その1 売上100億円で利益29億円の衝撃


売上最小化


またコロナ後の経営として、中小企業の参考になる書籍を

見つけました。

「売上最小化」

だなんて、昔「売上を減らそう!」という面白い本をご紹介しましたね。

こちら

「佰食屋」といって一日100色限定のお店でしたね。

コロナ禍で何とか乗り切って頑張っているらしいですね。

 

しかし、今回は「売上を減らした上にさらに利益を増やすのです」

これは素晴らしい。経営学的には確かに理想です。

そんな理想の経営を目指します。

 

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その主人公は、株式会社北の達人コーポレーションの

木下勝寿社長。見た目若いですね。1968年生まれですから52歳。

 

まずこの会社のタイトル通りに

売上と利益を聞いて驚きます。

売上100億円!

利益29億円!

どうでしょうか!

「こんな会社があるのか!」

永年中小企業をたくさん見てきましたが、

こんな会社みたことありませんね。

2020年2月期の実績です。

 

この会社2000年に木下会社が自宅マンションの

一室で起業。

何と手元資金1万円でスタート。

個人の屋号が「北海道・しーおー・じぇいぴー」

 

何をやったかというと「北海道の特産品のネット通販」。

軌道に乗った2002年に北海道に渡り、

現在の株式会社北の達人コーポレーションを設立。

その後健康食品、化粧品の自社ブランドを立ち上げ、

ネット販売だけで、東京、札幌、台湾、韓国に拠点。

 

その20年間のノウハウを開示した本です。

 

「ネット販売だけでこんなに儲かるの?」

 

驚くべき本ですね。

しかし、実はこの株式会社北の達人コーポレーションは

上場企業なのですね。

2012年に札幌証券取引所に上場。

その後2015年に東京証券取引所第一部に指定されています。

 

まさにネット販売だけで上場した素晴らしい会社なのです。

ネットビジネスに携わる方にはぜひとも知っていただきたい本ですね。

 

とここまで書いて、疑い深い私はすぐさま得意のEDINET検索。

 

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確かに記述が正しいことも突き止めました。

2020年2月期は確かに売上100億円!経常利益は29億円ですね。

因みにコロナ禍の2021年2月期は

売上92億円、経常利益20億円になっています。

それでもすごいですね。

 

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さらにEDINET眺めていると、その従業員の少ないこと!
なんと150人でこの利益をたたき出しているのですね。

 

これは中小企業でお手本となる企業ではないでしょうか・・・。

特に「パソコン一台でまず起業したい」と思っている方にはバイブルと

なるでしょう。




その2 花形満にあこがれる小学生




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(アニメ巨人の星より 花形満)

 

この主人公の株式会社北の達人コーポレーションの木下勝寿社長。

なかなかの方です。

こういう社長だからこそ、たったパソコン一台で起業した会社が

最短で上場企業になったのだと思います。

これ本当に事実だからこそ説得力が非常にあるのです。

 

まずこの社長の生い立ちから気になりました。

小学校低学年の頃に、まずアニメ「巨人の星」をテレビで見ます。

私の世代の少し下ですから、これは誰でも見るでしょう。

それで「野球選手にあこがれた・・・」では並の小学生だったのでしょう。

 

「花形満が金持ちなのは父親が自動車会社の社長だから・・・」

 

小学生の時にそれに気がついて、「社長になりたい」と思う子は少ないでしょう。

 

さらに大学生になって本気でビジネスがしたいと思って、

関西の学生企業、「株式会社リョーマ」に入ります。

サークルカタログの代理店なのですが、そこで本格的にビジネスを学びます。

これは単なるアルバイトではないですね。

株式会社リョーマには当時20、30人の学生がいたそうですが、

そのほとんどが現在経営者になっていて、そのうち半分くらいが

上場企業の経営者とは驚きませんか・・・。

もうこの時点で並の大学生とは志が違いますね。

 

