その1 消費税対策のお手本



Torikizoku



新春書評第一弾!

「常識を破る非常識シリーズ」ですね。

ずいぶん前のことですが、
「一品280円!そんな安い居酒屋があるのか!」
そう感動した覚えがあります。


「鳥貴族」とは現在、関西と関東を中心に
300店舗展開しているチェーン店ですね。
もちろん、「どんな経営をしているのだろう?」
という疑問を持ったのは当然ですが、
最近の課題として
「原価率はどれくらいなのだろう?」
それも思いましたね。


でも一番知りたいと思ったことなのですが、
何だか分かりますか?
全ての経営者の平成25年の経営課題です。
これは本当に重要ですよ。


ズバリ! 「消費税対策」 なのですね。
こういうことをいう税理士は私くらいでしょうから、
よく考えておいてください。
280円といっても実際は消費税を取られるから、
14円足して294円なのですね。
鳥貴族の看板をよく見ると、
「280円(税込294円)」
としっかり書いてあります。


これは平成16年4月からの税制改正により
「税込表示しなさい」
と決められていたのでしたね。
でも280円がやたら目立って、(税込294円)は比較的小さいですね。
本来は、これだと消費税法違反です。
といって税務署が勧告しているとは聞いたことはありませんね・・・。


さて、これが平成26年4月から税率8%になります。
ということは280円均一といいながら、
実際には280円×8%=22円もかかりますから
280円+22円=302円になってしまうのですね。
ですので、280円均一といいながら、やはり
税込302円と表示しなければならないのです。


200円台と300円台というのは圧倒的に違いますからね。
5年前や10年前なら
「200円台で何でも食べて飲めるならちょっと入ろう!」
そう思う人が、


「何だ300円か・・・・」


そう思うのではないでしょうか。
ましてや現在なら250円均一もありますし、
「立ち飲み屋」や「イタリアンバル」など安い居酒屋が
かなり台頭してきていますからね。


当事務所の近くにも「鳥貴族」はありますが、
安い立ち飲み屋やバルもたくさんできています。
なかなか厳しい環境ではないでしょうか。


では、そんな観点から、この鳥貴族の経営哲学を
少し考えてみたいと思います・・・。





その2 創業一年目で大英断!


ではまず鳥貴族の社長さんのご紹介から。
大倉忠司氏。1960年2月4日生まれ。
もうすぐ53歳ですね。私と同年代です。


料理系専門学校を卒業後は、大手ホテル、焼き鳥店を経て
1985年、25歳の若さで独立してしまいます。
開業資金は200万ほどであとは親の家を担保に借りた
1000万円でたった9坪席数27席のお店でスターです。


まずこの辺りまでは飲食業の開業でありがちなお話ですね。
開業資金は1200万というのは当時としてはかなりの
冒険だったのでしょう。


でも16歳の時からビアガーデンでアルバイトしていたなど
最初から自分で飲食店を持とうと思っていたのでしょうね。


当時目標としたのは「村さ来」。
居酒屋ブームの火付け役となったところですね。


ところで「村さ来」ってご存知ですか?
私の大学生の頃、高田馬場の村さ来でずいぶん安酒を飲みましたね。
当時は○○サワーなんかよく・・・・。(懐かしい)


しかし、意気込んで開業したものの、最初はうまくいかなかったのですね。
焼き鳥屋を開業したのは良かったけど
まさに「閑古鳥」・・・・。


理由はまず立地です。
生まれ育った大阪の俊徳道駅前に出したもの
そこはあまりよい場所でなかったらしいです。


でも、ここで私はあのサイゼリアを思い出しましたね。こちら
サイゼイリアの社長も第一号店は立地で苦労しました。
でもそのおかげで知恵が生まれ、
その知恵のおかげでその後大発展したのです。
実は大倉社長もそこが一緒なのです。


創業後1年が経って、全価格を思い切って「250円均一」にしたのです。
それが現在の「280円均一」につながっているのですね。
でも当時としてはかなり画期的だったのでしょう。


「ビールの原価は仕入価格が200円以上した。」


「現在は大量仕入れしているので、鶏肉の仕入値段は
当時から3分の1になっている。」


そう社長自ら正直に書いてあります。
ここですね。


「常識を破る非常識」、まさに「ベンチャースピリッツ」を感じませんか?





