その1 アウトドアで東証1部上場
新聞の広告欄をみてまたamazon衝動買い。
まあこの本の表紙を読んで、楽しさが伝わりますからね。
こういう本は大好きですから。
「スノーピーク」という会社をご存じでしょうか。
アウトドア用品を手掛けるメーカーです。
写真の楽しそうなキャンプシーンでお分かりになるでしょう。
写真の方はスノーピーク山井太社長。
1959年生まれというから私より1つ先輩。
今年で60歳です。
今まで2000泊以上キャンプしてきたそうです。
自分な好きなことをずっとやり続けて
会社を成長し続けてきたのですから
こんな幸せな人生はないですね。
スノーピークは実は東証1部上場企業です。
売上高は2018年12月期で120億円。
アウトドア用品だけで上場する会社は世界的にみて
少ないのですね。
ただ申し訳ないですが1部上場企業としては
120億円という規模は小さな方です。
でもここまで至るまでに紆余曲折があったのです。
楽しそうな人生に見えてやはり企業経営は甘くないのです。
ここが参考になるでしょうか。
この山井社長は二代目社長。
1958年に新潟県三条市に金物問屋を
父親である先代が立ち上げたのが始まり。
新潟県三条市とは、金物産業のメッカですからね。
創業から30年ほどたった1986年に山井氏が入社します。
この時、売上高5億円、社員15名の小さな企業でした。
この時登山用具などの製造をやっていたのですが、
この山井社長が「オートキャンプ事業」に目を付けます。
この時はまさに「バブル」。
日本経済が最高潮に景気の良かったころです。
そのバブル景気に煽られて、オートキャンプ事業は
急拡大します。
5億円の売り上げが90年代には25億円に。
しかし、バブル崩壊とともに、売上は急速にしぼみます。
3年連続で売上ダウンをした際に社長交代。
しかし、社長交代の後にさらに3年連続売上高減少。
まさに会社存続の危機。
このドン底の経験がその後の転機を迎えることなります・・・。
その2 逆境から学んだ帝王学
企業経営には山あり谷ありです。
逆境をどう乗り切ったのか、それが必ず参考になるはずです。
「その当時の私自身は特別に逆風だとは思っていなかった。
そのときは冷静に何をすべきかをしっかり考えて開発に
力を注いだほか、無駄なことは一切やめた。」
なかなかの経営者ですね。
転機となったのが1998年から始まった
「ユーザーと社員が本音で語るイベント『スノーピークウェイ』」
だったそうです。
この「スノーピークウェイ」とはユーザーと社員が
本音で語り合うイベントです。
ユーザーから直接もらった意見を生かしながら経営改革を進めたのですね。
こんなことをやっている企業は、当時としては少なかったでしょう。
キャンプ用品を作っているメーカーの社員が直接
ユーザーと一緒にキャンプまでするんだそうです。
これが20年以上続き、その参加者は10万人以上。
すごいですね。
社長としての経営力をどこでどうやって磨いたのかが
気になりました。
この経営者は2代目社長です。
大卒後3年ほど外形の商社で働いた後に
この会社に入社しました。
ただご説明した通り、逆境の中、30台で社長を引き継ぎました。
社長になるにあたってはそれなりの覚悟があったのでしょう。
実は社長になる前から、雑誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」を
愛読してたそうです。
この「ハーバード・ビジネス・レビュー」はご存知でしょうか。
世界中の経学の最新の論文集です。
これを真面目に今でも読んでいる経営者に初めて
お会いしました・・・
この論文集で非常に参考になったというのが
「エンパワーメント」・・・
その3 エンパワーメント
社長になる前から「帝王学」を自ら学んでいた社長は
申し訳ないですが少ないですね。
「自分は必ず社長になる!」
と思って「ハーバード・ビジネス・レビュー」で
勉強した方はどれくらいいるのでしょうか。
これも私の持論なのですが、「社長学」という勉強は大学では
絶対教えてくれないのです。
私も一応早稲田大学の商学部で「経営学」といのを学んだことがありますが
実際の経営には何の役にも立たないものです・・・
(すいません。ほとんど授業に出ていなかったくせに偉そうに・・・)
自分が社長になって、売上が連続して下がり続け、まさに会社存亡の時に
たぶんこの「ハーバード・ビジネス・レビュー」を
むさぼり読んだのでしょう。
この本に、
「90年代のオートキャンプのブームの時は、ほぼワンマン経営で
あり、私の判断で社員を手配していた・・・・」
どこの中小企業でもそうです。
「ワンマン経営」が基本ですから・・・。
でもここで社長が気が付いたのでしょう。
「このままではマズイ・・」