1992年(平成4年)にリクルートに入社します。

1992年というと忘れもしない

「バブル絶頂」のときですね。しかも私が「バブリー野村證券」を

退職した年でもあります。

覚えていますが、退職するまで私も長年リクルーターをやっていたのですね。

入社する大学生を囲い込むのにリクルーターも必死でした。

昼間から高級寿司屋かうなぎ、もしくは有名高級レストランたいめいけん。

夜はクラブにまで連れて行って大学生を接待。

それこそ、就職解禁日には皆ハワイまで(!?)連れていったくらいの

バブリーな時代。

まあ、そうやって勢いで「浮かれて」就職した学生も多かったのですね。

 

ただ、その時代にあっても、木下社長は「並の浮かれていた」大学生とは

違っていたのですね。

 

「一般企業で修業したいと考えリクルートを選んだ」

 

そうなのですね。

事実リクルート出身の起業家は非常に多いです。

それに対して、同じくらいに仕事が厳しいとされていた野村證券出身の起業家は

意外と少ないのですね。

少ないどころかほとんどいないのですね。

これはどうしてだろうとつい最近まで思っていました。

でも、「営業が得意」であるだけの野村證券ではダメなのですね。

「ビジネスが得意」であるリクルートには絶対勝てないのです・・・

(このお話はまたそのうち・・・)

 

しかも、木下社長時代の先を見る目は確かです。

 

「当時はネットが普及していなかったが、近い将来デジタル化の波が来て

マルチメディアで世界中がつながると想像していた」

 

「コンテンツ事業と通販事業が伸びると考えていて、

リクルートでコンテンツビジネスを選ぶ道を選んだ」

 

 

まさにバブル後の世の中は、木下社長の読み通りに動いてきます・・・。




その3 純手元資金というダム


この木下社長の経営学についてご紹介したいことはたくさんあるのですが、

学生時代からいろいろと勉強されてきているのでしょうね。

冒頭から「ダム式経営」という言葉が出てきます。

稲盛教の熱心な信者である私はすぐ分かりました。

これは稲盛さんの有名なネタですからね。

 

もともとこの本の題名から突っ込みたかったのですが

「売上を極大に、経費を極小に」

これは稲盛さんが何度も繰り返し言われていることです。

ちょっとパクリではないかと・・・。(すいません)

 

まず「ダム式経営」とは、もともとは松下幸之助さんの有名な言葉です。

 

「好景気だからといって、流れのままに経営するのではなく、

景気が悪くなる時に備えて資金を蓄える。

ダムが水を貯め、流量を安定させるような経営をすべきだ」

 

これを松下幸之助さんが講演会で言ったところ、聴衆の一人が

そのやり方が分からないと質問。

「まず、ダムをつくろうと思わないとあきまへんなあ」

聴衆は落胆したり、苦笑したり。

でもその中でこれを聞いた稲盛さんだけが、

「これをやったから松下は大企業になったのだ」・・・

このネタは、稲盛さんの本で何度も読みました。

でも真面目にこの「ダム式経営」を実践している経営者は少ないものです。

 

 

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「ダム式経営」のポイントは「純手元資金」という考え方ですね。

「棚卸資産」は除くということです。

これは会計の専門家として非常に勉強になりました。

これは早速実践してほしいところです。

 

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ではここで問題です。

こういう会社があったとします。

「ダム式経営」の「純手元資金」はいくらでしょうか?

 

答えは

1億円ですね。

たまたま現預金が1億円のケースなので分かりずらいですが、

流動資産のうち、棚卸資産を引いた金額からさらに流動負債を

引くのですね。

これ見ただけで、ぞっとする中小企業経営者も多いでしょう。

 

「ウチはマイナスだ!」と・・・。

 

さらにこの木下社長はこの「ダム式経営」を進化させます。

「無収入寿命」という言葉で表現しています。

 

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図にするとこうです。

例題で毎月かかるコストを1000万円とすると、

無収入寿命は10か月ということになりますね。

 

つまり、

「売上ゼロでも10カ月でも家賃を払える全社員の給料は払える。

その間に対策を打とう!」

 

ということになります。

 

「ダム式経営」をさらに進化した「無収入寿命」お分かりになりましたか?

