その1 ミシュランの星付きレストランのシェフがなぜ?



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コロナ禍で飲食店は本当に大変ですね。

その飲食店に何か方向性がないかと思っていたら

見つけた本ですね。

先月末に出たばかりですが、新聞広告見た瞬間にamazonから

ダウンロード。そしてそのまま読破してしまいました。

私がかつて大絶賛した「サイゼリヤ」のことですからね。こちら

この紹介した本の内容までかかれていたり、また、

このブログでも何でも登場する渥美俊一氏のことまで

熱く語られたりして読んでいて、非常にうれしくなりました。

 

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主人公は、村山太一氏45歳。

東京目黒で「ラッセ」というイタリアンレストランのオーナーシェフです。

写真の通り若くてカッコイイ方ですね。

 

かつてイタリアで修業したこともある料理人です。

イタリア国内で最長の26年間三ツ星を保ち続ける

世界最高峰の三ツ星レストラン「ダル・ペスカトーレ」で修業した

というのですからすごいです。

しかも、日本人としては初めてスーシェフ(副料理長)にまで上り詰めたと

いうのでかなりの凄腕料理人なのでしょう。

 

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とここまで読んで、昨年末に話題となったドラマ「グランメゾン東京」を

思い出しました。キムタク扮する伝説の料理人が日本で

星付きレストランを目指す物語でしたが、まさにアレを地で行く

本当のお話なのですね。

 

日本に帰国し、大震災のあった2011年に今の店をオープン。

9年前ですから若干36歳のチャレンジですね。

それ以降はまさに「グランメゾン東京」と一緒。

わずか半年でミシュランの一つ星を獲得して、

以降9年間にわたり星を獲得しているというのです。

 

東京目黒の「ラッセ」はもちろん行ったことはありませんが

きっと美味しいのでしょう。

なんといっても9年間連続「星付きレストラン」ですからね。

 

でもそんな大成功した有名シェフがサイゼリヤで

何故かアルバイトを始めたというのですね。

題名通りの面白いネタです。

 

このコロナ禍の今年の3月から5月は黒字だったのだそうです。

すごいですね。

なぜ黒字だったのかはあとで解説しますが、それだけでも参考になります。

 

そしてサイゼリヤでバイトしたことにより、

 

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一人当たり売上高が2.2杯に。

一人当たり労働時間が4割減になったというのです。

 

すごいですね。ではそれを解説していきましょう・・・・。




その2 このコロナ禍ではミシュランの星付きでも・・・


最初にこのタイトルを見たときに、

「これは売れないレストランが売上を上げるためのネタでは?」

そう思ってしまったのですね。

 

星付きレストランの有名シェフが、わざわざサイゼリヤのバイトする

はずないですからね。

 

ただ、本当に店の売上が落ちて、サイゼリヤでバイトしなければならないほど

どん底になった訳でもないのですね。(失礼!)

 

 

「いつの間にか目的を失い、スタッフも次々と辞めていき、

このままじゃ店が倒産してしまう」

という危機感なのです。

 

「今回の新型コロナウイルスで、周りのいくつものレストランが

つぶれました。ミシュランの星付きのレストランでも、

スタッフを雇い続けられなくなって半分解雇した店もあります。」

 

これは確かにそうでしょうね。

でもシェフは実は、コロナ禍の起きる3年前の2017年から

サイゼリヤでアルバイトを始めていたのです。

本当にネタでもなく危機感があったのでしょう。

 

 

冒頭星付きレストランとサイゼリアの経営スタイルの比較が出ていました。

 

いわゆる星付きレストランの高価格帯のレストランでは、

「だいたいお店が25席、スタッフが10人というのが一般的。

顧客単価が2万円で1日1回転、原価率が35%」

 

なんだそうです。

これ勉強になりますね。もう税理士としての性ですね。すぐ計算してしまいます。

25席が一回転で一人2万円もらったら売上は50万円です。

原価率が35%でも65%が儲け。50万円×65%=32万5000円ですね。

これなら10人くらいは余裕で雇えます。

 

でもこのコロナ禍で、一日1回転どころか数組のところも

多いようです。こうなると10人なんてとても雇えないでしょうね。

 

でもそれに対してサイゼリヤは、通常のお店の規模では、

160席をたった5人のスタッフで回しているのです。

これ驚きませんか?

