その1 なるだけ働かないで儲かる理由
何となくyoutubeを見ていていたら
飛び込んできた動画。
「なるだけ働かない でも儲かる理由」
なかなかの長編動画。
でも思わず見入ってしまいました・・・。
165万回再生です。
週休3日。
夏には有休が一か月。
そんなパン屋が本当にあるの??
この主人公の人間的魅力に圧倒されました。
それですぐネット検索。
この本にたどり着きました。
調べていると
「捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ」
という本も見つけました。
副題が
「第68回(2022年)青少年読書感想文全国コンクール課題図書」
すぐピンときますね。
数年前から「SDGsブーム」ですからね。
小学生の読書感想文でこの本を読ませて
書かせようとする政治的圧力!?も
すぐ感じ取れました・・・。
まず「捨てないパン屋」
という題名だけで、このパン業界を知っている方から
みたら「ドキッ」とするお話。
パン屋さんで毎日パンを捨てないことは
まずないのからです。
これ業界の常識ですね。
同様にコンビニもご存じでしょうか?
お店の入り口の脇に見えないように
必ず「大きなゴミ箱」があります。
強固なカギで絶対に人や動物が入れなくなっています。
分かりますね。
賞味期限が切れたお弁当屋パンなどを
毎日大量に捨てているからです。
まさにパン屋さんやコンビニ業界での「闇」。
それに真正面から問うている本だから
なのです・・・。
パン業界が本当によくわかる本なのですが
ある意味すべての業種にも通じているのでは
ないかとさえ思います。
しばらく読みながらSDGs を考えていきましょう。
その2 パン屋3代目の悩み
今回の主人公「田村陽至」さん。
(もちろん右側)
1976年広島県生まれ。49歳ですね。
祖父の代から70年続くパン屋3代目。
なかなか魅力的な方ですね。
本の後youtube片っ端から見て
それを感じます。
でも
「『パンなんてなくなってしまえ!』
と子供の頃からずっと思っていました」
「実家はパン屋だったけれど、
小さいころからパン屋は好きに
なれませんでした」
東京の大学へ進学して環境問題を
勉強し、それでも金沢のパン屋へ就職。
それでも半年で辞めてしまうのですね。
このお話本には書いていませんでしたが
Youtubeで
「超ブラック企業で逃げた・・・」
そうです。
でも実際に「超」が付くかどうかは分かりませんが
ブラック企業であることは認めます・・・。
その後北海道で山ガイド、モンゴルで遊牧民と
暮らす生活。
でも2003年12月。
27歳の時に実家に戻ります。
実際には手伝うような形ですね。
2004年4月に店をリニューアルオープン。
薪窯を作り、天然酵母の国産麦でパンを
作るレシピ。
オープン当初から大繁盛。
パートアルバイト入れて8名体制。
薪窯で焼く美味しいパン屋として有名店に。
父親は高校を出てからずっとパン職人だった
わけで、「頑固で誇り高き職人」。
スタッフもみな頑張って朝から晩まで
働きます。
どんどんたくさん焼くようになり、
売れるときは売れる。
でも残るときはどんどん残る。
まさに「捨てるパン」が多いこそが
人気店としての悪しき慣習・・・。
過酷な労働環境を前提として
それでも利益が出にくい・・・。
旧態依然としたパン屋業に対して
父と息子は激しく対立します。
それでも5年間は必死に父親のもと働いたそうです。
32歳のとき父親から手紙をもらいます。
「一身上の都合により辞めます」
その3 生き方を変えたヨーロッパ研修
(ヨーロッパでの研修)
先代の父親が店を辞めたと同時に
フランスへ1か月研修に行きます。
このあたりの行動力に驚きますね。
社長を譲り受け、店が傾いているときに
一か月も休んで研修。
まず普通の社長はできないでしょう・・・。
(1年間の留学「遊学?」「新婚旅行??」)
さらに、2011年、35歳の時。
ついに店を一時的に閉め、フランスへ
1年留学するのですね。
これも普通の社長なら絶対できないお話。
ここだけでも感動しませんか?
さらに驚くのは、フランスへ
「新しいパンの作り方」
を学びに行くのではないですね。
「結婚したばかりの妻と二人で、1年間じっくり
住んで、とにかく
『働き方、暮らし方、生き方を盗んでくる!』
と決意したのですね。
「本当かよ・・・」
凡人には分かりません。
まあ1年間の「新婚旅行」でしょうか?
