その1 ぐっすり眠れなければ返金 

4980円のスーパーホテル

最近のはやりの題名がやたら長い本。
つい、つられて買ってしまいました。
「スーパーホテル」という、全国約100店展開する
ビジネスホテルの物語。


テレビでも「ガイヤの夜明け」で紹介されていましたね。
10年ほど前になりますが、ある地方のお客さんがいて、
月に何度も出張することがありました。
そのたびに利用していたのが「ビジネスホテル」
あの頃でも1泊6000円〜7000円くらいはしていたと思いますね。


「4980円!そんな安いのかよ!」


そう思ってしまいますね。、すぐネットで探しましたが、
やはりよく見ると「4980円〜」なのですね。
東京にあるスーパーホテルではもう少し高いみたいです。


ただこの本に書いてある通り、


「稼働率90%以上、リピート率70%以上、キャンセル待ちまである」


これは事実みたいですね。
つまり、日本で一番流行っているビジネスホテルなのです。
やはり、その「日本一の顧客満足度」がどういうものか
知りたいですね。
これはこれで参考になるのではないでしょうか。


テレビでも紹介されていましたが、スーパーホテルのウリは


「ぐっすり眠れなければ、宿泊代は返金します」


この制度です。(宿泊品質保証制度)
これは、かなりインパクトありますね。
この一言で、このホテルは有名になったのです。


こういうことを聞くと私はこういうことをすぐ思ってしまうのですね。
「よく眠れなかったと言えばタダで泊まれるのか・・・」
そうなのですね。悪意の人は必ずいますから。


事実、この制度を初めて取り入れた年は、年間200万円も
宿代を返金したそうです。


でも、この社長さんは冷静です。
200万円というのは一泊5000円として400泊ほど、
スーパーホテル全体で年間宿泊360万泊に比べたら大したことがない。
そうでしょうね。200万円を広告費と考えればまさに大成功です。


現在の返金は年間20万ほどなのだそうです。
すごいですね。
それだけ聞いただけで、もうスーパーホテルに
泊まりたくなりませんか・・。




その2 星野リゾートの宿泊品質保証制度 


「ぐっすり眠れなければ、宿泊代は返金します」


これものすごいサービスだと本当に思いませんか?


でも冷静に考えると、ホテルとは「宿泊施設」なのですね。
ホテルに滞在する約10時間のうち、70%〜80%が睡眠時間
という事実があるそうです。
「眠りへのサービス」があって当然なのです。
これをなぜ今までのホテル経営者が思いつかなかったのでしょうか。


スーパーホテルでは
@枕を選べる
Aシングルルームでもダブルサイズのベッド
B徹底した防音
C音のしない冷蔵庫


などなど徹底しています。
確かに「枕を選べるような」ホテルが今まで
あってもおかしくなかったのです。
お客さん目線で考えれば至極当然なのでしょうけど、
正直ホテルの建築コストと運営コストは上がるのでしょう。


昔、ホテルの建設コストをいかに安くするか
偽装したホテルがありましたが、まさに真逆。


でも「ぐっすり眠れるなら」とスーパーホテルを
選ぶリピーターが増えているそうです。


この「宿泊品質保証制度」ですぐ、思い出しました。
ホテル経営といえば、「星野リゾート」
かつて取り上げましたね。こちら
あそこと比較しながら読むとよく分かります。


星野氏が「アルツ磐梯」というリゾートホテルを立て直すために
「美味しさ保証付きカレー」をゲレンデのレストランで
販売したのをご紹介しましたね。
まったく同様で、
「美味しくなかったら返金します」
というサービスです。
これが1シーズン10万食も出る大ヒット商品に
なったのだそうです。


この「保証付き」というのは星野氏が発案したのではなく
クリストファー・ハート氏の「いかにサービスを収益化するか」
という論文を参考にしたのでしたね。


ということは、きっとスーパーホテルの山本社長も
星野リゾートからヒントを得たのかも知れない・・・。


そう私は思ってしまうのです。
まさに「真似は学びの源」!!




その3 ワンルームの木造版で大成功


ここでスーパーホテルの山本梁介会長を
ご紹介したいと思います。


現在71歳。昭和17年、船場の繊維問屋の3代目として生まれました。
昭和39年慶応の経済学部卒業。
後継ぎとして期待されていたのは当然でしょうから、
修行として、繊維の専門商社の蝶理に入社します。


昭和39年というと、ちょうどオリンピック景気に日本中が
活況を呈していた時です。繊維業界もよかったはずです。
配属されたのが、当時花形部署であった「女性下着部門」。
ここで時代の最先端を行く下着を企画制作して、
蝶理の大ヒット商品を生み出します。


ヒット商品が出来た理由は、直属の上司の一言。


「やってみろ!面白そうやないか。責任はオレが取る!」


すばらしい一言ですね。昨日ご紹介した「半沢直樹」のドラマとは
真逆のお話です。
昭和40年頃の商社にはそういう豪傑がたくさんいたそうです。
そこで山本会長は「リーダシップ」と
「やってみろ経営?」を学びます。