 

それをどうやって、やっているかを確かめに、

わざわざサイゼリヤでアルバイトを始めたのです・・・。

 

この危機感、必死さをぜひ学んでいただきたいのです。




その3 サイゼリヤの人時生産性


ここでサイゼリヤ経営術ですね。

何度も勉強しましたが覚えていますか? 重要な経営指標です。

この村山シェフはそれを熟知しているのが、非常にうれしくなりました。

 

「人時生産性」でしたね。

 

もう忘れてしまいましたか?

ここで「人事」ではないのです。「人時」ですね。

簡単に言えば、時間当たりの生産性です。

厳しい言い方ですが、そういうことを考えないレストラン経営者は

「コロナ禍では生きてはいけない」

とまでサイゼリヤの経営者は言っています。

それを勉強したくて村山シェフはサイゼリヤに勉強しに行ったのです。

 

人時生産性 = お店が1日で生み出す粗利益 ÷ その日に働いた従業員の総労働時間

 

ですね。

前回ご紹介した「星付きレストランの繁盛店」で、もう一度みてみましょうか。

 

「お店が25席、スタッフが10人、顧客単価が2万円で1日1回転、原価率が35%」

 

かなり儲かっていそうですね。

粗利が65%ですから 、2万×25席×1回転×65%=32万5000円

ですからね。

でも本当に「儲かっている」のでしょうか?

 

レストランでは長時間労働が常態化しています。

1日16時間くらい働くのは普通なんだそうです。

1日16時間というと、朝8時に出勤して夜中の12時までですね。

スタッフ10人全員が1日16時間働いているとしたらどうなるでしょうか?

 

10人でそれぞれが16時間ですと160時間です。

160時間で32万5000円稼いだのですね。

 

32万5000円 ÷ 160時間 = 2,031円 ですね。

 

人時生産性は何と2,031円です。

(本では3,125円と書いてありましたがこれは明らかな間違いです。

50万円(売上)を160時間で割っていますね。

ここは絶対間違えてはいけないところですね!)

 

この2,031円が、すべてスタッフ10人に配分される訳ではないのですね。

粗利を計算しただけの数字ですから、これから販管費も加味しなければ

ならないのですね。

販管費や家賃や水道光熱費などの経費もまだまだあるのです。

 

それ加味して計算したら、スタッフ一人当たり1,000円くらいしか払えないかもしれません。

 

そうなのですね。

これこそ、星付きレストランの実態です。

一般的なレストランでは…と書いてありましたが、

これこそまさにラッセの実態だったのでしょう。

 

毎日必死に16時間働いても、時給1,000円ももらえなければ

絶対辞めてしまいますよね・・・。

 

「せっかく星付きレストランになっても従業員が幸せになっていない・・・」

「オレのやり方は間違っているのか?」

 

これに気が付て、村上シェフはサイゼリヤに学ぼうとしたのです。






その4 すいません。出版社に連絡してしまいました。



この「人時生産性」は実に大事なところですね。

前回指摘したこの本の誤りではと思ったところ、

おせっかいながら、つい出版社に連絡してしまいました。

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すぐ出版社からこういうメールいただきました。

 

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増刷時には直されるそうです。迅速なご対応誠にありがとうございました。

 

これで大事なところが、よりよく分かったのではないでしょうか。

 

「粗利」を「総労働時間」で割るのですね。

 

覚えましたか?

こういうことを計算している飲食店経営者は、

申し訳ないですが、まずいないでしょう。

コロナ禍の生き残り術をぜひ学んでください・・・。

 

シェフのお店「ラッセ」は、有名店ながら、実は時間当たり2,000円しか

稼いでいなかったのですね。

これこそ星付きレストランの実態なのです。

それに対してサイゼリヤは6,000円!

