その1 社会保険料は毎年あがります



今月(平成24年9月)から厚生年金保険料の料率が上がります。
ご存知ですか?
16.766%にもなるのですね。


現在給与改定をお客さんに連絡しているところです。
給料の支払いの際に、従業員から預かる保険料も上げておかないと
会社が「ソン」しますからね。


厚生年金とともに預かるのが健康保険料です。
これも分かりますよね。
現在では、東京では40歳以上の方(介護保険を納める方)は
11.52%です。
あわせるとなんと「28.286%」にもなるのですね。


ただお分かりの通り、会社と従業員(もしくは役員)で折半するのが
保険料の決まりです。
でも給料から14%も取られてしまうのですね。


これ確かに大きいと思いませんか?
この折半は、従業員は負担してくれるのでよいのですが、
社長一人でやっている会社などは、いうならば「財布は一緒」ですからね。
自分の給料の他に28%も納めるとなると、かなりの重税感なのですね。


よくご相談を受けます。
「これ何とかなりませんか?」と。


この不景気に大きい金額ですからね。
ただもっというと、毎年厚生年金保険料が上がっていますね。
これは実は平成29年までに18.3%になることも
「決まっている」のですね。こちら
これもご存知でしたか?


こんなことは誰も言ってくれないかもしれません。
すべての会社に顧問の社会保険労務士がついていないでしょうから、
顧問税理士が言ってあげなければならないのですね。


厚生年金が18.3%ともなると両方合わせ多分30%ですね。
これは大変なことなのです。


会社設立された時に多いご相談が、この社会保険の問題です。


「入らなければいけないのですか?」


と聞いてくれる社長はかなりレベルの高い方です。
多くの社長さんは、そんなことすら知らないのです。


「法律は会社を設立して給料払えば社会保険の加入義務が発生します。」


でも実際のお話として、自分の給料の他に3割近く払わなければならない。


何とかなるかどうか?真面目に考えてみましょうか。
私も日々マラソンや囲碁のことしか考えているのではありません。
社会保険もお客さんにとっては、「税金」であることも間違いないのです。
どうしたらよいか真剣に考えてもいるのですね。


こんなこと言ってくれる税理士は私くらいでしょうから・・・。





その2 社会保険料の古典的節税策



これから
「社会保険料をどうやってゴマカスか?」
なんてことを書こうとしている訳ではないのですね。


こうやってブログを長く書いていると。
あまり変なことは書けないと自覚しています。
ブログは後に活字で残りますし、
誰が見るか分からないですからね。
もっと本音で書きたいところもあるけど結構自重もしているのです。


まず「正論」を言うと、社会保険料という社会への「税金」は
まさに社会貢献だと思います。


会社を起業し従業員を雇い、給料をとともに社会保険料を支払う。
仕事に困っている人の雇用を確保し、
未来の子供たちのために社会保険を積むことができる・・・。
立派な社会貢献なのですね。
それを決してゴマカソウなんて考えてもいけないのですね。


・・・ここで少し脱線。
最近私が過去取り上げた京セラの稲盛会長の「生き方」が
また流行っていますね。こちら
私の先見の明を自慢?するとともに、
またあの本がなぜ今脚光を浴びているか、お分かりになりますか?


JAL再生の「切り札」として、送り込まれた稲盛さんが
従業員を洗脳した本らしいのですね。
従業員の考え方を改めさせたのでしょうか。


「JALを通じて社会貢献をしよう!」と。
まさに「生き方」そのものなのですね。
経営者もこれからは、「生き方」が問われているのでしょう・・・。


そんな「真面目な前置き」をしたところで、
社会保険料節税策を論じてみましょう


昔、いまから10年前に社会保険料の負担に困っている会社が
こんなことをしていました。


年収600万円の従業員を雇ったとしますね。
その場合に月収50万円を12か月支払うのではなく、
月収を10万円を12か月、残りの480万円を
240万の夏冬のボーナス支払いとしたのですね。