このコロナ禍で瀕死の重傷を負っている中小企業には

ぜひ知っていただきたい言葉ですね。

 

コロナ禍で星野リゾートが「倒産確立」を発表して話題に

なりましたが、ある意味似ていますね。

これはまさにズバリ「あと何カ月で会社は倒産するか」です。

 

「コロナで売上ゼロでも〇〇カ月は家賃を払える全社員の給料は払える。

その間に対策を打とう!」

 

そう思っている経営者はいったいどれくらいいるのでしょうか・・・。




その4 無一文から再スタート


「無収入寿命」という素晴らしい経営指標を学んだところで

木下社長の実話。「開業時のしくじり先生」。

 

1992年にリクルートに入社して5年目。

その直前にWindows95が発売されて、インターネットが急速に

広まりましたね。

私も1998年開業ですからよく覚えています。

でもパソコンがまた高額で当時1台30万円くらいはしましたが、

それでもネットが急速に普及し始めました。

 

ここで木下社長はリクルートを31歳で退社。

もともと起業志向ですから当然の行動でしょう。

私も野村証券を31歳で退社ですから気持ちよく分かります。

 

「時が熟した!世の中は変わる!」

 

私もそうでしたが、木下社長も含め皆思ったのでしょう。

木下社長はすぐ会社を起業します。

合資会社サイマート設立。なんと資本金1万円。

自宅でパソコン1台だけのネット通販会社。

北海道の特産品をネットで売るという

申し訳ないですが誰でもできそうなビジネスですね。

このあたり学生時代から起業したいと考えてきた割には

短絡的思考です。

しかもいかにも資金はまったくなさそうですしね。(失礼!)

 

それでも、立ち上がりはそこそこ売れたらしいですが

1年半でものの見事に「取り込み詐欺」にかかり大失敗。

これで無一文に。

まさに「無収入寿命ゼロか月」!

ここは、「しくじり先生」としてまさしくネタでしょう・・・。

 

でも若さですね。

そこは起業を目指す方には見習ってほしいのです。

そんなことでへこたれたらダメなのですね。

 

34歳の2002年に北の達人コーポレーションを

資本金1000万円で設立。

そこから快進撃が始まります。

 

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わずか10年後2012年に、札幌アンビシャス市場に上場を

遂げたのですね。まだ44歳。お若いですね。

本当に無一文になった経営者がたった10年で上場企業の社長になった

まさに新記録達成です。

 

お分かりの通り、2000年の頃はまさに「ネットバブル」。

ネットビジネスで急拡大したところも多かったです。

私も開業して、特にホームページ制作会社からの依頼が多かったですね。

あの頃は

「そんなに儲かるのですか?」

驚くほどでした。

世の中皆まだまだネット自体に慣れていなかったし、

理解されていないところも多かったのでしょう。

しかし、その後のネットバブル崩壊。

 

ネット通販の会社も雨後の筍のように星の数ほど誕生しましたが、

ネットバブル崩壊の波を受けて継続できなかったところも

多かったと思います。

 

北の達人はそれでも、しぶとく生き延びることができた理由は

本の題名の通り、

「売上最小化、利益最大化」

というところなのでしょう。

 

北の達人は無一文から20年間成長できた理由が

ここにあるのですね・・・。



その5 ネットビジネスで20年間生き延びた理由


2000年のネットバブルの頃、本当に雨後の筍のように

「ネット通販会社」が誕生しましたね。

その後20年で消えていった会社も非常に多いです。

それはなぜでしょうか?

ここは、これからネットビジネスを目指す方は真面目に読んで考えて

もらいたいですね。

木下社長いわく、

「売上が上がれば単純に利益が上がるわけでもない」

まあ、当たり前でしょうけど、ここ気がつかない経営者も多いのも

事実ですね。

 

「2000年頃、ほとんどのネット通販は売上が上がっても

利益が出ていなかった」

なぜなら

「ネットビジネスはスピードが速い。赤字を出しながら市場シェアを

獲得し、後で資金回収をするビジネスモデルが通用しない。」

 

これ分かりますか?

多くのネットビジネスが陥りやすい罠です。

 

「広告を出せば、一瞬だけ売上が上がるが、大きな経費のために

赤字になる。その後広告をやめ、トップシェアの利を活かして

投資分を回収しようとする。しかし、その段階で競合が参入し、

一気に市場を取られる。投資分を回収できないまま倒産する。」

 

これは驚愕の事実ですね。

20年間もネットビジネスで生き抜いた企業の

素晴らしい教えですね。

 

ここで木下社長の経営ノウハウの公開ですね。

 

「ネットビジネスではマメに利益を回収すべき」

 

これも分かりますか?