信じられませんね・・・。

薄給で長時間労働させたら従業員は辞めてしまいますよね。

開業して9年間はその繰り返しだったのでしょう。

 

「どうしてサイゼリヤはそんなに生産性が高いのだろう?」

 

それを確かめにサイゼリヤにアルバイトに行ったのです。

この行動力は見習うべきものでしょう。

イタリヤで三ツ星レストランのスーシェフまで上り詰めた

方がです・・・。

 

でもアルバイトしてすぐ気が付きます。

アルバイトが、皆生き生き働いているのです。

やはり、そんなことは実際に見ないと分かりませんよね。

 

「自分の店では『村山王国』だった・・・」

 

と気が付いたのですね。

従業員から見たら、凄腕シェフの部下ですからね。

常にシェフの顔色をうかがうわけです。

 

これは星付きレストランの宿命なのでしょう。

目標である三ツ星レストランになるために、

ピリピリとした雰囲気だったはずです。

 

結局雰囲気が悪くなり、従業員の入れ替わりが激しいのです。

 

「完コピハラスメント」

 

と言い方していましたが、

  

それまで村山シェフはカリスマシェフの作る料理を「完全コピー」することにより

料理の腕を磨いてきたらしいのです。

ですから

 

「どうしてオレの言うとおりにできないのだ!」

 

手取り足取り指導せず、常に怒鳴り散らして

いたのでしょう・・・。

 

ところがサイゼリヤでは高校生のホールスタッフが

実に生き生きと働いている・・・。

それに、はたと気が付いたのですね。





その5 サイゼリヤを真似て改革


村山シェフは「サイゼリヤ方式」を見習って「ラッセ」を

改革していきます。

まず人時生産性を高めるために、人員を減らしたのですね。

9人いたスタッフを4人にしたそうです。

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ミシュランの星を持っているようなレストランには

支配人が必ずいますね。

テレビドラマ「グランメゾン東京」では沢村一樹さんが演じて

いましたね。

高級店では必ず支配人が接客するのです。

 

「今日のお料理の材料は・・・」

 

「お客様のお口にあうイタリアのワインは・・・」

 

何だかいかにも高級店のようですね・・・。

それをやめたというのです。

 

「未経験で入ったばかりの子でも、きちんと仕事をしたうえで

接客していい・・・」

 

キッチンでも

 

「シェフの許可なく、メニューを決めたり味見なしで出してよい・・・」

 

サイゼリヤを真似して大幅な権限移譲ですね。

まあこのあたり賛否両論あると思いますね。

  

客単価780円のサイゼリヤならともかく、客単価2万円の高級レストラン

ですからね・・・。

 

「私はイタリアの最高級三ツ星レストランで認められた村山シェフが

作った料理を食べたいのだ・・・」

 

「新人にワインのウンチクが語れるか!ワインに詳しい人を!」

 

怒りだすお客さんなんもいるかもしれませんね。

 

でも次々にサイゼリヤの効率的な店舗経営を真似て、

高級レストランでも、非効率なサービスや接客をやめていきます。

まさか、サイゼリヤのようにドリンクバーで

自分でお水を入れることまではしないと思いますが

このあたりも飲食店経営者にとっては突っ込みどころ満載なのかも

しれませんね。

 

 

ただ読んでいて飲食店の実態が良く分かった個所があります。

 

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この写真分かりますか?

どんな飲食店にもあるものです。

「グリーストラップ」というもので、要するに飲食店専用の排水溝です。

キッチンの床というのは食材の残飯、野菜くず、油脂やらで

非常に汚れるものですからね。

ここを日々掃除しないと、においやそれこそネズミやゴキブリの発生源にもなります。

 

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調べましたが、図にするとこんな三層構造になっているからです。

 

どんな飲食店でも、閉店後数時間以上かけてここを掃除するのが

普通らしいです。

「ラッセ」でも週3回3時間かけて掃除していたそうです。

誰でも油ギトギトになった装置を掃除するのは嫌がるはずです。

 

しかし、サイゼリヤはわずか週1回9分で終了するのです。

これこそノウハウですね。

従業員は喜びますよね。

毎週9時間もかけていた掃除が、たった1回9分で終われば早く帰れますからね・・・。






その6 サイゼリヤ流「カイゼン」とは?