その3 店舗拡大へ路線変更


当時として250円の均一料金は本当に画期的だったと思うのです。
想像するに同業者からかなり冷たい目で見られたでしょうね。


「生ビールを250円でなんか出したら絶対そのうち潰れるさ・・・」と。


でも今から思えば、「20年後の時代を先取りしていた」
ということになるのですね。
というのも、常識を破る非常識であったことを認めますが、
私は少し先の読み間違えをしたようにも思えるのです。


鳥貴族が誕生した1985年の時代背景をお分かりですか?
1985年のプラザ合意からあの「バブル時代」に突入するのですね。
まさに日本経済空前絶後の景気の良い時代です。
何も一品250円で食べなくても、日本国民中皆懐具合がよかったから
500円でも1000円でも気にせず払っていたのですね。
生ビール一杯が800円でも何にも疑問に感じなかったのです。


発想とビジネスモデルを間違わなかったものの
事実鳥貴族は、その後なかなか発展しません。
それでも一年で一店舗ずつ増えていったそうです。


鳥貴族が急発展したターニングポイントは
あの阪神タイガースが優勝した2003年!
優勝の決まった日にあの道頓堀店が大繁盛してからだそうです。


ただ阪神タイガースのおかげではなく、やはり時代背景にあったと
私は思うのですね。
バブル崩壊後、失われた10年、20年と長引く不況が
続きましたから・・・・。


東京にも進出して、このデフレ経済の追い風を受けて
あっという間に300店舗に。
不思議なことに、FC(フランチャイズ)を募集していなかった
そうですね。
この「鳥貴族ブランド」を大事にすることは非常に好感が持てますね。


今後鳥貴族はどこへ飛んでいくのでしょうか。
300店舗から2000店舗へ拡大する戦略に切り替えていくそうです。
これは飲食店業界の「台風の目」となるでしょうか・・・。


ところで、最近「若者の酒離れ」ということがよく言われますね。
本当に若い人が酒を飲まなくなってきているのです。
不思議なことに、大学生もせいぜいビールくらいしか飲まないそうです。
そういう若者が社会人となって、昔のように居酒屋に行くのでしょうか。


それに対して大倉社長は業界にも責任があるといっているのです。


「ドリンクメニューに多くの利益を乗せて『酒で儲ける』ビジネスモデルに
甘んじてきたから・・・」


なるほどなと思いました。
これを以前紹介した新川氏も同様なことを言っていますし、
あの有名な落合シェフも言っているのです。(今後アップします)


「酒屋で誰もが買える商品を、何も疑問を待たず3倍の値段で
売っているおかしな業界・・・・」





その4 鳥貴族の秘密


鳥貴族研究続きます。
この企業を研究することで、居酒屋の明日が見えてきます・・・・。


鳥貴族の秘密をいくつかご紹介していきましょう。


1.鶏肉は輸入物ではない


「280円で焼き鳥の大串を2本も出すなんて絶対輸入さ。」


これはこの280円戦略をとって拡大してきた現在までに
何千回、何万回もいわれてきたことなのでしょうね。


事実、私もこの本読んで「へ〜。」と思いましたから。


鳥貴族の「貴族焼き」って食べたことがありますか?
事実その大きさと美味しさに驚きますよ。


2.セントラルキッチンで鳥を大量にさばいているのではない


これもそうなのですね。


「どこかの工場で、多分中国かベトナムあたりで作っているさ。
だからこんなに安いのだ・・・」と。


これもまったく違って、各店舗でパーとの社員を使って
開店前に作っているのだそうです。しかも基本地元の食材だそうです。


3.炭火焼ではない


これは私のような「左党」に言わしたら賛否両論あるでしょうね。
個人的には、吉田類さんがテレビで紹介しているような
「オヤジ一人でやっている炭火焼鳥」なんて大好きですから・・・。
(すいません。かなりコアなネタです。知らない方は こちら