これは会計の専門家として絶賛したい言葉ですね。

 

ハッキリここで書きましょう。

申し訳ないですが、これからネットビジネスをやろうとする方には

「管理会計」

が分からなければダメということです。

 

分かりやすく書くと、ネットビジネスは広告費をかければかけるほど

売上があがります。

でも売上だけではダメなのです。

「売上と利益はセット」なのです。

広告費をかけてもそれで採算が合わなければ意味がないということなのです。

 

「管理が重要だ。現在は常時約5000本の広告を出稿しているが、

そのパフォーマンスを毎朝確認している。

採算が合わない広告はやめ、採算が合う広告だけが残っていく」

 

すごいですね。毎朝チェックするのですね。

20年間生き延びたノウハウが見えてきましたか?




その6 5段階利益管理


ではその売上と利益の見方をご紹介しましょう。

正直書くとこれ読んで「ウナリ」ました・・・。

 

日頃決算書を作成している税理士の立場では、

損益計算書でいう営業利益までの「利益」とは

「売上総利益」と「営業利益」の2段階でしょうか。

北の達人はそれをなんと「5段階」で分析しているというのです。

 

北の達人が行う、

「5段階利益管理」。

これ木下社長が編み出した管理会計なだったら

「天才」ですね。

普通の中小企業はここまでは絶対にしないでしょう。

この秘密の管理会計がたった1980円で学べるのですから

安いものです。

 

具体的にご説明しましょう。

 

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まず、第一段階の売上総利益(粗利)の求め方ですね。

ここまでは、お分かりいただけるでしょうか。

 

売上1億円の会社があったとします。

原価とは「売れた商品の仕入や製造にかかった費用」のことですね。

それが5600万円だったら、売上総利益は4400万円ですね。

粗利率44%・・・。

普通の企業はまずそこまではやりますね。

さらに売上1億円の中身を分析します。

商品ごとの粗利を計算していくのです。

商品@から商品Bまで・・・。

どうでしょうか。

確かにここまで計算すると、商品ごとに粗利の取れる、つまり儲かる商品と

そうでない商品とにはっきり出てきますね。

もうそこまでは面倒なので、やっていない企業も多いと思いますね。

実際には、そんな手のかかる原価計算を、

厳密にやっていないか、できない企業も多のです。

 

 

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でも北の達人は違います。

さらにこの粗利をあと4段階に分けて分析するのです。

粗利を利益(1)とすると

 

今の粗利4400万円から

 

注文連動費項目を引いた 利益(2) 純粗利

 

さらに、販促費を引いた 利益(3) 販売利益

 

さらに、商品ごとの人件費を引いた 利益(4) ABC利益

 

最後は、 運営費を引いた 利益(5)商品ごとの営業利益

 

どうでしょうか・・・。



その7 通販ビジネス会計のお手本


お断りしておきますが、この「純粗利」や「ABC利益」などの利益は

木下社長の造語らしいです。

会計のどこの書物にも出てこないのかもしれませんね。

因みにEDINETの北の達人の有価証券報告書を

「穴のあくほど」眺めましたが、当然ですが、

こんな・・・利益などとは開示されていません。

 

しかし、これ読んでうれしくなりましたね。

「会計なんてクソ食らえ!」

なんて書くと怒られますが、杓子定規で会計を考えては

ダメなんのですね。

これこそ生きた会計、「木下会計」ですね・・・。

 

あと、ネット通販特有の言葉が出てきますが、

これはネット通販をやろうとする方にはぜひ勉強してほしいところです。

私自身勉強になりました。

 

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まず「注文連動費」です。これも木下社長の造語です。

通販の場合に、注文ごとに発生するコストが必ずあります。

カード決済手数料、送料、梱包資材、商品説明のための同封物、

ノベルティ、スプーンなどの付属品等の料金です。

 

これを商品ごとに計算するのですね。

読んで感心しましたが、重要なのは「カード決済手数料」ですね。

これは現在の通販ビジネスを考えるには大事なコストなのです。

 