村山シェフは、サイゼリヤに習って「カイゼン」を導入していきます。

「カイゼン」なんて言葉は、多分中小の飲食店では絶対に聞かない言葉でしょう。

 

サイゼリヤには、

「社内に生産性を上げるためだけの部署がある」

そうです。

 

「時速5q以下では歩いていけない。お皿を下げる時にどっちの手で持つか。

下げたお皿を洗い場に置く場所と順番まで決めている」

そうです。

 

その小さなカイゼンを、何百回も何千回も重ねるのがサイゼリヤ流。

 

例えば、レストランは通常キッチンが総床面積の3分の1がセオリーと

されているのが、サイゼリアは5分の1しかありません。

それでも営業ができるように、キッチンの作業内容が実に細かく

設計されています。

 

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写真は今の「ラッセ」の店内風景。

もともと24席あったレストランをあえて18席に。

4人で回せるように作業効率を考えての結果です。

この「コロナ禍」で大変参考になるお話ではないでしょうか。

 

さらに「ラッセ」の大掛かりな「カイゼン」を実行していきます。

 

この内装や間取りに合わせて新しい設備を購入。

まず、「ワイングラス30脚を純水で一度に洗える洗浄機」の購入。

グラスラックを12個にして、自然乾燥したものをそのまま使えるように工夫。

さらに洗洗浄機に合わせたオリジナルのお皿の開発。

 

それまで皿洗い専用の若い方がいたそうですが、

いなくなって終了後3時間かかっていた洗い物は20分まで減少。

 

あと「無駄と思えることを排除」していきます。

 

「テーブルクロスは毎日アイロンがけをしていたのを、

しわのばしスプレーと手袋で済ませる」

 

「おしぼりも袋から取り出してきれいに折っていたのをやめる」

 

「重たくて高そうなフランス製のお盆を、軽い気のお盆に変更」

 

どうでしょうか?

サイゼリヤ流に、次々にカイゼンしていきます。

 

でもここまで読んでいて、

 

「星付きレストランの『至れり尽くせりのサービス』を求めに来た人は

どうなるの? 満足するの?」

 

これ思いますよね。

 

星付きレストランは2席あたりスタッフ1名が必要なんだそうです。

以前24席あったときは、事実最大12名まで雇っていたそうです。

 

それを4名で回すとなると、まさに普通に「サイゼリヤ」ですね。

キッチンの人がホールやったり、ホールの人もキッチンをやる・・・。

 

正直に書いてありました。

「店の改革を始めてから、スタッフは海外に修行に行ったり、

他の店に移るために辞めていった」そうです。

 

ですから生産性を高めるために減らしたのではなく、

結果的に従業員は9人から4人になったのです。

 

生産性を高めることにより、なくしたものもあるかもしれませんね。

これは仕方がないことかもしれません。

方向性が違うのですからね。

 

 

これで、ハッキリ書きます。村山シェフは

 

「三ツ星レストランになることを諦めたのでしょうか?」





その7 ミシュランの称号より従業員の幸せ


では本当に村山シェフは

 

「三ツ星レストランになることを諦めたのでしょうか?」

 

ここはこの本の重要な論点ですね。

いろいろ考える飲食店経営者も多いのではないでしょうか?

 

ミシュランに選ばれるということは、

「ミシュラン・シェフ」という称号が与えられて、

何より、「星付きレストラン」としてのある程度の売上が確保されますからね。

 

まさに「グランメゾン東京」のキムタクみたいな「カッコイイ人生」が

保証されるのです。

 

でも村山シェフは正直に書いています。

 

「自分はそれまで、『星の数が最優先』してきた。」

でも

「一度星を獲ったら、星を落とすが怖くて必死で店のレベルを保とうとします。

そのため、長時間労働が常態化してスタッフは疲弊。」

してしまうのです。

しかも、

 

「新型コロナの蔓延によって人の行き来が止まり、

レストランをガイドブックで選ぶという仕組み自体が揺らいでいる。」

 

「遅かれ早かれ店も自分も疲弊してつぶれてしまう・・・」

 

そこまで追い込まれていたのでしょう。

これこそ、コロナ禍の中での「星付きレストラン」の実態でしょう。

 

では今後どうしていくかというと、

 

「今の僕にとって、スタッフの幸せが一番。

僕は称号よりもスタッフの幸せを追求していきます。」

 

サイゼリヤにバイトに行って、素晴らしい経営者に

生まれ変わったのでしょうか?

