語っていたのですが、やはり財源不足に気がついたのでしょうか。
暫定的に2%とし、年間4兆円を1年から複数年としています。
しかし、消費税を1年間だけ上げるというのは、税の専門家としては
かなり混乱すると思うのですね。
まあそのあたりは決まってから「熱く」語りましょう・・・。
あとこの夏の「電力不足問題」についても大前氏は触れています。
どうしたらよいか。三つの提言を言っています。
1 サマータイム制の導入
2 週五日制を選択制で操業
3 夏の甲子園大会の中止
サマータイム制や土日をずらすというのは労働条件の変更ですので
これはまさに政治主導でやって欲しいことですね。大賛成です。
因みに当事務所は、早くも「クールビズ」を導入しています。
3の甲子園のお話は妙に納得していたのですね。
「多分主催者の朝日新聞から猛反対されるだろう・・・」
そう書いていたのですが、今朝の朝日新聞ですでに先手を取られていました。
今年の決勝戦は午後1時からでなく「朝9時半から」やるというのだそうです。
ということは、やはり甲子園は行われるのですね。
中止にするくらい思い切った政治主導の「節電策」が必要だったのではないでしょうか。
もし中止にしていたら、多分被災地の甲子園球児が悲嘆にくれる映像が
テレビで大々的に流されるのでしょうね。
ただ日本国民としては、被災地の代表校がぜひ甲子園で活躍して欲しいと
願っているでしょうから。
私の節電策としては、「甲子園のテレビ放映の中止」だったのですけどね。
以前、相撲賭博で大相撲がテレビ中継を自粛したことがありましたね。
ダイジェストを夜に放映していました。
どうしてもライブで応援したい出場校と地元の役場くらいは、
大画面つきの特設会場を設けてあげるくらいで十分ではないでしょうか・・・。
それくらいにしたら、節電効果意識がより高まると私は切に思うのですね・・・。
その5 日本は本当に先進国か?
「日本は20年間、所得が減り続けている世界唯一の先進国」
これを知っていただきたいことが、この本をご紹介した
最大の理由でした。
まずそのことを理解した上で、日本の復興を考えるべしと
大前氏は言っています。
本当にそれを知らない方も多いのではないでしょうか。
世界の中で日本だけが20年間貧乏になり続けているのですね。
この20年間の国民全体の家計所得を見ると、日本はなんと
マイナスの12%なのです。
フランス、イギリス、アメリカはこの間に2〜2.5倍にも
なっているのにです。
新興国いったっては10倍くらいにはなっているそうです。
日本の復興計画を考える前になぜ日本だけが減ったかを
理解しなければならないのです。
20年前くらい、都心から80分で6000万円のマンションが
飛ぶように売れました。
それに飛びついた私の年代の方々(40〜50台)も多いです。
でもそれが、いまや半値になっています。
しかもローンもいまだ5000万円も残っている。
働き盛りでいながら、リストラで収入ダウンで
家計に教育費とこのローンが重くのしかかっている・・・。
消費が伸びないのも当然ですね。
こういった「債務超過」になっている人が日本では700万人も
いるそうです。それがまさに私と同年代の働き盛り・・・。
その他いろいろあるそうです。(詳しくは読んで考えてください)
ではどうしたら良いかを最後に、大前氏の結論を
ご紹介しておきましょう。
「政治家に頼ってはいけない。政府に頼ってもいけない。
国がなんとかしてくれないこともすでに明らかだ。
自分自身だけが頼みの綱と覚悟を決める。」
なるほど!と思いました。
実は日本復興というのは、東北のお話だけではないのですね。
自分自身の「復興」でもあるのです。
それにはどうすべきか!非常に良いことを言っています。
この言葉を噛み締めていただいた上で、
ぜひ自分自身の復興計画を考えてください。
「世界のどこにでも出かけていっても稼ぐぞ、
というメンタリティが持てるかどうか。」
(東北の復興を心から祈りつつ、大前シリーズ おしまい)