さらに通販で大事なのは「送料」ですね。

キャンペーンで「送料無料」をやると純粗利率が極端に落ちるのです。

それを管理会計上、きちんと把握するのですね。

 

このように、儲かっているように見えてもこれを加味すると

実は、本当の粗利が取れていないこともあるようです。

これをまた木下氏の造語で「純粗利」というのです。

 

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さらに、純粗利から引くのは「販促費」ですね。

これは広告費ですね。

これだけ分けるというのもうなずけます。

 

その販促費を引いたものが「販売利益」。

ここまでは分かると思うですが、次が難しい。

ABC利益ですね。

 

これは管理会計の本には出てくる用語ですね。

Activity-Based Costing(アクティビティ ベースド コスティング)

直訳すると「活動基準原価計算」ですが、木下社長曰く

「商品ごとの人件費」

です。

これを計算して差し引いて計算したものがABC利益。

でも実際に商品ごとの人件費を割り振るのは大変でしょう。

 

「当社の場合、全社員に『商品に係った時間』、『それ以外の時間』の

割合を月一回報告してもらう。」

「商品@に30%、商品Aに20%、商品Bに10%、それ以外に40%と

と報告してもらい、その社員に人件費を掛け合わせ、商品ごとの人件費を

算出」

 

これメンドクサそうですね。

でもこれが正しくできれば、手間がかかる商品、つまり人件費のかかる

商品がハッキリと分かるのですね。

 

このABC利益から最後に家賃などのその他の残りの経費「運営費」を引きます。

「運営費は正確に商品ごとに割り振るのは無かしいので、

運営費総額を商品売上比率で案分する」

そうなるでしょうね。

 

どうでしょうか。

通販ビジネスをやろうとする企業は

ここまではぜひ真似しましょう!

 


その8 北海道の特産品の通販からの転換


ご紹介した「5段階利益管理」なのですが、

その独自の管理方法が誕生した背景として、

北の達人コーポレーションのビジネスモデルの大転換が

あったのです。

 

もともとは、

「北海道の特産品をネット通販する」

という分かりやすいビジネスモデルだったのですが、

これは想像されるように「レッドオーシャン」のビジネスですよね。

つまり、競争は多いでしょうし、何より大手企業も参入してくるので

中小零細企業ではなかなか儲かりにくいマーケットなのです。

 

そこで木下社長はビジネスモデルを大転換させます。

「特産品」のマーケットから「健康食品」、「化粧品」に変えたのですね。

 

しかも高品質商品でロングセラーを狙うビジネスモデルにしたのです。

ロングセラーというのは大事ですね。

同じ製品を生産すればするほど品質は向上しコストは低下しますね。

必然的に原価は安くなります。

さらに単発の購入ではなく「定期購入」を促します。

定期購入をしてもらえるということは、新規開拓に係るコストが

なくなるということですからね。

通販会社の目指すべき大事な戦略です。

 

「5段階利益管理」のうちの「原価」と「販促費」が極端に下がり、

利益率が上がるのですね。

 

ここで北の達人コーポレーションの秘密が分かりました。

 

驚くべきことですが、「定期購入による売上比率は7割」も

あるのです。

 

利益率29%の理由がこれで分かりますね。

 

しかもこれからご紹介することはまさにビジネス展開として

中小企業経営者には絶対参考になるところでしょう。

 

「小さな市場で圧勝する戦略」

 

を展開したのです。

大手が参入するには小さすぎる市場を切り拓き、

中小にはマネのできない高品質の商品を投入するという作戦です。

つまり、簡単に言えば「ブルーオーシャン」ビジネスへの転換ですね。

 

ここで具体的に商品名を出した方が分かりやすいでしょう。

 

便通の悩みを解消する健康食品「カイテキオリゴ」(2006年)

目の下の悩みに塗るアイクリーム「アイキララ」(2015年)

小ジワの悩みのためのヒアルロン酸化粧品「ヒアロディープパッチ」(2016年)

手が老けて見える悩みのためのハンドクリーム「ハンドピュレナ」(2018年)

 

どうでしょうか?
申し訳ないですが、一つも知らない商品ですね。

大手企業は絶対マネのできないものですし、

大手が参入してこない小さなマーケットを狙ったからです。

つまり、大手は20億円程度のマーケットには参入してこないからです。

 