しかし、仕事が面白くなってきた3年目。
父親が肺がんを患い、急に亡くなってしまいます。


結局25歳で繊維商社の三代目となってしまうのですね。
ここで120人もいた社員との軋轢に悩み苦しみます。


25歳の若さではどうにもならなかったのでしょうね・・・。
経営者として、まずここで第一回目の挫折をしてしまいます・・・。


結局4年ほどで会社から追放され、残された遺産で
不動産事業を始めます。
この時まだ30歳。


時代は昭和47年。札幌オリンピックのジャネット・リンの人気に湧き、
浅間山山荘事件があった年。


その時山本会長は


「これから日本もアメリカのように女性の社会進出が進み、
結婚年齢が上がり、シングル層が増加する。
自立した女性が増え、離婚も増える・・・」


そう考えたのですね。
つまり、シングル用の住居の需要が増えるとにらんだのです。
まさに的確なヨミ。
そこで、今でいう「ワンルームの木造版」建設し
これが大ヒット。


最盛期に230棟、6000室まで拡大していきます。
飛ぶ鳥落とす勢いで会社は急拡大していきますが、
やがてバブル崩壊・・・。

多額の負債に苦しみます・・・。
この山本会長の強烈な「生きざま」にまず感心します・・・。




その4 バブル崩壊で気が付いた一番大事なこと


スーパーホテルが設立されたのが、1989年12月。
この年月を聞いてすぐピンとくるでしょうか?


1989年12月29日、日経平均の最高値38,915円を
つけた時です。
まさにバブルのピーク。


あの時は、誰もが株も土地もまだまだ上がる・・・
そう思って浮かれていましたね。


その誰もが浮かれていた時に、「低価格のビジネスホテル事業」を
始めたのです。
「手取りが25万円の若者が、クリスマスに赤プリの一泊5万円の部屋を
リザーブするあの時代」に・・・。


当初苦労したのは想像に難くないですね。
スーパーホテルの第一号店は博多のホテル。
事実なかなか受けいられなかったようです。


しかし、その直後のバブル崩壊。
総量規制で不動産業種向けの融資が事実上ストップしてしまいます。


「全ての銀行から見放され、あとは民事再生しか考えられなかった・・・。」


本当にどん底まで落ちてしまいます・・・。
この本ではその最悪の状況は詳細に語られていないのですが、
経営者として最大の挫折を味わったのでしょう。
バブルはじけて多額の負債を抱えた時
「それまでの自分の考え方をどれだけ後悔し、反省したか・・・。」


でもこの会長の素晴らしさ、それでも立ち直り、
そこで悟るのですね。


「企業には経営理念がなにより大切なのだ」と。


スーパーホテルの経営理念実現のための具体的な行動を
示す「経営指針書」を作り、各経営幹部に徹底するのです。


さらに、ホテルで働く支配人、副支配人に向けて、
経営指針書に書かれたものを、分かりやすくコンパクトにまとめたものを
「FAITH」(フェイス)として、常に持ち歩くように徹底させます。


これは、リッツカールトンの有名な「クレド」と同じですね。


スーパーホテルが拡大したのは、やはりデフレ時代になってから。
その苦しみぬいた間に、山本会長は、「経営指針書」と「FAITH」で
バブル崩壊という最大にのピンチを切り抜け、
新たな成長を遂げたのでした・・・。




その5 マニュアル経営を超える社員教育



スーパーホテル経営のそろそろ結論を言いましょう。
なぜ日本一になったのでしょうか?


私は「山本イズム」の徹底がその理由だと思います。
山本会長の思いがこの「経営指針書」と「FAITH」に
盛り込められています。
それを経営幹部から新入社員まで徹底的に浸透させているのです。


よく毎日朝礼で「社是」を唱える会社もあるでしょう。
でもただ唱えるだけでは意味がないのですね。まさに「絵に描いた餅」


どうやって徹底させているかが、このスーパーホテルの秘密を知る「カギ」
なのです。


よく「マニュアル経営」という言葉が言われますが、
コンビニやファミレスでの「違和感」をよく感じますね。
山本会長は、「マニュアルを越えたところにサービスがある」
と、さらに上のレベルを要求しています。


そのランクアップのために、社員同士のコミュニケーションを
重視すために「話し込み」という、独自な研修時間を
設けているのだそうです。


「チャレンジシート」に、自分の目標を書かせ、
「ランクアップシート」に、その目標達成のための行動計画を
一週間単位と一か月単位で書かせ、それを上司と社員が共有して、
それを前提とした徹底した「話し込み」をする・・・。
そんな独自の研修です。すごいですね・・・。


最後に面白いことが書いてありました。
現在スーパーホテル105店舗のうち、93店舗が、
ホテル未経験の「素人」支配人なのです。


日本一のホテルの支配人は、皆名門ホテルの経験者かと思ったら
そうでもないのですね。
ホテル未経験の素人支配人を、この「経営指針書」と「FAITH」で
徹底させ、接客のプロに育て上げているのです。


支配人は原則「夫婦」一組で4年契約。全員ホテルに住み込み。
その4年間で「山本イズム」を理解し、
まさに「日本一の接客サービスのプロ」になっていくのだそうです。


ただ感心したのは、会社側も決して「一生スーパーホテルで
働くことを求めない」そうです。


実際に、住居完備だから開業資金も貯めることできるので、
飲食店経営者などに独立する者も多いそうです。


これは素晴らしい制度ではないでしょうか。
これから独立開業のご相談を受けたら、


「一度スーパーホテルでサービスの神髄を学んでみたら・・」


そうアドバイスするかもしれませんね。


なぜに日本一になったのか。お分かりになりましたか?
それは「人『財』の育成」、
その一言につきると私は思うのです・・・。


(がんばれ! 日本一のホテルシリーズ おしまい)

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