 

 

ここまで読んですぐ気が付きました。

 

「従業員の幸福が一番」と言っている経営者がいましたね。

もう分かりますよね。

 

京セラの稲盛さんですね。ご存じ京セラの経営理念。

 

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これは何度も勉強しました。

一方サイゼリヤというと、HPで調べましたが、

そこまで「従業員の・・・」とは言っていません。

 

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でも読みながらこれも思っていたのですが、

サイゼリヤの「人時生産性」を京セラの「アメーバ経営」と

計算式は一緒なのですね。(人件費以外の経費まで加味するのがアメーバ式)

京セラも「1時間当たりの付加価値」を計算するのでしたね。

「稲盛教」の一信者である私も、ここは誰よりも詳しいつもりです。

(このお話は今度・・・)

 

しかし、

「ミシュラン・シェフという称号より従業員の幸せが一番」

 

何てなかなか言えるものではないでしょう。

 

 

「人は何のために生きるのか?」

 

「何のために経営するのか?」

 

コロナ禍で「在宅勤務」が当たり前になった世の中で、

今や働くことの意味が問われているのでしょう。

 

経営者にとってもこのコロナ禍で、それこそ

「経営することの意味」

が問われているのかも知れませんね・・・。




その8 サイゼリヤの会長・社長との対談


ところで、「三ツ星レストラン」って東京にはいくつあるのか

ご存じですか?

 

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2020年版ミシュランガイドによると11店舗です。

有名なところらしいですが、すいませんが一度も行ったことのない

お店ですね。

 

この三ツ星を獲得することが経営者として幸せなことか、

村山シェフは考え直したのでしょう。

 

そういえば、ご紹介したドラマ「グランメゾン東京」はコロナの前の

お話でしたね。

このコロナ禍により、どうも人間の価値観が変わったように思うのですね。

 

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この本の秀逸なところは、なんと!

サイゼリヤの正垣会長、堀埜社長と村山シェフとの

対談なのですね。

このスリーショットは驚きですね。

これ見た瞬間に

「なんだ!サイゼリヤ全面協力のサイゼリヤ寄りの本だったのか・・・。」

とは思ってしまいます。

しかし、この対談はコロナ禍で飲食店経営者にとっては必見ですね。

 

飲食業界の雄であるサイゼリヤの経営ノウハウが詰まっていますからね。

 

「コロナのような大不況が来たら、何をやるかっていうと、

ゼロベースって言う『経費を全部見直す』。どれが必要か、

必要ではないかと。つまり減量。」

 

「一番大事なのは生産性を確保すること。コックさんをタダで働かせるような

昔の方法だと生存できない。」

 

かなり手厳しいですね。生産性なんて考えたことのない飲食店経営者も

多いでしょうからね。

「タダで働かせず生産性を上げる」ということがお分かりになりますか?

 

 

「ビジネスの目的って何かっていったら、人のために何か役に立つために

自分が生きる」ってこと。

 

このことが良く分かっっている村山シェフは必ず成功する

っとべた褒め。

 

「このままやって100店舗にはなる」

 

とまで言われてしまうのですね。

要するに、「三ツ星レストラン」何てつまらないところ目指さないで

自分のやり方で突き進むべしということなのでしょう。

 

挙句の果てには、正垣会長から

 

「サイゼリヤの社長やったら?」

 

とは少し言い過ぎではないかと思うくらい・・・。








その9 サイゼリヤ理論


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ではここで村上シェフが目指す「サイゼリヤ流飲食店経営術」を

公開しましょう。

 

コロナ禍の中で飲食店の生き残りの術ですね。

これは実は何度も取り上げた法則なのですね。

きっと村上シェフも良くご存じなのでしょう。

読んでいて本当にうれしくなりましたね。

 

「こんな飲食店経営者が本当にいるのかと・・・」

 

これはサイゼリヤの正垣会長の本に出ている

 

「6対4対2」

 

の法則でしたね。

 

「粗利は6割 給料は粗利の4割 家賃は粗利の2割」

 

これは何度もご紹介した数字でしたね。

 

※ ただこの「6対4対2の法則」の命名したのは私です。

 

サイゼリヤ経営学に誰よりも詳しい税理士が解説しておきましょう。

前回、このブログでワークマンの「データ経営」を取り上げましたが

サイゼリヤも実は「データ経営」であることが良く分かります。

 

 

 

ではここで「得意の」EDINETからサイゼリヤの数字を拾ってきます。

コロナ禍の前の2019年8月期の数字で説明します。

実は前年の2018年8月期も並べて書かれているので

分かると思いますが、ほとんど同じ数字です。

日本全国で1000店舗の大チェーンでありながら、同じ数字になるのは

まさに「データ経営」ですね。

 