木下社長が目指したのは、

「売上10億円規模のニッチなマーケットでヒット商品を10個持つことにより、

売上100億円の企業になる」

ということなのです。

 

これこそが達人コーポレーションの秘密です・・・。




その9 有価証券報告書で検証


本の情報を鵜呑みにしないのをポリシーとしているのが

吉田ブログですからね。

またEDINETでその北の達人コーポレーションを

確認しましょう。

損益計算書を見て検証してみます。

 

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2021年2月期の詳細まで発表されていますからね。

よく見ると驚くべき事実がありました。

これこそ「秘密」ですね・・・。

 

本の題名通り、2020年2月期で売上高は100億9334万円、

営業利益は29億1532万円

これは間違いないですね。(黄色のランンマーカー)

でもよく見ると「売上総利益」で76億4426万円もあります。

2021年の「売上総利益」も、売上高は落ちていますが、

70億2149万円もあるのですね。(赤のラインマーカー)

 

利益率がそんなに高いということは、

つまり、原価率で計算するとなんと25%ですね。

これは単なる通販会社ではないと直感的に分かるでしょうか?

いくら北海道の新鮮なカニでも、2千500円で仕入れたものを

1万円で売るような「ぼったくり」はできないはずですからね。

つまり仕入れたものを4倍の高値で売ることは通常の通販では

ありえないからです。

だからこそ、前回申し上げた通り、

「ビジネスモデルの大転換」があったのですね。

 

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さらに、その秘密を探るために「製造原価明細書」を見てみます。

原価率25%の中身です。

驚くべき事実ですね。ほとんどが「外注費」ですね。

つまり、健康食品などをすべて外注で製造しているのですね。

この会社には工場がないので当たり前といえば当たり前なのですが

こういうビジネスモデルなのです。

 

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さらに言うと販売管理費の中身です。

広告宣伝費に約27億円ですね。

売上100円の企業で27億円もかけているのですね。

原価が25億円ほどですから、原価以上にかけているのです。

これこそが通販ビジネスの根幹の実態ですね。

 

北の達人コーポレーションが、なぜ「5段階利益管理」を生み出したか、

本当の理由がこれですね。

 

ついでに過去6年間のこれらの数字を追ってみました。

 

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売上高は2016年から2019年へと

22億円→26億円→52億円→83億円

と急増していますね。

売上が上がるにつれ営業利益も

4億円→5億円→14億円→18億円

と増えています。

 

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一方の広告宣伝費は

4億円→6億円→16億円→30億円

と突出しています。

 

2019年2月期には、なんと30億7768万円

ですからね。

 

通販ビジネスの実態が良く分かると思いませんか・・・。





その10 コスト削減委員会


通販会社は売上を上げるには非常にコストのかかる商売だと

お分かりになったでしょうか。

そのコスト管理のために、必然的に「5段階利益管理法」が

考え出された訳です。

 

この本では「デジタル・マーケティング」という表現をしていますが、

ほとんどの事象を「数値化」して経営に役立てているのです。

当然ですが、このマーケティング責任者は社長自身です。

経営直轄型のマーケティングですから、これは担当者任せにしないで

社長自らやるべきことは当然でしょう。

 

しかし、ここまで社長が行う会社はそうそうないでしょうね。

ここは、ぜひ中小企業でも真似してほしいところです。

 

あと、もう一つ、すぐ真似してほしいのは

「コスト削減委員会」

ですね。

「利益最大化」するには「経費最少化」するのが手っ取り早いですから。

 

これは

「年一回、管理職7、8人が集まってこのコスト削減委員会を

組織して、聖域なしでコスト削減の議論を行う」

そうです。

「5段階利益管理法」でいえば

原価、注文連動費、販促費、ABC、運営費のすべてが

対象だというのです。

 

具体的には

「支払台帳を管理職が見直し、削減できそうな経費をリストアップし、

経費が利益に結び付いているかどうか考える」

そうです。

「聖域なし」

というのもポイントですね。

 

「社長給料取りすぎではないですか!」

 

なんては絶対言われないでしょうけど、

 