こうすると会社の負担する社会保険料が大幅に下がりました。
何故なら、10年前まではボーナスには社会保険料が
かからなかったのです。


古典的なお話ですね・・・。





その3 現在の総額報酬制の節税策



「ボーナスの額を増やせば社会保険料の負担は減る」


こんな古典的な節税策が昔は結構横行したのですね。
極端なお話としてほとんどをボーナスのような形態にした会社まで
出現して・・・。


あまりにも目立ちすぎたので、数年前に社会保険の改正が
行われてしまいました。
「総額報酬制」に変わったのでしたね。


要するに「ボーナスにも社会保険料を取りますよ」ってことですね。
年収すべてに保険料を徴収するようになったのです。


ではここで問題です。
年収960万円の従業員を雇ったとしますね。
月給を80万円として12か月支払った方が良いのか、
月給を60万円として12か月支払い、
夏冬のボーナスを120万ずつにした方がよいのか?
どちらが社会保険料の負担が減ると思いますか?


こんなこと真面目に考えたことがありますか?
社会保険料の構造を知るということから、
こんな計算をしてみるとよく分かるのではないでしょうか。


ぜひ知っていていただきたいのは、


「厚生年金は605,000円で等級は上限となること。
健康保険は1,175,000円で等級は上限となること。」


なのですね。
ということは、厚生年金に関しては月給が605,000円の人と
月給が800,000円の人とは保険料は変わらないということなのですね。


ではそれを踏まえて、先ほどの問題を考えてみてください。
検証してみましょう。
(平成24年9月からの保険料額表は コチラ )


月収60万の人は月々厚生年金と健康保険で83,444円。
これが12か月で1,001,328円
賞与が120万の時の厚生年金と健康保険は121,671円。
これが2回で243,341円。
合計で1,244,669円


月収80万の人は月々厚生年金と健康保険で87,687円。
これが12か月で1,052,244円


なんと差額が192,425円!


会社としても同額負担するわけですから、20万近くも違うのですね。


つまり、「ボーナス減らして月々の給料に上乗せする方が
負担が減る」のですね。



 


その4 ボーナスのない社長さんは?




高額の給料(月605,000円以上)をもらっている従業員は、
賞与分を月々の給料に上乗せすれば、社会保険料が削減されるのが
分かりましたね。


では
「ボーナスのない会社役員はどうしたらいい?」


そう聞かれてしまうのですね。
これについて、先日面白いお話を聞いてきました。
社会保険労務士が講師のセミナーで、
ずばり「社会保険料削減策」です。


毎月100万円を12か月。つまり年収1200万円の社長さんのケースです。
まず現状払っている社会保険料を計算してみましょう。


健康保険は等級98万円で56,448円 12ヶ月で677,376円
厚生年金保険料は等級62万円で51,974円 12ヶ月で623,688円
合計で1,301,064円にもなります。


すごいですね。こんなにも取られるのですが
年収1200万円なら仕方がないですか・・・。



ここで削減策です。


年収1200万円を維持したまま、月給を10万円に落とします。
そうすると120万円で不足分の1080万円は年に一回の賞与とするのですね。


こういうような支払方法を実は税務署も認めているのですね。
「事前確定給与」というのですね。
そのためには会社で機関決定したうえで、
その届出を税務署に提出出します。


そうするとどうなるか?
月々の社会保険料が極端に減るのはお分かりですね。
健康保険は等級9.8万円で5,644円 12ヶ月で67,728円
厚生年金保険料は等級9.8万円で8,215円 12ヶ月で98,580円
合計でわずか166,308円だけです。


ここでポイントとなるのは、賞与の上限額なのですね。
健康保険は年額540万円まで、厚生年金は150万円までなのです。
つまりそれ以上払っても取られない仕組みなのですね。


これで計算すると、
健康保険は540万円×11.52%×1/2=311,040円
厚生年金は150万円×16.766%×1/2=125,745円
合計で436,785円
です。


年間の合計は603,093円!!
なんと差額は697,971円!!