楽しい人生だと思いませんか?
オーストリア・ウイーンにある「グラッカー」
という店での研修。
「朝8時に工房に行って12時過ぎに終了。
大きなパンや、中に具が入っていないシンプルなパン。
こね上げたら、すぐさま成形して、冷蔵庫に
しまって終わり。
でも、製法で手を抜く代わりに材料は手に入る
最高のものを使い、天然酵母で醸して、
薪で焼いているのです。
食べてみると、そのパンは日本のどのパンより
断然に美味しかったのです。」
「それに比べて、日本では僕は睡眠もそこそこに
18時間も働いて、スタッフもどたばた働かせて、
できたパンは、ここよりまずいのです。
何やっていたのだろう・・・」
この強烈な体験が田村氏の人生観を変えたのですね。
「手をかければかけるほど、
良いパンが焼けると思っていた。」
これパン屋だけのお話ではなさそうです・・・。
その4 2種類だけしか焼かないパン屋
(薪窯)
この留学で田村さんのパン作りが変わる
のですね。
「手を抜くことによる4〜5時間労働」
でも重要なのは
「それでいて美味しいこと」
パン作りの理想形ですね。それには
「良い材料を使って80点を目指す」
この20点を挙げるための作業に
今も日本中で、とても多くの人手と時間が
かけられているのです。
この理想を追い求めるために
「焼き立てパン」
「新しいアイデアを売りにしたパン」
これを決別したというのです。
これ並大抵のパン屋さんではできないでしょうね・・・。
まずこれに絶対必要なものは
「薪窯」
薪窯だと一度に1キロの大きなパンを
75個も焼けるからなのですね。
日持ちのするパンを焼けば
必然的にパンを捨てることはなくなります。
カンパーニュとブロンの2種類だけに
したのです。
これ読んだ瞬間にすぐ思い出しますね。
分かる方は、かなりの「吉田ブログ通」!?
2年も前に徹底的に勉強しました。
「山の上のパン屋に人が集まるわけ」
店主の平田はる香さんが
「27種類のパンとお菓子を焼いて販売」
していたのを
「カンパーニュと角食パンの2種類」
にだけ絞ったのですね。
平田さん本には田村さんが登場して
こなかったのですが、実は田村さんの
本には平田さんが登場してきます。
お二人は知り合いなのですね。
たぶん平田さんが田村さんの2種類に
絞ることを真似したのでしょうか・・・。
その5 freeeとエアレジで何もしない経理
これ読んで感動しました。
「長野県のパンと日用品の人気店
「わざわざ」の平田はる香さんに
教えてもらった、オンラインの
会計サービス「freee」を使うことで
劇的に改善しました。」
今ではリクルートがやっている無料の
POSレジシステム「Airレジ」を
使っています。
しかも売上げは自動的に「freee」と
連動します。」
まさに手抜き。ハッキリ書きます。
パン屋さんの経理はこれで十分なのですね。
因みににわかに田村さんファンになった私は
田村さんのyoutubeを片っ端から見ました。
田村さんとのコラボ動画で姫路市でパン屋を
やっている「コボトベーカリーの酒井さん」を
知りました。
この方一人でやっていて
週に3日しか営業してなくても年商3000万円。
毎年のようにyoutubeで決算内容を公開しているのですね。
先日アップされた動画を活字にしてみます。
なかなか税理士としてショッキングな内容。
でもあえて公開します。
どこの会計事務所かわかりませんが、たぶん
「巡回監査」をウリにしているアソコでしょう・・・。
税理士に頼むことによって、より正確な決算書を
作成することはできましたが、経費負担と時間の
ロスが大きいと感じて、結局顧問契約は切りました。
うちの場合、仕訳は自分でやって そのチェックを
税理士に任せてたんですけれども、
その記帳のチェックだけで毎月数万円費用がかかって、
年末調整事務とか所得税、消費税の確定申告で約10万円。
合計すると年間4、50万円以上するんですね 。
面談で毎月2時間弱の時間を取られるんですが、
その内容も、「この支払いってどういう支払いですか?」
という風に、リアルに会わなくてもできるものが
ほとんどだったので、僕の場合は、多くの費用と
時間をかけて顧問契約する必要はないなと
いう風に感じました。
その6 業界に対する暴露本