「社長!交際費使い過ぎではないですか!」

くらいは言われるかもしれないですね。

しかし、こういうことやると社長自身も襟を正し、きっと変わると思うのですね。

 

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因みにこの会社はこれだけ儲かっているのですけど

その社長さんの給料も公開されているのですね。

前回ご説明した販管費の中に載っております。

役員総額(5人)で1億6000万円くらいですね。

 

「利益が29億円でているなら、社長が10億円くらい取ればいいのに・・・」

 

そう思う経営者もいるかもしれないですね。

 

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株主総会で役員報酬の上限額は決まっているからなのです。

しかし、申し上げたいところですが、

この発想が中小企業経営者と上場企業の社長の決定的な違いです。

 

これ私がよくいう「会社は誰のもの?」というテーマですが、

「上場企業は株主のもの」

というのは分かると思うのですが、つい

「中小企業は株主=オレのもの」

となるのですね。

 

ですから、中小企業の業績が伸びない理由はココなのです・・・。

(すいません)





その11 東証証券取引所の再編成


北の達人コーポレーションが上場企業であることに

話が戻ってきたことで、上場企業について

タイムリーで重要なことを書いて終わりましょう。

 

北の達人コーポレーションは、株式市場において

2012年5月札幌アンビシャスに上場してから

2013年3月札幌本則市場(一部指定)に指定替え

2014年11月東証二部に上場

2015年11月東証一部に指定替え

とあっという間に駆け上った伝説の「大出世銘柄」なのですね。

 

証券用語で恐縮ですが、株価が10倍になることを

「テンバガー」

というのですね。

文字通り「10倍株」つまり「大化け株」の意味ですね。

北の達人コーポレーションも、もちろん「テンバガー銘柄」

なのです。

 

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しかし、現在東証証券取引所は、その市場の見直しをしているのです。

私が証券マンだった40年近く前は、東証一部の銘柄は本当に社数も少なく

間違いなく「ステータス」がありました。

今や東証一部銘柄でも2000社を超えていますからね。

 

 

その今まで東証1部から2部、ジャスダック、マザースと

別れていた市場を、2022年(令和4年)4月

「プライム」、「スタンダード」、「グロース」と

3つに新市場において再編成することが決まっているのです。

 

北の達人コーポレーションにとっては、今後の絵経営上大事な「試金石」と

なっているのです。

東証で発表しているのは、プライム市場では

次の基準です。

 

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結構厳しい基準なのですね。

ただ日本を代表するような企業がプライム市場で売買されるのですから、

売上高数兆円や利益が数千億円の企業はザラです。

確かに売上100億円で利益29億円は素晴らしいのですが

そういう超優良企業から見比べられるとなると正直厳しいのです。

 

プライム市場はそういうステータスの市場ですから、

海外の機関投資家などが投資対象とされるグローバル企業が

対象とされるのです。

事実2000社の中から600社は脱落するのではないか

ということが市場でささやかれております。

 

もしプライム市場から脱落したらどうなるか分かりますか?

当然ステータスを失う上に、TOPIX『東証株価指数』から除外されて

株価が下落する可能性があるということなのです。

 

北の達人コーポレーションはどうなるのでしょうか?

 

20210805-101829

 

7月12日に会社のHPに早速アップされていました。

現状は大丈夫なようです。

良かったですね。

ただこの基準をクリアすべく、今後も未来永劫、利益水準はキープしなければ

ならないし、グローバル展開を目指さなければならないのでしょう。

 

ご紹介したように、今までは「日本人相手の健康食品や化粧品だけで」

急成長した会社ですからね。

 

北の達人コーポレーションの宣言として、本にはこう書いてありました。

 

「売上高1000億円利益300億円を実現する戦略」

「日本代表とする次世代のグローバルメーカーとなる」

 

北の達人コーポレーションの今後が楽しみですね。

頑張ってほしいものです。

 

最後に中小企業経営者にも、エールを送って終わりましょう。

 

「上場企業でなくて良かったですね。

 会社=オレのものです。

 役員報酬も取り放題です。

 自由にドメスティックに事業展開してください。」

 

(ガンバレ! 次世代のグローバルメーカーシリーズ おしまい)

 

 








 






 



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