もう届出一枚で約70万も違うのです。
ここでオーナー社長さんならすぐお分かりでしょうけど、


会社=オレ ですよね。


つまり会社負担分も考えたら、なんと140万!も違ってくるのです!!





その5 これも古典的節税策



社会保険についてはまだまだ書きたいことはたくさんあります。


まずよくある「社会保険料削減策」


社長と奥さん二人でやっている会社のケース。
例えば社長が月に60万円取っているとします。


ここで「節税好きの税理士」のアドバイス。
「社長と奥さんで両方から給料取ったがいいよ」
それで
社長が月40万円で奥さんが20万円。
よくある中小企業の実態ですね。
税務署としても奥さんが役員登記されていれば、
これくらいの金額ならまず問題視されません。


そこで社会保険には、お二人で入ることができます。
でも世の中不景気で会社の業績も悪化。
でも社会保険料の負担が、現在では毎月なんと158,168円!
そこで社長さんから


「先生!この社会保険料大変です。何とかなりませんか?」


よくあるご相談です。


「奥さんは実質的に会社の仕事はほとんどやっていないから
非常勤役員になってもらって社会保険を脱退したら・・・」


これはよく聞く節税策ですね。これも古典的なお話。


しかし、いろいろ考えますが、
最初に申し上げましたが、京セラ稲盛さんではないですが
まさに「生き方」そのもの問題なのですね。


前回の社長さんの社会保険料の強烈な削減策も
ご紹介しましたが、これもまったく同じです。


社会保険料を下げることは、当然ですが将来受け取る年金も
「削減」されてしまうのですね。


年金も少なく「さみしい老後」になっても本当に困りますね。
そういうところから、問題はかなり根深いのです。


まさにライフプランそのものなのです。
もっと必死になって考えてみましょう・・・。





その6 養老保険を使った社会保険料削減策?



社会保険料削減策を考える際に
よく保険会社からこんな提案をもらったことはありませんか?


「社会保険削減セミナー」と称してお客さんを呼び込んでいるのは
大概は保険会社がバックにいたりしますから。


今日はそれが本当に「削減策なのか?」考えてみましょう。


昨日の例に合わせてご説明してみます。
社長さんが月給60万円として、毎月の社会保険料に
悩んでいるケースです。


「削減策」は
月給40万円にさげて、残りの20万円分を「養老保険」に加入するのです。


保険契約者を会社として、(つまり保険料は会社が支払う)
被保険者が社長、保険金・満期金受取人も社長
(つまり社長が死んだら保険金が遺族に、満期金は社長がもらう)
とするのですね。


ここで税法的にどうなるのでしょうか?
会社が社長と、遺族のためだけに保険に入ってやるようなものですから、
社長に「給与課税」されてしまうのですね。
まずここで税法的にはまったく「うまみ」がないと分かるでしょうか?
つまり社長さんは、給料が60万から40万に手取りが減っているに
かかわらず、60万円分の源泉税が取られてしまうのですね。
これはかなわないですね。
しかも住民税も課税されます。


ただこの方策の「ミソ」社会保険料が下がるということなのですね。
つまり、等級60万円から等級40万円に下がるということなのです。


「事業主が保険契約の当事者になっている場合には、
事業主が負担する保険料は報酬に含まれないものとする」
という昭和38年発令の「古い」通達をよりどころにしているからなのです。


ただセミナーで必ず「逃げ口上」があります。
「管轄の年金事務所で確認してください」と。


つまり問題視しているところもあるということなのです・・・。


厚生年金の上限を超えるくらい高額の役員報酬をもらっている方には
有効な策なのかもしれませんが、これは税務的に考えたら得策ではないと
私は思っています。






その7 退職金には社会保険料が取られない




昨日ご紹介した「養老保険を使った社会保険料削減策」は
本当に有利なのでしょうか?