鳥貴族には炭火はありません。
特別に開発された「電気グリラー」なんだそうです。
これなら、焼き鳥を焼く専門の職人はいらないですからね。


でも「炭火で焼いたのと同じくらいの美味しさ」です。


4.独自の店舗経営


その他いろいろあります。
品数を絞る・・・・そういえば鳥貴族に「刺身」なんてないですね。
お通しをださない・・・これはお通し料金、チャージ料金を
なぜか取られるという日本の飲食店への対抗意識ですね。


5.徹底したコストカット


これもさすが低価格路線を取る企業ですね。


店舗は一階にこだわらない。地下でも空中店舗でもOK
・・・・そういえば2階の鳥貴族をよく見ます。
本社にカネをかけない・・・・何も東京でなくてよいそうです。
事実大阪本社のまま。しかもタレ工場の上。
名刺はパソコンで作る・・・・・印刷屋に出せば100枚1000円はしますが、
すべてパソコンで128円ほどで手作りだそうです・・・。


他にもいろいろありますが、
どうして一品280円で出せるか分かりますね。
さすがデフレを勝ち抜く企業だと思いませんか・・・。




その5 消費税増税対策


焼き鳥でいつまでも熱く語っていると、
「黒こげ」になってしまいますね!?
そろそろ一番言いたいことを語って終わりましょう。


ズバリ「消費税増税」のお話ですね。
鳥貴族は、開業一年目から「一品250円戦略」を取りました。
それが3%の消費税が導入された1989年に
280円に引き上げています。
それ以来ずっと280円なのですね。
5%にも引き上げた時にも280円のままです。
でも「からくり」があって、現在もそうですが、
その分きっちり外税でもらっていますね。
ですので、実際は一品は「税込で294円」なのです。


8%になったら・・・10%になったら・・・と
当然会社側は考えているのでしょうね。


でもこの「税込表示」は消費税法上義務化されているのですから
いつまでも「280円」と意図的に宣伝しているのは
問題にはならないでしょうか。
このように、総額表示の義務化を徹底してやらないと
「抜け道」になってしまいますね。
罰則規定の強化など考えてもらわないといけないのでしょう・・・。


この「消費税増税対策という課題」は、すべての飲食店にもいえます。
これからの経営課題は、「消費税をいかに価格転嫁するか」
だからですね。


ところで、時の首相は「アベノミクス」で「インフレターゲットを2%」と
ぶち上げていますね。
インフレターゲットと消費税増税は矛盾しないのでしょうか?
私は経済学者ではないので文句を言うつもりはないのですが、
税込表示で105円で購入できたものが、増税後108円で購入したら
単純に3円÷105円で2.8%の値上げなのですね。


本来なら消費税増税で、「ほっておいても」インフレになるのですから。


また一方で
「インフレターゲットを成功させるには賃金も上昇すること」
と安倍さんは言っていますが、
はたして賃金は上がっていくのでしょうか?


賃金が上がらないから、安い居酒屋に皆行くのです。
だから一品280円の居酒屋が流行るのです。
どうもこのあたり分かりません。
でもそうなると鳥貴族の2000店舗計画は成功してしまうかも
しれませんね。
東京中の居酒屋が鳥貴族になってしまうかもしれませんね・・・!?


これは大変なことです。
他の居酒屋ももっと頑張ってもらわなければいけませんね。


最後に鳥貴族に対抗する、
消費税の増税対策の「アイデア」をご紹介。


一品270円の居酒屋を作って対抗するのですね。


これなら8%に増税されても「税込291円」!
10%に増税されても「税込297円」!
すべて200円台に収まります。


どうでしょうか?
美味しい「貴族焼き」でも食べながら、じっくり考えてみてください・・・・。



(ガンバレ焼き鳥屋さん シリーズおしまい)

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