ここで「ハーバード・ビジネス・レビュー」で学んだことが
「エンパーメント」です。
この「エンパーメント」とは、まさにワンマン経営の真逆。
直訳すれば「権限移譲」ですね。
バブル崩壊から数年後、米国ではさかんにこの
「エンパーメント」が言われ出し、経済が復活し始めていたのです。
まさにこの「ハーバード・ビジネス・レビュー」で気が付いたのでしょう。
社員に業務を任せることでモチベーションを高め、
それにより業績を高めることこそが「エンパーメント」なのですね。
この「エンパーメント」を取り入れることで、
スノーピークは復活し、やがて上場企業まで上り詰めたのです。
ただ残念ながら、この「エンパーメント」についての記述は
あまりないのです。
これは山井社長にお願いです。
ぜひこれを論文にまとめて「ハーバード・ビジネス・レビュー」で
発表してほしいと心から思います・・・。
その4 少子高齢化の経営戦略のお手本
ところで、私はこの半世紀以上生きていながら、
テント泊はたぶん3回くらいしかしたことないのです。
私自身東京生まれ東京育ちの「都会派」。
「アウトドア」というと正直ちょっと腰が引けていたのですね。
まあ、私のことを例に挙げても仕方がないですが、
最近日本ではまたオートキャンプブームになっているそうです。
2019年の「オートキャンプ白書」によると、推定で850万人。
人口比率によると7%まで回復してきているそうです。
その理由はこのスノーピークによる経営努力による結果も
大きいと思うのです。
でもこの本で知ったことですが、
「米国の場合、過去1年間に1回以上キャンプに出かけた
ことがある人は50%。人口3億2000万人のうちの
1億6000万人がキャンプしている」
というのです。
日本の人口3倍の国民が、7倍の比率でキャンプするということは
日本のマーケットの20倍だとこの山井社長は気が付いたのです。
ましては日本は、何度もご紹介しているように
「少子高齢化」の波が押し寄せていますからね。
そのため山井社長は、今完全に米国に軸足を移しています。
2020年には米国ポートランドに拠点を設立し、
10年以内には売上300億円。日本の市場をはるかに
凌駕していく予定です。
潜在的なマーケットまで考えたら、300億円どことか
3000億円になるとまで豪語しています・・・。
「少子高齢化」の経営戦略の具体例として、
なかなか参考になるお話ですね。
キャンプ文化の育った本場米国に「日本流のキャンプ」の輸出です。
どうなるのでしょうか。
あとこれも書いてありましたが、
山井社長があえて米国に在住しているのは、
「事業承継のため」だそうです。
来年の60歳を契機に考えているのです。
早いですね。
国内は娘の山井梨沙副社長に任せているそうです。
梨沙副社長は昭和62年生まれ。
まだまだ若いのですが、上場企業の帝王学を学べるのでしょうか。
この点も気になりましたが、
同族的経営から脱し、新の世界企業になるためには
乗り越えなければならないのでしょう。
その5 人間性回復の第一歩
米国ポートランドは夏場だと午後9時ごろまで明るいそうです。
ですから朝は7時から働き午後3時か4時に仕事を終え、
そのあとアウトドアに出かけるの人が多いのです。
1時間も車で走れば釣り場にも到着。
まさにアウトドア天国ですね。
そこで、「日本流のアウトドアビジネス」の展開。
「なるほど!」
とこの経営戦略に感心しませんか。
日本人もアメリカ人のようにもっとアウトドアを楽しむべなのでしょうね。
スノーピークが現在取り組んでいるのは、
アウトドアを通じた「人間性の回復」、「家族の幸せ」、
「友人との親密な時間」・・・。
日本国内でも少子高齢化の世の中を前提として、日本人としての働き方、
生き方を見直していったら、アウトドア市場というのもまだまだ発展する余地は
十分あるのでしょう。
「アメリカには単身赴任というものがないし、そもそもそんな発想もない。」
と聞いて驚いたことがあります。
働き方改革で、「単身赴任を規制する」法律でもできたら世の中変わるでしょうね。
最後に書きながら、本当にキャンプをしてみたくなりました。
「アウトドアを楽しむ人生というのは幸せなのではないだろうか・・・」
そう感じたからです。
小学生だった頃、一度だけ両親と一緒にキャンプをした
楽しい思い出も蘇りました。
屋外で焚火をしながら語り合うのも、たまにはよいのかもしれませんね。
残念ながら私の子供たちが小学生の頃は、個人的には脱サラ・試験勉強・即開業と
まったくキャンプなんかに連れていくことができませんでした。
そのため後悔と懺悔の念をたまらなく感じます。
私も「人間性の回復」をするために、一度キャンプでも出かけましょう・・・。
(がんばれ!キャンプ人生!! おしまい)