この本が脚光浴びたのはまさに
SDGsそのものでしたからね。
「捨てるパンなんてもったいないよね」
という発想でしょう。
冒頭でご紹介した
井出留美さんは「食品ロス」をテーマに
活動されている方ですからね。
でもこの本をよく読むと
「小麦アレルギー」など輸入小麦の問題も
取り上げられているのですね。
食料自給率が最近のテーマで取り上げられますが
日本は世界中でとりわけ食料自給率が
低い国なのです。
特に小麦は97%が輸入に頼っています。
国産小麦は3%しかないのですね。
実はこの田村さんも「小麦アレルギー」で
悩んでいられた方です。
パン屋さんが「小麦アレルギー」だったら
商売上手くできませんよね。
田村さんは「ポストハーベスト」のアレルギー
だったのです。
「ポストハーベスト」なんてフレーズ初めて知りました。
「ハーベスト」は収穫を意味します。
だから収穫後に施された薬剤のことなのです。
小麦は海外から船で輸送されてきます。
暖かい船の中で長期間運ばれてくるのですから、
いろいろな生き物も狙ってくることは、
想像つきます。それらから防御するために
薬剤が散布されているのです。
因みに国産小麦には「ポストハーベスト」は
されないようです。
ですから、パン屋さんの立場で
「ポストハーベスト」問題は真正面からは言えないのですね。
97%の小麦は「ポストハーベスト」の輸入小麦で、つまり
日本中のパンの97%は農薬の入っているパンだからです。
「日本のパンの97%は身体によくないです」
衝撃的な暴露本なのですね。
このパン業界を変えようとする田村さんの
心意気を大いに買いたいです。
もっというと田村さんはイーストを使わずパンを
焼いています。
イーストでつくったパンはグルテンが温存されるのです。
これに対して田村さんは疑問を持っています。
食の安全について真剣に問うているのです・・・。
ちなみに昨日私も「少し」暴露しました。
でも小心ものの税理士ですから
「業界の悪しき慣習、巡回監査なんて詐欺だ!」
なんて口が裂けても言えないです・・・。
その7 注文しても40週待ち・・・
(ドリアン通販サイトより)
いろいろ書きたいことはたくさんあるのですが
この本を読みながら、どうしてもドリアンの
カンパーニュが食べてみたくなったのですね。
それでドリアンに通販を頼みました。
このメールの返事ですべてが分かります。
田村さんのパン屋経営のやり方、
田村さんの生き方そのものですね。
これに対してクレームを言う客は
この本をよく読んでください、
ということなのでしょう。
水曜日
吉田 信康 様
こんにちは。ドリアン(自動配信メール)です。
このたびは当店をご利用いただき誠にありがとうございます。
(略)
日曜日〜水曜日は定休日となりますので、
休み明けからの返信となります。
要するに週木、金、土の3日営業のみです。
金曜日返事がきました。
【1】
発送日は毎週木曜日・金曜日・土曜日です。
1回に発送できる件数が限られています。
↓
今はご注文後、
39週間〜41週間ほどお待ちいただいております。
(上記より早まる場合や、大幅に遅れてしまう場合も
ございます。申し訳ございません。)
どうでしょう。
驚きませんか?
約40週間(つまり280日)待ちです。
常連の「サブスクのお客さん」が中心で、
私のような「一見のお客さん」は後回しに
されるようです。
ドリアンは夏休みが1か月半もあるから、
この夏に注文しても、
「ほしい方は40週間お待ちください」
とこうなるのでしょうか。
これに対して、きっとクレームあるのでしょうね。
でもこの本を読んだ方なら
「ドリアンはこういうお店だから」
ということに納得できるはずです。
一方で「無責任な」飲食店コンサルタントから
「店を大きくして、人を増やして窯も増やして・・」
いわれるかもしれません。
彼も絶対に反論があるのでしょう。
先日紹介した姫路のコボトベーカリーも
週3日営業です。
夏休みも2週間も取っていました。
今物価高騰の折、パン屋さんの経営は確かに厳しいです。
でも田村さんのような経営もあるのかと
非常に勉強になりました。
ありがとうございました。
(がんばれ! 働き方改革
美味しい薪窯パンシリーズ おしまい)