こういうこと結構真面目に考えるのですね。
ハッキリ書きますが、私は保険会社の代理店も確かにやっていますが、
顧問税理士としてお客さんが保険に加入して本当に有利なのかどうか
それを検証する義務もあると思うのですね。


では、検証してみましょう。


月20万の養老保険に20年間加入したとすると、
保険料は総額20万×12か月×20年=4800万円ですね。
それを全額満期金とすると、4800万ももらうことになりますが
昨日ご説明したとおり、「課税済み」なのですね。
20年間も所得税と住民税を上乗せして払った結果、
つまり、重税感を20年間たっぷり味わって
やっと4800万もらえたのです。


では銀行に毎月定期積み金でもして20年間貯めて、
退職金として4800万円もらったのとどう違うのでしょうか?


ここで退職金の税務も説明しなければなりませんね。
退職金は通常の給与所得と違って「めったにないもの」ですので
優遇されているのですね。こちら


退職所得控除があって勤続20年だと800万も引けます。
しかもその控除をして半分になるのですね。
だから有利とされているのですね。
20年間個人で重税感味わうのと、20年後に一度に優遇税制を
受けるかの差なのですね。


あとここで「社会保険料削減策」の有効手段として
ぜひご理解いただきたいのは、


「退職金には社会保険料かからない!」ということなのですね。
ですから現行制度では「究極の社会保険削減策」なのです。


ただ「現行制度では」と申し上げたのは
20年後の社会保険制度は私は保証できないからなのですね。


多くの企業が「社会保険料逃れ」のために、退職金制度を
フル活用したら、ひょっとしたら20年後に


「退職金にも社会保険料をかけよう!」


となるかもしれないからなのです。
つまり、考えれば考えるほど、日本の年金問題は深いからなのです・・・。




その8 理論的には強烈な節税にはなりますが・・・




分かりやすくご説明してみましょう。


45歳で起業した月100万円の役員報酬を取っている社長さんが
いたとします。
仮に65歳まで働いて勇退すると考えているとします。
20年間で会社が支払う役員報酬が、100万×12か月×20年で
2億4000万円ですね。
(これも想定です。こんなに続けてもらえるか分かりませんが・・)


もし20年間ずっと社会保険に加入しているとしたら、
20年間で会社と個人でなんと!約5200万円も!!
負担することになります。
計算して驚きましたが、本当にすごい金額ですね。
(もちろん今後20年間、今と同じ保険料率だとしたらの仮定です・・)


では、これを月額60万円に下げたとします。
毎月40万円不足しますが、
20年後に40万×12か月×20年=9600万円の退職金を
もらうことにすれば多分文句はでませんか・・?
その場合は、その退職金には社会保険料はまったくかからないのでしたね。
(ただしここで9600万円は高額すぎる!
という議論はややこしいので触れません。)


単純に社会保険の等級が下がって4000万円の負担で済みます。
なんと1200万円もの削減ができますね。


こんな理屈です。
ここで重要なのでは厚生年金の等級は62万円が上限なので
それ以上は無理して払っても、もらえる年金も増えないのでしたね。



「でも会社は100万円の経費が60万円に下がったので
利益が出るではないか!」


賢い社長さんなら必ず気が付きます。



そこで保険会社の登場です!
保険会社は必ずこんなことを言ってきます。


「退職金準備のために減らした40万円で保険に入りましょう!」



よくある提案です。
ここで保険の税務も詳しく説明したいのですが、これもややこしいので
次回にします。
要するに、今の税制では40万円の半分は経費になります。
20年後にこれを解約して退職金にあてればよいのですね。
支払金額の80%から90%くらいもどる保険はたくさんありますから。

 

・・・もっともっと詳しく解説したいのですが、
今回はこれくらいしておきます。


保険のお話は、ブログで「エラそうに」いうネタでもないのですね。
最初に申し上げた通り、まさに「生き方」そのものの問題ですから。
20年後の年金制度もどうなるか分からないし・・・。

こんな難題に取り組むのも、長くお付き合いする顧問税理士の役割ですね。

ではまたそのうち・・・。

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