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ではその「6対4対2」の検証です。

 

2019年8月期の売上高は1189億8800万円ですね。

それに対して粗利(売上総利益)は、759億200万円です。

63.7%ですね。

これは本でも書いていましたが、これは上場企業としての調達コスト

の有利さです。粗利の6割(つまり原価率4割)は証明できましたね。

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ではこれに対して

給料は304億8600万円

家賃は151億6100万円

ですね。

粗利の759億200万円で割ると

給料は40.2%

家賃は20.0%

 

見事に粗利の4割、2割を達成しているのです。

これは全社員がこの「6対4対2」を意識しているに他ならないのですね。

 

Pl_20200925150202  

 

因みに人件費の内訳をみると、従業員が2098人いて、

平均給料は628万円ですね。

ということは従業員の給料は131億7735万円と計算できます。

差額の173億865万円がアルバイトの給料ですね。

アルバイトの働きでこの人件費を支えているのですね。

まさに「データ経営」。見事な管理会計だと思いませんか。

 

高校生など含め、低コストのアルバイトを戦力化することにより

高収益体質を達成しているのですね・・・。

 

どうですか。

サイゼリヤの秘密を暴きに、村上シェフのようにアルバイトしたくなってきましたか・・・。






その10 サイゼリヤの新戦略


サイゼリヤ研究についてはまだまだあるのですが、最後にまとめましょうか。

村上シェフを通じてサイゼリヤを徹底的に分析している理由が

そろそろお分かりいただけていると思います。

 

何といっても

「原価率4割のサイゼリヤ」

ですからね。

人時生産性どころか、まともに原価率すら計算していない零細店舗なら(失礼!)

勝てる訳ないと思いませんか?

 

でも、その村上シェフの目標とするサイゼリヤなのですが、

やはりこのコロナ禍で強烈な打撃を受けているのです。

「飲食店型・データー経営」でここまで綿密なコントロールを

しているチェーン店でも影響を受けているのですから、

まあ、弱小(失礼!)レストランが

このコロナ禍で厳しいのは当然なのでしょう。

 

では、EDINETからそのサイゼイリヤの生の数字を見てみましょう。

8_20200930092801

サイゼリヤの月次報告です。

3月から6か月間「前年割れ」が続いています。

4月などは前年同月比33%ですからね。

8月になっても7割程度しか戻っていないのです。

あの「サイゼリヤをもってしても」こんな状況です。

 

サイゼリヤは8月決算です。

もうじき決算発表されると思いますが、赤字転落は

免れないのです。

といってすぐ経営危機かというとそうではないのですね。

このあたりが、弱小レストランとは違います。

今まで無借金できたのですからね。

データ経営のなせる業です。

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でも5月期の速報見たら、

借金100億円とリース100億円。

ついに200億円の借金をしたことが分かりました。

これ見習うべきところなのでしょうけど、

たぶん封痛のレストランが受けた緊急対策融資のような

「赤字の補填」ではないのですね。

 

16_20200930093901

 

 

9月16日の日本経済新聞です。

新業態で新規出店するそうです。

厨房を今までの面積より半分にして攻めてくるのですね。


「総床面積の5分の1」がサイゼリヤ流と紹介したばかりですが、

なんと驚きの「総床面積の10分の1」で、

 

この効率経営をさらに「バージョンアップ」して

攻めてくるのです。

すごいですね。

サイゼリヤにとどまらず、外食産業は生き残りをかけて

必死になって挑んできます・・・・。

 

 

どうでしょうか?

村上シェフを通じてサイゼリヤの戦略をご紹介してきたつもりです。

生半可な戦略ではこの「コロナ禍」を生き残れないと思いませんか?

 

村上シェフの「三ツ星シェフ」という料理人最大の称号を

諦めてもサイゼリヤでアルバイトしている意味が

ようやく分かりましたか?

 

サイゼリヤの新業態のお店で、しばらくアルバイトしてみたら

私のいう意味がより分かっていただけるかもしれません。

 

もしくは、村上シェフの努力の汗のにおいでも嗅ぎに

「ラッセ」で美味しいイタリアンでも食べにいってください・・・。

 

 

 

(ガンバレ! ミシュラン・シェフシリーズ おしまい)







 



 





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